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死に戻り編
死に戻り
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突然だが、死に戻りというものを知っているだろうか。
死に戻りとは、何らかのきっかけで死んだ人間が、ある場所に時間が巻き戻り、そこからもう一度人生を繰り返すことである。
普通であれば、死に戻った人間は次は死なないために知識を使い、力を使い、人を頼って未来を変えようとするだろう。
しかし、全てがそうなるとは限らない。超常なる存在。例えば神がいたとして、未来がその神によって決められていた場合、どう足掻いても未来の終着地点は変わらないのだ。
分かりやすい例えをするならば、例えば24時間後に世界が必ず滅ぶとする。
その24時間後の滅亡までの間、寝て過ごしたり、恋人と過ごしたり、勉強や鍛錬、世界の裏側に逃げようとしたりと、各々やりたいことをやって過ごす。
しかし、24時間後に世界が滅ぶという決まった未来がある以上、その決められた時間の中で何をしようが、結局は世界が滅んで死ぬという未来から逃れることはできない。
それが自然の摂理であり、定められた運命であり、神が定めし確定した未来なのだ。
そんな行き着く先が決められた世界の中で、俺は何度も死に戻りをしている。
死んだ理由は様々で、学園に通って主人公に絡んでいき、最終的には悪逆非道の罪によって殺される。
復讐のために魔物を使って国を滅ぼそうとしたが、結局は主人公たちの手によって阻止されて殺される。
突如として復活した魔王によって、寝ぼけながら欠伸ついでに殺される。
婚約者に主人公とくっつくために邪魔だからという理由で殺される。
俺の力が危険だからと、暗殺者を差し向けられて殺される。
何度も何度も何度も殺されてきた俺は、決まって必ず学園に入学する三年前に死に戻る。
この世界は何かがおかしい。この世界はまるで絵本や物語のようで、一つの結末を迎えると時間が巻き戻る。
よくある物語の一つに、勇者が魔王に攫われたお姫様を助けるという王道の物語がある。
勇者は数多の苦難を乗り越え、多くの仲間と出会って魔王を打ち倒し、攫われたお姫様を助けて幸せに暮らす。
そんな物語が終わりを迎えると、その後のストーリーはどうなるのか。
勇者とお姫様は幸せな家庭を作って国の安寧に貢献した?
それとも新たな強敵が現れて勇者がまた戦った?
答えはいずれも否だ。
物語の場合、それは全て創作であり、その後のお話は存在しない。
終わりを迎えれば物語は最初のページへと戻り、お姫様がまた魔王に攫われて勇者が助けに向かうのだ。
それがこの世界でも同じ現象が起きている。そして、俺ことルイス・ヴァレンタインはこの繰り返される世界の中で、いわゆる悪役というやつだ。
ルーゼリア帝国の北に位置するヴァレンタイン公爵領。俺はこのヴァレンタイン公爵領を管理するヴァレンタイン公爵家が嫡男、ルイス・ヴァレンタイン。
父親譲りの銀髪と、母親譲りの黄金のような金色の瞳。顔は少しキリッとしたクール系の顔をしており、年齢は12歳で身長は160cmと年齢のわりに少し高めだ。
髪は母の趣味で何故か伸ばすことになっており、今は肩にかかるくらいまで伸ばしている。
そんな外見の俺だが、側から見れば誰もが羨むような美しさがあるらしく、パーティーに行けばご令嬢がたくさん寄ってくる。
そして、今年で13歳になる俺はあと三年後にはルーゼリア帝国の首都にあるシュゼット帝国学園に通うことになっている。
このシュゼット帝国学園は、いろんな分野において一流の人物を卒業させており、歴史に名を残しているほとんどの人がこの学園の卒業生とのことだ。
また、一番の特徴としては実力主義をとっており、皇族や王族、貴族や平民など身分関係なく実力のある者は誰でも入学することができ、卒業できればそれが一つのステータスとなり職に困ることはなくなる。
そのため、国内だけでなく国外からも入学してくる者が多く、他国の王族から始まり平民まで、幅広い人が受験をしにくるのだ。
ちなみに、シュゼットというのは学園の創立者の名前らしいが、そんなものはどうでも良いのでポイだ。
そんな超名門校のシュゼット帝国学園だが、ここがいわゆる物語の舞台で、俺の死の運命はここに入学することで本格的に始まる。
あれはまだ何も知らない一周目の人生の時、俺は入学したその日に平民の主人公にとある理由から勝負を挑んだ。
俺は自分で言うのもあれだが俗にいう天才というやつで、全属性魔法に武術もできるという子供ながらにそれなりの強さを持っていた。
まぁ、才能に溺れてまともに訓練などしたことは無かったのだが。
そのため、案の定生活のためにそれなりに戦いの経験があった主人公に負けてしまい、それからは復讐という名の負け惜しみで何度も決闘を挑み続け、最後には悪事に手を染めてあっさりと殺された。
何ともお馬鹿な話である。
ここで一つ、魔法について説明しよう。魔法にはいくつかの属性があり、火、水、風、土の四属性に、雷、氷、光、闇の特殊属性、そして魔力があれば誰でも使える無属性が存在する。
また、世界には忘れられた属性魔法や武器魔法なども存在するが、それはまた別の機会に説明する。
次に、なぜ学園入学時に死に戻りしないのかと言えば、12歳のこの時にどうしても逃れることのできない重要なイベントがあるからだ。
この時期にあるイベント。それは婚約者ができるという貴族ならば避けられない超重要イベントである。
これを機に俺は調子に乗ってクソガキになり、そのまますくすく育っていった挙句に死ぬのだ。
「はぁ。怠い。めんどくさい。会いたくない」
もはや生きる気力も持てず、何かをする気にもなれない。
それもそのはずだ。この婚約者ができるというイベントは俺が死ぬというゴールを迎えるためのスタートラインであり、婚約者ができたら最後、死ぬ以外の未来はありえない。
「あぁー、早く死にたい。永遠の眠りにつきたい。てか、せめて記憶を消してくれ、まじで」
そんな感じで意味のない愚痴を言いながら、ベットの上をごろごろ転がる。
「また自殺でもしようかな」
一つ前の人生と同じように自殺でもしてやろうかと考えていた時、扉をノックする音が聞こえたので適当に返事をして入室を許可する。
「失礼します」
「どうぞー」
入って来たのは俺の専属メイドで、名前をミリアという。
薄い緑色の髪に同じく緑色の瞳、少女から大人の女性に変わる途中の美少女で、年齢は俺の3つ上の15歳。
昔は俺もこいつの事がそれなりに好きだった。年上という事で頼りにもなったし、姉のようにすごく懐いていた。
(でもこいつ、俺のこと裏切るんだよなぁ)
何周目の人生だったかは忘れたが、こいつは恋に落ちた主人公の役に立つため、俺の情報を売りやがった。
しかも別の人生では毒を盛られて殺されたのだから、もやはこいつの事は何とも思わん。
最初こそ怒りも湧いたが、死にすぎてどうでも良くなった。
「ルイス様。本日はご婚約者様との初顔合わせとなりますので、早めに支度をさせていただければと思いますがよろしいですか?」
「勝手にどうぞ」
体を起こすのも怠かった俺は、魔法で体を浮かせて水でクッションを作ると、その上に寝転がる。
ミリアは俺が突然魔法を使ったことに驚いたのか、目を見開いておかしな顔をしていた。
(あぁ。そういえばこの時はまだこんなに魔法を上手く使えなかったっけ)
なんせ何度も死んでいるのだ。幼い時の記憶なんてあってないようなものだし、いろんな幼少期を過ごして来たから何が正しいのかも分からない。
「ねぇ。早くしてくんない?いつまで待たせるわけ?」
「も、申し訳ありません」
といっても、記憶が混同して変な行動をしたからといって何だって話しだ。
(どうせ死ぬんだし気にするだけ無駄だ)
一つ前の人生で、俺は死に戻りをしてすぐに首を掻っ切って自殺してやった。
体が、周囲が、環境が世界の影響を受けていない刹那の時間に、俺は魔法で指にナイフを具現化させるとそれで首の一番太い血管を切ってやったのだ。
これまでの人生で自殺だけはした事がなかったのでなんとなくやってみたが、結局変わらずまた死に戻ってしまった。
死ぬこともできず、生きてる意味も無い。
だから今世もただただやりたい事をやって死ぬことに決めた俺は、ミリアに髪型や服装を整えられながら、ぼーっと親の顔より見た自分の顔を眺め続けるのであった。
死に戻りとは、何らかのきっかけで死んだ人間が、ある場所に時間が巻き戻り、そこからもう一度人生を繰り返すことである。
普通であれば、死に戻った人間は次は死なないために知識を使い、力を使い、人を頼って未来を変えようとするだろう。
しかし、全てがそうなるとは限らない。超常なる存在。例えば神がいたとして、未来がその神によって決められていた場合、どう足掻いても未来の終着地点は変わらないのだ。
分かりやすい例えをするならば、例えば24時間後に世界が必ず滅ぶとする。
その24時間後の滅亡までの間、寝て過ごしたり、恋人と過ごしたり、勉強や鍛錬、世界の裏側に逃げようとしたりと、各々やりたいことをやって過ごす。
しかし、24時間後に世界が滅ぶという決まった未来がある以上、その決められた時間の中で何をしようが、結局は世界が滅んで死ぬという未来から逃れることはできない。
それが自然の摂理であり、定められた運命であり、神が定めし確定した未来なのだ。
そんな行き着く先が決められた世界の中で、俺は何度も死に戻りをしている。
死んだ理由は様々で、学園に通って主人公に絡んでいき、最終的には悪逆非道の罪によって殺される。
復讐のために魔物を使って国を滅ぼそうとしたが、結局は主人公たちの手によって阻止されて殺される。
突如として復活した魔王によって、寝ぼけながら欠伸ついでに殺される。
婚約者に主人公とくっつくために邪魔だからという理由で殺される。
俺の力が危険だからと、暗殺者を差し向けられて殺される。
何度も何度も何度も殺されてきた俺は、決まって必ず学園に入学する三年前に死に戻る。
この世界は何かがおかしい。この世界はまるで絵本や物語のようで、一つの結末を迎えると時間が巻き戻る。
よくある物語の一つに、勇者が魔王に攫われたお姫様を助けるという王道の物語がある。
勇者は数多の苦難を乗り越え、多くの仲間と出会って魔王を打ち倒し、攫われたお姫様を助けて幸せに暮らす。
そんな物語が終わりを迎えると、その後のストーリーはどうなるのか。
勇者とお姫様は幸せな家庭を作って国の安寧に貢献した?
それとも新たな強敵が現れて勇者がまた戦った?
答えはいずれも否だ。
物語の場合、それは全て創作であり、その後のお話は存在しない。
終わりを迎えれば物語は最初のページへと戻り、お姫様がまた魔王に攫われて勇者が助けに向かうのだ。
それがこの世界でも同じ現象が起きている。そして、俺ことルイス・ヴァレンタインはこの繰り返される世界の中で、いわゆる悪役というやつだ。
ルーゼリア帝国の北に位置するヴァレンタイン公爵領。俺はこのヴァレンタイン公爵領を管理するヴァレンタイン公爵家が嫡男、ルイス・ヴァレンタイン。
父親譲りの銀髪と、母親譲りの黄金のような金色の瞳。顔は少しキリッとしたクール系の顔をしており、年齢は12歳で身長は160cmと年齢のわりに少し高めだ。
髪は母の趣味で何故か伸ばすことになっており、今は肩にかかるくらいまで伸ばしている。
そんな外見の俺だが、側から見れば誰もが羨むような美しさがあるらしく、パーティーに行けばご令嬢がたくさん寄ってくる。
そして、今年で13歳になる俺はあと三年後にはルーゼリア帝国の首都にあるシュゼット帝国学園に通うことになっている。
このシュゼット帝国学園は、いろんな分野において一流の人物を卒業させており、歴史に名を残しているほとんどの人がこの学園の卒業生とのことだ。
また、一番の特徴としては実力主義をとっており、皇族や王族、貴族や平民など身分関係なく実力のある者は誰でも入学することができ、卒業できればそれが一つのステータスとなり職に困ることはなくなる。
そのため、国内だけでなく国外からも入学してくる者が多く、他国の王族から始まり平民まで、幅広い人が受験をしにくるのだ。
ちなみに、シュゼットというのは学園の創立者の名前らしいが、そんなものはどうでも良いのでポイだ。
そんな超名門校のシュゼット帝国学園だが、ここがいわゆる物語の舞台で、俺の死の運命はここに入学することで本格的に始まる。
あれはまだ何も知らない一周目の人生の時、俺は入学したその日に平民の主人公にとある理由から勝負を挑んだ。
俺は自分で言うのもあれだが俗にいう天才というやつで、全属性魔法に武術もできるという子供ながらにそれなりの強さを持っていた。
まぁ、才能に溺れてまともに訓練などしたことは無かったのだが。
そのため、案の定生活のためにそれなりに戦いの経験があった主人公に負けてしまい、それからは復讐という名の負け惜しみで何度も決闘を挑み続け、最後には悪事に手を染めてあっさりと殺された。
何ともお馬鹿な話である。
ここで一つ、魔法について説明しよう。魔法にはいくつかの属性があり、火、水、風、土の四属性に、雷、氷、光、闇の特殊属性、そして魔力があれば誰でも使える無属性が存在する。
また、世界には忘れられた属性魔法や武器魔法なども存在するが、それはまた別の機会に説明する。
次に、なぜ学園入学時に死に戻りしないのかと言えば、12歳のこの時にどうしても逃れることのできない重要なイベントがあるからだ。
この時期にあるイベント。それは婚約者ができるという貴族ならば避けられない超重要イベントである。
これを機に俺は調子に乗ってクソガキになり、そのまますくすく育っていった挙句に死ぬのだ。
「はぁ。怠い。めんどくさい。会いたくない」
もはや生きる気力も持てず、何かをする気にもなれない。
それもそのはずだ。この婚約者ができるというイベントは俺が死ぬというゴールを迎えるためのスタートラインであり、婚約者ができたら最後、死ぬ以外の未来はありえない。
「あぁー、早く死にたい。永遠の眠りにつきたい。てか、せめて記憶を消してくれ、まじで」
そんな感じで意味のない愚痴を言いながら、ベットの上をごろごろ転がる。
「また自殺でもしようかな」
一つ前の人生と同じように自殺でもしてやろうかと考えていた時、扉をノックする音が聞こえたので適当に返事をして入室を許可する。
「失礼します」
「どうぞー」
入って来たのは俺の専属メイドで、名前をミリアという。
薄い緑色の髪に同じく緑色の瞳、少女から大人の女性に変わる途中の美少女で、年齢は俺の3つ上の15歳。
昔は俺もこいつの事がそれなりに好きだった。年上という事で頼りにもなったし、姉のようにすごく懐いていた。
(でもこいつ、俺のこと裏切るんだよなぁ)
何周目の人生だったかは忘れたが、こいつは恋に落ちた主人公の役に立つため、俺の情報を売りやがった。
しかも別の人生では毒を盛られて殺されたのだから、もやはこいつの事は何とも思わん。
最初こそ怒りも湧いたが、死にすぎてどうでも良くなった。
「ルイス様。本日はご婚約者様との初顔合わせとなりますので、早めに支度をさせていただければと思いますがよろしいですか?」
「勝手にどうぞ」
体を起こすのも怠かった俺は、魔法で体を浮かせて水でクッションを作ると、その上に寝転がる。
ミリアは俺が突然魔法を使ったことに驚いたのか、目を見開いておかしな顔をしていた。
(あぁ。そういえばこの時はまだこんなに魔法を上手く使えなかったっけ)
なんせ何度も死んでいるのだ。幼い時の記憶なんてあってないようなものだし、いろんな幼少期を過ごして来たから何が正しいのかも分からない。
「ねぇ。早くしてくんない?いつまで待たせるわけ?」
「も、申し訳ありません」
といっても、記憶が混同して変な行動をしたからといって何だって話しだ。
(どうせ死ぬんだし気にするだけ無駄だ)
一つ前の人生で、俺は死に戻りをしてすぐに首を掻っ切って自殺してやった。
体が、周囲が、環境が世界の影響を受けていない刹那の時間に、俺は魔法で指にナイフを具現化させるとそれで首の一番太い血管を切ってやったのだ。
これまでの人生で自殺だけはした事がなかったのでなんとなくやってみたが、結局変わらずまた死に戻ってしまった。
死ぬこともできず、生きてる意味も無い。
だから今世もただただやりたい事をやって死ぬことに決めた俺は、ミリアに髪型や服装を整えられながら、ぼーっと親の顔より見た自分の顔を眺め続けるのであった。
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