転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第一章 街を作る前準備編

8 2人の夜 リリスと陽色 いちゃいちゃ甘々 その①

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「リリス……?」

 遊ぶように弾むリリスの声に、俺は意識する事さえなく、彼女の名前を呼び視線を向ける。

「ただいま」

 視線の先にはリリスの姿。求めていた彼女は、俺を見詰めながら、喜びにあふれるような笑顔を浮かべてくれる。
 ただ、俺と逢えるだけで嬉しいのだと、伝えてくれるように。

 それだけで、心が満たされる。喜びが、広がっていく。
 ふわふわと浮かぶような心地好さと弾むような嬉しさに、俺はもっとリリスが欲しくて、迎えに行くように椅子から立ち上がろうとする。

 でも、それより早く、リリスは俺の傍に。
 立ち上がろうとした俺の胸に、そっと手を当てる。
 力を抜いても良いのだと、言葉も無く囁くように。
 
 ふっと、意識せず強張っていた身体が脱力する。
 ああ、自分はやはり疲れていたのだな、と。
 リリスのお蔭で、ようやく実感できた。

 弱音を吐くつもりはないけれど、甘えてしまいたくなる。
 俺は、求めるようにリリスを見詰め、リリスは受け止めるように柔らかく笑みを浮かべると、ふわりと俺の膝の上に乗ってくれた。

 やわらかな重みと、身体の感触。
 リリスが、今ここに居るのだという確かさを与えてくれる。
 それだけで、心地好い。
 その想いが、表情かおに出ていたのか?
 向き合うように体を預け、俺を見ていたリリスはくすくすと笑うと、

「おかえりって、言ってくれないの?」

 甘えるように上目づかいで俺を見詰め、ねだるように呼び掛ける。
 くすぐったい気持ちが湧き上がる。俺も小さく笑うと、

「おかえりなさい、リリス――」

 ぎゅっと抱きしめながら、

「逢いたかった……逢えて嬉しい」

 素直な想いを口にした。それに応えるように、リリスも俺を抱きしめてくれる。

「私もよ、陽色」 

 濡れしめった、熱を感じさせる声。
 囁かれるだけで、ぞわりと痺れるような甘さが走る。
 我慢できずに、頬にキスをする。匂い付けをするように、背中に手を這わせ身体を摺り寄せた。

「甘えんぼ……」

 くすくすと笑いながら、楽しそうにリリスは言う。されるがままに俺に身体を預けながら、さらに促すように抱き着いてくる。
 嬉しくて、安心する。求められているのだと、想えるから。

「甘えちゃいますよ……だって、こんなに逢えないとは、思わなかったんですから。随分、今回は長かったですね」

 頭を撫でながら、俺は静かに問い掛ける。するとリリスは、迷うような間を置いて、返した。

「ごめんね。みんなと、いっぱい話し合わなきゃいけない事があったから。
 でも、もう大丈夫。
 みんな、新しく作る街を発展させるのに、協力してくれるって。
 だから、ね……陽色……また、しばらく逢えない時が、あるかもしれないの……」

 ぎゅうっと、俺はリリスを強く強く抱きしめる。
 湧き上がった不安に、俺がリリスの言葉の意味を問い掛けるより早く、彼女は応えてくれた。

「みんなも、現世こちらに出て来れるよう、陽色から貰った私の権能を貸してあげようと思うの。
 私だけが守護するよりも、その方がずっと街は発展する筈だから。
 それにね、みんなも、みんなの勇者に逢わせてあげたいの。
 私が陽色を大事に想っているように、みんなも、自分の勇者を大切に想っているから。
 だから、陽色――」

 ごめんなさい

 泣き出すように、堪えるように、そう口にしそうになったリリスの言葉より早く、俺は言った。

「愛してるよ、リリス」
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