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冒険編
幕間 一周目
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これは、ルイスが死に戻りを知らなかった一周目の人生と、初めて死に戻りをした二周目、そして三周目で死ぬまでのお話である。
ルイス・ヴァレンタインは、我儘な子供だった。公爵家という皇族の次に高い身分に加え、両親から愛情を込めて育てられており、そのせいか彼は成長するにつれて少しずつ傲慢になっていった。
また、彼には秀でた武術と魔法の才能があり、周りが神童と褒め称えたことも一つの要因だった。
12歳になった時、そんなルイスにも春が訪れる。それは両親の紹介で初めて顔を合わせた婚約者で、名前はアイリス・ペステローズ。
ルイスは彼女に初めて会った時、思わず見惚れてしまい、この時初めて恋をした。
しかし、これまで我儘に育ってきたルイスには、人に優しく接するということが分からず、また初恋ということでどう接したら良いのかも分からなかった。
結果、ルイスはアイリスに対しても傲慢に振る舞ってしまい、まるで自分の召使のように接してしまった。
「アイリス!くるのが遅いぞ!」
「すみません!ルイス様!」
婚約をして一年が経った頃には、花が咲いたように笑っていたアイリスもこの時には疲れ切った表情でいることが多くなった。
アイリスは何度か婚約解消を考えたこともあったが、ルイスがそれを許さなかったのと、両親が友人と家族になれる事を喜んでいたのを知っていたため、この事を話すことができなかった。
さらにタチが悪いのは、ルイスは両親たちの前ではアイリスに対して普通に接していたため、ルイスやアイリスの両親が二人の関係に気づくことは無かったのだ。
そんな関係がさらに二年続き、ルイスたちが学園へと入学する年になる。
その日はルイスの我儘で、アイリスはルイスが屋敷を出る3日前にヴァレンタイン公爵家を訪れ、二人で一緒に学園へと向かっていた。
「いいか、アイリス。俺に恥をかかせるようなことはするなよ」
「はい」
この頃になると、ルイスはもはやこれが普通の関係だと錯覚してしまい、初恋でどう接したら良いのか分からなかった最初の頃と比べるとさらに酷いものへと変わっていた。
アイリスも、約三年の間ルイスに責められ続けたせいで心が疲れてしまい、今では昔の明るさなど見えないほどに暗い表情ばかりとなった。
この三年間で自我も自尊心もボロボロになった彼女は、ルイスに言われたことにだけ従う人形のようになった。
そして学園の入学式が終わり、ルイスとアイリスが2人で学園内を見て回るため歩いていた時、その事件は起きた。
「あっ…」
突然アイリスが何かに躓いたのかその場に座り込むと、足首を抑えながら立ちあがろうとしなかった。
「何をしている」
「す、すみません。どうやら足を挫いてしまったようで…」
アイリスは何とか立ちあがろうと努力するが、足の痛みが酷くて立ち上がることができなかった。
「うるさい!さっさと立て!こんなところで俺の婚約者が座り込むなど恥でしかない!早く立つんだ!」
「きゃあ!!」
ルイスはアイリスの腕を掴んで無理矢理立たせると、強引に腕を引いて歩き出そうとする。
「待ってください!」
すると、横から突然1人の青年が駆け寄り、その青年はルイスの腕を掴んでアイリスから引き離した。
「何だお前は!」
「彼女、足を痛めているんですよね!そんな無理に連れて行こうとするなんて酷すぎます!」
青年はそう言うと、ルイスの手から離れたアイリスを後ろに庇い、彼のことを正義感の満ちた瞳で睨み返す。
「はっ!アイリスは俺の婚約者だ!どう扱おうが俺の勝手だろう!平民ごときが俺に口出しするな!」
ルイスは苛立った様子でアイリスを取り返そうと腕を伸ばすが、青年はそんなルイスの腕を容赦なく払いのける。
「こんな状況で僕が平民だとかは関係ない!あなたがしていることは人としてあるまじき行為だ!彼女は僕が医務室へと連れて行きます!」
「おい!待て!」
青年はアイリスを支えながらルイスに背を向けると、そのまま医務室へと連れて行こうとするが、ルイスはそんな青年を呼び止める。
「何ですか。急いでいるんです」
「人の婚約者に勝手に触るな!」
「今はそんな事を言っている場合ではないでしょう!」
ルイスは自分の好きな人が他の男に触られたことが許せなくて、感情を抑えきれずに青年の肩を勢いよく掴む。
「俺と決闘しろ!今すぐにだ!」
「何を言っているですか!そんなことをしている場合ではないと言ったでしょう!」
「うるさい!それとも、平民ごときが俺からの決闘を断るというのか!!周りをよく見てみるんだな!!」
青年はそう言われて周りを見てみると、興味深そうにこちらを見ている貴族たちが何人もおり、ここで断れば学園で生活しづらくなるのは目に見えていた。
「くっ。わかり…ました。その決闘、お受けいたします」
「だ、だめです!ルイス様は神童と呼ばれる天才です。あなたでは…」
アイリスは自分を庇ってくれた青年を守るため決闘をやめるように言うが、青年はそんなアイリスを安心させるため笑いかける。
「大丈夫です。僕もそれなりに戦えますので、あなたのためにも何とか頑張ってみます」
「あ…」
アイリスは久しぶりに向けられた優しさに胸が温かくなり、それ以上の言葉が出てこなかった。
「訓練場の方に行くぞ!」
訓練場とは、実技の授業が行われる際に使用される場所で、他には授業が終わった後などに生徒たちが自主的に練習をするための場所でもある。
この場所は申請を行えば誰でも使用することができ、今回のように生徒間でトラブルがあった場合にも使うことができるのだ。
そして訓練場にやってきたルイスたちは、貸し出し用の刃を潰した剣を片手に握り、訓練場の中にある舞台の上で対峙する。
「ルールは簡単だ。どちらかのバッチが致命傷、または審判が続行不能と判断したら勝負終了。それでいいよな?」
「構いません」
この訓練場は特殊な作りをしており、胸につけたバッチがダメージを吸収し、一定のダメージを吸収すると自動的に舞台の外へと出される仕組みになっている。
「それでは、双方準備はよろしいですか?では…はじめ!」
訓練場を管理している教師に審判役をやってもらい、開始の合図と共にルイスが青年に向かって駆け出す。
「せやぁぁあ!!」
ルイスの剣技は確かに素晴らしいものであり、貴族レベルで見ればかなりレベルが高いと言える。
しかし、それはあくまでも型通りに剣を振る貴族の中だけであり、実戦で培った経験と技量で剣を振る青年には一切通用しなかった。
「くそっ!何故当たらない!!」
青年はルイスの攻撃をしっかりと目で捉え、型通りに攻撃してくるルイスの攻撃を軽く避けたり剣で捌いて防いでいく。
そして、ルイスの足元が疎かになった隙をついて足を引っ掛けると、彼は情けなくもそのまま地面に倒れてしまった。
「そこまで!勝負有りです!」
青年はその隙にルイスの首元に剣を当てると、決闘を見ていた審判役の教師が勝者を告げる。
「くそっ!くそくそくそ!!!!」
ルイスは負けたことが悔しくて地面を何度も殴るが、青年はすぐにアイリスのもとへと向かうと、2人は医務室の方へと消えていった。
「絶対に許さない。俺にこんな屈辱を…俺のアイリスに手を出したこと!絶対に許さないからな!!」
ルイスはその後、実技の授業や武闘大会、ダンジョンに挑む授業なので毎回あの青年に勝負を挑むが全て負けてしまい、さらには青年とアイリスの中を深めるだけとなってしまった。
さらに決定的だったのが、青年が聖剣に選ばれ勇者として認められたことだ。
勇者とは数百年に一度現れる聖剣に選ばれた者のことを言い、勇者が現れたということは国や大陸規模で禍が降りかかる予兆と言われている。
過去の歴史上ではSSS級魔物が多数出現したり、同じくSSS級ダンジョンの魔物暴走など、まさに世界が滅んでもおかしくない事件が何度か起きていた。
それらを防いできたのが過去の勇者たちであり、その仲間となった者たちが世界を救ってきたのだ。
そのため、勇者は各国の王や皇帝よりも重要な存在であり、この世界で勇者に意見を言えるのは神から信託を受ける聖女だけとなる。
青年がそんな勇者に選ばれたことでルイスの嫉妬心は抑えることができなくなり、学園2年の終わり頃、彼は勇者を殺すために飲み物に毒を入れたり、ダンジョンで罠に嵌めたりと様々なことをした。
しかし、聖剣の加護に守られた青年には何一つ通用することはなく、結局殺すことができず、アイリスや他の仲間たちとの中を深めるだけだった。
そして、最後に挑んだ決闘ではこれまで以上に青年とルイスの間で実力差が開いており、ルイスは呆気なく地面に跪かされた。
「あなたに僕は倒せません。諦めてください」
「うるさい!貴様が!貴様のせいで!」
「僕があなたに何をしたと言うんですか」
「俺からアイリスを奪ったじゃないか!」
「あなたはアイリスのことが嫌いだったのでは?だからいつも嫌がらせをして彼女を傷つけてきたのでしょう?」
「違う!俺はアイリスが好きだったんだ!アイリス!俺を助けろ!!」
「…ルイス様。私はあなたにされた全てのことが辛くて嫌でした。召使のように扱われ、人として扱ってもらえず、私の心はボロボロに傷付きました。
ですが、勇者様が私のことを助けてくれたのです。私は勇者様を愛しております。ですから、ルイス様をお助けすることはできません。私はもう、あなたには従いません!」
「くそっ!この!!」
ルイスはアイリスに言われた言葉が受け入れられず、隠し持っていた毒の塗られたナイフでアイリスを殺そうとするが、勇者によって手首を切り落とされて殺すことはできなかった。
「あぁぁぁあ!!!」
手首を切られたことで痛みから再び跪いたルイスに対し、勇者は軽蔑した瞳で彼を見下ろした。
「僕は絶対に悪をゆるしません。あなたはアイリスを殺そうとしました。よって、あなたは悪です。その命を持って償ってください。
ただ、最後に一つだけアドバイスを。あなたは間違えたのです。好きであったのなら、彼女には優しくするべきだった」
勇者はそう言って振り上げた剣をルイスの首目掛けて振り下ろすと、そのままルイスの首は切り落とされて場面に転がる。
(くそ。俺はただ、アイリスが好きだっただけなのに。俺は間違えてしまったのか…)
ルイスは消えゆく意識の中、最後まで何が間違っていたのかを考え続け、そしてその短い生涯を終えるのであった。
ルイス・ヴァレンタインは、我儘な子供だった。公爵家という皇族の次に高い身分に加え、両親から愛情を込めて育てられており、そのせいか彼は成長するにつれて少しずつ傲慢になっていった。
また、彼には秀でた武術と魔法の才能があり、周りが神童と褒め称えたことも一つの要因だった。
12歳になった時、そんなルイスにも春が訪れる。それは両親の紹介で初めて顔を合わせた婚約者で、名前はアイリス・ペステローズ。
ルイスは彼女に初めて会った時、思わず見惚れてしまい、この時初めて恋をした。
しかし、これまで我儘に育ってきたルイスには、人に優しく接するということが分からず、また初恋ということでどう接したら良いのかも分からなかった。
結果、ルイスはアイリスに対しても傲慢に振る舞ってしまい、まるで自分の召使のように接してしまった。
「アイリス!くるのが遅いぞ!」
「すみません!ルイス様!」
婚約をして一年が経った頃には、花が咲いたように笑っていたアイリスもこの時には疲れ切った表情でいることが多くなった。
アイリスは何度か婚約解消を考えたこともあったが、ルイスがそれを許さなかったのと、両親が友人と家族になれる事を喜んでいたのを知っていたため、この事を話すことができなかった。
さらにタチが悪いのは、ルイスは両親たちの前ではアイリスに対して普通に接していたため、ルイスやアイリスの両親が二人の関係に気づくことは無かったのだ。
そんな関係がさらに二年続き、ルイスたちが学園へと入学する年になる。
その日はルイスの我儘で、アイリスはルイスが屋敷を出る3日前にヴァレンタイン公爵家を訪れ、二人で一緒に学園へと向かっていた。
「いいか、アイリス。俺に恥をかかせるようなことはするなよ」
「はい」
この頃になると、ルイスはもはやこれが普通の関係だと錯覚してしまい、初恋でどう接したら良いのか分からなかった最初の頃と比べるとさらに酷いものへと変わっていた。
アイリスも、約三年の間ルイスに責められ続けたせいで心が疲れてしまい、今では昔の明るさなど見えないほどに暗い表情ばかりとなった。
この三年間で自我も自尊心もボロボロになった彼女は、ルイスに言われたことにだけ従う人形のようになった。
そして学園の入学式が終わり、ルイスとアイリスが2人で学園内を見て回るため歩いていた時、その事件は起きた。
「あっ…」
突然アイリスが何かに躓いたのかその場に座り込むと、足首を抑えながら立ちあがろうとしなかった。
「何をしている」
「す、すみません。どうやら足を挫いてしまったようで…」
アイリスは何とか立ちあがろうと努力するが、足の痛みが酷くて立ち上がることができなかった。
「うるさい!さっさと立て!こんなところで俺の婚約者が座り込むなど恥でしかない!早く立つんだ!」
「きゃあ!!」
ルイスはアイリスの腕を掴んで無理矢理立たせると、強引に腕を引いて歩き出そうとする。
「待ってください!」
すると、横から突然1人の青年が駆け寄り、その青年はルイスの腕を掴んでアイリスから引き離した。
「何だお前は!」
「彼女、足を痛めているんですよね!そんな無理に連れて行こうとするなんて酷すぎます!」
青年はそう言うと、ルイスの手から離れたアイリスを後ろに庇い、彼のことを正義感の満ちた瞳で睨み返す。
「はっ!アイリスは俺の婚約者だ!どう扱おうが俺の勝手だろう!平民ごときが俺に口出しするな!」
ルイスは苛立った様子でアイリスを取り返そうと腕を伸ばすが、青年はそんなルイスの腕を容赦なく払いのける。
「こんな状況で僕が平民だとかは関係ない!あなたがしていることは人としてあるまじき行為だ!彼女は僕が医務室へと連れて行きます!」
「おい!待て!」
青年はアイリスを支えながらルイスに背を向けると、そのまま医務室へと連れて行こうとするが、ルイスはそんな青年を呼び止める。
「何ですか。急いでいるんです」
「人の婚約者に勝手に触るな!」
「今はそんな事を言っている場合ではないでしょう!」
ルイスは自分の好きな人が他の男に触られたことが許せなくて、感情を抑えきれずに青年の肩を勢いよく掴む。
「俺と決闘しろ!今すぐにだ!」
「何を言っているですか!そんなことをしている場合ではないと言ったでしょう!」
「うるさい!それとも、平民ごときが俺からの決闘を断るというのか!!周りをよく見てみるんだな!!」
青年はそう言われて周りを見てみると、興味深そうにこちらを見ている貴族たちが何人もおり、ここで断れば学園で生活しづらくなるのは目に見えていた。
「くっ。わかり…ました。その決闘、お受けいたします」
「だ、だめです!ルイス様は神童と呼ばれる天才です。あなたでは…」
アイリスは自分を庇ってくれた青年を守るため決闘をやめるように言うが、青年はそんなアイリスを安心させるため笑いかける。
「大丈夫です。僕もそれなりに戦えますので、あなたのためにも何とか頑張ってみます」
「あ…」
アイリスは久しぶりに向けられた優しさに胸が温かくなり、それ以上の言葉が出てこなかった。
「訓練場の方に行くぞ!」
訓練場とは、実技の授業が行われる際に使用される場所で、他には授業が終わった後などに生徒たちが自主的に練習をするための場所でもある。
この場所は申請を行えば誰でも使用することができ、今回のように生徒間でトラブルがあった場合にも使うことができるのだ。
そして訓練場にやってきたルイスたちは、貸し出し用の刃を潰した剣を片手に握り、訓練場の中にある舞台の上で対峙する。
「ルールは簡単だ。どちらかのバッチが致命傷、または審判が続行不能と判断したら勝負終了。それでいいよな?」
「構いません」
この訓練場は特殊な作りをしており、胸につけたバッチがダメージを吸収し、一定のダメージを吸収すると自動的に舞台の外へと出される仕組みになっている。
「それでは、双方準備はよろしいですか?では…はじめ!」
訓練場を管理している教師に審判役をやってもらい、開始の合図と共にルイスが青年に向かって駆け出す。
「せやぁぁあ!!」
ルイスの剣技は確かに素晴らしいものであり、貴族レベルで見ればかなりレベルが高いと言える。
しかし、それはあくまでも型通りに剣を振る貴族の中だけであり、実戦で培った経験と技量で剣を振る青年には一切通用しなかった。
「くそっ!何故当たらない!!」
青年はルイスの攻撃をしっかりと目で捉え、型通りに攻撃してくるルイスの攻撃を軽く避けたり剣で捌いて防いでいく。
そして、ルイスの足元が疎かになった隙をついて足を引っ掛けると、彼は情けなくもそのまま地面に倒れてしまった。
「そこまで!勝負有りです!」
青年はその隙にルイスの首元に剣を当てると、決闘を見ていた審判役の教師が勝者を告げる。
「くそっ!くそくそくそ!!!!」
ルイスは負けたことが悔しくて地面を何度も殴るが、青年はすぐにアイリスのもとへと向かうと、2人は医務室の方へと消えていった。
「絶対に許さない。俺にこんな屈辱を…俺のアイリスに手を出したこと!絶対に許さないからな!!」
ルイスはその後、実技の授業や武闘大会、ダンジョンに挑む授業なので毎回あの青年に勝負を挑むが全て負けてしまい、さらには青年とアイリスの中を深めるだけとなってしまった。
さらに決定的だったのが、青年が聖剣に選ばれ勇者として認められたことだ。
勇者とは数百年に一度現れる聖剣に選ばれた者のことを言い、勇者が現れたということは国や大陸規模で禍が降りかかる予兆と言われている。
過去の歴史上ではSSS級魔物が多数出現したり、同じくSSS級ダンジョンの魔物暴走など、まさに世界が滅んでもおかしくない事件が何度か起きていた。
それらを防いできたのが過去の勇者たちであり、その仲間となった者たちが世界を救ってきたのだ。
そのため、勇者は各国の王や皇帝よりも重要な存在であり、この世界で勇者に意見を言えるのは神から信託を受ける聖女だけとなる。
青年がそんな勇者に選ばれたことでルイスの嫉妬心は抑えることができなくなり、学園2年の終わり頃、彼は勇者を殺すために飲み物に毒を入れたり、ダンジョンで罠に嵌めたりと様々なことをした。
しかし、聖剣の加護に守られた青年には何一つ通用することはなく、結局殺すことができず、アイリスや他の仲間たちとの中を深めるだけだった。
そして、最後に挑んだ決闘ではこれまで以上に青年とルイスの間で実力差が開いており、ルイスは呆気なく地面に跪かされた。
「あなたに僕は倒せません。諦めてください」
「うるさい!貴様が!貴様のせいで!」
「僕があなたに何をしたと言うんですか」
「俺からアイリスを奪ったじゃないか!」
「あなたはアイリスのことが嫌いだったのでは?だからいつも嫌がらせをして彼女を傷つけてきたのでしょう?」
「違う!俺はアイリスが好きだったんだ!アイリス!俺を助けろ!!」
「…ルイス様。私はあなたにされた全てのことが辛くて嫌でした。召使のように扱われ、人として扱ってもらえず、私の心はボロボロに傷付きました。
ですが、勇者様が私のことを助けてくれたのです。私は勇者様を愛しております。ですから、ルイス様をお助けすることはできません。私はもう、あなたには従いません!」
「くそっ!この!!」
ルイスはアイリスに言われた言葉が受け入れられず、隠し持っていた毒の塗られたナイフでアイリスを殺そうとするが、勇者によって手首を切り落とされて殺すことはできなかった。
「あぁぁぁあ!!!」
手首を切られたことで痛みから再び跪いたルイスに対し、勇者は軽蔑した瞳で彼を見下ろした。
「僕は絶対に悪をゆるしません。あなたはアイリスを殺そうとしました。よって、あなたは悪です。その命を持って償ってください。
ただ、最後に一つだけアドバイスを。あなたは間違えたのです。好きであったのなら、彼女には優しくするべきだった」
勇者はそう言って振り上げた剣をルイスの首目掛けて振り下ろすと、そのままルイスの首は切り落とされて場面に転がる。
(くそ。俺はただ、アイリスが好きだっただけなのに。俺は間違えてしまったのか…)
ルイスは消えゆく意識の中、最後まで何が間違っていたのかを考え続け、そしてその短い生涯を終えるのであった。
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