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死に戻り編
死闘
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40階層のボス部屋へと繋がる扉の前へと来た俺たちは、目の前にある扉を眺めながらここが最終階層であることを察した。
「明らかに扉が豪華だな」
「ん。あからさま」
そう。目の前にある扉はこれまでのものとは違い、氷で丁寧に飾り付けまでされており、明らかに雰囲気が違った。
「最後の一踏ん張りだな。大丈夫そうか?」
「問題ない」
「よし。なら行くか」
扉を開けた俺たちは、警戒しながら中へと入って行く。
中はとても広い作りとなっており、まるで集団戦を想定しているかのような広さだった。
しかし、あたりを見回すがボスらしき存在の姿は見えず、俺とフィエラは少し疑問を感じる。
「ボスはどこ」
フィエラがそう呟いた時、上で何かが動いた気配がしたので見上げる。
「フィエラ!上だ!」
そこにいたのは氷で作られた彫刻のようなドラゴンで、空を飛びながら俺らのことをじっと眺めた後、ゆっくりと地上へと降りてくる。
「ドラゴンの模造か」
本来のドラゴンはSランク上位の強さを持つ魔物だが、ここにいるのは氷でできた模造品のため、おそらくSランク少し手前くらいの強さに見える。
(まずいな。今の俺らじゃ勝てるか分からない)
俺たちもだいぶ強くはなったが、まだ模造品とはいえドラゴンを相手に確実に勝てるほど強くはない。
それにこちらは二人しかおらず、どちらも戦闘タイプという組み合わせだ。
最悪、俺が回復することはできるが、魔力も無限ではない。
奴を倒す前に魔力が尽きる可能性の方がおそらく高いだろう。
「フィエラ。お前は最初から全力で行け。俺がお前に合わせる」
「ん。わかった」
フィエラは俺の言った通り最初から身体強化を全力でかけると、一瞬のうちに距離を詰めて勢いをそのままに殴りつける。
「っ!」
しかし、ドラゴンはその攻撃を受けてもびくともせず、逆にフィエラがあまりの硬さに声を漏らす。
ドラゴンは動きを止めたフィエラを睨みつけると、腕で叩き潰すように攻撃をしてくるが、その腕を俺が横から剣をぶつけて軌道を逸らした。
「気を抜くな!」
「ごめん」
その後も俺たちはフィエラを主軸に攻撃をして行くが、ドラゴンの硬さはこれまでの魔物よりも圧倒的で、俺たちの攻撃が効いているという感じがしなかった。
(まずいな。このままじゃ…)
「フィエラ!獣化をしろ!」
「でも、そうするとエルが!」
「時間を稼ぐくらいなら問題ない!早くしろ!」
「…わかった」
このままでは埒が明かないと思った俺は、フィエラの獣化に賭けることにした。
一人でこいつを相手にするのは正直厳しいが、時間稼ぎくらいなら何とかなるだろう。
それから一分間、俺からは攻撃をあまり仕掛けず、攻撃を避けながら奴のヘイトを俺に集める。
「エル」
何とか一分間耐え切った俺は、フィエラに声をかけられて後ろに下がると、入れ替わるようにフィエラはドラゴンに近づいて殴る。
すると、今度は少しだけドラゴンの体に罅が入った。
「ギャオォォォオ!!」
自身の体に罅を入れられたことが癪に触ったのか、ドラゴンは怒りながらフィエラだけに意識を持っていき攻撃をする。
魔法による氷の礫や踏みつけ、尻尾での薙ぎ払いなど多様な攻撃を仕掛けるが、ドラゴンの大きい体では獣化したフィエラの動きについて行くことができず、一方的に攻撃を受けていく。
しかしフィエラも常に動き回っているせいか、一つ一つの攻撃にうまく力を込めることができず、決め手に欠ける状態だった。
俺はその間も魔法で援護をして行くが、温存した魔法では奴にダメージを与えることはできない。
かといって全力で魔法を使うとフィエラを巻き込んでしまうし、倒せなかった時に逃げることができなくなる。
それから十分ほど、俺たちの戦いは膠着状態が続いたが、ついにその均衡が崩れた。
「うっ!はぁ…はぁ…」
ドラゴンの攻撃を避けてカウンターを狙っていたフィエラだったが、地面を蹴ろうとした時に足に力が入らずしゃがみ込んだ。
(まさか時間切れか!?)
獣化は通常よりも多くの体力を消費するため、長時間使用することができない。
フィエラが獣化してから十分が経過したため、おそらく彼女の体力が尽きたのだろう。
何とか立ちあがろうとするフィエラだったが、足に力が入らないのか立ち上がることができず、獣化も解けてしまった。
ドラゴンはそんなフィエラのことを見ると、これを好機ととどめを刺すために氷柱を100本近く作る。
「くそっ!間に合え!」
俺は身体強化を全力で足にかけると、フィエラのもとへと駆け寄り光魔法で結界を何重にも展開する。
ドラゴンはそんな俺の結界に向けて氷柱を放つと、結界と氷柱がぶつかり次々と消滅していく。
そして最後の結界が破壊された時、同じく最後の氷柱が俺目掛けて飛んできた。
「ごふっ…」
氷柱は俺の腹を貫き、反対側が血によって真っ赤に染まる。
「エル!」
氷柱が俺に当たったことで消滅すると、そこから血がドバドバと溢れ出てくる。
「エル!エル…!」
後ろでフィエラが俺の名前を叫んでいるが、段々とその声が遠くなって行く気がした。
(あぁ。この感覚…懐かしいな。死が間近に迫って…音が遠くなっていく感覚)
何度も味わってきた死ぬ時の感覚。体が冷たくなっていくのに、傷口は焼けるように熱い。意識と視界は朦朧とし、音はどんどん遠ざかっていく。
(俺はまた死ぬのか?敵を倒さずにこのまま?…いや、ありえない。俺はいつだって圧倒的な強者に挑んで勝ってきた。何もしないまま死ぬなどありえない!)
しかし、薄れてきた意識を無理やり覚醒させると、俺は貫かれた傷口に手を当てる。
「高級回復」
回復魔法で応急処置をした俺は、血でべっとりと赤く染まった手で前髪を掻き上げた。
「最高の気分だ。こんなに楽しませてくれる相手から逃げることを考えていたなんて、なんて俺は馬鹿なんだ」
そもそも、俺は強者に自分から向かって行くタイプだった。
なのに、その強者を前にして力を温存したり逃げることを考えるなど、愚かにも程がある。
「そうだよな。俺はいつだって挑戦者だ」
「…エル?大丈夫なの?」
「問題ない。それより動けるか」
「少しだけなら」
「なら壁の方に行ってろ」
「なんで。一緒に逃げよう」
フィエラはもはやこいつには敵わないと思ったのか、弱々しくも逃げることを提案して来る。
「逃げるなら一人で逃げろ。邪魔だから早く行け」
しかし、俺にはもうこいつから逃げるという選択肢はない。
俺がフィエラに殺気を込めて睨みながそう言うと、彼女は何とか立ち上がってふらふらと壁の方へと向かった。
「待たせたな。ここからは俺が相手だ。さぁ、お前に俺を殺せるかな!『黒炎槍』!」
ニヤリと笑った俺は、黒い炎の槍を10本作り出すと、それをドラゴンに向けて放った。
俺の放った黒炎が危険だと感じたのか、ドラゴンは魔法で氷柱を作って対抗してくる。
俺の黒炎は一つの氷柱で消えることは無かったが、複数個当てられると流石に消されてしまった。
「賢い奴だ。だが黒炎は効く可能性があるな。なら『黒炎嵐』」
今度は奴の近くに黒い炎の竜巻を作るが、ドラゴンはそれを飛んで避けようとする。
「逃がさねぇよ。『重力』!」
闇魔法でドラゴンにかかる重力を100倍にすると、奴は飛ぶことができずに地に落ちた。
「ギャアァァァァア!」
ドラゴンは黒い炎の竜巻に何とか対抗するため、口から氷のブレスを吐く。
それは以前見たスノーワイバーンのものとは比較にならない威力で、俺の黒炎嵐と拮抗する。
「はは!隙だらけだなぁ!『黒炎飛斬』!」
俺は気配を消してドラゴンへと近づき、闘気に黒炎を付与して斬撃を飛ばすと、それをやつの翼にぶつけて切り落とした。
「ガアァァァァア!」
「これで飛べなくなったな!」
ブレスで何とか黒炎嵐を打ち消したドラゴンは、俺のことを怒りのこもった瞳で睨みつけてくる。
それからは、俺の黒炎が通用することがわかり、剣に付与して切り付けたり、至近距離で魔法を放ったりしてダメージを与えていく。
しかし、ドラゴンにも意地があるのか捨て身覚悟で氷魔法を放ってくるので、俺も少しずつ傷が増えていった。
それでも俺は動きを止めることはなく、風魔法で空中に足場を作り、それを蹴ることで縦横無尽に動き回ってドラゴンを切りつけていく。
数分後にはお互い満身創痍で、ドラゴンは片翼と腕、そして尻尾を無くし、俺は切り傷や凍傷でボロボロの状態だった。
「ごほっごほっ…チッ。傷が開いたか」
応急処置で治していた傷がこれまでの動きに耐えられなかったのか、また少しずつ血が滲んでくる。
ドラゴンももはや動くことができないのか、その場でじっと俺のことを見ていた。
「お互い限界のようだ。これで最後にするとしよう」
言葉が伝わったのかは分からないが、ドラゴンは最後の力を振り絞って全力のブレスを放とうとする。
俺も剣にありったけの魔力で黒炎を付与すると、その剣を上段に構える。
訪れるしばしの沈黙。そして…
「ガアァァァア!」
「『黒炎閃刃』!」
ドラゴンのブレスと俺の上段から振り下ろした黒炎の一閃が中央で衝突する。
少しの間だけブレスと斬撃は拮抗するが、相性的に俺の黒炎の方が有利なため、斬撃はブレスを真っ二つに割って突き進み、そのままドラゴンのことも縦に両断した。
「はぁ、はぁ…」
待っていた剣が黒炎の付与に耐えきれず砕け散る。それからしばらくしてドラゴンの体が消滅すると、その場所には大きな魔石だけが残った。
「勝っ…た…」
俺はドラゴンが消滅したのを確認し、自身が戦いに勝利したことを理解すると、力無く地面へと倒れる。
(だるい。魔力も気力もすっからかんだ…)
地面に倒れた俺は、慌てた様子で駆け寄ってくるフィエラを眺めながら、満足感で胸をいっぱいにして意識を手放すのであった。
「明らかに扉が豪華だな」
「ん。あからさま」
そう。目の前にある扉はこれまでのものとは違い、氷で丁寧に飾り付けまでされており、明らかに雰囲気が違った。
「最後の一踏ん張りだな。大丈夫そうか?」
「問題ない」
「よし。なら行くか」
扉を開けた俺たちは、警戒しながら中へと入って行く。
中はとても広い作りとなっており、まるで集団戦を想定しているかのような広さだった。
しかし、あたりを見回すがボスらしき存在の姿は見えず、俺とフィエラは少し疑問を感じる。
「ボスはどこ」
フィエラがそう呟いた時、上で何かが動いた気配がしたので見上げる。
「フィエラ!上だ!」
そこにいたのは氷で作られた彫刻のようなドラゴンで、空を飛びながら俺らのことをじっと眺めた後、ゆっくりと地上へと降りてくる。
「ドラゴンの模造か」
本来のドラゴンはSランク上位の強さを持つ魔物だが、ここにいるのは氷でできた模造品のため、おそらくSランク少し手前くらいの強さに見える。
(まずいな。今の俺らじゃ勝てるか分からない)
俺たちもだいぶ強くはなったが、まだ模造品とはいえドラゴンを相手に確実に勝てるほど強くはない。
それにこちらは二人しかおらず、どちらも戦闘タイプという組み合わせだ。
最悪、俺が回復することはできるが、魔力も無限ではない。
奴を倒す前に魔力が尽きる可能性の方がおそらく高いだろう。
「フィエラ。お前は最初から全力で行け。俺がお前に合わせる」
「ん。わかった」
フィエラは俺の言った通り最初から身体強化を全力でかけると、一瞬のうちに距離を詰めて勢いをそのままに殴りつける。
「っ!」
しかし、ドラゴンはその攻撃を受けてもびくともせず、逆にフィエラがあまりの硬さに声を漏らす。
ドラゴンは動きを止めたフィエラを睨みつけると、腕で叩き潰すように攻撃をしてくるが、その腕を俺が横から剣をぶつけて軌道を逸らした。
「気を抜くな!」
「ごめん」
その後も俺たちはフィエラを主軸に攻撃をして行くが、ドラゴンの硬さはこれまでの魔物よりも圧倒的で、俺たちの攻撃が効いているという感じがしなかった。
(まずいな。このままじゃ…)
「フィエラ!獣化をしろ!」
「でも、そうするとエルが!」
「時間を稼ぐくらいなら問題ない!早くしろ!」
「…わかった」
このままでは埒が明かないと思った俺は、フィエラの獣化に賭けることにした。
一人でこいつを相手にするのは正直厳しいが、時間稼ぎくらいなら何とかなるだろう。
それから一分間、俺からは攻撃をあまり仕掛けず、攻撃を避けながら奴のヘイトを俺に集める。
「エル」
何とか一分間耐え切った俺は、フィエラに声をかけられて後ろに下がると、入れ替わるようにフィエラはドラゴンに近づいて殴る。
すると、今度は少しだけドラゴンの体に罅が入った。
「ギャオォォォオ!!」
自身の体に罅を入れられたことが癪に触ったのか、ドラゴンは怒りながらフィエラだけに意識を持っていき攻撃をする。
魔法による氷の礫や踏みつけ、尻尾での薙ぎ払いなど多様な攻撃を仕掛けるが、ドラゴンの大きい体では獣化したフィエラの動きについて行くことができず、一方的に攻撃を受けていく。
しかしフィエラも常に動き回っているせいか、一つ一つの攻撃にうまく力を込めることができず、決め手に欠ける状態だった。
俺はその間も魔法で援護をして行くが、温存した魔法では奴にダメージを与えることはできない。
かといって全力で魔法を使うとフィエラを巻き込んでしまうし、倒せなかった時に逃げることができなくなる。
それから十分ほど、俺たちの戦いは膠着状態が続いたが、ついにその均衡が崩れた。
「うっ!はぁ…はぁ…」
ドラゴンの攻撃を避けてカウンターを狙っていたフィエラだったが、地面を蹴ろうとした時に足に力が入らずしゃがみ込んだ。
(まさか時間切れか!?)
獣化は通常よりも多くの体力を消費するため、長時間使用することができない。
フィエラが獣化してから十分が経過したため、おそらく彼女の体力が尽きたのだろう。
何とか立ちあがろうとするフィエラだったが、足に力が入らないのか立ち上がることができず、獣化も解けてしまった。
ドラゴンはそんなフィエラのことを見ると、これを好機ととどめを刺すために氷柱を100本近く作る。
「くそっ!間に合え!」
俺は身体強化を全力で足にかけると、フィエラのもとへと駆け寄り光魔法で結界を何重にも展開する。
ドラゴンはそんな俺の結界に向けて氷柱を放つと、結界と氷柱がぶつかり次々と消滅していく。
そして最後の結界が破壊された時、同じく最後の氷柱が俺目掛けて飛んできた。
「ごふっ…」
氷柱は俺の腹を貫き、反対側が血によって真っ赤に染まる。
「エル!」
氷柱が俺に当たったことで消滅すると、そこから血がドバドバと溢れ出てくる。
「エル!エル…!」
後ろでフィエラが俺の名前を叫んでいるが、段々とその声が遠くなって行く気がした。
(あぁ。この感覚…懐かしいな。死が間近に迫って…音が遠くなっていく感覚)
何度も味わってきた死ぬ時の感覚。体が冷たくなっていくのに、傷口は焼けるように熱い。意識と視界は朦朧とし、音はどんどん遠ざかっていく。
(俺はまた死ぬのか?敵を倒さずにこのまま?…いや、ありえない。俺はいつだって圧倒的な強者に挑んで勝ってきた。何もしないまま死ぬなどありえない!)
しかし、薄れてきた意識を無理やり覚醒させると、俺は貫かれた傷口に手を当てる。
「高級回復」
回復魔法で応急処置をした俺は、血でべっとりと赤く染まった手で前髪を掻き上げた。
「最高の気分だ。こんなに楽しませてくれる相手から逃げることを考えていたなんて、なんて俺は馬鹿なんだ」
そもそも、俺は強者に自分から向かって行くタイプだった。
なのに、その強者を前にして力を温存したり逃げることを考えるなど、愚かにも程がある。
「そうだよな。俺はいつだって挑戦者だ」
「…エル?大丈夫なの?」
「問題ない。それより動けるか」
「少しだけなら」
「なら壁の方に行ってろ」
「なんで。一緒に逃げよう」
フィエラはもはやこいつには敵わないと思ったのか、弱々しくも逃げることを提案して来る。
「逃げるなら一人で逃げろ。邪魔だから早く行け」
しかし、俺にはもうこいつから逃げるという選択肢はない。
俺がフィエラに殺気を込めて睨みながそう言うと、彼女は何とか立ち上がってふらふらと壁の方へと向かった。
「待たせたな。ここからは俺が相手だ。さぁ、お前に俺を殺せるかな!『黒炎槍』!」
ニヤリと笑った俺は、黒い炎の槍を10本作り出すと、それをドラゴンに向けて放った。
俺の放った黒炎が危険だと感じたのか、ドラゴンは魔法で氷柱を作って対抗してくる。
俺の黒炎は一つの氷柱で消えることは無かったが、複数個当てられると流石に消されてしまった。
「賢い奴だ。だが黒炎は効く可能性があるな。なら『黒炎嵐』」
今度は奴の近くに黒い炎の竜巻を作るが、ドラゴンはそれを飛んで避けようとする。
「逃がさねぇよ。『重力』!」
闇魔法でドラゴンにかかる重力を100倍にすると、奴は飛ぶことができずに地に落ちた。
「ギャアァァァァア!」
ドラゴンは黒い炎の竜巻に何とか対抗するため、口から氷のブレスを吐く。
それは以前見たスノーワイバーンのものとは比較にならない威力で、俺の黒炎嵐と拮抗する。
「はは!隙だらけだなぁ!『黒炎飛斬』!」
俺は気配を消してドラゴンへと近づき、闘気に黒炎を付与して斬撃を飛ばすと、それをやつの翼にぶつけて切り落とした。
「ガアァァァァア!」
「これで飛べなくなったな!」
ブレスで何とか黒炎嵐を打ち消したドラゴンは、俺のことを怒りのこもった瞳で睨みつけてくる。
それからは、俺の黒炎が通用することがわかり、剣に付与して切り付けたり、至近距離で魔法を放ったりしてダメージを与えていく。
しかし、ドラゴンにも意地があるのか捨て身覚悟で氷魔法を放ってくるので、俺も少しずつ傷が増えていった。
それでも俺は動きを止めることはなく、風魔法で空中に足場を作り、それを蹴ることで縦横無尽に動き回ってドラゴンを切りつけていく。
数分後にはお互い満身創痍で、ドラゴンは片翼と腕、そして尻尾を無くし、俺は切り傷や凍傷でボロボロの状態だった。
「ごほっごほっ…チッ。傷が開いたか」
応急処置で治していた傷がこれまでの動きに耐えられなかったのか、また少しずつ血が滲んでくる。
ドラゴンももはや動くことができないのか、その場でじっと俺のことを見ていた。
「お互い限界のようだ。これで最後にするとしよう」
言葉が伝わったのかは分からないが、ドラゴンは最後の力を振り絞って全力のブレスを放とうとする。
俺も剣にありったけの魔力で黒炎を付与すると、その剣を上段に構える。
訪れるしばしの沈黙。そして…
「ガアァァァア!」
「『黒炎閃刃』!」
ドラゴンのブレスと俺の上段から振り下ろした黒炎の一閃が中央で衝突する。
少しの間だけブレスと斬撃は拮抗するが、相性的に俺の黒炎の方が有利なため、斬撃はブレスを真っ二つに割って突き進み、そのままドラゴンのことも縦に両断した。
「はぁ、はぁ…」
待っていた剣が黒炎の付与に耐えきれず砕け散る。それからしばらくしてドラゴンの体が消滅すると、その場所には大きな魔石だけが残った。
「勝っ…た…」
俺はドラゴンが消滅したのを確認し、自身が戦いに勝利したことを理解すると、力無く地面へと倒れる。
(だるい。魔力も気力もすっからかんだ…)
地面に倒れた俺は、慌てた様子で駆け寄ってくるフィエラを眺めながら、満足感で胸をいっぱいにして意識を手放すのであった。
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