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【24】リコリス、今さらチートに気付く。。。
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『美少女だぁあああ!! イイ匂い……すっごくイイ匂いがするぅぅう!! 亡き母上にそっくりの美少女キタ――!!!! ふゥ――――!』
妖精王アルベリヒが、鼻血を噴きながら悶えて大喜びしている。ものすごくキモい。
「リコリス。……君の考えていることは手に取るようにわかるが、口に出してはいけない」
「だ、大丈夫ですよ。……いくらなんでも、それくらいの分別はありますんで」
わたしは、ドン引きしながらミュラン様の背中に隠れていた。
「び、美少女なんて言われたの、生まれて初めてですよ。人間と妖精は価値観が違うんですか?」
妖精王って、性格だけじゃなくて美的感覚もかなりズレてるみたいだわ……
「いや。君はかわいらしい」
「えっ?」
「自信を持ったほうがいい。……美少女だ。いままで、言ったことがなかったか?」
「そんなの初耳ですよ」
またまた、ミュラン様ったら……こんな地味顔の女を捕まえて、美少女なんて。
と、突っ込みを入れようとしたけど、がっつり食い気味の妖精王に割り込まれてしまった。
『ミュラン! お前ふざけるなよ、お前の嫁がこんな美少女だったなんて、僕は聞いてないぞ!』
目を血走らせて騒いでいる妖精王アルベリヒは、かなり気持ち悪い。
『こんな美少女と夫婦生活を送っているのか、お前は! くそ、死ね。死んでしまえお前なんか、そしてこの子は僕にくれ。一生守ってあげるから!!』
「……落ち着いてください、アルベリヒ陛下」
ミュラン様が、事務的な態度で礼をした。
「もしリコリスを気に入っていただけたなら、数日だけ妖精の森でかくまってください。お礼は、荷馬車5台分のチョコレートです」
『良いともさ~っ!!』
ちょっとちょっとちょっと、待ってよ、ミュラン様! 冗談がキツすぎますってば。
「……ただし、リコリスは常に絶対に、ロドラと一緒に居させます。決して、陛下とふたりきりにはいたしません」
『えぇえええ?』
「このロドラめに、お任せくださいませ」
すべて折り込み済みといった様子で、ロドラが優雅に笑っている。
『……ちぇ。ロドラが言うなら仕方ない。分かったよ……まぁ良いや。眺めて愛でるだけにすればいいんだろ?』
残念そうに肩を落として承諾する妖精王アルベリヒ。そのすぐそばで、ミュラン様とロドラが目配せし合って笑っている……どうやら2人の間では、何かしらの打ち合わせが済んでいたらしい。
この人たちのノリには、いまいち付いていけない。
(ともかく、ミュラン様が死なずに済んでよかった……)
わたしが胸をなでおろしていると、
『ところでさ。どうしてリコリスちゃんが命を狙われているわけ?』
と、妖精王が尋ねてきた。
「リコリスには、四聖爵の呪殺を企てた容疑がかけられています。有罪判決が下れば死刑になる可能性が高く、あるいは、敵が口封じのためにリコリスの命を狙ってくる危険もありました」
『ふぅん。で、敵っていうのは?』
「フィアという女です。フィアは聖女を名乗っていますが、実際には呪術師でした。人間を奴隷のように操ったり、昏睡状態に陥れたりする呪いを使います――私に対しても、これらの呪いを掛けてきました。彼女は、呪いを新たに構築する能力を持っているようです」
へぇ。と、妖精王が感心している。
『そりゃすごいね。新しい呪いって、かなり作るの大変だよ? 回路一本組み間違えるだけで、簡単に命を持ってかれちゃうからねぇ』
「フィアの、生まれつきの才能なのだと思います。……あるいは、主人公補正のかかったチート能力かと」
『ちーとって何だい?』
「いえ。……ただの独り言です、どうかお気になさらず」
ともかく。と、ミュラン様は、説明を締めくくろうとした。
「フィアは王太子やそのほかの有力者を奴隷にして、自分の地位を固めようとしています。フィアを放置すれば、ますますこちらが不利になる。……なので、私はフィアが偽聖女であることを、女王陛下に進言しに行きます」
『女王にチクるだけで、うまく行くかねぇ? いっそ、目の前で呪いを解いて見せてやればいいのに』
ミュラン様が、かすかに眉をしかめた。
「……そうしたいのは山々ですが。未解析の呪いを解くことは、私には出来ません」
『ミュランに出来ないんだったら、リコリスちゃんにやらせればいいじゃないか』
えっ? 何でわたし??
「…………わ、わたしがですか? わたしが、呪いを解く?」
『うん、そう。王太子たちの呪いを、君が全部吸い取ってやりなよ』
当然のように、妖精王はうなずいてるけど。
「あの。妖精王さま? わたし、魔法も呪いも使えませんよ?」
『うそだー。そんなにイイ匂いしてるくせに、魔法が使えないなんてあり得ないよ! 君、魔法を吸収する体質だろ……この甘くてイイ香りは、そういう体質の匂いだ! 僕の母上も、同じ匂いだったよ』
くん、くん。と自分の匂いを確認してみたけれど。よく分からない。
「ミュラン様……わたし、魔法クサイですかね?」
「いや。僕には全く分からない……」
妖精王にしか分からない体臭みたいなモノなのかしら……
絶対できるってばー。と、妖精王アルベリヒは自信満々に言っていた。
『リコリスちゃんの匂いは、魔力吸収者の魔法香だ』
「あぶそーばー?」
『まぁ、名前なんてどうでもいいよ。ともかくこれまで、誰かに魔法をかけられても、すぐ解けてしまった経験はないか? あるいは魔法攻撃や呪いを受けても、無効化したりとか』
思い当たることは………………ある。
ありまくりだ。
「そういえば。ミュラン様の魔法で髪色を変えてもらったとき、すぐ消えちゃいましたよね」
「祭りのときか。……そうだったな」
「あと、フィアに襲われたとき。フィアの呪いが、わたしには効かないようでした。フィアがすごくイライラしてたんで……」
『ほらー。そういうの、全部、リコリスちゃんが吸収してたんだよ』
うそでしょう??
『ちなみに、吸収した魔法や呪いは、全部リコリスちゃんも使えるようになってるはずだよ? ほら、使ってごらん』
そう言うと、妖精王は勝手にわたしの手を取って指先を宙に躍らせる。
しゃーっ。と、わたしの手指から、赤い光の糸が飛び出した。
「うわっ。……これ、フィアがわたしを捕まえたときの糸だ!」
『ほらね。あ、こういう魔法も使えるんじゃない?』
今度は妖精王がわたしの左右の腕をとり、両手を頭に乗せさせた。
ぱっ。と、わたしの髪の色が変わる。
「あ! これ、ミュラン様が前に使ってた色替えの魔法!」
『君、まだまだ、いろいろ使えるよ? 吸い取ったモノは全部使えるから、フィアから呪いを吸い取ったことがあるなら、それも使いこなせるはずだ』
「呪いなんか、絶対使いたくありません!」
ミュラン様が、ぽかーんとした顔でわたしを見ていた。
『どうだい、四聖爵のミュラン君。お前よりリコリスちゃんのほうが、よっぽど才能あるみたいだよ?』
「そのようですね」
「待ってくださいよ、ミュラン様ったら。わたし、そんな大それた者じゃありませんから! これは何かの間違い……」
ミュラン様が、わたしの手を握りしめてきた。
「だとすると。1年前に僕がフィアに呪われたとき……呪いを消してくれたのは、リコリスだったのか!」
「え?」
熱っぽい目で、私を見つめている。
「君は看病のとき、無意識のうちに呪いを吸収していたんじゃないか? 昏睡状態から回復したとき、君がしっかりと手を握ってくれていたのを覚えているよ」
手を。……そ、そうでしたっけ?
「僕を呪うどころか、僕を救ってくれていたんだよ、君は……」
ありがとう。と、強く抱きしめられたけど。
わたしはすっかりテンパってしまって、あわあわするばかりだった。
『僕の前で、イチャつくなよ……むかつくなぁ』
で、どうするのさ? と、妖精王アルベリヒはわたしたちに言った。
『僕はリコリスちゃんを匿えば良いわけ? それとも、このまますぐにヴァリタニア王国へお戻りいただいたほうがいいのかな? フィアとかいう女の呪いを消し去るつもりなら、リコリスちゃんは必要な人材だと思うけど?』
わたしとミュラン様は、見つめ合ってうなずいた。
「わたしたち、ヴァリタニア王国に戻ります! 王太子たちに掛けられている呪いを消して、フィアの悪事を暴いてみせます!!」
『あ、そうする? リコリスちゃんと一緒に暮らせないのは、僕としてはすごく残念なんだけどなぁ……』
妖精王はいたずらっぽく笑いながら、ミュラン様に、
『あとで情報提供料よこせよ? チョコレートを荷馬車100台分だからな』
妖精王アルベリヒが、鼻血を噴きながら悶えて大喜びしている。ものすごくキモい。
「リコリス。……君の考えていることは手に取るようにわかるが、口に出してはいけない」
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「自信を持ったほうがいい。……美少女だ。いままで、言ったことがなかったか?」
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と、突っ込みを入れようとしたけど、がっつり食い気味の妖精王に割り込まれてしまった。
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「……落ち着いてください、アルベリヒ陛下」
ミュラン様が、事務的な態度で礼をした。
「もしリコリスを気に入っていただけたなら、数日だけ妖精の森でかくまってください。お礼は、荷馬車5台分のチョコレートです」
『良いともさ~っ!!』
ちょっとちょっとちょっと、待ってよ、ミュラン様! 冗談がキツすぎますってば。
「……ただし、リコリスは常に絶対に、ロドラと一緒に居させます。決して、陛下とふたりきりにはいたしません」
『えぇえええ?』
「このロドラめに、お任せくださいませ」
すべて折り込み済みといった様子で、ロドラが優雅に笑っている。
『……ちぇ。ロドラが言うなら仕方ない。分かったよ……まぁ良いや。眺めて愛でるだけにすればいいんだろ?』
残念そうに肩を落として承諾する妖精王アルベリヒ。そのすぐそばで、ミュラン様とロドラが目配せし合って笑っている……どうやら2人の間では、何かしらの打ち合わせが済んでいたらしい。
この人たちのノリには、いまいち付いていけない。
(ともかく、ミュラン様が死なずに済んでよかった……)
わたしが胸をなでおろしていると、
『ところでさ。どうしてリコリスちゃんが命を狙われているわけ?』
と、妖精王が尋ねてきた。
「リコリスには、四聖爵の呪殺を企てた容疑がかけられています。有罪判決が下れば死刑になる可能性が高く、あるいは、敵が口封じのためにリコリスの命を狙ってくる危険もありました」
『ふぅん。で、敵っていうのは?』
「フィアという女です。フィアは聖女を名乗っていますが、実際には呪術師でした。人間を奴隷のように操ったり、昏睡状態に陥れたりする呪いを使います――私に対しても、これらの呪いを掛けてきました。彼女は、呪いを新たに構築する能力を持っているようです」
へぇ。と、妖精王が感心している。
『そりゃすごいね。新しい呪いって、かなり作るの大変だよ? 回路一本組み間違えるだけで、簡単に命を持ってかれちゃうからねぇ』
「フィアの、生まれつきの才能なのだと思います。……あるいは、主人公補正のかかったチート能力かと」
『ちーとって何だい?』
「いえ。……ただの独り言です、どうかお気になさらず」
ともかく。と、ミュラン様は、説明を締めくくろうとした。
「フィアは王太子やそのほかの有力者を奴隷にして、自分の地位を固めようとしています。フィアを放置すれば、ますますこちらが不利になる。……なので、私はフィアが偽聖女であることを、女王陛下に進言しに行きます」
『女王にチクるだけで、うまく行くかねぇ? いっそ、目の前で呪いを解いて見せてやればいいのに』
ミュラン様が、かすかに眉をしかめた。
「……そうしたいのは山々ですが。未解析の呪いを解くことは、私には出来ません」
『ミュランに出来ないんだったら、リコリスちゃんにやらせればいいじゃないか』
えっ? 何でわたし??
「…………わ、わたしがですか? わたしが、呪いを解く?」
『うん、そう。王太子たちの呪いを、君が全部吸い取ってやりなよ』
当然のように、妖精王はうなずいてるけど。
「あの。妖精王さま? わたし、魔法も呪いも使えませんよ?」
『うそだー。そんなにイイ匂いしてるくせに、魔法が使えないなんてあり得ないよ! 君、魔法を吸収する体質だろ……この甘くてイイ香りは、そういう体質の匂いだ! 僕の母上も、同じ匂いだったよ』
くん、くん。と自分の匂いを確認してみたけれど。よく分からない。
「ミュラン様……わたし、魔法クサイですかね?」
「いや。僕には全く分からない……」
妖精王にしか分からない体臭みたいなモノなのかしら……
絶対できるってばー。と、妖精王アルベリヒは自信満々に言っていた。
『リコリスちゃんの匂いは、魔力吸収者の魔法香だ』
「あぶそーばー?」
『まぁ、名前なんてどうでもいいよ。ともかくこれまで、誰かに魔法をかけられても、すぐ解けてしまった経験はないか? あるいは魔法攻撃や呪いを受けても、無効化したりとか』
思い当たることは………………ある。
ありまくりだ。
「そういえば。ミュラン様の魔法で髪色を変えてもらったとき、すぐ消えちゃいましたよね」
「祭りのときか。……そうだったな」
「あと、フィアに襲われたとき。フィアの呪いが、わたしには効かないようでした。フィアがすごくイライラしてたんで……」
『ほらー。そういうの、全部、リコリスちゃんが吸収してたんだよ』
うそでしょう??
『ちなみに、吸収した魔法や呪いは、全部リコリスちゃんも使えるようになってるはずだよ? ほら、使ってごらん』
そう言うと、妖精王は勝手にわたしの手を取って指先を宙に躍らせる。
しゃーっ。と、わたしの手指から、赤い光の糸が飛び出した。
「うわっ。……これ、フィアがわたしを捕まえたときの糸だ!」
『ほらね。あ、こういう魔法も使えるんじゃない?』
今度は妖精王がわたしの左右の腕をとり、両手を頭に乗せさせた。
ぱっ。と、わたしの髪の色が変わる。
「あ! これ、ミュラン様が前に使ってた色替えの魔法!」
『君、まだまだ、いろいろ使えるよ? 吸い取ったモノは全部使えるから、フィアから呪いを吸い取ったことがあるなら、それも使いこなせるはずだ』
「呪いなんか、絶対使いたくありません!」
ミュラン様が、ぽかーんとした顔でわたしを見ていた。
『どうだい、四聖爵のミュラン君。お前よりリコリスちゃんのほうが、よっぽど才能あるみたいだよ?』
「そのようですね」
「待ってくださいよ、ミュラン様ったら。わたし、そんな大それた者じゃありませんから! これは何かの間違い……」
ミュラン様が、わたしの手を握りしめてきた。
「だとすると。1年前に僕がフィアに呪われたとき……呪いを消してくれたのは、リコリスだったのか!」
「え?」
熱っぽい目で、私を見つめている。
「君は看病のとき、無意識のうちに呪いを吸収していたんじゃないか? 昏睡状態から回復したとき、君がしっかりと手を握ってくれていたのを覚えているよ」
手を。……そ、そうでしたっけ?
「僕を呪うどころか、僕を救ってくれていたんだよ、君は……」
ありがとう。と、強く抱きしめられたけど。
わたしはすっかりテンパってしまって、あわあわするばかりだった。
『僕の前で、イチャつくなよ……むかつくなぁ』
で、どうするのさ? と、妖精王アルベリヒはわたしたちに言った。
『僕はリコリスちゃんを匿えば良いわけ? それとも、このまますぐにヴァリタニア王国へお戻りいただいたほうがいいのかな? フィアとかいう女の呪いを消し去るつもりなら、リコリスちゃんは必要な人材だと思うけど?』
わたしとミュラン様は、見つめ合ってうなずいた。
「わたしたち、ヴァリタニア王国に戻ります! 王太子たちに掛けられている呪いを消して、フィアの悪事を暴いてみせます!!」
『あ、そうする? リコリスちゃんと一緒に暮らせないのは、僕としてはすごく残念なんだけどなぁ……』
妖精王はいたずらっぽく笑いながら、ミュラン様に、
『あとで情報提供料よこせよ? チョコレートを荷馬車100台分だからな』
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