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第四話

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 文化祭当日。
 部長の小山先輩、副部長の結城先輩、それから部のムードメーカーである桃野先輩は一人ずつ短編集や長編の話を書いて売っていた。

 私はというと、特別やる気などはなかった。

 盛り下げるのも申し訳ないので、本はショート・ショートを出した。短くても本は本だ。

(文化祭とはいえ、全然人来ないなぁ)

 本を買っていってくれたのは文芸部の知り合いだけで、外部の人が来ることはあっても買っていくことはなかった。
 部長はしょんぼりと肩を落とし、それを桃野先輩と結城先輩が慰めている。
 文化祭がめんどくさいとはいえ、ここで協調性がなければまたコミュニティから外れてしまう。
 私は先輩たちに声をかけることにした。

「ちょっと休憩しませんか?私なんか買ってきますよ」

 気分転換になればと思い、私は差し入れの飲み物を買いに行くことにした。
 学校の売店で、適当なお菓子と飲み物を買う。
 売店を出てブースに戻ろうと、学校の外の廊下を歩いていたときだ。綺麗な青年に声をかけられた。

「すみません、文芸サークルの出し物ってどこでやってるか知ってますか?」

 ……文芸サークルを探している美形がいた。

「文芸サークルですか?それなら、私部員なんで……案内しますよ」

 そう言うと、彼は嬉しそうにはにかみ、「良かった、ありがとう」と言った。
(いやいやいや……!美形すぎるでしょ……。こんなの連れて帰ったら部長たちに「ナンパ!?」とか騒がれてもおかしくないな…)
 両手が塞がっているので、「こっちですよ」と声をかけながら文芸サークルのブースへ戻った。
 ブースでは、売れた本の数をノートにまとめている小山先輩と世間話をしている桃野先輩、結城先輩がパイプ椅子に座っていた。

「あ、三船ちゃんおかえ……え!イケメン!?」
 真っ先に反応したのは、当然桃野先輩だった。
「小山くーん!三船ちゃんが!お持ち帰りしてるよ!イケメンを!」
「何!?あの三船がか!?」
 あのってなんだ。
「これ、お菓子とジュースとコーヒー、買ってきました。好きなの取ってください。それと、この人が文芸サークルを探していたので案内しただけですよ。ナンパはしていません」

 キャーキャー騒ぐ小山先輩と桃野先輩を無視して、お菓子をブースの横に置く。

「チョコバーあるじゃん、やった」
 イケメンに大した反応をすることもなく、結城先輩はチョコバーを食べ始めた。
「えー。お名前をお聞きしてもいいかしら?」
 ニコニコと桃野先輩が質問する。
「初めまして、潮と言います。本があると聞いて買いに来たのですが、いいですか?」
 イケメン君は潮と言うらしい。潮くんは積み立てられてる文芸誌を手にとってパラパラと捲っていた。
「もちろん!一冊二百円だよ」
「ありがとうございます。ここにあるものは、全部同じ作品なんですか?」
「いや、こことここが別でね。全部で三種類あるよ。ただ、あんまり長い作品を書く人が居ないから、合同誌みたいな形にしてるんだよ」
「へぇ……」
三つに分けられた文芸誌のうち、先程買わなかったニ冊を手に取った彼は「こっちのもください」と言った。
「うふふ~。嬉しいねぇ。購入してくれてありがとうね!」桃野先輩は嬉しそうに潮くんに微笑む。
「ちなみに、どうして今日は買いに来てくれたの?」
小山先輩がすかさずリサーチする。そうだ、ぼーっと見てるだけじゃなくてこのイベントに参加しなくては。
 メモを取ろうと、慌てて机に合ったシャーペンとメモ用紙を手に取る。

「本が読めると聞いたので」

 彼はそれだけ言ってにっこり笑った。
 思ったより淡白な回答だったので、「そ、そうか」と小山先輩も少しがっかりしていた。(でもメモはきちんと取っていた)
 がっかりした様子を見て、潮くんはニコニコはしていたが、「なんで?」という顔もしていた。
 私はせっかく買ってくれたのに、小山先輩ががっかりしたままになるのも良くないと思い、潮くんに質問を投げかけた。

「ちなみに、どんな作品が読みたいとかありますか?他のイベントや来年の文化祭で作品を出すときの参考にしたいんですが……」
「え、今日以外にも本があるの?」
「う、うん……。基本的に半年に一回くらいですけど……」
「ふぅん……」
 潮くんは何かを考え込む様子で、少し下を向き顎に右手を添えた。
「あの」
 潮くんは顔を上げ、小山先輩の方を向いて言った。
「入部することはできますか?」
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