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学園編
お誘い
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ライムに連れられて始まった学園案内は、いつもと同じように彼女の趣味と経験も交えて説明がされていく。
「ここが魔法研究の授業が行われられ教室だよ!中には危険な魔道具や貴重な研究資料も保管されていたりするから、ぜーったいに遊び半分で入っちゃだめだよ!
それに、この教室を管理している先生はものすごく怖いんだ。怒られた経験のある私が言うんだから、本当に怖いんだよ。みんなも気をつけるように!」
実体験付きで教えてくれるライムの話は妙な説得力があり、周りの生徒たちはゴクリと唾を飲む。
「あの時のことは思い出しただけでも…ぶるぶる」
ライムはそんな生徒たちの反応で調子に乗ったのか、態とらしく自身の体を抱きしめて震えて見せる。
「まぁ、勝手に入らなければ怒られないし、そもそも特殊な魔法で鍵が掛けられているから先生以外は開けられないんだけどね。さて!次の所へ行こうか!」
その後もライムの実体験付きの学園ツアーは続き、午前中の全ての時間を使って学園内の重要な箇所を見て回るのであった。
「本当にこの学園広すぎるわ」
学園案内が終わった後、予定通りお昼休憩になった俺たちは、Sクラスの特権の一つであり、Sクラス生だけが利用できる学園の敷地内にある小さな庭園で昼食を食べていた。
「ん。あれで全部じゃないのが驚き」
「ほんとよね。あんなにいろんな教室や施設があるけど、意味あるのかしら」
フィエラとシュヴィーナは歩き回って少し疲れたのか、いつもよりも遅いペースでお昼を食べていた。
「ミリア。この肉美味いな。味付けがちょうどいい」
「ありがとうございます」
俺はそんな2人を気にすることなく、ミリアが用意してくれた肉料理を食べるが、味付けも濃過ぎず、柔らかさも俺好みに調理されていて美味かった。
「エルは疲れてないの?」
「本当ね。全然疲れてる様子がないわ」
「母上の買い物に付き合う方が疲れるからな。あの程度なら問題ない」
フィエラたちはそうでも無いが、元来女性とは買い物にかかる時間が長いもので、母上も例に漏れずそうだった。
そんな母上の買い物に小さい頃から付き添ってきた俺にとって、この程度の移動であれば何も問題は無かった。
「あぁ。理解したわ」
フィエラとシュヴィーナも心当たりがあるのか、2人も納得したように頷くと、料理を食べ進めていく。
「そう言えば、次の休日の歓迎会についてだけれど…」
「エルはどうするの」
料理を食べ終えて食後の紅茶を飲んでいると、2人は歓迎会に誰をエスコートするのか気になるようで、真剣な表情で尋ねてきた。
「今回は婚約者としてアイリスと行くつもりだ」
「やっぱり」
「そうなのね…」
フィエラたちは俺の答えを予想していたようで、そこまで残念がる様子は見せなかったが、それでもやはり悔しいという感情はあるのか、手のひらを力強く握った。
「それは婚約者だから?それとも、エルがアイリスと行きたいから?」
「婚約者だからってのもあるが、今回は確かめたいことがあるんだ」
「確かめたいことって何かしら」
「それはお前らには関係のないことだ。気にするな」
2人は確かめたい事というのが気になったようだが、俺はそれ以上この事について話すつもりはなかったので席を立つと、ミリアに後のこと任せて教室へと戻るのであった。
教室に戻ってきた俺は食後の昼寝を堪能した後、ライムが配った授業選択について書かれた紙に目を通していた。
「みんな午前はお疲れさま!みんなお昼は何を食べたかな?私は楽しみにしていたお刺身が完売してて食べられなくて残念だったよ。でも、カレーっていうやつもすごく美味しかったから、今度みんなも食べてみてね!
それじゃあ、午後は予定通り授業の選択をしてもらうよ!
今みんなの目の前にある紙に書かれてあるのが、一年生が受けられる授業だよ。
右が選択科目で、左が必修科目。必修科目は違う日にちと時間に同じ科目が入っていて、そのどちらかを選んで受ければいいから、選択科目ともあまり被らないはずだよ。
それじゃあ、自分が将来やりたいことをしっかりと考えて、それに必要となる科目を選んでね。もし科目のことで分からないことがあれば、遠慮せず聞いてね!」
ライムの説明が終わると、他の生徒たちは渡された紙に目を通していき、何を受けるか真剣に考えていく。
「エルはどうするの?」
そんな中、俺はなるべく休みが連続で続くように必修科目を選ぶと、どうするべきか悩んでいたフィエラが話しかけてきた。
「俺は必修科目だけだ。それ以外は受けないよ」
「どうして?」
「単純に必要ないからだな。正直、この学園で俺が学ぶことはない。なら、最低限の授業だけを受けて、あとは冒険者として活動するつもりだ」
「なら、私も…」
「いや、お前はお前で受けたいものちゃんと受けろ。フィエラは俺に合わせ過ぎだ。そんなんじゃ大事な時に一人で何もできなくなる」
これは常々思っていたことだが、フィエラの俺に対する依存度は尋常じゃない。
これまでは彼女が決めたことだからと特に口出しすることは無かったが、せっかく学園に入学して学べる幅が広がったのに、俺に合わせて彼女の成長する機会を奪うの勿体無い。
それに、成長を何よりも大事に考えている俺にとって、人の成長する機会を奪うことは許容できるものではなかった。
「でも…」
「フィエラ。お前の気持ちは十分に理解しているが、自分の成長する機会を逃すな。お前が成長の歩みを止めた瞬間、俺はお前を容赦なく置いていく」
「エルは私の成長を望むの?成長すれば、もっと役に立てる?」
「それはお前次第だな。だか、使えるようなら俺から何かを言うことは無いだろうな」
「わかった」
「シュヴィーナも、俺やフィエラに合わせず気になる科目を受けろよ」
「わかったわ」
2人はそれぞれ真剣になって授業を選んでいき、それから30分ほどで授業選択が終了した。
「それじゃあ、みんなが選んだ授業の時間割は私がまとめて作るね!明後日にはみんなに配れると思うよ。そして、授業が始まるのは来週からだから、みんな初日から遅れないようにね!それじゃあ、今日はこれでおしまい!この後はみんなで自由に過ごしてもらっていいから、また明日会おうね~」
ライムが教室を出ていくと、周りの生徒たちは仲良くなった他の生徒と話をしたり、学園の探検に行く者たちなど様々だった。
「エル、帰る?」
「そうだな…」
「ルイス様。少しよろしいですか?」
この後の予定は特に何も無かったため帰ろうかと考えていた時、前からアイリスとソニアがやってくる。
「アイリス?なんだ」
「その…」
「ほら、頑張ってアイリス」
2人は入学試験の時に仲良くなったのか、入学後も2人で行動していることが多く、偶にその中にセフィリアも混ざっているようだった。
「あの、次の休日の歓迎会についてですが…」
「あぁ。それなら俺がエスコートするから。ただ、もしアイリスが嫌なら別でも構わないが」
「い、いえ!嫌だなんてどんでもないです!すごく嬉しいです!」
「そうか」
何がそんなに嬉しいのかは分からないが、アイリスは頬と耳を少しだけ赤く染めながら近くで見守っていたソニアの方を向くと、2人で何故か喜び合う。
「あ、そうだルイス。あたしもお願いがあるのだけど」
「なんだ?」
アイリスが落ち着くと、今度はソニアが俺の方を見て話しかけてきた。
「今度、帝都にある冒険者ギルドに連れて行ってほしいの」
「は?そんなのフィエラたちに頼めよ」
「最初はそのつもりだったけど、女の子だけでギルドに行くと男に絡まれて面倒でしょ?それに、フィエラたちは見ての通り可愛すぎるのよ。前も3人で街に出たらナンパばかりされたのよ?」
「つまり、俺に壁役になれと?」
「そうよ。それに、どうせあなたのことだから、近々ギルドに行くんでしょ?そのついでに連れてってくれればいいわ」
「そんなの他の男に頼めよ」
「いやよ。それで変な勘違いでもされて付き纏われたら面倒だもの」
(それ、お前が言うのかよ…)
俺のことを勝手に探ってここまでついてきた女の言葉とは思えない発言に、俺はこれ以上は何を言っても無駄だと判断して諦める。
「はぁ。時間があればな」
「やった!フィエラたちも、時間が合えば一緒に行きましょうね」
「ん。わかった」
「いいわよ」
急遽、予定が合う日にソニアと冒険者ギルドに行くことが決まったが、それ以外は特に変わったこともなく、アイリスと歓迎会でのことを軽く話し合ってから寮へと戻るのであった。
「ここが魔法研究の授業が行われられ教室だよ!中には危険な魔道具や貴重な研究資料も保管されていたりするから、ぜーったいに遊び半分で入っちゃだめだよ!
それに、この教室を管理している先生はものすごく怖いんだ。怒られた経験のある私が言うんだから、本当に怖いんだよ。みんなも気をつけるように!」
実体験付きで教えてくれるライムの話は妙な説得力があり、周りの生徒たちはゴクリと唾を飲む。
「あの時のことは思い出しただけでも…ぶるぶる」
ライムはそんな生徒たちの反応で調子に乗ったのか、態とらしく自身の体を抱きしめて震えて見せる。
「まぁ、勝手に入らなければ怒られないし、そもそも特殊な魔法で鍵が掛けられているから先生以外は開けられないんだけどね。さて!次の所へ行こうか!」
その後もライムの実体験付きの学園ツアーは続き、午前中の全ての時間を使って学園内の重要な箇所を見て回るのであった。
「本当にこの学園広すぎるわ」
学園案内が終わった後、予定通りお昼休憩になった俺たちは、Sクラスの特権の一つであり、Sクラス生だけが利用できる学園の敷地内にある小さな庭園で昼食を食べていた。
「ん。あれで全部じゃないのが驚き」
「ほんとよね。あんなにいろんな教室や施設があるけど、意味あるのかしら」
フィエラとシュヴィーナは歩き回って少し疲れたのか、いつもよりも遅いペースでお昼を食べていた。
「ミリア。この肉美味いな。味付けがちょうどいい」
「ありがとうございます」
俺はそんな2人を気にすることなく、ミリアが用意してくれた肉料理を食べるが、味付けも濃過ぎず、柔らかさも俺好みに調理されていて美味かった。
「エルは疲れてないの?」
「本当ね。全然疲れてる様子がないわ」
「母上の買い物に付き合う方が疲れるからな。あの程度なら問題ない」
フィエラたちはそうでも無いが、元来女性とは買い物にかかる時間が長いもので、母上も例に漏れずそうだった。
そんな母上の買い物に小さい頃から付き添ってきた俺にとって、この程度の移動であれば何も問題は無かった。
「あぁ。理解したわ」
フィエラとシュヴィーナも心当たりがあるのか、2人も納得したように頷くと、料理を食べ進めていく。
「そう言えば、次の休日の歓迎会についてだけれど…」
「エルはどうするの」
料理を食べ終えて食後の紅茶を飲んでいると、2人は歓迎会に誰をエスコートするのか気になるようで、真剣な表情で尋ねてきた。
「今回は婚約者としてアイリスと行くつもりだ」
「やっぱり」
「そうなのね…」
フィエラたちは俺の答えを予想していたようで、そこまで残念がる様子は見せなかったが、それでもやはり悔しいという感情はあるのか、手のひらを力強く握った。
「それは婚約者だから?それとも、エルがアイリスと行きたいから?」
「婚約者だからってのもあるが、今回は確かめたいことがあるんだ」
「確かめたいことって何かしら」
「それはお前らには関係のないことだ。気にするな」
2人は確かめたい事というのが気になったようだが、俺はそれ以上この事について話すつもりはなかったので席を立つと、ミリアに後のこと任せて教室へと戻るのであった。
教室に戻ってきた俺は食後の昼寝を堪能した後、ライムが配った授業選択について書かれた紙に目を通していた。
「みんな午前はお疲れさま!みんなお昼は何を食べたかな?私は楽しみにしていたお刺身が完売してて食べられなくて残念だったよ。でも、カレーっていうやつもすごく美味しかったから、今度みんなも食べてみてね!
それじゃあ、午後は予定通り授業の選択をしてもらうよ!
今みんなの目の前にある紙に書かれてあるのが、一年生が受けられる授業だよ。
右が選択科目で、左が必修科目。必修科目は違う日にちと時間に同じ科目が入っていて、そのどちらかを選んで受ければいいから、選択科目ともあまり被らないはずだよ。
それじゃあ、自分が将来やりたいことをしっかりと考えて、それに必要となる科目を選んでね。もし科目のことで分からないことがあれば、遠慮せず聞いてね!」
ライムの説明が終わると、他の生徒たちは渡された紙に目を通していき、何を受けるか真剣に考えていく。
「エルはどうするの?」
そんな中、俺はなるべく休みが連続で続くように必修科目を選ぶと、どうするべきか悩んでいたフィエラが話しかけてきた。
「俺は必修科目だけだ。それ以外は受けないよ」
「どうして?」
「単純に必要ないからだな。正直、この学園で俺が学ぶことはない。なら、最低限の授業だけを受けて、あとは冒険者として活動するつもりだ」
「なら、私も…」
「いや、お前はお前で受けたいものちゃんと受けろ。フィエラは俺に合わせ過ぎだ。そんなんじゃ大事な時に一人で何もできなくなる」
これは常々思っていたことだが、フィエラの俺に対する依存度は尋常じゃない。
これまでは彼女が決めたことだからと特に口出しすることは無かったが、せっかく学園に入学して学べる幅が広がったのに、俺に合わせて彼女の成長する機会を奪うの勿体無い。
それに、成長を何よりも大事に考えている俺にとって、人の成長する機会を奪うことは許容できるものではなかった。
「でも…」
「フィエラ。お前の気持ちは十分に理解しているが、自分の成長する機会を逃すな。お前が成長の歩みを止めた瞬間、俺はお前を容赦なく置いていく」
「エルは私の成長を望むの?成長すれば、もっと役に立てる?」
「それはお前次第だな。だか、使えるようなら俺から何かを言うことは無いだろうな」
「わかった」
「シュヴィーナも、俺やフィエラに合わせず気になる科目を受けろよ」
「わかったわ」
2人はそれぞれ真剣になって授業を選んでいき、それから30分ほどで授業選択が終了した。
「それじゃあ、みんなが選んだ授業の時間割は私がまとめて作るね!明後日にはみんなに配れると思うよ。そして、授業が始まるのは来週からだから、みんな初日から遅れないようにね!それじゃあ、今日はこれでおしまい!この後はみんなで自由に過ごしてもらっていいから、また明日会おうね~」
ライムが教室を出ていくと、周りの生徒たちは仲良くなった他の生徒と話をしたり、学園の探検に行く者たちなど様々だった。
「エル、帰る?」
「そうだな…」
「ルイス様。少しよろしいですか?」
この後の予定は特に何も無かったため帰ろうかと考えていた時、前からアイリスとソニアがやってくる。
「アイリス?なんだ」
「その…」
「ほら、頑張ってアイリス」
2人は入学試験の時に仲良くなったのか、入学後も2人で行動していることが多く、偶にその中にセフィリアも混ざっているようだった。
「あの、次の休日の歓迎会についてですが…」
「あぁ。それなら俺がエスコートするから。ただ、もしアイリスが嫌なら別でも構わないが」
「い、いえ!嫌だなんてどんでもないです!すごく嬉しいです!」
「そうか」
何がそんなに嬉しいのかは分からないが、アイリスは頬と耳を少しだけ赤く染めながら近くで見守っていたソニアの方を向くと、2人で何故か喜び合う。
「あ、そうだルイス。あたしもお願いがあるのだけど」
「なんだ?」
アイリスが落ち着くと、今度はソニアが俺の方を見て話しかけてきた。
「今度、帝都にある冒険者ギルドに連れて行ってほしいの」
「は?そんなのフィエラたちに頼めよ」
「最初はそのつもりだったけど、女の子だけでギルドに行くと男に絡まれて面倒でしょ?それに、フィエラたちは見ての通り可愛すぎるのよ。前も3人で街に出たらナンパばかりされたのよ?」
「つまり、俺に壁役になれと?」
「そうよ。それに、どうせあなたのことだから、近々ギルドに行くんでしょ?そのついでに連れてってくれればいいわ」
「そんなの他の男に頼めよ」
「いやよ。それで変な勘違いでもされて付き纏われたら面倒だもの」
(それ、お前が言うのかよ…)
俺のことを勝手に探ってここまでついてきた女の言葉とは思えない発言に、俺はこれ以上は何を言っても無駄だと判断して諦める。
「はぁ。時間があればな」
「やった!フィエラたちも、時間が合えば一緒に行きましょうね」
「ん。わかった」
「いいわよ」
急遽、予定が合う日にソニアと冒険者ギルドに行くことが決まったが、それ以外は特に変わったこともなく、アイリスと歓迎会でのことを軽く話し合ってから寮へと戻るのであった。
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