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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
11 反撃開始 その③
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「ギイイイイッ!」
苦痛と怒りの入り混じった声を魔物が上げる。
俺に憎悪の入り混じった顔を向けるが、その時には既に、俺は大きく後方に跳び、距離を取っていた。
和花の魔術の邪魔にならないためだ。
「其は在り得ざる鎖。神喰らいの餓狼を縛るモノ。貪り喰らうモノよ、鎖を器に今ここに。幻想より来たれ、神獣縛鎖!」
詠唱の終わりと共に、新種の魔物を囲むようにして、虚空から無数の鎖が現れる。
それは蛇のようにうねり、空を駈ける。
瞬時に新種の魔物に撒き付くと、締め上げながらその場に固定した。
「ガアアアアアアッ!」
新種の魔物は絶叫すると、自らの身体を脹れあがらせる。
強化した肉体で、自分を拘束する鎖を引き千切ろうとしたのだ。
だが、無駄だ。
和花が、俺達の居た世界の神話。
北欧神話に出てくる神食いの狼、フェンリルを拘束したというグレイプニルをイメージして作った神獣縛鎖は、物理的な力では破壊できない。
捕えたモノをその場に空間固定する、という法則を固定化したアレは、最低でも何らかの魔術で干渉しない限り自由になることは出来ない。
その事に気付いたのか、新種の魔物は俺が斬り飛ばした腕に顔を向ける。
「オオオンンンンンッ!」
新種の魔物が吠え声を上げると、杖を握ったまま斬り飛ばされた腕は、傷口から何本もの触腕を伸ばし、本体に合流しようと蠢く。しかし、
「させるかよ!」
すでに気付いていた五郎が、迎撃に動く。魔術により創り出した大包丁、正宗を振りかぶり、全力で振り抜く。
斬撃を飛ばす能力を持った正宗は、サイコロ状になるほど細かく、魔物の腕を粉砕した。
そこにダメ押しで、俺は蜻蛉斬りを投げつける。
「貫き砕け! 蜻蛉斬り!」
俺が投げつけると、蜻蛉斬りは高速で回転しながら、新種の魔物の杖を目掛け突進する。
鉄が砕けるような激音と共に、蜻蛉斬りに貫かれた杖は粉々に砕け散った。
新種の魔物の動きを封じ、武器も奪った。
けれど最後の最期まで、新種の魔物は足掻きを見せる。
「ゴオオオオオオイイイッ!」
新種の魔物は大きく叫び声を上げると、周囲の魔物を呼び寄せる。
動きを封じられたまま、胴体に縦の切れ目を作り出し、巨大な口に変える。
その口の中を目掛けて、周囲の魔物は走り出す。
決して諦めることなく、どこまでも戦い続けようとする魔物。
それを俺は、心の中で称賛する。
必ず打ち倒さなければならない敵ではあるが、ここまで足掻き続ける根性は好きだ。
だからこそ、こちらも全力で叩き潰す。
「制圧射撃! 新種の魔物に他の魔物を近づけさせるな!」
俺の号令に応え、魔術師のみんなは攻撃魔術を一斉に撃ち放つ。
新種の魔物を囲むようにして、近付く周囲の魔物を吹っ飛ばしていった。
更に、有希が追撃で影鰐の群れを放つ。
「一食い、二死狩り、三剣、四深、五魅憑き、六黒、七楽、八咲、九骸。
全員出て来るっすよ!」
有希が創り出した疑似魔物である影鰐の全て。名前を与えた九体を完全召喚する。
それぞれが持つ固有の名を、創り手たる有希に呼ばれ最大限に活性化された影鰐たちは、膨大な魔力の消費と引き換えに猛々しく地を走る。
次々に魔物の群れを食い千切り、動きを封じられた新種の魔物すら破壊していく。
けれど、新種の魔物は足掻き続ける。
「ルオオオオオオッ!」
吠え声をあげると、影鰐に破壊される傍から高速再生を行い、一進一退を見せる。
それを防ぐために、俺は地面に突き刺したままの村正を引き抜く。
余分な魔力消費を抑えるために、召喚していた蜻蛉斬りに供給する魔力をカット。
その分の魔力を村正に注ぎ込む。
どろりと、視覚化するほどの魔術毒を生成し滴らせながら、俺は新種の魔物目掛け突進する。
「和花! 鎖を解いて!」
【分かった! ぬかるんじゃないぞ!】
俺の踏み込みに合わせ、攻撃の邪魔になる鎖は消え失せる。
即座に新種の魔物は逃げようとするが、もう遅い。
上段からの一閃を、俺が放つ方が速い。
脳天から股間まで真っ直ぐに断ち斬る。
「ク……ォ……オオッ……」
新種の魔物は、傷口を蠢かせて繋げようとするも叶わない。
俺が斬りつけると同時に流し込んだ魔術毒に動きを阻害され、再生すら滞る。
そこに、俺は横一文字に二の太刀を叩き込み、更に×の字に袈裟切りと逆袈裟切りを振るい、新種の魔物をバラバラにする。
即座に俺は飛び退く。皆の攻撃の邪魔にならないようにするためだ。
俺の動きに合わせ、
「撃て!」
カルナが指揮する部隊が、一斉に攻撃魔術をバラバラになった新種の魔物目掛けて撃ち放つ。
再生することさえ出来ずに、新種の魔物は跡形もなく破壊された。
その途端、周囲の魔物の動きが鈍る。それまで曲がりにも見せていた連携は消え失せ、それぞれがてんでバラバラに動き出した。
「新種の魔物は倒した! あとは各自魔物を個別に殲滅! 連携を取って事に当たって!」
俺の指示に、みんなは迅速に反応してくれる。
カルナ達、指揮者権限を持つ隊長格が部隊のみんなに指示を出し、それぞれが従う。
(うん、これなら大丈夫。戦えなくなった人も居ないみたいだし、時間は掛かっても全滅できる。あとは――)
「和花。周りに、他の魔物が居るかどうかは分かる?」
【魔術で索敵する限りは居らん】
「ならそのまま、周辺の警戒をしてくれる? なにかあったら、どんな細かいことでも良いから連絡して」
【分かった。その代り、わしは戦いに回れん。護衛までは要らんが、索敵以外に手は回せんぞ】
「うん、それで良いよ。索敵に集中して。ありがとう、助かるよ」
俺は和花に返すと、
(さて、俺も頑張らないと)
率いている部隊の魔術師たちに指示を出し、魔物たちを倒していく。
それから小一時間ほど経って、ほとんどのみんながヘロヘロになる中、俺達は魔物の全てを倒し切った。
苦痛と怒りの入り混じった声を魔物が上げる。
俺に憎悪の入り混じった顔を向けるが、その時には既に、俺は大きく後方に跳び、距離を取っていた。
和花の魔術の邪魔にならないためだ。
「其は在り得ざる鎖。神喰らいの餓狼を縛るモノ。貪り喰らうモノよ、鎖を器に今ここに。幻想より来たれ、神獣縛鎖!」
詠唱の終わりと共に、新種の魔物を囲むようにして、虚空から無数の鎖が現れる。
それは蛇のようにうねり、空を駈ける。
瞬時に新種の魔物に撒き付くと、締め上げながらその場に固定した。
「ガアアアアアアッ!」
新種の魔物は絶叫すると、自らの身体を脹れあがらせる。
強化した肉体で、自分を拘束する鎖を引き千切ろうとしたのだ。
だが、無駄だ。
和花が、俺達の居た世界の神話。
北欧神話に出てくる神食いの狼、フェンリルを拘束したというグレイプニルをイメージして作った神獣縛鎖は、物理的な力では破壊できない。
捕えたモノをその場に空間固定する、という法則を固定化したアレは、最低でも何らかの魔術で干渉しない限り自由になることは出来ない。
その事に気付いたのか、新種の魔物は俺が斬り飛ばした腕に顔を向ける。
「オオオンンンンンッ!」
新種の魔物が吠え声を上げると、杖を握ったまま斬り飛ばされた腕は、傷口から何本もの触腕を伸ばし、本体に合流しようと蠢く。しかし、
「させるかよ!」
すでに気付いていた五郎が、迎撃に動く。魔術により創り出した大包丁、正宗を振りかぶり、全力で振り抜く。
斬撃を飛ばす能力を持った正宗は、サイコロ状になるほど細かく、魔物の腕を粉砕した。
そこにダメ押しで、俺は蜻蛉斬りを投げつける。
「貫き砕け! 蜻蛉斬り!」
俺が投げつけると、蜻蛉斬りは高速で回転しながら、新種の魔物の杖を目掛け突進する。
鉄が砕けるような激音と共に、蜻蛉斬りに貫かれた杖は粉々に砕け散った。
新種の魔物の動きを封じ、武器も奪った。
けれど最後の最期まで、新種の魔物は足掻きを見せる。
「ゴオオオオオオイイイッ!」
新種の魔物は大きく叫び声を上げると、周囲の魔物を呼び寄せる。
動きを封じられたまま、胴体に縦の切れ目を作り出し、巨大な口に変える。
その口の中を目掛けて、周囲の魔物は走り出す。
決して諦めることなく、どこまでも戦い続けようとする魔物。
それを俺は、心の中で称賛する。
必ず打ち倒さなければならない敵ではあるが、ここまで足掻き続ける根性は好きだ。
だからこそ、こちらも全力で叩き潰す。
「制圧射撃! 新種の魔物に他の魔物を近づけさせるな!」
俺の号令に応え、魔術師のみんなは攻撃魔術を一斉に撃ち放つ。
新種の魔物を囲むようにして、近付く周囲の魔物を吹っ飛ばしていった。
更に、有希が追撃で影鰐の群れを放つ。
「一食い、二死狩り、三剣、四深、五魅憑き、六黒、七楽、八咲、九骸。
全員出て来るっすよ!」
有希が創り出した疑似魔物である影鰐の全て。名前を与えた九体を完全召喚する。
それぞれが持つ固有の名を、創り手たる有希に呼ばれ最大限に活性化された影鰐たちは、膨大な魔力の消費と引き換えに猛々しく地を走る。
次々に魔物の群れを食い千切り、動きを封じられた新種の魔物すら破壊していく。
けれど、新種の魔物は足掻き続ける。
「ルオオオオオオッ!」
吠え声をあげると、影鰐に破壊される傍から高速再生を行い、一進一退を見せる。
それを防ぐために、俺は地面に突き刺したままの村正を引き抜く。
余分な魔力消費を抑えるために、召喚していた蜻蛉斬りに供給する魔力をカット。
その分の魔力を村正に注ぎ込む。
どろりと、視覚化するほどの魔術毒を生成し滴らせながら、俺は新種の魔物目掛け突進する。
「和花! 鎖を解いて!」
【分かった! ぬかるんじゃないぞ!】
俺の踏み込みに合わせ、攻撃の邪魔になる鎖は消え失せる。
即座に新種の魔物は逃げようとするが、もう遅い。
上段からの一閃を、俺が放つ方が速い。
脳天から股間まで真っ直ぐに断ち斬る。
「ク……ォ……オオッ……」
新種の魔物は、傷口を蠢かせて繋げようとするも叶わない。
俺が斬りつけると同時に流し込んだ魔術毒に動きを阻害され、再生すら滞る。
そこに、俺は横一文字に二の太刀を叩き込み、更に×の字に袈裟切りと逆袈裟切りを振るい、新種の魔物をバラバラにする。
即座に俺は飛び退く。皆の攻撃の邪魔にならないようにするためだ。
俺の動きに合わせ、
「撃て!」
カルナが指揮する部隊が、一斉に攻撃魔術をバラバラになった新種の魔物目掛けて撃ち放つ。
再生することさえ出来ずに、新種の魔物は跡形もなく破壊された。
その途端、周囲の魔物の動きが鈍る。それまで曲がりにも見せていた連携は消え失せ、それぞれがてんでバラバラに動き出した。
「新種の魔物は倒した! あとは各自魔物を個別に殲滅! 連携を取って事に当たって!」
俺の指示に、みんなは迅速に反応してくれる。
カルナ達、指揮者権限を持つ隊長格が部隊のみんなに指示を出し、それぞれが従う。
(うん、これなら大丈夫。戦えなくなった人も居ないみたいだし、時間は掛かっても全滅できる。あとは――)
「和花。周りに、他の魔物が居るかどうかは分かる?」
【魔術で索敵する限りは居らん】
「ならそのまま、周辺の警戒をしてくれる? なにかあったら、どんな細かいことでも良いから連絡して」
【分かった。その代り、わしは戦いに回れん。護衛までは要らんが、索敵以外に手は回せんぞ】
「うん、それで良いよ。索敵に集中して。ありがとう、助かるよ」
俺は和花に返すと、
(さて、俺も頑張らないと)
率いている部隊の魔術師たちに指示を出し、魔物たちを倒していく。
それから小一時間ほど経って、ほとんどのみんながヘロヘロになる中、俺達は魔物の全てを倒し切った。
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