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冒険編
課題
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ルイスが魔力器官を求めて魔物を探し始めた頃、フィエラとシュヴィーナも出された課題を達成するために行動を開始する。
まずはランクを上げるために湾岸都市ミネルバへと戻り、冒険者ギルドで手頃な依頼はないかと依頼掲示板を見てみる。
「シュヴィーナはCランクだっけ?」
「えぇ。もう少しでBランクへの昇格試験に挑戦できるわ」
「わかった。なら魔物の討伐を中心に依頼を受けよう」
フィエラはそう言うと、ウルフ系の魔物やオークなどの討伐依頼を手に取り、受付嬢に手続きをしてもらう。
手続きが済むと、街から少し離れたところにある森で依頼を受けた魔物を速やかに討伐し、討伐証明の部位をマジックバッグへとしまった。
「フィエラ、闘気の練習はどうするの?」
「まだ無理。シュヴィの実力が闘気を使えるレベルになってない。まずは弓の技術を上げる」
「わかったわ」
闘気はある一定のレベルまで武術を極めると、体内にコアと呼ばれるエネルギーの塊ができ、そのコアからエネルギーを体に巡らせることで闘気として使用することができるようになる。
しかし、現段階でシュヴィーナの弓の技量は多少良い程度で、とても闘気を使えるレベルではなかった。
そのため、フィエラはまずシュヴィーナの弓の技量を上がることから始め、コアが形成された後に闘気の使い方を教えることにした。
それから2ヶ月間。シュヴィーナのランクを上げつつ弓の使い方を鍛えさせた結果、ようやくシュヴィーナの体内にエネルギーの塊ができ、コアが形成される。
「シュヴィ。今日から闘気の訓練を始める」
「よ、ようやくなのね」
シュヴィーナは2ヶ月の間、ランクはBランクへと昇格し、あと少しでAランクになれるところまで来ていた。
しかし、なかなかフィエラから闘気の練習に入る事を伝えられず、内心かなり焦っていたのだ。
「最初は何をしたら良いのかしら」
「まずはそこに座って」
現在は魔物討伐の依頼を受けた後で、何も無い森の中、シュヴィーナは指示された通り地面へと座る。
「次に目を閉じて」
「わかったわ」
フィエラに言われた通り目を閉じて次の指示を待つシュヴィーナは、早く闘気が使いたくてウズウズしていた。
「体の内側に意識を向けると闘気を使うための力の塊みたいなのがあるはずだから、それからパッと力を取って、グルグルする。そしたら闘気が使える」
「…パッ?グルグル?ほ、他に何かやる事は?」
「ない」
フィエラはそう言うと、本当にこれ以上伝えることがないのかじっとシュヴィーナのことを見ていた。
(ど、どういうことかしら。パッ?グルグル?分からないわ)
シュヴィーナがフィエラの説明を理解できなかったのも当然で、エルフは魔法を使う時に何故そうなるのかというその現象が起きる理由について考え、順序を立てて理論的に魔法を理解し使用する。
それに対してフィエラは、獣人族という五感に優れた種族的特徴により、大体のことは自身の感覚に従って出来てしまう。
それに、これまでずっと一緒にいたルイスにはいつも教えられる側であり、人に教えるという経験が全くなかった。
また、何でも出来てしまうルイスばかりを見てきたフィエラは、他の人もそんなものだろうという勘違いをしてしまっているのだ。
(とりあえず、言われたようにやってみましょう)
考えるだけでは何も進まないと判断したシュヴィーナは、まずは言われた通りに目を閉じて自身の内側に意識を向ける。
(確か、どこかに力の塊があるって言っていたけれど)
しかし、言われた通りに集中してみるが、いくら体内に意識を向けても、なかなかそれらしいものが見つけられず時間だけが経過して行く。
「シュヴィ。今日はもう帰ろう」
フィエラに声をかけられて目を開けたシュヴィーナは、日が沈みかけて空がオレンジ色になっていることに気がつく。
「わかったわ」
「大丈夫。まだ時間はあるから焦らずにやっていこう」
上手く行かずに落ち込んでいるシュヴィーナに、フィエラは優しく声をかけると、2人はミネルバの街へと帰るのであった。
それから一週間。魔物討伐の依頼を受けては森の中で闘気の訓練をする生活をしていた2人だったが、シュヴィーナはいまだ闘気のコアを見つけることが出来ずにいた。
というより、闘気のコアがそもそもどんな物なのかも分かっておらず、コアを見つけることに苦戦しているのだ。
「シュヴィ。そろそろサファリィに移動しよう」
「もう?」
「ん。この街でできる事はもう無いし、サファリィで依頼を受けながら訓練を続けよう」
「わかったわ」
これはフィエラなりの気遣いで、ずっと同じところで訓練するよりも、別のところでやった方が気分転換にもなるだろうと判断してのことだった。
翌日は必要なものを揃えるため休みにし、二日後にフィエラたちはミネルバを離れた。
ミネルバからサファリィまでは6日ほどかかるため、2人は野宿をしながらその間も闘気を使うための訓練を続ける。
「シュヴィ。ご飯は私が作るから、シュヴィは野営の準備をお願い」
「任せてちょうだい」
フィエラはマジックバッグから肉や野菜を取り出して調理をし、シュヴィーナはテントを張ったり魔物除けの魔道具を置いたりして夜に休めるよう準備をして行く。
それから少しして、美味しそうな匂いが風に乗ってシュヴィーナの鼻に届き、夜ご飯がとても楽しみになる。
「シュヴィ。できた」
「ありがとう。今行くわね」
テントなどを張り終えたシュヴィーナがフィエラの方へ向かうと、器に盛られたスープと串焼きのお肉が用意されていた。
「美味しそうね」
「ん。頑張った。早く食べよう」
フィエラはよほどお腹が空いていたのか、シュヴィーナが座ったのを確認するとすぐに食事を始める。
シュヴィーナ自身もかなりお腹が空いていたので、スープの入った器を手に取りスプーンで掬って口に含む。
「んぐっ!?!!」
しかし口に入れた瞬間、言葉には表しようのない風味が口一杯に広がり、思わず吐き出してしまいそうになるが何とか堪える。
(な、なんなのこの味は!匂いは普通なのに、味がとても酷いわ!!)
シュヴィーナはフィエラがこの料理に何も感じていないのか気になって彼女を見てみるが、フィエラは満足そうにスープと串焼きのお肉を食べ進めていく。
(私のがおかしいのかしら。それとも彼女の味覚がおかしいの?)
この時、偶然にも初めてフィエラの料理を食べた時の感想が、ルイスとシュヴィーナで完全に一致するのであった。
「ねぇ、フィエラ。エイルにも料理を作った事はあるの?」
「ん?ある。2人で旅に出た初日は私が作った。その時はエルも普通に食べてくれたけど、次の日からはエルが作ってくれてたから、私の料理を食べたのはシュヴィが3人目」
「3人目?」
「ん。最初はお父さん。何故か次の日からは食べてくれなくなったけど」
どうやら2人もフィエラの料理を食べて自分と同じ感想だったことを悟ると、明日からは自分が作ることを彼女に伝えた。
フィエラは自分も作りたそうにしていたが、このまま彼女に任せていると大変なことになりそうだったので何とか説得した。
その次の日からは、サファリィに向かいながらも闘気の訓練を続け、ミネルバを出てから5日目にしてようやくコアらしきものを感じ取ることが出来た。
「フィエラ。力の塊みたいなのを見つけたわ」
「わかった。そしたら、それから力をギュッてして、パッとした後にグルグルする」
相変わらずフィエラの説明は全く分からないが、とりあえず何とか独自で頑張ろうと思いその力の塊に色々と試してみる。
しかし、何をしても闘気らしきものを使用する事はできず、またどうしたら良いのか分からなくなる。
何も解決しないまま翌日にはサファリィへと到着し、宿を取った2人はその日はそのまま休むことにした。
そしてさらに次の日、依頼を受けるために冒険者ギルドへと向かうと、Aランクになるために依頼を見て行く。
ちょうど良さそうな依頼を見つけたので、その依頼を受けようとしたその時…
「やぁ!お嬢さんたち!女の子たちで依頼を受けるのかい?危ないから俺らと一緒に依頼を受けようや!」
何やら後ろから声をかけられた気がしたのでシュヴィーナは後ろを振り向くが、フィエラは無視して受付に向かおうとする。
シュヴィーナはどうしたら良いのか分からず視線を彷徨わせるが、彼女も無視してフィエラに続いた。
「おい!まてや!」
しかし、完全に無視されたことで怒った男は、あろうことかフィエラの肩を掴もうとする。
フィエラはそれを見ることもなく避けると、右手だけ部分獣化させて鋭くなった爪を首筋に当てる。
「汚いから触るな。私に触っていいのはエルだけ。次に触ろうとしたら殺す」
ルイス以外の男に自身を触らせることを一切嫌うフィエラは、触ろうとした男だけに殺気を放って脅す。
男はあまりの殺気に怖気付き、失禁してガクガクと震えながら頷いた。
その後、依頼を受けてギルドを出ると、ずっと黙っていたシュヴィーナがフィエラに声をかける。
「その…さっきのはやりすぎじゃないかしら」
親切心で声をかけた訳ではないにしても、あそこまで脅す必要はあったのかと疑問に思うシュヴィーナは思わずそのことを尋ねる。
「甘くしたらまた同じことをしてくるかもしれない。さらに仲間を集めて大人数で襲ってくるかもしれない。そうなったら面倒。それに…」
「それに?」
「エルが容赦するなって言ってた。格の違いをしっかりと見せつけろって」
フィエラは基本的にルイスの考えや指示に従うため、彼が言ったのなら仕方がないかとシュヴィーナは理解する。
それからはサファリィの街で依頼を受けながら闘気の訓練も欠かさず行うが、Aランクには昇格できても闘気だけは一向に使用することが出来ず時間だけが経過していく。
日に日に表情が暗くなって行くシュヴィーナのことを気遣って色々と声をかけるが、シュヴィーナは元気なく笑うだけで状況が良くなる事は無かった。
そして、結局そのままルイスと約束した3ヶ月が経ち、彼女は最後まで闘気を使うことが出来ないのであった。
まずはランクを上げるために湾岸都市ミネルバへと戻り、冒険者ギルドで手頃な依頼はないかと依頼掲示板を見てみる。
「シュヴィーナはCランクだっけ?」
「えぇ。もう少しでBランクへの昇格試験に挑戦できるわ」
「わかった。なら魔物の討伐を中心に依頼を受けよう」
フィエラはそう言うと、ウルフ系の魔物やオークなどの討伐依頼を手に取り、受付嬢に手続きをしてもらう。
手続きが済むと、街から少し離れたところにある森で依頼を受けた魔物を速やかに討伐し、討伐証明の部位をマジックバッグへとしまった。
「フィエラ、闘気の練習はどうするの?」
「まだ無理。シュヴィの実力が闘気を使えるレベルになってない。まずは弓の技術を上げる」
「わかったわ」
闘気はある一定のレベルまで武術を極めると、体内にコアと呼ばれるエネルギーの塊ができ、そのコアからエネルギーを体に巡らせることで闘気として使用することができるようになる。
しかし、現段階でシュヴィーナの弓の技量は多少良い程度で、とても闘気を使えるレベルではなかった。
そのため、フィエラはまずシュヴィーナの弓の技量を上がることから始め、コアが形成された後に闘気の使い方を教えることにした。
それから2ヶ月間。シュヴィーナのランクを上げつつ弓の使い方を鍛えさせた結果、ようやくシュヴィーナの体内にエネルギーの塊ができ、コアが形成される。
「シュヴィ。今日から闘気の訓練を始める」
「よ、ようやくなのね」
シュヴィーナは2ヶ月の間、ランクはBランクへと昇格し、あと少しでAランクになれるところまで来ていた。
しかし、なかなかフィエラから闘気の練習に入る事を伝えられず、内心かなり焦っていたのだ。
「最初は何をしたら良いのかしら」
「まずはそこに座って」
現在は魔物討伐の依頼を受けた後で、何も無い森の中、シュヴィーナは指示された通り地面へと座る。
「次に目を閉じて」
「わかったわ」
フィエラに言われた通り目を閉じて次の指示を待つシュヴィーナは、早く闘気が使いたくてウズウズしていた。
「体の内側に意識を向けると闘気を使うための力の塊みたいなのがあるはずだから、それからパッと力を取って、グルグルする。そしたら闘気が使える」
「…パッ?グルグル?ほ、他に何かやる事は?」
「ない」
フィエラはそう言うと、本当にこれ以上伝えることがないのかじっとシュヴィーナのことを見ていた。
(ど、どういうことかしら。パッ?グルグル?分からないわ)
シュヴィーナがフィエラの説明を理解できなかったのも当然で、エルフは魔法を使う時に何故そうなるのかというその現象が起きる理由について考え、順序を立てて理論的に魔法を理解し使用する。
それに対してフィエラは、獣人族という五感に優れた種族的特徴により、大体のことは自身の感覚に従って出来てしまう。
それに、これまでずっと一緒にいたルイスにはいつも教えられる側であり、人に教えるという経験が全くなかった。
また、何でも出来てしまうルイスばかりを見てきたフィエラは、他の人もそんなものだろうという勘違いをしてしまっているのだ。
(とりあえず、言われたようにやってみましょう)
考えるだけでは何も進まないと判断したシュヴィーナは、まずは言われた通りに目を閉じて自身の内側に意識を向ける。
(確か、どこかに力の塊があるって言っていたけれど)
しかし、言われた通りに集中してみるが、いくら体内に意識を向けても、なかなかそれらしいものが見つけられず時間だけが経過して行く。
「シュヴィ。今日はもう帰ろう」
フィエラに声をかけられて目を開けたシュヴィーナは、日が沈みかけて空がオレンジ色になっていることに気がつく。
「わかったわ」
「大丈夫。まだ時間はあるから焦らずにやっていこう」
上手く行かずに落ち込んでいるシュヴィーナに、フィエラは優しく声をかけると、2人はミネルバの街へと帰るのであった。
それから一週間。魔物討伐の依頼を受けては森の中で闘気の訓練をする生活をしていた2人だったが、シュヴィーナはいまだ闘気のコアを見つけることが出来ずにいた。
というより、闘気のコアがそもそもどんな物なのかも分かっておらず、コアを見つけることに苦戦しているのだ。
「シュヴィ。そろそろサファリィに移動しよう」
「もう?」
「ん。この街でできる事はもう無いし、サファリィで依頼を受けながら訓練を続けよう」
「わかったわ」
これはフィエラなりの気遣いで、ずっと同じところで訓練するよりも、別のところでやった方が気分転換にもなるだろうと判断してのことだった。
翌日は必要なものを揃えるため休みにし、二日後にフィエラたちはミネルバを離れた。
ミネルバからサファリィまでは6日ほどかかるため、2人は野宿をしながらその間も闘気を使うための訓練を続ける。
「シュヴィ。ご飯は私が作るから、シュヴィは野営の準備をお願い」
「任せてちょうだい」
フィエラはマジックバッグから肉や野菜を取り出して調理をし、シュヴィーナはテントを張ったり魔物除けの魔道具を置いたりして夜に休めるよう準備をして行く。
それから少しして、美味しそうな匂いが風に乗ってシュヴィーナの鼻に届き、夜ご飯がとても楽しみになる。
「シュヴィ。できた」
「ありがとう。今行くわね」
テントなどを張り終えたシュヴィーナがフィエラの方へ向かうと、器に盛られたスープと串焼きのお肉が用意されていた。
「美味しそうね」
「ん。頑張った。早く食べよう」
フィエラはよほどお腹が空いていたのか、シュヴィーナが座ったのを確認するとすぐに食事を始める。
シュヴィーナ自身もかなりお腹が空いていたので、スープの入った器を手に取りスプーンで掬って口に含む。
「んぐっ!?!!」
しかし口に入れた瞬間、言葉には表しようのない風味が口一杯に広がり、思わず吐き出してしまいそうになるが何とか堪える。
(な、なんなのこの味は!匂いは普通なのに、味がとても酷いわ!!)
シュヴィーナはフィエラがこの料理に何も感じていないのか気になって彼女を見てみるが、フィエラは満足そうにスープと串焼きのお肉を食べ進めていく。
(私のがおかしいのかしら。それとも彼女の味覚がおかしいの?)
この時、偶然にも初めてフィエラの料理を食べた時の感想が、ルイスとシュヴィーナで完全に一致するのであった。
「ねぇ、フィエラ。エイルにも料理を作った事はあるの?」
「ん?ある。2人で旅に出た初日は私が作った。その時はエルも普通に食べてくれたけど、次の日からはエルが作ってくれてたから、私の料理を食べたのはシュヴィが3人目」
「3人目?」
「ん。最初はお父さん。何故か次の日からは食べてくれなくなったけど」
どうやら2人もフィエラの料理を食べて自分と同じ感想だったことを悟ると、明日からは自分が作ることを彼女に伝えた。
フィエラは自分も作りたそうにしていたが、このまま彼女に任せていると大変なことになりそうだったので何とか説得した。
その次の日からは、サファリィに向かいながらも闘気の訓練を続け、ミネルバを出てから5日目にしてようやくコアらしきものを感じ取ることが出来た。
「フィエラ。力の塊みたいなのを見つけたわ」
「わかった。そしたら、それから力をギュッてして、パッとした後にグルグルする」
相変わらずフィエラの説明は全く分からないが、とりあえず何とか独自で頑張ろうと思いその力の塊に色々と試してみる。
しかし、何をしても闘気らしきものを使用する事はできず、またどうしたら良いのか分からなくなる。
何も解決しないまま翌日にはサファリィへと到着し、宿を取った2人はその日はそのまま休むことにした。
そしてさらに次の日、依頼を受けるために冒険者ギルドへと向かうと、Aランクになるために依頼を見て行く。
ちょうど良さそうな依頼を見つけたので、その依頼を受けようとしたその時…
「やぁ!お嬢さんたち!女の子たちで依頼を受けるのかい?危ないから俺らと一緒に依頼を受けようや!」
何やら後ろから声をかけられた気がしたのでシュヴィーナは後ろを振り向くが、フィエラは無視して受付に向かおうとする。
シュヴィーナはどうしたら良いのか分からず視線を彷徨わせるが、彼女も無視してフィエラに続いた。
「おい!まてや!」
しかし、完全に無視されたことで怒った男は、あろうことかフィエラの肩を掴もうとする。
フィエラはそれを見ることもなく避けると、右手だけ部分獣化させて鋭くなった爪を首筋に当てる。
「汚いから触るな。私に触っていいのはエルだけ。次に触ろうとしたら殺す」
ルイス以外の男に自身を触らせることを一切嫌うフィエラは、触ろうとした男だけに殺気を放って脅す。
男はあまりの殺気に怖気付き、失禁してガクガクと震えながら頷いた。
その後、依頼を受けてギルドを出ると、ずっと黙っていたシュヴィーナがフィエラに声をかける。
「その…さっきのはやりすぎじゃないかしら」
親切心で声をかけた訳ではないにしても、あそこまで脅す必要はあったのかと疑問に思うシュヴィーナは思わずそのことを尋ねる。
「甘くしたらまた同じことをしてくるかもしれない。さらに仲間を集めて大人数で襲ってくるかもしれない。そうなったら面倒。それに…」
「それに?」
「エルが容赦するなって言ってた。格の違いをしっかりと見せつけろって」
フィエラは基本的にルイスの考えや指示に従うため、彼が言ったのなら仕方がないかとシュヴィーナは理解する。
それからはサファリィの街で依頼を受けながら闘気の訓練も欠かさず行うが、Aランクには昇格できても闘気だけは一向に使用することが出来ず時間だけが経過していく。
日に日に表情が暗くなって行くシュヴィーナのことを気遣って色々と声をかけるが、シュヴィーナは元気なく笑うだけで状況が良くなる事は無かった。
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