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国落とし編
夜は終わらない
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冒険者ギルドから転移魔法で宿屋に戻ってくると、そこには俺たちの帰りを待っていたシャルエナと、アイリスが助けた獣人の男性、そしてその彼を手当するミリアの姿があった。
「おかえり、ルーナ。それとお疲れ様、リリィ」
「ただいま」
「ありがとうございます。ナルシェさん」
ミリアはさすがというべきか、慣れた手つきで獣人の男性を手当てしており、回復薬も使ったのか欠損した耳や手の指以外は傷口が塞がっていた。
そしてシャルエナの方は、フーシルとの戦闘後は鏡の蝶を解除していたため、俺が拷問をしたことやローグランドのこともまだ知らず、いつもと変わらない雰囲気で周囲の警戒をしていた。
「それで、竜人族の方はどうなったのかな?」
「それなら話し合いで解決したよ。今は指示した通りに動いてるはずだ」
「竜人族に指示とは、純粋に褒めるべきなのかあり得ないと否定するべきなのか。いや、あの戦闘を見た後だから褒めるべきなのかな」
「別に褒められるほどのことでもないよ。あいつ弱かったし」
「はは。本当に君は強くなったんだね」
シャルエナは呆れ混じりに笑いながらそう言うと、周囲の警戒を俺に任せてベッドへと座る。
「それじゃ、彼を休ませたいところではあるけど必要なことの確認をしたいと思う。ルーナとリリィも疲れているとは思うが、情報の共有は早い方がいい。明日にでもギルドやクランが動くかもしれないからね」
「別に構わないよ。ただ、眠いから早めに終わらせよう。ふわぁ~」
「私も大丈夫ですよ。戦闘の方はほとんどルーナさんがやってくれましたから」
「ありがとう。ミーゼとそちらの男性もいいかな?特にあなたは監禁と拷問のせいで辛いと思うけど、協力してもらえると助かる」
「問題ありません」
「私もその意見には賛成です。なので私のことなど気にせず話を続けてください」
ミリアと獣人の男性が同意したことで、シャルエナは俺に音が外に漏れないよう遮音魔法を掛けるよう指示を出すと、魔法が展開されたのを確認してから話し始める。
「まず、あなたのお名前を聞いても?リリィが助けるところまでは魔法で見ていたんだけど、音までは拾えなくてね。名前や何故あそこにいたのかを教えてもらえる?」
「わかりました。まず、私の名前はロニィで、カーリロの冒険者ギルドで副ギルドマスターをしていました。しかし、今から二週間ほど前、私は密かに集めていたギルマスと毒蛇の鉤爪、そしてこの町にいる騎士たちの悪事に関する証拠を帝都のギルドに送ろうとしていたところ捕まりました。幸いにも、捕まる前に証拠を隠すことはできましたが、逃げ切ることができず、その後はあの牢獄にて証拠のありかについて話すよう拷問を受けていたのです」
「なるほど。なら、他に仲間は?」
「同じギルド職員で何人かいましたが、監禁されてから彼らがどうなったのかはわかりません」
「ふむ」
ロニィの話を聞いたシャルエナは、テーブルを指でトントンと叩きながらしばらく考えると、今度は俺の方に目を向けて話しかけてくる。
「ルーナ」
「んー?」
「眠そうなところすまないね。君のことだからすでに手を回しているんだろうけど、そっちはどうなってるかな?」
「あー、今確認するから少し待って」
俺はそう言って感知魔法の範囲を広げていくと、ヴァレンタイン公爵領の首都ヴィーラントと帝都パラミティアからこの町に向かってくる2つの集団を感知する。
「このペースだと、うちの方が二日で、ナルシェの方が三日ってところかな」
「二日と三日か。リリィ、竜人族は何故あの場所に現れたのかな」
「ロニィさんを引き取りに来たと言っていました。おそらくですが、ギルドマスターと竜人族の間でそういった取引があったのではないかと」
「なら、ロニィが消えてもギルドマスターは何も思わないか。ミーゼ。君の方はどれくらい時間が稼げそうかな」
「長くても二日ですね。私たちは既に彼らの敵として判断されていますから、毒や武器、切り口などを変えながら複数人の犯行に見えるよう偽装したところで、私たちだと決め付けられれば意味がありません」
「なるほど」
俺たちの報告を聞いたシャルエナは、また考え込むような様子を見せるが、この中で状況について行けてないロニィが小さく手を挙げる。
「あの、すみません。皆さんのお話について行けてないのですが……」
「あぁ、そうだね。そういえば、私たちのことをまだ説明していなかった。まず、私たちは冒険者だ。名前は今更だから置いておくとして、私たちがこの町に来たのは、別の町で毒蛇の鉤爪に勧誘されたからなんだ」
「え、それじゃあ……」
「いや。あなたが考えているようなことはないから安心してくれ。私たちはその場で断った……というか、寧ろ喧嘩になってしまってね。それで、うちのリーダーが彼らを潰したくなったようで、彼らに招待されてこの町に来たんだ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「それで手分けして動いていたんだけど、ミーゼには毒蛇の鉤爪の人数減らし、リリィにはギルドとクランが繋がっている証拠を手に入れてもらうために潜入をしてもらってたんだ」
「事情はわかりました。では、ルーナさんが仰っていた日数については?」
「それはルーナ自身が説明した方が早いかもね」
「まぁ簡単に言えば、騎士と代わりのギルド職員が到着するまでの時間。騎士がクランと手を組んでいるのは初めからわかっていたし、ギルドが繋がっているのは今日の朝ギルドに行った時にわかった。だから、依頼を受けて近くの森に行った時、魔法でヴァレンタイン公爵領の騎士と帝都のギルドにこの町の事情を書いた手紙を送り、代わりの人員を送ってもらうようお願いしたんだ」
ルーマルーニャの町に毒蛇の連中が来た時、彼らは騎士に話を通しておくと言っていた。
つまり、彼らと騎士との間に繋がりがあるのは明白であり、今朝ギルドに入った時のギルド職員の反応を見た時、ギルドも毒蛇と手を組んでいることがわかった。
カーリロの町はヴァレンタイン公爵家の管轄であるため、この町の状況と騎士について父上に魔法で手紙を送り、冒険者ギルドのことは帝国のギルドをまとめているシャーラーに報告をし、代わりの職員を手配してもらえるよう依頼をしておいたのだ。
「まぁそんな訳で、あとはあなたの集めたという証拠があれば、私たちの方で全てを片付けることが可能だ。証拠は私たちの方で保管した方が安全だろうから、明日にでも取りに行こう。その時はミーゼが付き添ってくれればと思うんだが、いいかな。全員で行くと目立ってしまうからね」
「かしこまりました」
「ありがとう。それじゃあ話はここまでにしてそろそろ休もうか。ルーナも、待たせてしまってごめんね」
「いや、それはいいんだけど。私も話さないといけないことがあるし……」
「ミーゼ、ロニィさん。私たちは隣の部屋に行きましょう」
俺はそう言ってアイリスの方を少し見ると、彼女はすぐに伝えたいことを理解し、ミリアとロニィを連れて部屋を出て行く。
それを確認すると、俺は何重にも遮音魔法を掛け、さらに結界魔法と認識阻害の魔法まで使用して外部に情報が漏れないようにする。
「ロニィはともかく、二人も出したということは私に関する話なのかな?」
「そうですね。今から話すことは、ナルシェではなく、シャルエナ・ルーゼリアにとって重要な話になります」
「………わかった」
俺がシャルエナのことをフルネームで呼んだためか、事の重要性を理解した彼女は先ほどよりも真剣な表情で頷いた。
「それで、話しって何かな?」
「んー、どう伝えるべきか迷いましたが、俺もあなたも周りくどいのは嫌いなので単刀直入にいいましょう。あなたの叔父、ローグランド・ルーゼリアが生きています」
こうして、面倒な役割だと思いながらも、俺は彼女に竜人族であるフーシルから手に入れた情報を話し、まだ終わることのない長い夜を迎えるのであった。
「おかえり、ルーナ。それとお疲れ様、リリィ」
「ただいま」
「ありがとうございます。ナルシェさん」
ミリアはさすがというべきか、慣れた手つきで獣人の男性を手当てしており、回復薬も使ったのか欠損した耳や手の指以外は傷口が塞がっていた。
そしてシャルエナの方は、フーシルとの戦闘後は鏡の蝶を解除していたため、俺が拷問をしたことやローグランドのこともまだ知らず、いつもと変わらない雰囲気で周囲の警戒をしていた。
「それで、竜人族の方はどうなったのかな?」
「それなら話し合いで解決したよ。今は指示した通りに動いてるはずだ」
「竜人族に指示とは、純粋に褒めるべきなのかあり得ないと否定するべきなのか。いや、あの戦闘を見た後だから褒めるべきなのかな」
「別に褒められるほどのことでもないよ。あいつ弱かったし」
「はは。本当に君は強くなったんだね」
シャルエナは呆れ混じりに笑いながらそう言うと、周囲の警戒を俺に任せてベッドへと座る。
「それじゃ、彼を休ませたいところではあるけど必要なことの確認をしたいと思う。ルーナとリリィも疲れているとは思うが、情報の共有は早い方がいい。明日にでもギルドやクランが動くかもしれないからね」
「別に構わないよ。ただ、眠いから早めに終わらせよう。ふわぁ~」
「私も大丈夫ですよ。戦闘の方はほとんどルーナさんがやってくれましたから」
「ありがとう。ミーゼとそちらの男性もいいかな?特にあなたは監禁と拷問のせいで辛いと思うけど、協力してもらえると助かる」
「問題ありません」
「私もその意見には賛成です。なので私のことなど気にせず話を続けてください」
ミリアと獣人の男性が同意したことで、シャルエナは俺に音が外に漏れないよう遮音魔法を掛けるよう指示を出すと、魔法が展開されたのを確認してから話し始める。
「まず、あなたのお名前を聞いても?リリィが助けるところまでは魔法で見ていたんだけど、音までは拾えなくてね。名前や何故あそこにいたのかを教えてもらえる?」
「わかりました。まず、私の名前はロニィで、カーリロの冒険者ギルドで副ギルドマスターをしていました。しかし、今から二週間ほど前、私は密かに集めていたギルマスと毒蛇の鉤爪、そしてこの町にいる騎士たちの悪事に関する証拠を帝都のギルドに送ろうとしていたところ捕まりました。幸いにも、捕まる前に証拠を隠すことはできましたが、逃げ切ることができず、その後はあの牢獄にて証拠のありかについて話すよう拷問を受けていたのです」
「なるほど。なら、他に仲間は?」
「同じギルド職員で何人かいましたが、監禁されてから彼らがどうなったのかはわかりません」
「ふむ」
ロニィの話を聞いたシャルエナは、テーブルを指でトントンと叩きながらしばらく考えると、今度は俺の方に目を向けて話しかけてくる。
「ルーナ」
「んー?」
「眠そうなところすまないね。君のことだからすでに手を回しているんだろうけど、そっちはどうなってるかな?」
「あー、今確認するから少し待って」
俺はそう言って感知魔法の範囲を広げていくと、ヴァレンタイン公爵領の首都ヴィーラントと帝都パラミティアからこの町に向かってくる2つの集団を感知する。
「このペースだと、うちの方が二日で、ナルシェの方が三日ってところかな」
「二日と三日か。リリィ、竜人族は何故あの場所に現れたのかな」
「ロニィさんを引き取りに来たと言っていました。おそらくですが、ギルドマスターと竜人族の間でそういった取引があったのではないかと」
「なら、ロニィが消えてもギルドマスターは何も思わないか。ミーゼ。君の方はどれくらい時間が稼げそうかな」
「長くても二日ですね。私たちは既に彼らの敵として判断されていますから、毒や武器、切り口などを変えながら複数人の犯行に見えるよう偽装したところで、私たちだと決め付けられれば意味がありません」
「なるほど」
俺たちの報告を聞いたシャルエナは、また考え込むような様子を見せるが、この中で状況について行けてないロニィが小さく手を挙げる。
「あの、すみません。皆さんのお話について行けてないのですが……」
「あぁ、そうだね。そういえば、私たちのことをまだ説明していなかった。まず、私たちは冒険者だ。名前は今更だから置いておくとして、私たちがこの町に来たのは、別の町で毒蛇の鉤爪に勧誘されたからなんだ」
「え、それじゃあ……」
「いや。あなたが考えているようなことはないから安心してくれ。私たちはその場で断った……というか、寧ろ喧嘩になってしまってね。それで、うちのリーダーが彼らを潰したくなったようで、彼らに招待されてこの町に来たんだ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「それで手分けして動いていたんだけど、ミーゼには毒蛇の鉤爪の人数減らし、リリィにはギルドとクランが繋がっている証拠を手に入れてもらうために潜入をしてもらってたんだ」
「事情はわかりました。では、ルーナさんが仰っていた日数については?」
「それはルーナ自身が説明した方が早いかもね」
「まぁ簡単に言えば、騎士と代わりのギルド職員が到着するまでの時間。騎士がクランと手を組んでいるのは初めからわかっていたし、ギルドが繋がっているのは今日の朝ギルドに行った時にわかった。だから、依頼を受けて近くの森に行った時、魔法でヴァレンタイン公爵領の騎士と帝都のギルドにこの町の事情を書いた手紙を送り、代わりの人員を送ってもらうようお願いしたんだ」
ルーマルーニャの町に毒蛇の連中が来た時、彼らは騎士に話を通しておくと言っていた。
つまり、彼らと騎士との間に繋がりがあるのは明白であり、今朝ギルドに入った時のギルド職員の反応を見た時、ギルドも毒蛇と手を組んでいることがわかった。
カーリロの町はヴァレンタイン公爵家の管轄であるため、この町の状況と騎士について父上に魔法で手紙を送り、冒険者ギルドのことは帝国のギルドをまとめているシャーラーに報告をし、代わりの職員を手配してもらえるよう依頼をしておいたのだ。
「まぁそんな訳で、あとはあなたの集めたという証拠があれば、私たちの方で全てを片付けることが可能だ。証拠は私たちの方で保管した方が安全だろうから、明日にでも取りに行こう。その時はミーゼが付き添ってくれればと思うんだが、いいかな。全員で行くと目立ってしまうからね」
「かしこまりました」
「ありがとう。それじゃあ話はここまでにしてそろそろ休もうか。ルーナも、待たせてしまってごめんね」
「いや、それはいいんだけど。私も話さないといけないことがあるし……」
「ミーゼ、ロニィさん。私たちは隣の部屋に行きましょう」
俺はそう言ってアイリスの方を少し見ると、彼女はすぐに伝えたいことを理解し、ミリアとロニィを連れて部屋を出て行く。
それを確認すると、俺は何重にも遮音魔法を掛け、さらに結界魔法と認識阻害の魔法まで使用して外部に情報が漏れないようにする。
「ロニィはともかく、二人も出したということは私に関する話なのかな?」
「そうですね。今から話すことは、ナルシェではなく、シャルエナ・ルーゼリアにとって重要な話になります」
「………わかった」
俺がシャルエナのことをフルネームで呼んだためか、事の重要性を理解した彼女は先ほどよりも真剣な表情で頷いた。
「それで、話しって何かな?」
「んー、どう伝えるべきか迷いましたが、俺もあなたも周りくどいのは嫌いなので単刀直入にいいましょう。あなたの叔父、ローグランド・ルーゼリアが生きています」
こうして、面倒な役割だと思いながらも、俺は彼女に竜人族であるフーシルから手に入れた情報を話し、まだ終わることのない長い夜を迎えるのであった。
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