95 / 115
第二章 街予定地の問題を解決しよう編
9 進撃開始 その①
しおりを挟む
俺が率いる部隊を先頭に、上空から見ると逆Vの字になるような陣形を取る。
右斜め後ろをカルナが、左斜め後ろを五郎が率いている。
ここまでが、魔物を見つけると同時に襲撃を行い、即時撤退を行う部隊だ。
そのサポートに回る形であと2部隊が、カルナ達の更に後ろに位置している。
周囲の索敵をメインに動く彼らは、遠距離攻撃が得意な有希と五十鈴に率いられている。
魔物を引き付けつつ撤退する際に援護射撃を行い、撤退戦をスムーズに行えるよう動いて貰う予定だ。
残り1部隊は、前線基地に待機して貰っている。
俺達が撤退し前線基地に出ると同時に跳び出して、場合によっては挟み撃ちや、部隊の入れ替えを想定していた。
「あと5分で予定地点まで到着するけど、周囲に敵影はある?」
俺は、通信用の魔導具を介し、後方の索敵を担当する五十鈴に尋ねる。
イヤリングの形をした魔導具は、同じ型の魔導具を持った相手なら、意識するだけで音声を繋げることが出来る。
返事は、すぐに返ってきた。
【敵影なしやわ~。このまま予定地まで、到着しといてぇ~】
すぐ傍で話しているような鮮明な声が聞こえる。それに小さな声で俺は返した。
「志願者のみんなは、様子はどう?」
【問題なしやわ~。実戦初めてで、緊張しとるけど、これなら十分やね~。なんかあっても、こっちはうちがどうにかするんよ~】
「ありがとう。任せるよ。その代り、俺の部隊は、俺が守るから」
魔物の排除作戦と同時に、志願者の強制強化も目的の内なので、それを意識しながら更に進む。
身体強化魔術を使っての進軍速度は、その気になれば時速50キロぐらいまで出せるけど、可能な限り疲労を避ける意味でもわざと速度を落とし、30キロ程度で進んでいる。
その速度のまま進んで、予定地点に辿り着くよりも早く、魔物の一団に巡り合った。
「進軍停止。陣形を維持したまま、警戒に当たって」
通信で皆に伝え、魔物と距離を取って対峙する。
距離は、まだ200mは離れている。
けれど、油断できる距離じゃない。その気になれば、10秒ちょっとで詰めて来ようと思えば来れる距離だ。
だから俺達の部隊は警戒をしたままで、魔物の判別は後方の部隊に任せる。
僅かな間を空けて、結果は返ってきた。
【下級18体、中級4体の総数22体です!】
僅かに上擦った、緊張した声が聞こえる。
経験値稼ぎのために、魔物の判別は志願者に任せている。
地味に見えて、敵の力量把握は優先事項の1つなので、出来るようになって貰わないといけない。
「了解。判別結果を前提に、これから動くよ」
全員に通信で伝えたあと、五十鈴だけに通信を合わせる。
「五十鈴、伏兵は居ると思う?」
少し前にシュオルで戦った経験を活かし、五十鈴に尋ねる。
あの時は、発見した魔物を攻撃している間に、横合いから攻撃されたのだ。
今回は、そうならないという保証はない。
だから訊いてみたんだけど、五十鈴の答えは気楽な物だった。
【無いと思うわ~。周りの地形やと、伏兵出来るような場所あらへんし~。超長距離攻撃できるほど離れた場所に居る可能性はあるけど~、それやったら使われる前に魔力の余震で分かるわ~】
魔術は行使する時に、周囲の魔力にも影響を与えるのだけど、それを魔術師は捉えることが出来る。
威力が大きければ大きいほど分かり易いので、五十鈴が言うのももっともなのだ。
そうして、安全だと言ってくれた五十鈴だけど、万が一の可能性も考えて提案をしてくれる。
【ほぼ確実に伏兵は居らんと思うけど~、念の為に制圧射撃を周りにしてみるわ~】
「威力偵察って事だね」
【そういうこと~。有希にも伝えといて~。あと、制圧射撃でなんか変化でるかもしれへんから~、気をつけといて~】
「分かった。発見した魔物が刺激されて動くかもしれないし、みんなには伝えとくよ」
俺は全員にこの事を伝え、なにがあっても対処できるよう警戒する中、五十鈴と有希は率いている部隊に号令をかける。
「それじゃ、詠唱開始~。有希の部隊が攻撃するのに合わせて~、向こう側に攻撃魔法ブチ込んで~」
「こっちの攻撃目標はあの辺り一帯っすよ。慌てないで良いから、落ち着いて、全員で合わせていくっすよ~」
緊張させないよう気を付けながらの2人の声に従って、後方の魔術師たちは各々魔術を起動する。
幾つもの魔術が活性化され、解き放たれる時を待ち、五十鈴と有希の声と共に放たれた。
「それじゃ、攻撃開始~」
「一斉攻撃っすよ~」
轟音が周囲に響く。
炎が、そして雷が。或いは圧縮された空気が目標とされる地点に叩き込まれ、土煙を上げて爆発する。
攻撃を叩き込まれた場所からは、何かが出て来る気配は無い。
けれど、目前の魔物達は一斉に興奮したように動き始める。
まっすぐにこちらに向かって来る魔物が4体。手に魔術で作った武器を持っているから、アレは中級だろう。
それ以外の下級は、てんでバラバラに動き始めているだけだ。
それを確認し、俺は開戦の号令を上げた。
「近接戦用意!
俺の部隊と、カルナと五郎の部隊は、こちらに向かって来る中級の殲滅!
後方部隊は周囲の警戒を第一に、余裕があれば援護射撃!
可能なら返事を!」
即座に、返事はみんなから帰って来た。
その声に心強さを感じながら、俺は率いる部隊と共に、進撃を開始した。
右斜め後ろをカルナが、左斜め後ろを五郎が率いている。
ここまでが、魔物を見つけると同時に襲撃を行い、即時撤退を行う部隊だ。
そのサポートに回る形であと2部隊が、カルナ達の更に後ろに位置している。
周囲の索敵をメインに動く彼らは、遠距離攻撃が得意な有希と五十鈴に率いられている。
魔物を引き付けつつ撤退する際に援護射撃を行い、撤退戦をスムーズに行えるよう動いて貰う予定だ。
残り1部隊は、前線基地に待機して貰っている。
俺達が撤退し前線基地に出ると同時に跳び出して、場合によっては挟み撃ちや、部隊の入れ替えを想定していた。
「あと5分で予定地点まで到着するけど、周囲に敵影はある?」
俺は、通信用の魔導具を介し、後方の索敵を担当する五十鈴に尋ねる。
イヤリングの形をした魔導具は、同じ型の魔導具を持った相手なら、意識するだけで音声を繋げることが出来る。
返事は、すぐに返ってきた。
【敵影なしやわ~。このまま予定地まで、到着しといてぇ~】
すぐ傍で話しているような鮮明な声が聞こえる。それに小さな声で俺は返した。
「志願者のみんなは、様子はどう?」
【問題なしやわ~。実戦初めてで、緊張しとるけど、これなら十分やね~。なんかあっても、こっちはうちがどうにかするんよ~】
「ありがとう。任せるよ。その代り、俺の部隊は、俺が守るから」
魔物の排除作戦と同時に、志願者の強制強化も目的の内なので、それを意識しながら更に進む。
身体強化魔術を使っての進軍速度は、その気になれば時速50キロぐらいまで出せるけど、可能な限り疲労を避ける意味でもわざと速度を落とし、30キロ程度で進んでいる。
その速度のまま進んで、予定地点に辿り着くよりも早く、魔物の一団に巡り合った。
「進軍停止。陣形を維持したまま、警戒に当たって」
通信で皆に伝え、魔物と距離を取って対峙する。
距離は、まだ200mは離れている。
けれど、油断できる距離じゃない。その気になれば、10秒ちょっとで詰めて来ようと思えば来れる距離だ。
だから俺達の部隊は警戒をしたままで、魔物の判別は後方の部隊に任せる。
僅かな間を空けて、結果は返ってきた。
【下級18体、中級4体の総数22体です!】
僅かに上擦った、緊張した声が聞こえる。
経験値稼ぎのために、魔物の判別は志願者に任せている。
地味に見えて、敵の力量把握は優先事項の1つなので、出来るようになって貰わないといけない。
「了解。判別結果を前提に、これから動くよ」
全員に通信で伝えたあと、五十鈴だけに通信を合わせる。
「五十鈴、伏兵は居ると思う?」
少し前にシュオルで戦った経験を活かし、五十鈴に尋ねる。
あの時は、発見した魔物を攻撃している間に、横合いから攻撃されたのだ。
今回は、そうならないという保証はない。
だから訊いてみたんだけど、五十鈴の答えは気楽な物だった。
【無いと思うわ~。周りの地形やと、伏兵出来るような場所あらへんし~。超長距離攻撃できるほど離れた場所に居る可能性はあるけど~、それやったら使われる前に魔力の余震で分かるわ~】
魔術は行使する時に、周囲の魔力にも影響を与えるのだけど、それを魔術師は捉えることが出来る。
威力が大きければ大きいほど分かり易いので、五十鈴が言うのももっともなのだ。
そうして、安全だと言ってくれた五十鈴だけど、万が一の可能性も考えて提案をしてくれる。
【ほぼ確実に伏兵は居らんと思うけど~、念の為に制圧射撃を周りにしてみるわ~】
「威力偵察って事だね」
【そういうこと~。有希にも伝えといて~。あと、制圧射撃でなんか変化でるかもしれへんから~、気をつけといて~】
「分かった。発見した魔物が刺激されて動くかもしれないし、みんなには伝えとくよ」
俺は全員にこの事を伝え、なにがあっても対処できるよう警戒する中、五十鈴と有希は率いている部隊に号令をかける。
「それじゃ、詠唱開始~。有希の部隊が攻撃するのに合わせて~、向こう側に攻撃魔法ブチ込んで~」
「こっちの攻撃目標はあの辺り一帯っすよ。慌てないで良いから、落ち着いて、全員で合わせていくっすよ~」
緊張させないよう気を付けながらの2人の声に従って、後方の魔術師たちは各々魔術を起動する。
幾つもの魔術が活性化され、解き放たれる時を待ち、五十鈴と有希の声と共に放たれた。
「それじゃ、攻撃開始~」
「一斉攻撃っすよ~」
轟音が周囲に響く。
炎が、そして雷が。或いは圧縮された空気が目標とされる地点に叩き込まれ、土煙を上げて爆発する。
攻撃を叩き込まれた場所からは、何かが出て来る気配は無い。
けれど、目前の魔物達は一斉に興奮したように動き始める。
まっすぐにこちらに向かって来る魔物が4体。手に魔術で作った武器を持っているから、アレは中級だろう。
それ以外の下級は、てんでバラバラに動き始めているだけだ。
それを確認し、俺は開戦の号令を上げた。
「近接戦用意!
俺の部隊と、カルナと五郎の部隊は、こちらに向かって来る中級の殲滅!
後方部隊は周囲の警戒を第一に、余裕があれば援護射撃!
可能なら返事を!」
即座に、返事はみんなから帰って来た。
その声に心強さを感じながら、俺は率いる部隊と共に、進撃を開始した。
0
お気に入りに追加
676
あなたにおすすめの小説
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄生物の飼育員ってマジっすか!?~
白那 又太
ファンタジー
とあるアパートの一室に住む安楽 喜一郎は仕事に忙殺されるあまり、癒しを求めてペットを購入した。ところがそのペットの様子がどうもおかしい。
日々成長していくペットに少し違和感を感じながらも(比較的)平和な毎日を過ごしていた喜一郎。
ところがある日その平和は地獄からの使者、魔王デボラ様によって粉々に打ち砕かれるのであった。
目指すは地獄の楽園ってなんじゃそりゃ!
大したスキルも無い! チートも無い! あるのは理不尽と不条理だけ!
箱庭から始まる俺の地獄(ヘル)どうぞお楽しみください。
【本作は小説家になろう様、カクヨム様でも同時更新中です】
スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜
櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。
パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる