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9 朝ご飯で全員集合
しおりを挟む「おはよう、シロウ! 朝ご飯にしましょう!」
翌朝、俺の部屋に元気よく入ってきた女性……誰……ってネイシアか。
ああそうか、そういや昨日俺パーティー作ったんだっけ。
なんか異世界に来てからの一ヶ月、どこのパーティーに属しても酷い扱いを受けていてそれが当たり前に思っていたから、こうやって笑顔で女性が起こしに来てくれるとか新鮮。
今まで普通に蹴っ飛ばされて起こされていたからな……。
俺たちはあれから森を抜け、夜二十時ぐらいにリブレリアという大きな街に到着。
狼と戦ったり疲労していたので、とりあえず目についた宿屋に飛び込み就寝。
そして今、という感じだろうか。
「やぁシロウ。美女二人に起こされるなんて幸せ者過ぎじゃないかな、はは」
続けてこちらも昨日知り合った女性、エレンディアさんが部屋に入ってくる。
この人は通称『雷剣エレンディア』と呼ばれ、世界最強と言われる召喚士。なんで俺はこんな有名な人とパーティーを組めているのか……。
……うん、このお二人、相当な美人さんです……。
「……ぁ、ぉはようございます……なんで二人共俺の部屋に……ああ、朝ご飯ですか……じゃあピヨすけ呼ばないと……」
俺はぼーっとする頭を振り、いつものように『召喚』でヒヨコを呼び出す。
「ピ、ピピー!」
魔力の渦から元気よく飛び出してきたのは、異世界に来てからずっと俺の心を支えてくれていたピヨすけ。
「ピ、ピピ!」
クイクイ俺の足を突き、いつもの要望。
「おはよう、俺のピヨすけ」
ヒヨコを肩に乗せると、ピヨすけが嬉しそうに俺の口に可愛いくちばしを突っ込んでくる。まぁ、俺の毎朝の光景です。
いつもご飯時に呼び出して大根葉みたいなのを食べさせている。
「うっわーかっわいー。よく懐いているねー」
ネイシアがニコニコとピヨすけを撫でる。まぁもう一ヶ月経つし。
「……ほう、『生物召喚』は千年も前に途絶えた術なので分からないことだらけなのだが、呼び出された生物はご飯を食べるのか。ということは、このヒヨコは成長するのかな?」
エレンディアさんが興味ありげにピヨすけを眺め、メモ片手に俺に質問してくる。
「ご飯は普通に食べてくれますね。成長……はよく分からないです。別段体が大きくなったようには見えないですが……」
そういやピヨすけは成長するのだろうか?
普通に餌与えていたけど、変化は見えないが……ヒヨコだから大きくなったら鶏になるのだろうか。
「……ああそうか、昨日『二人』増えたんだっけ……食費どうしよう……」
自分の両腕に付いている腕輪を見て思い出す。
昨日女性二人が増えたっけ……彼女たちはどういうものが好みなんだろうか。黒い方の人は甘いものがどうとか言っていたっけ?
「ソシエルリーゼ、ディオリーゼ、朝ご飯だってさ」
二つの大きな渦から人影が現れ、二人の女性が俺の前に着地。
「おはようございます。王と一緒にご飯を食べてもいいのですか!? さすがは我が王、お心が広い」
「シロウちゃん、おっはー。あれあれー女が増えてる……これはやっかいなことになるぞー?」
昨日俺が呼び出した戦乙女ソシエルリーゼに狂戦士ディオリーゼ。どうにも神獣と呼ばれるクラスの存在らしい。俺は詳しいことはわからないけど。
まぁ神獣だろうがヒヨコだろうが、お腹はすくだろ。一緒に行こうぜ。
「うはー……こんな簡単に神獣クラスを召喚するとか……さっすがシロウです! なんだか子供のころ本で見た空想物語を、現実の、目の前で行われた感じ……」
「す、すごい……ヒヨコも充分すごいのだが、神獣と呼ばれる二人を同時召喚……しかも会話可能……! 生物召喚された実体の生の声を聞けるとは……これは歴史的価値がすごい! あの、お話を……」
現れた戦乙女と狂戦士にネイシアとエレンディアさんが大興奮。
エレンディアさんが話しかけるが、ソシエルリーゼにディオリーゼが急に沈黙。あれ、どうしたんだ。
「二人ともどうした? ああ、紹介がまだだったか、こちらはネイシアでこっちがエレンディアさんだ」
「…………我は王に名と存在を認められた者。それ以外の者の声に応じるつもりはありません」
「ま、基本的に力の強さで分けられているのが私たちだからねー。自分より弱い存在には厳しいのよー。でもシロウちゃんは特別ー! なんせあの鳳凰様が頼りにしている存在だしー、いーーっっっぱい媚売っといて損はないしー!」
白い大きな翼を持つ戦乙女ソシエルリーゼが静かに俺の斜め後ろに立ち、黒いゴッツイ鎧を装備したディオリーゼが俺に勢いよく抱きついてくる。
ちょ、せめて抱きつくなら鎧を脱いで……!
いや違うって、決して『これじゃ柔らかいものが堪能出来ない』とかいうエロい気持ちじゃあないって。単に鎧が俺のほっそい体に食い込んで痛いから鎧は脱いでって思っただけだぞ。うん。
……よく分からんが、いきなりは仲良く出来ないってことか?
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