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冒険編
プロポーズ
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シュヴィーナの父親であるペイルと一緒に現れたライアンと呼ばれた男は、突然シュヴィーナの前に膝をつくと彼女の手を取り、その手にキスをする。
そして、驚いた様子のシュヴィーナに下から覗き込むように笑顔で何かを検討してほしいと言い始めた。
「あの、ライアン様。あのお話とはいったい?」
「おや?まだ聞いていなかったのかい?父上もここに来ていると聞いたから、てっきりあの話をしに来たのかと思ったよ」
「ライアン。その話はまだしていない。それに、いくら親戚だからといっていきなり人様の家に入るのはよくないだろう」
「父上!これは失礼いたしました」
ライアンに父上と呼ばれているのはケイリーで、彼はどうやらケイリーの息子であり、この国の王子ということになるようだ。
(なんかめんどくさそうだな)
俺は最大限に気配を消してじっと様子を見ていると、ライアンが何やら一世一代の覚悟を決めたような表情へと変わり、シュヴィーナの方へと目を向ける。
「シュヴィーナ。まだ話を聞いていないのなら改めて言うよ。実は君の両親や僕の両親にはもう話しているんだが、どうか僕と結婚してくれないだろうか!」
「…え?」
(おぉ、プロポーズだ)
まさか目の前で人のプロポーズを見せられるとは思ってもいなかったので、俺は思わず驚いてしまった。
ライアンの年齢がいくつなのかは分からないが、エルフは長命種であり、だいたい500年ほど生きる。そのため結婚に対してはあまり年齢差を気にしない人たちが多いのだ。
もちろん幼すぎればあれだが、その時は相手がある程度大人になるまで待つのは割とよくあることだし、シュヴィーナももう直ぐ14になるはずなので、あと数年後には結婚しても問題は無いだろう。
プロポーズをされた当のシュヴィーナは、突然のことに戸惑っているのか、驚いた表情のまま動かなくなってしまった。
「突然のことでシュヴィーナが驚いているのもわかる。だが僕は本気なんだ!幼い頃から君のことを見ていて、君がこの国を出て旅に行ってしまったあの日、僕はいつも近くにいた君がいなくなった事で自分の気持ちに気がついた。
僕たちには確かに歳の差があるし、それに従兄という関係ではあるけれど、僕は君が好きなんだ!君が大人になるまではもちろん待つ。だがら、大人になったら僕と結婚してもらえないだろうか!」
ライアンの熱烈なプロポーズに対して、ケイリーは何故か頭を抱えており、シュヴィーナの両親は彼女がどう返事をするのか様子を見ているようだった。
そして、シュヴィーナは…
「いや、あの…」
どう返事をしたら良いのか戸惑いながら、何故か俺の方をチラッと見てくる。
もちろん彼女の正面にいるライアンがそんな彼女の視線の動きに気づかないはずもなく、彼もそれに合わせて俺の方を見るわけで…
(なんでこっちを見るんだよ)
「…君は誰かな」
すると、ようやく俺たちの存在に気がついた彼は、まるで俺のことを親の仇でも見るように睨んできた。
「フィエラ、聞かれてるぞ」
「ん。私はフィエラ。シュヴィーナとパーティーを組んでる」
俺に話を振られたフィエラは、素直に名前を名乗ると、シュヴィーナとの関係も簡単に説明した。
「そうか。フィエラさんだね。それで?もう1人の君は?」
ライアンはフィエラが名乗っている間も彼女の方へと視線を向けることは無く、ずっと俺のことを睨んでいた。
「…俺はエイル。フィエラと同じだ」
「そうか。なら、シュヴィーナとの関係は?」
「同じだと言っただろ。パーティーを組んでいるだけだ」
「彼が言っていることは本当かい?シュヴィーナ」
ライアンは俺の言葉を聞くと、次は確認のためシュヴィーナへと問いかける。
「ほ、本当よ。彼とは何も無いわ」
シュヴィーナは口ではそう言うが、少し残念そうな表情で俺のことを見ると、今度は床の方へと視線を向ける。
「なら、今ここで返事を…」
「ライアン、そこまでだ。今は重要な話をしている最中なのだ。すまないがその話はまた今度にしてくれ」
すると、この様子をずっと静観していたケイリーが返事を急かそうとするライアンの言葉を遮り、この話を終わらせようとする。
「父上…わかりました。シュヴィーナ、返事はまた今度聞きにくるよ。今日はこれで失礼するね。急に来てすまなかった」
ライアンはそう言うと、ずっと握っていたシュヴィーナの手を離し、その場から立ち上がって扉の方へと向かっていき、何事もなかったかのように家から出て行った。
(はぁ。やっぱりめんどうだ)
しかし、俺はそんな彼が最後にこちらを見た瞬間を見逃さず、その瞳に明確な敵意が込められていたことにも気がついていた。
「あの王子、エルに嫉妬してる」
「知ってるよ。全く、俺にその気は無いのに本当に迷惑だな。しかも、ああいうやつが一番タチが悪いから余計に最悪だ。いっそどこかの馬鹿王子みたいに欲望に素直な方がやりやすかったのにな」
俺にはシュヴィーナに対して恋愛感情なんてものは無いし、素直にただパーティーを組んでいるだけだと説明したのに、どうやらあの男は俺のことを恋敵だとでも思ったようだ。
しかもファルメルの馬鹿王子とは違い、ライアンは冷静に動くタイプのようで、見た感じシュヴィーナに対する愛情もかなり重いもののように見えた。
そういうやつは表立って何かをしてくることはまず無いため、すぐに片付けることも難しいので本当に面倒なのだ。
「はぁ、むしろ結婚したいなら勝手にしてくれれば良いんだよ。なんで俺が巻き込まれるんだ」
「仕方ない。シュヴィにも選ぶ権利はあるし、彼女にも感情はあるから」
フィエラと小声で話をしながら、俺はこの国に来たことを少し後悔し始めるが、とりあえず手を出されてから始末すれば良いかと判断し、ケイリーたちの方へと意識を向ける。
「シュヴィーナ、ライアンが言っていたことは確かに事実だが気にすることはないぞ。
お前はまだ子供なのだから、好いた相手ができたらその人と結ばれるのが一番良いさ。
それがライアンであるならあいつとでも良いし、他に出来たのならその人と結ばれるよう頑張るのも良い。
お前の人生だ。お前の好きなように生きなさい。お前の両親もきっと同じ気持ちだ」
「ケイリーさん…」
シュヴィーナはケイリーのことを一度見ると、次に自分の両親へと目をやる。
すると、2人も彼女に向かって頷いたり微笑んだりしており、彼らもシュヴィーナの好きなようにして良いと言っているようだった。
そんな彼らを見て俺は…
(なんだこの状況)
思わず冷めた感情で彼らの様子を眺めていた。
確かにシュヴィーナの人生なので好きにしてもらうのは良い事だし、それを周りが認めるのもすごく良いことだと思う。
だが、それに全く関係無いはずの俺がライアンに敵視され、しかも先ほどまでヒュドラという国にとって大事な話をしていたにも関わらず、いつの間にかシュヴィーナの人生についての話になっているこの状況に思わず呆れてしまう。
「あの、シュヴィーナの今後の話は後にしてもらって、とりあえずヒュドラについての話を終わらせませんか?」
俺がそう言うと、ケイリーたちはすっかりヒュドラのことを忘れていたのか、言われて思い出したかのように一つ咳払いをする。
「すまない。それで、どこまで話しただろうか?」
「俺がヒュドラを倒しに行くってところまでです。そこであの男が入ってきたんですよ。
てか、面倒なんでもう良いですよね?あなたたちでは倒せないでしょうし、それにさっきも言った通り俺だけで倒せればあなたたちに被害は無いわけで、任せてもらえますよね?」
ライアンのせいで機嫌が悪くなった俺は、傲慢な態度で強引に話を決めにいく。
「それは些か我々を舐めすぎというものではないかね?君がどれだけ強いのかは知らないが、ヒュドラを君だけで倒すのはやはり無理だ」
「チッ。めんどくせぇ」
俺はシュヴィーナの家のみを結界魔法で何重にも覆い外に魔力が漏れ出ないようにすると、この部屋の中だけを俺の濃密な魔力で一気に満たす。
「くっ?!な、何というか魔力の密度だ!」
「こ、呼吸が…」
ケイリーはあまりの魔力の濃さに大量の冷や汗を流し、ペイルは片膝を付いて息苦しそうにする。
「エイルさん、そこまでです。あなたの強さは十分に理解しました。なのでその魔力を抑えてください」
しかし、セシルは俺の魔力を受けても平然とした様子で立っており、俺に魔力を抑えるよう言ってくる。
「…わかりました。セシルさんに免じてこれ以上はやめておきましょう」
俺が魔力を抑えると、ケイリーは大きく息を吐き、ペイルはシュヴィーナに背中を摩られながらゆっくりと呼吸を整える。
「エイルさん。先ほども申しましたが、あなたが強いことは理解しました。
おそらくエルフの戦士たちが束になって挑んだとしても、彼らに勝ち目は無い。
それに、ヒュドラの討伐に同行させたとしても足手まといになるだけでしょう」
「どうでしょうね。もしその戦士の中にセシルさんがいたら、今の俺では勝てないかもしれませんよ?」
「ふふ。私はただの母親なので戦闘には参加しませんよ?ですが、この子を害するというのなら全力でお相手することになりますが」
俺とセシルはしばらく黙って視線を合わせた後、どちらからとも無く視線を外し、セシルがヒュドラの討伐についての話をする。
「ヒュドラの件ですが、さすがにすぐに許可を出すことはできません。ケイリーさんも他の人と話す必要があるでしょうし、しばらく待ってもらえますか?」
「いいですよ。なら、討伐はしませんが偵察くらいは許してくれますよね?そこが妥協点です」
「わかりました。偵察については許可しましょう。いいですね、ケイリーさん?」
「あ、あぁ」
「ありがとうございます」
その後、俺たちはいつ偵察に行くかなどを話し合ったあと、この国にいる間はシュヴィーナの家に泊まって良いということで、その日は夕食を食べたあと与えられた部屋で休むのであった。
そして、驚いた様子のシュヴィーナに下から覗き込むように笑顔で何かを検討してほしいと言い始めた。
「あの、ライアン様。あのお話とはいったい?」
「おや?まだ聞いていなかったのかい?父上もここに来ていると聞いたから、てっきりあの話をしに来たのかと思ったよ」
「ライアン。その話はまだしていない。それに、いくら親戚だからといっていきなり人様の家に入るのはよくないだろう」
「父上!これは失礼いたしました」
ライアンに父上と呼ばれているのはケイリーで、彼はどうやらケイリーの息子であり、この国の王子ということになるようだ。
(なんかめんどくさそうだな)
俺は最大限に気配を消してじっと様子を見ていると、ライアンが何やら一世一代の覚悟を決めたような表情へと変わり、シュヴィーナの方へと目を向ける。
「シュヴィーナ。まだ話を聞いていないのなら改めて言うよ。実は君の両親や僕の両親にはもう話しているんだが、どうか僕と結婚してくれないだろうか!」
「…え?」
(おぉ、プロポーズだ)
まさか目の前で人のプロポーズを見せられるとは思ってもいなかったので、俺は思わず驚いてしまった。
ライアンの年齢がいくつなのかは分からないが、エルフは長命種であり、だいたい500年ほど生きる。そのため結婚に対してはあまり年齢差を気にしない人たちが多いのだ。
もちろん幼すぎればあれだが、その時は相手がある程度大人になるまで待つのは割とよくあることだし、シュヴィーナももう直ぐ14になるはずなので、あと数年後には結婚しても問題は無いだろう。
プロポーズをされた当のシュヴィーナは、突然のことに戸惑っているのか、驚いた表情のまま動かなくなってしまった。
「突然のことでシュヴィーナが驚いているのもわかる。だが僕は本気なんだ!幼い頃から君のことを見ていて、君がこの国を出て旅に行ってしまったあの日、僕はいつも近くにいた君がいなくなった事で自分の気持ちに気がついた。
僕たちには確かに歳の差があるし、それに従兄という関係ではあるけれど、僕は君が好きなんだ!君が大人になるまではもちろん待つ。だがら、大人になったら僕と結婚してもらえないだろうか!」
ライアンの熱烈なプロポーズに対して、ケイリーは何故か頭を抱えており、シュヴィーナの両親は彼女がどう返事をするのか様子を見ているようだった。
そして、シュヴィーナは…
「いや、あの…」
どう返事をしたら良いのか戸惑いながら、何故か俺の方をチラッと見てくる。
もちろん彼女の正面にいるライアンがそんな彼女の視線の動きに気づかないはずもなく、彼もそれに合わせて俺の方を見るわけで…
(なんでこっちを見るんだよ)
「…君は誰かな」
すると、ようやく俺たちの存在に気がついた彼は、まるで俺のことを親の仇でも見るように睨んできた。
「フィエラ、聞かれてるぞ」
「ん。私はフィエラ。シュヴィーナとパーティーを組んでる」
俺に話を振られたフィエラは、素直に名前を名乗ると、シュヴィーナとの関係も簡単に説明した。
「そうか。フィエラさんだね。それで?もう1人の君は?」
ライアンはフィエラが名乗っている間も彼女の方へと視線を向けることは無く、ずっと俺のことを睨んでいた。
「…俺はエイル。フィエラと同じだ」
「そうか。なら、シュヴィーナとの関係は?」
「同じだと言っただろ。パーティーを組んでいるだけだ」
「彼が言っていることは本当かい?シュヴィーナ」
ライアンは俺の言葉を聞くと、次は確認のためシュヴィーナへと問いかける。
「ほ、本当よ。彼とは何も無いわ」
シュヴィーナは口ではそう言うが、少し残念そうな表情で俺のことを見ると、今度は床の方へと視線を向ける。
「なら、今ここで返事を…」
「ライアン、そこまでだ。今は重要な話をしている最中なのだ。すまないがその話はまた今度にしてくれ」
すると、この様子をずっと静観していたケイリーが返事を急かそうとするライアンの言葉を遮り、この話を終わらせようとする。
「父上…わかりました。シュヴィーナ、返事はまた今度聞きにくるよ。今日はこれで失礼するね。急に来てすまなかった」
ライアンはそう言うと、ずっと握っていたシュヴィーナの手を離し、その場から立ち上がって扉の方へと向かっていき、何事もなかったかのように家から出て行った。
(はぁ。やっぱりめんどうだ)
しかし、俺はそんな彼が最後にこちらを見た瞬間を見逃さず、その瞳に明確な敵意が込められていたことにも気がついていた。
「あの王子、エルに嫉妬してる」
「知ってるよ。全く、俺にその気は無いのに本当に迷惑だな。しかも、ああいうやつが一番タチが悪いから余計に最悪だ。いっそどこかの馬鹿王子みたいに欲望に素直な方がやりやすかったのにな」
俺にはシュヴィーナに対して恋愛感情なんてものは無いし、素直にただパーティーを組んでいるだけだと説明したのに、どうやらあの男は俺のことを恋敵だとでも思ったようだ。
しかもファルメルの馬鹿王子とは違い、ライアンは冷静に動くタイプのようで、見た感じシュヴィーナに対する愛情もかなり重いもののように見えた。
そういうやつは表立って何かをしてくることはまず無いため、すぐに片付けることも難しいので本当に面倒なのだ。
「はぁ、むしろ結婚したいなら勝手にしてくれれば良いんだよ。なんで俺が巻き込まれるんだ」
「仕方ない。シュヴィにも選ぶ権利はあるし、彼女にも感情はあるから」
フィエラと小声で話をしながら、俺はこの国に来たことを少し後悔し始めるが、とりあえず手を出されてから始末すれば良いかと判断し、ケイリーたちの方へと意識を向ける。
「シュヴィーナ、ライアンが言っていたことは確かに事実だが気にすることはないぞ。
お前はまだ子供なのだから、好いた相手ができたらその人と結ばれるのが一番良いさ。
それがライアンであるならあいつとでも良いし、他に出来たのならその人と結ばれるよう頑張るのも良い。
お前の人生だ。お前の好きなように生きなさい。お前の両親もきっと同じ気持ちだ」
「ケイリーさん…」
シュヴィーナはケイリーのことを一度見ると、次に自分の両親へと目をやる。
すると、2人も彼女に向かって頷いたり微笑んだりしており、彼らもシュヴィーナの好きなようにして良いと言っているようだった。
そんな彼らを見て俺は…
(なんだこの状況)
思わず冷めた感情で彼らの様子を眺めていた。
確かにシュヴィーナの人生なので好きにしてもらうのは良い事だし、それを周りが認めるのもすごく良いことだと思う。
だが、それに全く関係無いはずの俺がライアンに敵視され、しかも先ほどまでヒュドラという国にとって大事な話をしていたにも関わらず、いつの間にかシュヴィーナの人生についての話になっているこの状況に思わず呆れてしまう。
「あの、シュヴィーナの今後の話は後にしてもらって、とりあえずヒュドラについての話を終わらせませんか?」
俺がそう言うと、ケイリーたちはすっかりヒュドラのことを忘れていたのか、言われて思い出したかのように一つ咳払いをする。
「すまない。それで、どこまで話しただろうか?」
「俺がヒュドラを倒しに行くってところまでです。そこであの男が入ってきたんですよ。
てか、面倒なんでもう良いですよね?あなたたちでは倒せないでしょうし、それにさっきも言った通り俺だけで倒せればあなたたちに被害は無いわけで、任せてもらえますよね?」
ライアンのせいで機嫌が悪くなった俺は、傲慢な態度で強引に話を決めにいく。
「それは些か我々を舐めすぎというものではないかね?君がどれだけ強いのかは知らないが、ヒュドラを君だけで倒すのはやはり無理だ」
「チッ。めんどくせぇ」
俺はシュヴィーナの家のみを結界魔法で何重にも覆い外に魔力が漏れ出ないようにすると、この部屋の中だけを俺の濃密な魔力で一気に満たす。
「くっ?!な、何というか魔力の密度だ!」
「こ、呼吸が…」
ケイリーはあまりの魔力の濃さに大量の冷や汗を流し、ペイルは片膝を付いて息苦しそうにする。
「エイルさん、そこまでです。あなたの強さは十分に理解しました。なのでその魔力を抑えてください」
しかし、セシルは俺の魔力を受けても平然とした様子で立っており、俺に魔力を抑えるよう言ってくる。
「…わかりました。セシルさんに免じてこれ以上はやめておきましょう」
俺が魔力を抑えると、ケイリーは大きく息を吐き、ペイルはシュヴィーナに背中を摩られながらゆっくりと呼吸を整える。
「エイルさん。先ほども申しましたが、あなたが強いことは理解しました。
おそらくエルフの戦士たちが束になって挑んだとしても、彼らに勝ち目は無い。
それに、ヒュドラの討伐に同行させたとしても足手まといになるだけでしょう」
「どうでしょうね。もしその戦士の中にセシルさんがいたら、今の俺では勝てないかもしれませんよ?」
「ふふ。私はただの母親なので戦闘には参加しませんよ?ですが、この子を害するというのなら全力でお相手することになりますが」
俺とセシルはしばらく黙って視線を合わせた後、どちらからとも無く視線を外し、セシルがヒュドラの討伐についての話をする。
「ヒュドラの件ですが、さすがにすぐに許可を出すことはできません。ケイリーさんも他の人と話す必要があるでしょうし、しばらく待ってもらえますか?」
「いいですよ。なら、討伐はしませんが偵察くらいは許してくれますよね?そこが妥協点です」
「わかりました。偵察については許可しましょう。いいですね、ケイリーさん?」
「あ、あぁ」
「ありがとうございます」
その後、俺たちはいつ偵察に行くかなどを話し合ったあと、この国にいる間はシュヴィーナの家に泊まって良いということで、その日は夕食を食べたあと与えられた部屋で休むのであった。
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