異世界にて料理勝負をする事になりました

笹村

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第2章 沿岸地帯ジェイドの海産物勝負

3 海辺の街を散策して料理のアイデア探し その①

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 時刻は、まだお昼には時間のある頃。
 さんさんとした陽が降り注ぐ中、五郎たちはジェイドの街を散策していた。

「あっ、コプラの実が売ってる! リナ、一緒に飲もう!」

 潮風が香る中、レティシアは屋台を見つけ、カリーナの手を引っ張って連れていく。

「ちょ、待って、レティ!」

 五郎達のことを気にしながらカリーナは引っ張られると、

「コプラの実、2つ下さい!」

 屋台の店主から、コプラの実を2つ受け取ったレティシアに、一つを渡される。

「もう。私達だけじゃないんだから、勝手に行っちゃダメだよ」
「ん~? 別に気にしなくても。でしょ、ごろ~さん?」

 苦笑しながら追い付いた五郎に、レティシアは甘えるような声を上げる。

「ああ、気にするこたねぇよ。料理の種探しに来てるとはいえ、折角なんだから、楽しまねぇとな。旅行気分で見て回ろうぜ」
「いいっすね~。だったらオレっちも、コプラの実を一つ。本場の採れたて、飲んでみたかったんっすよね~」
「では我輩も。一つ貰えますかな?」

 男連中も、コプラの実を頼む。
 コプラの実は、五郎たちの元居た世界のヤシの実に似た木の実なのだが、ジェイドでは砂浜付近の海の中で山ほど生える。
 採れすぎるほど採れるので、内陸部の王都に輸出するほどだ。

「んっ……あ、やっぱ、王都で出回ってるのとは違ぇな」

 鉈で硬い殻を割り切られたコプラの実に、一杯に詰まった果汁を飲んで、五郎は思わず声を上げる。
 陸路で何日もかけて運ばれて来た、王都で流通している物は、すっきりとした甘味にほんのりとした酸味が特徴なのだが、いま飲んでいる物は、それより甘みが強い。
 けれど、クドいということは無く、後を引かない爽やかな甘さである。

「ジェイドの方が熱いから、甘味が強いこっちの方が受けが良いだろうな」

 熱湯で煮たあと天日で干された麦わらをストロー代わりに使い、しっかりと五郎は味わう。

「どうでしょう? 前に、こちらの料理を食べた事がありますけど、割と薄味ベースでした」
「へぇ? そりゃ、ますますこっちの料理、食べてみねぇと駄目だな」

 カリーナの言葉に、にかっと笑う五郎。
 見た目がごついので、結構迫力がある。

 それにカリーナは、ふいっと視線を逸らすと、

「そうですね。色々と、食べてみないと」

 レティシアの背中に隠れるようにして移動する。微妙に、その頬は赤らんでいた。
 そんなカリーナに、レティシアは肩をすくめるようにして、

「うんうん、そうだよね。食べてみないことには始まらないけど、それには先立つものが。
 あいにくと、いま手元にないのです」

 残念そうに言った。これに五郎は、笑顔を浮かべたまま返す。

「だったら奢るぜ。なに、俺の所のスポンサーから、軍資金はたっぷり貰ってるからな。全員で、食べに行こうぜ」
「えっ、で、でもそんなの……」

 慌てて断ろうとするカリーナに、

「そう言わないでくれよ。俺は独りで食うより、大勢で食うのが好きなんだ。ここは、こっちの顔を立てると思って。頼むよ、な?」

 五郎は茶目っ気を込めて返した。
 これにカリーナは顔を赤らめると、それを見られまいとするかのように下を向き、

「それは、その……私も1人より、みんなで食べる方が好きですけど、だからって、その……奢って貰うというのも……」

 もごもごと言い訳するように言った。
 それに五郎が何か返すよりも早く、レティシアは元気一杯に言った。

「だったら、私達がここの料理を案内します。前に滞在した事があって、幾つか食べてみた事があるんです」
「ほう、それは良いですな。楽しみですぞ。ちなみに我輩は、ただ飯ほど好きな物は無いので、ありがたく奢られるがままに頂きますぞ」

 アルベルトの言葉に五郎は笑いながら、

「ああ、そりゃ、俺も同じ意見だ。ただ飯は、美味いからなぁ。
 でもそれ以上に、誰かに勧めて貰えた料理を食べるのは好きなんだ。
 自分だけじゃ、出会えなかった味に出会えたりするからな。
 だから、案内してくれると助かるんだ」

 カリーナに手を差し出すようにして声を掛けた。
 これにカリーナは、うつむいたまま、小さな声で、

「……はい。その……頑張ります」

 どこか生真面目に返した。そんなカリーナに皆が苦笑する中、

「それじゃ、まずは屋台巡りしてみませんか? 色々あって、楽しいですよ」

 レティシアの言葉に連れられて、皆は食べ歩きをしていった。
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