転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第一章 街を作る前準備編

6 神さん会議 その① 三人称視点

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 そこは無辺むへんにして広大な場所だった。上も下も無く、果ては無い。
 あるのはただ、神なる力。そこに座するは、神のみ。
 ゆえに、その場で言葉を発したのは、神であるリリスであった。

「みんな、そろったかしら」

 言葉一つで、天地が生まれる。神の力が満るこの場であれば、リリスにとっては造作もない。
 周囲に広がるは、どこまでも続く草原。太陽なき青空を天に仰ぎ、神々の集会場が今ここに創り出された。

「そろっているとも。応えるまでも無く、分かっているだろう?」

 リリスの言葉に返したのは、白髪蒼眼の壮年に見える神。
 胡坐をかきながら宙に浮かぶ彼は、造形神デミウルゴスである。

「もう、風情が無いわね。分かり切ってる事でも、言葉を交わせばコミュニケーションになるのよ」
「ふむ? そういうものか?」

 今のリリスの姿は、陽色と離れる前に見せた時と同じく少女の姿。
 鍛冶場の作業着姿でオッサンな見た目のデミウルゴスと居ると、最近の流行を知らない父親に娘がツッコミを入れているようにも見える。
 それぐらい、親しい雰囲気くうきが流れていた。

 もっともそれは、2神にのみ限った話ではない。
 この場に集まった無数の神々。
 あるモノは全身甲冑でその身を覆い、大剣を携えながら直立不動に立ち。またあるモノは、くつろいだ様子で横になりながら宙を漂い。中には人の姿ではなく、大きな黒猫の姿で草原に丸くなっている神もいる。
 その全てが、お互いを認め合うような親しさで満ちていた。
 
 和やかな気配が流れる中、デミウルゴスは他の神々を代表してリリスに問い掛ける。

「さて、リリス。今日、我ら全員を集めたのはどういう要件だ? 現世に実体を持って顕現できるお前が、わざわざこんなつまらん場所に戻ってまでび掛けたのだ。余程のことなのだろうな?」
「ええ、そうよ」

 リリスは、デミウルゴスの言葉に頷くと、楽しそうに言った。

「街をひとつ、プレゼントして貰える事になったの。私が守護女神になっても良い街を、作ってくれるって言って貰えたの」
「待て。どういうことだ、それは」

 リリスの言葉に問い掛けたのは、全身甲冑をまとい大剣を携えた神、不屈の女神であるピュラーである。

「そのままの意味よ、ピュラー。私の陽色ゆうしゃが、私に街をプレゼントしてくれるって言ったの。どう、羨ましい?」
「そういう問題ではない」

 遊ぶような口調で応えるリリスに、ピュラーは切り裂くような鋭い声で返す。

「街を作るというのなら、そこに人が住むという事だろう。街ひとつを私物化するつもりか」
「そんなわけないでしょう」

 ため息をつくようにリリスは応える。

「守護女神になるのだから、街に住む人たちみんなが、住んでて好かったって思える街になるように、頑張るつもりよ。私物化だなんて、そんなはしたないこと、しないわよ」
「だったら、どういうつもりで我らをんだんだ」
「自慢したかったの♪」
「ただの惚気のろけじゃないか!」

 盛大に突っ込むピュラー。
 しかしリリスはお構いなしに、喜びを全身から溢れさせながら、更に惚気のろける。

「だって、陽色には今までいっぱいいっぱいプレゼント貰ったけど、街ひとつプレゼントして貰えるなんて、今回が初めてなんだもの。嬉しくって嬉しくって、誰かに伝えたかったの」
「ひっそりと心の中で留めておかんか! お前は!」

 気のせいか、微妙に泣き声交じりでツッコミを入れるピュラー。
 そしてそれを生暖かい目で見守る他の神々。完全に、遊び遊ばれな状況だったが、話の内容が内容なので、横から他の神が口を挟んだ。

「貴女の勇者が貴女想いなのは、今までたくさん聞いてるから、よく知ってるわ、リリス。でも今は、話し合うべきはそこではないんでしょう?」

 聞く者を落ち着かせるような、包容力のある声で口を挟んだのは、人並みの大きさを誇る黒猫の姿をした、獣の女神バステト。

「貴女は街の守護女神になるというけれど、そのことで、私達をんだんじゃないの?」
「ええ。もちろん、それがみんなをんだ理由よ」
「どういうことかしら?」

 バステトの問い掛けに、リリスは皆の意識が自分に十分に向かうのを待ってから、答えた。

「私だけじゃなく、みんなにも街の守護に協力して欲しいの」
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