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武術大会編
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開会式が終わり参加者たちが闘技場の裏へと下がっていくと、審判役の教師たちが最終確認を行う。
武術大会のルールは序列戦と同じで、身代わりの腕輪をつけて戦闘を行う。
勝敗の決め方は相手が立てなくなるか気を失った場合、または降参した場合に試合が終わり、それ以外は基本的に戦闘が続行となる。
ただし、相手が意識を失っているにも関わらず追撃をしようとした場合、その時は審判が強制的に試合を止める場合もある。
試合が始まるまで約30分ほどの休憩時間があるため、周りの観客たちは簡単に食べられる物や飲み物を買いに行く。
「エル。私たちも出店を見てくる。エルはどうする?」
「俺はここにいるよ」
「わかった」
「シュヴィーナ」
「何かしら?」
「この学園の出店は美味くて手軽に食える料理がたくさんあるけど、買いすぎるなよ」
「な?!そんなこと言うと、あなたの分はかってこないわよ?」
「はは。それは悪かったな。謝るから甘い食べ物でも買ってきてくれ」
「わかったわ」
「セフィリアは二人が買いすぎないように見ててくれ」
「かしこまりました」
フィエラとシュヴィーナ、そしてセフィリアの三人は席を立って闘技場を出ていくと、入れ替わるようにして一人の青年が近づいてくる。
「隣、座ってもいいかな」
「…カマエルか。いいぞ」
「どうも。よいしょっと」
カマエルは俺の隣に座って「ふぅ」と息を吐くと、闘技場の方をぼーっと眺める。
「そういえば、お前も大会には参加しなかったんだな」
「もちろん。あんなめんどくさいものに参加するなんて、僕の行動理念に反するからね。それに、参加してもどうせつまらないよ」
「そうだな。全力の俺たちを相手できるやつなんて、それこそお互いしかいないだろうからな」
「ふふ。買い被り過ぎたよ。僕はそんなに強くない」
「どうだかな」
今のカマエルの強さがどれほどのものなのかは実際のところ分からないが、未来のこいつの強さを考えると、俺もそこそこに楽しめるくらいには強いはずだ。
「それより、君が参加しなかったことでライム先生大泣きしてたね」
「あぁ。あれは正直、見てて面白かったな。あれを見れただけでも、やっぱり参加しなくて良かったと思ったよ」
「うーわ。性格悪いなぁ。でも、その気持ちが少しわかってしまうあたり、僕も同じくらい性格が悪いんだろうな」
一ヶ月前。武術大会の説明があった日、俺とフィエラとシュヴィーナの三人は、授業が終わるなり大会には参加しないことをライムに伝えた。
『なんで?!さっき微笑んでくれたよね!!あれって参加しますよって意味じゃなかったの?!』
『いえ。参加しませんよという意味で微笑みました。勘違いしたのは先生ですよね?俺は参加するなんて一言も言ってませんし』
『うっ。そ、それはそうだけど……でも!あの流れで微笑んだら参加しますってことじゃん!だから私、安心して無い胸を撫で下ろしたのに!!』
『それは慰める所ですか?それとも笑う所ですか?』
『どっちも私の心に大ダメージだから触れないで!』
『わかりました』
『うぅ……なんでこういう時だけ物分かりがいいんだ。ねぇ、本当に参加しないの?』
『すみません。でも面倒なんですよね』
俺はそう言ってもう一度微笑むと、ライムは耐えきれなくなったのか泣いてしまう。
『もー!!そんなに私をいじめて楽しいのか!この問題児めー!!』
あの時のライムの反応は本当にいじめがいのある面白い反応をしており、今思い出しただけでも笑えてしまう。
「ほんと…良い性格してるよね、君」
「お互い様だろ。お前も口元が笑ってるぞ」
「あ、本当だね」
カマエルは自身の頬を触ると、自分も笑っていたことに気がつき、少しだけ楽しそうに微笑んだ。
「まぁ、ライム先生のことは置いといて。君も気づいてるよね?この闘技場にとんでもない気配の人がいること」
「あぁ。本人は隠してるみたいだ。俺らには通用してないけどな」
「どうするの?」
「あれは俺の客だから、明日にでも会いに行くつもりだ。だからお前は気にしなくていいさ」
「そっか。君が対処するなら確かに僕は必要なさそうだね」
カマエルは欠伸をしてから席を立つと、軽く体を伸ばす。
「戻るのか?」
「うん。僕うるさいところ嫌いなんだ。それに眠いからね。寮に戻って寝るつもりだよ」
「そうか。暇になったら遊びにこいよ。お前、俺くらいしか仲が良いやついないだろ?」
「ふふ。そもそも、君とも仲が良いかはわからないだろう?」
「それは残念だな。俺はお前とは大親友だと思ってるぞ?」
俺は足を組んでニヤリと笑いながらカマエルにそう言うと、彼は呆れたように溜め息を吐いた。
「はぁ。君には本当に敵わないよ。まぁ、寝るのに飽きたら遊びに来るよ」
「りょーかい」
「それじゃ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
カマエルは怠そうに手を振りながらこの場を去っていくと、それからしばらくして両手に料理の入った袋を持ったフィエラたちが戻ってくる。
「ただいま」
「おかえり。また随分と買ってきたな」
「そうかしら。これでも減らした方なのよ?」
シュヴィーナは買ってきた料理を見せながらこれでも減らした方だと言うが、三人で行って一人ずつ両手に袋を持った状態は、はたして本当に減らしたといえるのだろうか。
「セフィリア」
「申し訳ありません。お二人といると、何が普通なのか分からなくなってしまいまして。気がついた時にはこんな事に…」
どうやらセフィリアの真実の瞳をもってしても二人の行動に惑わされてしまったらしく、逆に普通というものが分からなくなってしまったようだ。
「まぁ、いいや。どうせもうすぐソニアも来るだろうし、シュヴィーナとフィエラなら全部食えそうだからな」
「ん。余裕」
「ちゃんと食べられる分しか買ってきてないから安心なさい。それに、ドーナも今日は一緒に食べるからね」
「うん!食べる~!」
シュヴィーナの頭の上から元気な声が聞こえると、彼女の頭にうつ伏せで寝転がりながら手を挙げるドーナが、自分もたくさん食べると気合を入れていた。
「あら。良い匂い。ちょうど良いタイミングだったみたいね」
「ソニア」
「おかえりなさい、ソニア」
「開会式、お疲れ様でした」
フィエラたちが料理を食べる準備をしていると、闘技場の方から戻ってきたソニアがシュヴィーナの隣へと座る。
「アイリスは控え室か?」
「えぇ。アイリスとシャルエナはあたしと違って今日が試合だからね。今は二人とも控え室で初戦に備えているはずよ」
武術大会の一日目はアイリスとシャルエナの試合があり、ソニアは二日目に初戦があるため今日は開会式以外に予定がなく、俺たちと一緒に二人の試合を観ることになっていた。
「準備できた」
「さぁ、食べましょう」
「食べよー!!」
ソニアと話している間にフィエラたちが料理を食べやすいよう用意し終えると、各々食べたいものを手に取り食べ始める。
それはドーナも同じで、彼女は俺の膝の上に当たり前のように座ると、シュヴィーナが小さく切り分けたお肉を美味しそうに食べていた。
「お。試合の方も始まるみたいだな」
俺たちが料理を食べていると、時間になったのか生徒たちが二つの舞台の上へと上がっていき、その中央に審判役の教師が立つ。
それからルールの再確認が行われ、両者が武器を構えると、いよいよ武術大会が始まった。
武術大会が始まってからしばらく経ち、料理も全て食べ終えた頃。
ドーナが食後の睡魔に負けて俺の膝の上で寝てから少しして、舞台の上にアイリスが登場する。
アイリスの初戦の相手は同じ魔法使いである二年生の男子生徒で、魔力量を見た感じではAクラス生のようだった。
男の方が何かをアイリスに言うと、彼女の表情は恐ろしいほどに綺麗な笑顔へと変わる。
二人は舞台の上でしばらく見合うと、審判の開始の合図とともに二年生の生徒は魔法の詠唱を始めるが、アイリスはゆっくりと指を対戦相手に向けると、小さく魔法名だけ言葉にする。
「『水撃』」
「あぐっ?!」
アイリスの指から放たれた小さな水の塊は、対戦相手の頭に当たると衝撃波を生み出し、彼を僅かに後ろへと仰け反らせる。
「くっ!!まだ…!!」
「水撃…水撃…水撃…水撃…」
「あう!うぐ!あぐ!ひぐ!!」
アイリスの容赦のない水撃を何度も体に受けた対戦相手は、魔法を詠唱することすらできず地面へと倒れる。
「くっそ!」
「『水剣』」
男は何とか立ちあがろうとするが、それを許さないアイリスが彼の上に15本の水の剣を作り出すと、容赦なく剣の雨を降らせた。
男はその剣によって地面に磔にされると、あまりの恐怖に失神してしまい、そこで試合終了となった。
「随分と容赦なかったわね」
「ん。特に最後の一発。急所ギリギリに突き刺した剣は凄かった」
フィエラの言う通り、最後の一本は男の急所ギリギリの所に剣が刺されており、観客席にいた男たちは想像しただけで怖くなったのか、青い顔をしながら震えたいた。
「何があったのかは、想像できそうなものね。あたしだったら完璧に燃やしてやったのに」
「アイリスさんは可愛らしい方ですから、モテてしまうのも仕方がありません。それに、そうやって油断を誘う作戦だったのかもしれませんしね。裏目に出てしまいましたが」
ソニアは自分だったら燃やすなんていう凶悪な発言をしており、セフィリアは冷静に先ほどの戦いを分析していた。
それからしばらくすると、今度は剣を腰に下げ、水色の髪を後ろで一本にまとめたシャルエナが舞台の上へと登場する。
「きゃー!!シャルエナ様ー!!」
「シャルエナ皇女殿下ー!!」
彼女は男女問わず民衆にかなり人気があるため、シャルエナが登場しただけで会場では大歓声が上がる。
俺はドーナが起きないよう彼女に遮音魔法を掛けると、舞台の上で凛と構えるシャルエナの事を見据える。
(さて。今の彼女がどれだけできるのか、実力を見させてもらおうかな)
未来の彼女の実力は知っているが、現時点での彼女がどこまでやれるのかはあまり知らない。
夏の長期休暇では、共にサルマージュへと行かなければならないため、俺には今回の大会で彼女の実力を見定める必要があった。
(さぁ、少しは楽しませてくれよ)
武術大会のルールは序列戦と同じで、身代わりの腕輪をつけて戦闘を行う。
勝敗の決め方は相手が立てなくなるか気を失った場合、または降参した場合に試合が終わり、それ以外は基本的に戦闘が続行となる。
ただし、相手が意識を失っているにも関わらず追撃をしようとした場合、その時は審判が強制的に試合を止める場合もある。
試合が始まるまで約30分ほどの休憩時間があるため、周りの観客たちは簡単に食べられる物や飲み物を買いに行く。
「エル。私たちも出店を見てくる。エルはどうする?」
「俺はここにいるよ」
「わかった」
「シュヴィーナ」
「何かしら?」
「この学園の出店は美味くて手軽に食える料理がたくさんあるけど、買いすぎるなよ」
「な?!そんなこと言うと、あなたの分はかってこないわよ?」
「はは。それは悪かったな。謝るから甘い食べ物でも買ってきてくれ」
「わかったわ」
「セフィリアは二人が買いすぎないように見ててくれ」
「かしこまりました」
フィエラとシュヴィーナ、そしてセフィリアの三人は席を立って闘技場を出ていくと、入れ替わるようにして一人の青年が近づいてくる。
「隣、座ってもいいかな」
「…カマエルか。いいぞ」
「どうも。よいしょっと」
カマエルは俺の隣に座って「ふぅ」と息を吐くと、闘技場の方をぼーっと眺める。
「そういえば、お前も大会には参加しなかったんだな」
「もちろん。あんなめんどくさいものに参加するなんて、僕の行動理念に反するからね。それに、参加してもどうせつまらないよ」
「そうだな。全力の俺たちを相手できるやつなんて、それこそお互いしかいないだろうからな」
「ふふ。買い被り過ぎたよ。僕はそんなに強くない」
「どうだかな」
今のカマエルの強さがどれほどのものなのかは実際のところ分からないが、未来のこいつの強さを考えると、俺もそこそこに楽しめるくらいには強いはずだ。
「それより、君が参加しなかったことでライム先生大泣きしてたね」
「あぁ。あれは正直、見てて面白かったな。あれを見れただけでも、やっぱり参加しなくて良かったと思ったよ」
「うーわ。性格悪いなぁ。でも、その気持ちが少しわかってしまうあたり、僕も同じくらい性格が悪いんだろうな」
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『なんで?!さっき微笑んでくれたよね!!あれって参加しますよって意味じゃなかったの?!』
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『うっ。そ、それはそうだけど……でも!あの流れで微笑んだら参加しますってことじゃん!だから私、安心して無い胸を撫で下ろしたのに!!』
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『どっちも私の心に大ダメージだから触れないで!』
『わかりました』
『うぅ……なんでこういう時だけ物分かりがいいんだ。ねぇ、本当に参加しないの?』
『すみません。でも面倒なんですよね』
俺はそう言ってもう一度微笑むと、ライムは耐えきれなくなったのか泣いてしまう。
『もー!!そんなに私をいじめて楽しいのか!この問題児めー!!』
あの時のライムの反応は本当にいじめがいのある面白い反応をしており、今思い出しただけでも笑えてしまう。
「ほんと…良い性格してるよね、君」
「お互い様だろ。お前も口元が笑ってるぞ」
「あ、本当だね」
カマエルは自身の頬を触ると、自分も笑っていたことに気がつき、少しだけ楽しそうに微笑んだ。
「まぁ、ライム先生のことは置いといて。君も気づいてるよね?この闘技場にとんでもない気配の人がいること」
「あぁ。本人は隠してるみたいだ。俺らには通用してないけどな」
「どうするの?」
「あれは俺の客だから、明日にでも会いに行くつもりだ。だからお前は気にしなくていいさ」
「そっか。君が対処するなら確かに僕は必要なさそうだね」
カマエルは欠伸をしてから席を立つと、軽く体を伸ばす。
「戻るのか?」
「うん。僕うるさいところ嫌いなんだ。それに眠いからね。寮に戻って寝るつもりだよ」
「そうか。暇になったら遊びにこいよ。お前、俺くらいしか仲が良いやついないだろ?」
「ふふ。そもそも、君とも仲が良いかはわからないだろう?」
「それは残念だな。俺はお前とは大親友だと思ってるぞ?」
俺は足を組んでニヤリと笑いながらカマエルにそう言うと、彼は呆れたように溜め息を吐いた。
「はぁ。君には本当に敵わないよ。まぁ、寝るのに飽きたら遊びに来るよ」
「りょーかい」
「それじゃ、おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
カマエルは怠そうに手を振りながらこの場を去っていくと、それからしばらくして両手に料理の入った袋を持ったフィエラたちが戻ってくる。
「ただいま」
「おかえり。また随分と買ってきたな」
「そうかしら。これでも減らした方なのよ?」
シュヴィーナは買ってきた料理を見せながらこれでも減らした方だと言うが、三人で行って一人ずつ両手に袋を持った状態は、はたして本当に減らしたといえるのだろうか。
「セフィリア」
「申し訳ありません。お二人といると、何が普通なのか分からなくなってしまいまして。気がついた時にはこんな事に…」
どうやらセフィリアの真実の瞳をもってしても二人の行動に惑わされてしまったらしく、逆に普通というものが分からなくなってしまったようだ。
「まぁ、いいや。どうせもうすぐソニアも来るだろうし、シュヴィーナとフィエラなら全部食えそうだからな」
「ん。余裕」
「ちゃんと食べられる分しか買ってきてないから安心なさい。それに、ドーナも今日は一緒に食べるからね」
「うん!食べる~!」
シュヴィーナの頭の上から元気な声が聞こえると、彼女の頭にうつ伏せで寝転がりながら手を挙げるドーナが、自分もたくさん食べると気合を入れていた。
「あら。良い匂い。ちょうど良いタイミングだったみたいね」
「ソニア」
「おかえりなさい、ソニア」
「開会式、お疲れ様でした」
フィエラたちが料理を食べる準備をしていると、闘技場の方から戻ってきたソニアがシュヴィーナの隣へと座る。
「アイリスは控え室か?」
「えぇ。アイリスとシャルエナはあたしと違って今日が試合だからね。今は二人とも控え室で初戦に備えているはずよ」
武術大会の一日目はアイリスとシャルエナの試合があり、ソニアは二日目に初戦があるため今日は開会式以外に予定がなく、俺たちと一緒に二人の試合を観ることになっていた。
「準備できた」
「さぁ、食べましょう」
「食べよー!!」
ソニアと話している間にフィエラたちが料理を食べやすいよう用意し終えると、各々食べたいものを手に取り食べ始める。
それはドーナも同じで、彼女は俺の膝の上に当たり前のように座ると、シュヴィーナが小さく切り分けたお肉を美味しそうに食べていた。
「お。試合の方も始まるみたいだな」
俺たちが料理を食べていると、時間になったのか生徒たちが二つの舞台の上へと上がっていき、その中央に審判役の教師が立つ。
それからルールの再確認が行われ、両者が武器を構えると、いよいよ武術大会が始まった。
武術大会が始まってからしばらく経ち、料理も全て食べ終えた頃。
ドーナが食後の睡魔に負けて俺の膝の上で寝てから少しして、舞台の上にアイリスが登場する。
アイリスの初戦の相手は同じ魔法使いである二年生の男子生徒で、魔力量を見た感じではAクラス生のようだった。
男の方が何かをアイリスに言うと、彼女の表情は恐ろしいほどに綺麗な笑顔へと変わる。
二人は舞台の上でしばらく見合うと、審判の開始の合図とともに二年生の生徒は魔法の詠唱を始めるが、アイリスはゆっくりと指を対戦相手に向けると、小さく魔法名だけ言葉にする。
「『水撃』」
「あぐっ?!」
アイリスの指から放たれた小さな水の塊は、対戦相手の頭に当たると衝撃波を生み出し、彼を僅かに後ろへと仰け反らせる。
「くっ!!まだ…!!」
「水撃…水撃…水撃…水撃…」
「あう!うぐ!あぐ!ひぐ!!」
アイリスの容赦のない水撃を何度も体に受けた対戦相手は、魔法を詠唱することすらできず地面へと倒れる。
「くっそ!」
「『水剣』」
男は何とか立ちあがろうとするが、それを許さないアイリスが彼の上に15本の水の剣を作り出すと、容赦なく剣の雨を降らせた。
男はその剣によって地面に磔にされると、あまりの恐怖に失神してしまい、そこで試合終了となった。
「随分と容赦なかったわね」
「ん。特に最後の一発。急所ギリギリに突き刺した剣は凄かった」
フィエラの言う通り、最後の一本は男の急所ギリギリの所に剣が刺されており、観客席にいた男たちは想像しただけで怖くなったのか、青い顔をしながら震えたいた。
「何があったのかは、想像できそうなものね。あたしだったら完璧に燃やしてやったのに」
「アイリスさんは可愛らしい方ですから、モテてしまうのも仕方がありません。それに、そうやって油断を誘う作戦だったのかもしれませんしね。裏目に出てしまいましたが」
ソニアは自分だったら燃やすなんていう凶悪な発言をしており、セフィリアは冷静に先ほどの戦いを分析していた。
それからしばらくすると、今度は剣を腰に下げ、水色の髪を後ろで一本にまとめたシャルエナが舞台の上へと登場する。
「きゃー!!シャルエナ様ー!!」
「シャルエナ皇女殿下ー!!」
彼女は男女問わず民衆にかなり人気があるため、シャルエナが登場しただけで会場では大歓声が上がる。
俺はドーナが起きないよう彼女に遮音魔法を掛けると、舞台の上で凛と構えるシャルエナの事を見据える。
(さて。今の彼女がどれだけできるのか、実力を見させてもらおうかな)
未来の彼女の実力は知っているが、現時点での彼女がどこまでやれるのかはあまり知らない。
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