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死に戻り編
羨ましい
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階段で男たち四人を倒し、そのうちの一人から情報を聞き出した俺は、最後の敵と戦うために階段を下りていた。
しばらく歩いて階段を下り終わると、地下施設のような場所へとたどり着く。
「おぉ~、広いなぁ」
俺はそこそこ広い地下施設を眺めてみると、どうやらこの部屋には魔力封印が施されているようだった。
(この部屋では魔法は使え無さそうだな)
俺が部屋の観察をしながら待っていると、一人の男が気配もなく現れる。
「お前か?私の部下を倒したのは」
「あの雑魚どもが部下だったのなら、そいつらを倒したのは俺で間違い無いけど?」
男の年齢は30代くらいで身長は180㎝ほど。体つきからは無駄な筋肉がなく強者であることが見てとれる。手には槍を持っており、どうやら槍使いのようだ。
「ふん。こんなガキにやられるとは。あいつらもまだまだだな」
「そんなことないさ。それなりには強かったぞ?ただ、今回は相手が悪かっただけだ。竜信者さん」
「チッ。情報まで吐きやがったか。使えない奴らだ。ならば、お前をここで殺さねばな」
男はそう言うと、右手に持っていた槍を両手で握り、槍の先を俺の方に向けて構えた。
「ふふ!いいねぇ!なら殺してみてくれ!」
相手から向けられる殺気に気分が一気に高揚した俺は、嬉々として剣を抜き構える。
しばらくお互いに見合った後、先に動いたのは男の方だった。
男は足に力を込めて地面を蹴ると、消えたかと錯覚するほどの速度で突きを放ってくる。
しかし、男の動きが見えていた俺はその突きを体を少しずらして避けると、相手の突っ込んでくる軌道上に剣を置いて剣先を男の顔面に向ける。
「っ!」
男はこのまま突っ込むと刺さると判断すると、槍から片手を離して体を捻りながら剣のライン上から逸れた。
「おぉー、よくその速度で突っ込んできて避けられたな」
「当たり前だ。自分で突っ込んで剣に刺さるなど笑い話にもならん。それより、お前に私の動きが見えたことの方が驚きだ。どうやらそこそこやるようだな」
「まぁ、たいして速くないしな。それが限界なら、うちの仲間の方がもっと速いぞ?」
実際、今のあいつの速度はフィエラの速さの足元にも及ばない。
「ふはははは!そんなわけないだろう。これはほんの小手調べだぞ。そう言えば、お前の名前を聞いていなかったな、私はガイザルだ」
「俺はエイル。よろしく頼むよ」
お互い自己紹介を終えると、また武器を構える。すると、ガイゼルは先ほどとは比にならない速度で移動すると、槍で横払いをして来た。
俺は間に剣を滑り込ませてガードするが、遠心力とガイザルの力が凄まじく、力を受け流せずに吹き飛ばされる。
何度か地面を転がって起き上がると、剣を握っていた腕が痺れているような感じがした。
「その槍。魔槍か」
「よく気がついた。これは魔槍イグベリア。雷属性の魔法が付与されたものだ」
「だから手が痺れた感じがするのか」
どうやらあの魔槍には、槍に触れた攻撃対象に麻痺を与える効果があるようだ。
(これは厄介だな。おそらく、撃ち合えば撃ち合うだけ手が痺れていくんだろう)
そうなれば、俺は最終的に剣を握る力が無くなり、最後は無防備で槍の餌食になるはずだ。
「くく。あぁ、楽しいなぁ。この少しずつ追い込まれていく感覚。楽しくて仕方がない」
ガイザルはまた槍を構えると、突きや薙ぎ払い、下からの掬い上げや上からの叩きつけなど様々な攻撃を仕掛けて来る。
俺はガイザルの止まらない連続攻撃を受け流したり避けたり弾いたりして防ぐ。
しかし、防いでもやつの槍に触れた剣から電気が伝わってきて、俺の腕の感覚がどんどん無くなっていく。
そして…
数分後、ついに腕に力が入らなくなった俺は、持っていた剣を地面に落とした。
「ふっ。終わりのようだな。技術はあるようだが、剣で防いでいる時点でお前に勝ち目は無かったのだ」
ガイザルは勝ち誇った笑みを浮かべると、ゆっくりと俺の方へと近づいてくる。
(あぁ。腕の感覚がない。このまま何もしなけれ間違いなく死ぬだろう。だが…)
「くくく。あっはっはっはっは!」
俺が突然笑い出したことで、ガイザルは訝しみながら歩みを止めた。
「何がおかしい」
「いやいや。何もおかしくないさ。ただ俺は楽しいだけだ。腕の感覚が無くなり、手元には剣もなくただ死を待つのみ。あぁ、最高だぁ。こんな感覚は本当に久しぶりだ」
死が間近に迫っているこの状況が、俺にとっては本当に楽しくて仕方がない。
「さぁ。もっと俺を楽しませてくれ。闘気『脚式』」
闘気『脚式』。これは本来全身に纏うべき闘気を脚だけに集中させ、移動速度および脚力をあげる技だ。
「はっ!」
力強く地面を蹴った俺は、一瞬でガイザルの正面へと移動すると、腰の回転を利用して蹴りを入れる。
「くっ!!」
ガイザルは何とか槍で防ぐが、脚式で何倍にも攻撃力が上がった蹴りの衝撃を防ぎ切ることができず、勢いよく壁にぶつかった。
「かはっ!!」
「おいおい。こんなで終わりじゃないよな?早く立ち上がれよ」
俺がニヤニヤしながらそう言うと、ガイザルは立ち上がって俺のことを睨みつけてくる。
「まさか闘気が使えたとはな。しかし、今のは不意をつかれただけだ。あまり私を舐めるなよ。闘気!」
ガイザルがそう言うと、奴の体からオーラが溢れ出し、それが全身を包み込んでいく。
「闘気を使えるのがお前だけだと思うな。いくぞ!」
「こいよ」
そこからは、常人では視認することすらできない戦いが始まった。
ガイザルが槍を突き出せば、衝撃波で地面や壁が抉る。
俺が足を横に薙ぎ払えば、風の刃が飛んでいき壁を切り裂く。
さらに戦いは過激さを増していき、いつしか綺麗だった地下施設は穴や瓦礫でいっぱいになっていた。
「はぁ、はぁ。腕を使えなくしてなおこの強さとは。何と末恐ろしいガキだ」
「ふふ。褒め言葉ありがとう。だが、そろそろ終わらせよう」
「あぁ。そうさせてもらう」
お互い闘気をさらに高めて完全開放すると、闘気同士が衝突して空気を軋ませる。
「『雷槍突破』!!」
「『脚式風牙』!」
同時に技を放った俺たちの間で、雷を帯びた衝撃波と狼が口を開けて噛み付くように吹き荒れる風がぶつかり合った。
強力な技と技のぶつかり合いに耐えきれなかった施設は天井が崩れ、あたりには砂煙が舞う。
煙が晴れると立っていたのは俺だけで、ガイザルは下半身を無くして地面に倒れていた。
「チッ。腕を持っていかれたか」
しかし、俺も無傷というわけにはいかず、麻痺で動かなかった右腕がガイザルの攻撃によって消し飛んだ。
俺は来ていたローブを破いて止血をすると、今にも生き絶えそうなガイザルのもとへと近づく。
「ふっ…見事な…技だった」
「ありがとう。あんたの技もすごく良かったよ。久しぶりに腕を持っていかれた」
「はは。そうか…エイルと、言ったな。最高に楽しい戦いだった…」
「あぁ。俺も楽しかったよ」
「それは…よかった。それと、私の…槍をくれてやる。好きにするといい」
「わかった」
「あぁ。最高の…人生だった…」
ガイザルはその言葉を最後に、笑いながら死んでいった。
「あんたが羨ましいよガイザル。笑って死ねるなんて」
俺は何度も死んだせいで、後悔のない人生というものを経験できなくなった。
死ねばまた次がある。その考えが染み付いてしまった俺には、笑って死ねるほど充実した最後を迎えることは今後も出来ないと思う。
「さてと。ついでに捕まっている人たちを助けにいきますか」
戦いの余波で壊れた壁の向こうに、行方不明になっていた人たちの気配を見つけた俺は、ゆっくりと歩いていくのであった。
崩れた壁を超えて牢屋らしき所に近づくと、中には多くの人が閉じ込められていた。
「だ、誰ですか」
閉じ込められている牢屋の向こうから、一人の男性が俺をみて声をかけてくる。
「俺は冒険者のエイルです。ギルドの依頼により、皆さんを助けに来ました」
懐からギルドカードを出した俺は、見えやすいように近づけて確認してもらう。
「よ、よかった!助けが来たんだ!」
その言葉を聞いた他の人たちも、ようやく助かると安堵して嬉しそうに話している。
俺は感覚の戻った左腕で拾って来た剣を振ると、牢屋を施錠していた鍵を壊す。
捕まっていた人たちは鍵が壊れたのを確認すると、中から囚われていた人たちが一人、また一人と出てくる。
「ルイス様?」
「ん?」
牢屋から出たうちの一人が鍵を見つけて開けたらしく、他の牢屋から出て来た一人が俺の名前を呼んだので振り返る。
するとそこには、よく知る人物が後ろに立っていた。
「ミリア?何でここに?」
そう。そこに立っていたのは、俺の専属メイドであるミリアであった。
「私は、早朝に買い物のため街に来た際、怪しげな男たちに捕まってしまって…」
(そういえば、朝お使いに行ったっきり帰って来てないって言ってたな。まさか捕まっていたとは)
「そうか」
「そ、それよりルイス様!腕が!」
「ん?あぁ、気にするな。この建物に魔力封印がかかってるから治せないだけだ。ここを出たら治すから大丈夫だ」
「でも痛みなどはありますよね!わ、私はどうしたら!!」
ミリアは俺の無くなった右腕を見ると、珍しくあわあわとして慌て出す。
「落ち着け。これくらい痛くも何ともない。それより早くここを出るぞ」
俺はそう言うと、捕まっていた人たちが全員出たのを確認して出口の方に向かって歩き出した。
「ま、待ってください!」
ミリアは慌てて俺のことを追いかけてくるが、俺は特に待ったりはせず歩いていく。
途中、ガイザルが使っていた槍を回収すると、あとは階段で気を失っている男たちを捕まっていた人たちに連れて来てもらいながら外へと出るのであった。
しばらく歩いて階段を下り終わると、地下施設のような場所へとたどり着く。
「おぉ~、広いなぁ」
俺はそこそこ広い地下施設を眺めてみると、どうやらこの部屋には魔力封印が施されているようだった。
(この部屋では魔法は使え無さそうだな)
俺が部屋の観察をしながら待っていると、一人の男が気配もなく現れる。
「お前か?私の部下を倒したのは」
「あの雑魚どもが部下だったのなら、そいつらを倒したのは俺で間違い無いけど?」
男の年齢は30代くらいで身長は180㎝ほど。体つきからは無駄な筋肉がなく強者であることが見てとれる。手には槍を持っており、どうやら槍使いのようだ。
「ふん。こんなガキにやられるとは。あいつらもまだまだだな」
「そんなことないさ。それなりには強かったぞ?ただ、今回は相手が悪かっただけだ。竜信者さん」
「チッ。情報まで吐きやがったか。使えない奴らだ。ならば、お前をここで殺さねばな」
男はそう言うと、右手に持っていた槍を両手で握り、槍の先を俺の方に向けて構えた。
「ふふ!いいねぇ!なら殺してみてくれ!」
相手から向けられる殺気に気分が一気に高揚した俺は、嬉々として剣を抜き構える。
しばらくお互いに見合った後、先に動いたのは男の方だった。
男は足に力を込めて地面を蹴ると、消えたかと錯覚するほどの速度で突きを放ってくる。
しかし、男の動きが見えていた俺はその突きを体を少しずらして避けると、相手の突っ込んでくる軌道上に剣を置いて剣先を男の顔面に向ける。
「っ!」
男はこのまま突っ込むと刺さると判断すると、槍から片手を離して体を捻りながら剣のライン上から逸れた。
「おぉー、よくその速度で突っ込んできて避けられたな」
「当たり前だ。自分で突っ込んで剣に刺さるなど笑い話にもならん。それより、お前に私の動きが見えたことの方が驚きだ。どうやらそこそこやるようだな」
「まぁ、たいして速くないしな。それが限界なら、うちの仲間の方がもっと速いぞ?」
実際、今のあいつの速度はフィエラの速さの足元にも及ばない。
「ふはははは!そんなわけないだろう。これはほんの小手調べだぞ。そう言えば、お前の名前を聞いていなかったな、私はガイザルだ」
「俺はエイル。よろしく頼むよ」
お互い自己紹介を終えると、また武器を構える。すると、ガイゼルは先ほどとは比にならない速度で移動すると、槍で横払いをして来た。
俺は間に剣を滑り込ませてガードするが、遠心力とガイザルの力が凄まじく、力を受け流せずに吹き飛ばされる。
何度か地面を転がって起き上がると、剣を握っていた腕が痺れているような感じがした。
「その槍。魔槍か」
「よく気がついた。これは魔槍イグベリア。雷属性の魔法が付与されたものだ」
「だから手が痺れた感じがするのか」
どうやらあの魔槍には、槍に触れた攻撃対象に麻痺を与える効果があるようだ。
(これは厄介だな。おそらく、撃ち合えば撃ち合うだけ手が痺れていくんだろう)
そうなれば、俺は最終的に剣を握る力が無くなり、最後は無防備で槍の餌食になるはずだ。
「くく。あぁ、楽しいなぁ。この少しずつ追い込まれていく感覚。楽しくて仕方がない」
ガイザルはまた槍を構えると、突きや薙ぎ払い、下からの掬い上げや上からの叩きつけなど様々な攻撃を仕掛けて来る。
俺はガイザルの止まらない連続攻撃を受け流したり避けたり弾いたりして防ぐ。
しかし、防いでもやつの槍に触れた剣から電気が伝わってきて、俺の腕の感覚がどんどん無くなっていく。
そして…
数分後、ついに腕に力が入らなくなった俺は、持っていた剣を地面に落とした。
「ふっ。終わりのようだな。技術はあるようだが、剣で防いでいる時点でお前に勝ち目は無かったのだ」
ガイザルは勝ち誇った笑みを浮かべると、ゆっくりと俺の方へと近づいてくる。
(あぁ。腕の感覚がない。このまま何もしなけれ間違いなく死ぬだろう。だが…)
「くくく。あっはっはっはっは!」
俺が突然笑い出したことで、ガイザルは訝しみながら歩みを止めた。
「何がおかしい」
「いやいや。何もおかしくないさ。ただ俺は楽しいだけだ。腕の感覚が無くなり、手元には剣もなくただ死を待つのみ。あぁ、最高だぁ。こんな感覚は本当に久しぶりだ」
死が間近に迫っているこの状況が、俺にとっては本当に楽しくて仕方がない。
「さぁ。もっと俺を楽しませてくれ。闘気『脚式』」
闘気『脚式』。これは本来全身に纏うべき闘気を脚だけに集中させ、移動速度および脚力をあげる技だ。
「はっ!」
力強く地面を蹴った俺は、一瞬でガイザルの正面へと移動すると、腰の回転を利用して蹴りを入れる。
「くっ!!」
ガイザルは何とか槍で防ぐが、脚式で何倍にも攻撃力が上がった蹴りの衝撃を防ぎ切ることができず、勢いよく壁にぶつかった。
「かはっ!!」
「おいおい。こんなで終わりじゃないよな?早く立ち上がれよ」
俺がニヤニヤしながらそう言うと、ガイザルは立ち上がって俺のことを睨みつけてくる。
「まさか闘気が使えたとはな。しかし、今のは不意をつかれただけだ。あまり私を舐めるなよ。闘気!」
ガイザルがそう言うと、奴の体からオーラが溢れ出し、それが全身を包み込んでいく。
「闘気を使えるのがお前だけだと思うな。いくぞ!」
「こいよ」
そこからは、常人では視認することすらできない戦いが始まった。
ガイザルが槍を突き出せば、衝撃波で地面や壁が抉る。
俺が足を横に薙ぎ払えば、風の刃が飛んでいき壁を切り裂く。
さらに戦いは過激さを増していき、いつしか綺麗だった地下施設は穴や瓦礫でいっぱいになっていた。
「はぁ、はぁ。腕を使えなくしてなおこの強さとは。何と末恐ろしいガキだ」
「ふふ。褒め言葉ありがとう。だが、そろそろ終わらせよう」
「あぁ。そうさせてもらう」
お互い闘気をさらに高めて完全開放すると、闘気同士が衝突して空気を軋ませる。
「『雷槍突破』!!」
「『脚式風牙』!」
同時に技を放った俺たちの間で、雷を帯びた衝撃波と狼が口を開けて噛み付くように吹き荒れる風がぶつかり合った。
強力な技と技のぶつかり合いに耐えきれなかった施設は天井が崩れ、あたりには砂煙が舞う。
煙が晴れると立っていたのは俺だけで、ガイザルは下半身を無くして地面に倒れていた。
「チッ。腕を持っていかれたか」
しかし、俺も無傷というわけにはいかず、麻痺で動かなかった右腕がガイザルの攻撃によって消し飛んだ。
俺は来ていたローブを破いて止血をすると、今にも生き絶えそうなガイザルのもとへと近づく。
「ふっ…見事な…技だった」
「ありがとう。あんたの技もすごく良かったよ。久しぶりに腕を持っていかれた」
「はは。そうか…エイルと、言ったな。最高に楽しい戦いだった…」
「あぁ。俺も楽しかったよ」
「それは…よかった。それと、私の…槍をくれてやる。好きにするといい」
「わかった」
「あぁ。最高の…人生だった…」
ガイザルはその言葉を最後に、笑いながら死んでいった。
「あんたが羨ましいよガイザル。笑って死ねるなんて」
俺は何度も死んだせいで、後悔のない人生というものを経験できなくなった。
死ねばまた次がある。その考えが染み付いてしまった俺には、笑って死ねるほど充実した最後を迎えることは今後も出来ないと思う。
「さてと。ついでに捕まっている人たちを助けにいきますか」
戦いの余波で壊れた壁の向こうに、行方不明になっていた人たちの気配を見つけた俺は、ゆっくりと歩いていくのであった。
崩れた壁を超えて牢屋らしき所に近づくと、中には多くの人が閉じ込められていた。
「だ、誰ですか」
閉じ込められている牢屋の向こうから、一人の男性が俺をみて声をかけてくる。
「俺は冒険者のエイルです。ギルドの依頼により、皆さんを助けに来ました」
懐からギルドカードを出した俺は、見えやすいように近づけて確認してもらう。
「よ、よかった!助けが来たんだ!」
その言葉を聞いた他の人たちも、ようやく助かると安堵して嬉しそうに話している。
俺は感覚の戻った左腕で拾って来た剣を振ると、牢屋を施錠していた鍵を壊す。
捕まっていた人たちは鍵が壊れたのを確認すると、中から囚われていた人たちが一人、また一人と出てくる。
「ルイス様?」
「ん?」
牢屋から出たうちの一人が鍵を見つけて開けたらしく、他の牢屋から出て来た一人が俺の名前を呼んだので振り返る。
するとそこには、よく知る人物が後ろに立っていた。
「ミリア?何でここに?」
そう。そこに立っていたのは、俺の専属メイドであるミリアであった。
「私は、早朝に買い物のため街に来た際、怪しげな男たちに捕まってしまって…」
(そういえば、朝お使いに行ったっきり帰って来てないって言ってたな。まさか捕まっていたとは)
「そうか」
「そ、それよりルイス様!腕が!」
「ん?あぁ、気にするな。この建物に魔力封印がかかってるから治せないだけだ。ここを出たら治すから大丈夫だ」
「でも痛みなどはありますよね!わ、私はどうしたら!!」
ミリアは俺の無くなった右腕を見ると、珍しくあわあわとして慌て出す。
「落ち着け。これくらい痛くも何ともない。それより早くここを出るぞ」
俺はそう言うと、捕まっていた人たちが全員出たのを確認して出口の方に向かって歩き出した。
「ま、待ってください!」
ミリアは慌てて俺のことを追いかけてくるが、俺は特に待ったりはせず歩いていく。
途中、ガイザルが使っていた槍を回収すると、あとは階段で気を失っている男たちを捕まっていた人たちに連れて来てもらいながら外へと出るのであった。
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