34 / 40
Silver snow16*シンデレラになりたい。
2
しおりを挟む
*
そして昼休み。姫乃ちゃんに呼び出されたわたしは屋上階段にいた。
「雪羽」
「復帰したばっかりなのに、こんな寒いところに呼び出してごめんね」
姫乃ちゃんが手をぱんっと合わせて謝る。
「ううん。姫乃ちゃん話って?」
姫乃ちゃんの顔が真剣な表情に変わった。
「本気で雪羽と銀のこと決着つけたいなと思って」
わたしは動揺する。
「え……?」
姫乃ちゃんは右手で自分の左手の袖をぎゅっと掴む。
「春花と競いながらあんなに必死にマラソン走る雪羽を見て、このままじゃだめだと思った」
「だから勝負受けて欲しい」
「勝負って何を…」
「お互い銀に0時ちょうどに家に来るように伝えて」
「それぞれの家で銀が来るのをただ待つの」
「それで銀が来たら勝負は勝ち」
「負けたら銀のことは綺麗さっぱり諦める」
相可くんのこと綺麗さっぱり諦める――?
姫乃ちゃんは罪悪感に満ちた顔を浮かべる。
「せっかく雪羽、銀の隣の席守れたのに」
「ほんと意地悪だよね、ごめん」
「だけど、中2の時、銀とキス出来なかったから…」
姫乃ちゃんは涙ぐみながら感情を爆発させた。
「今度は銀とちゃんとキスしたい!」
「銀のシンデレラになりたい!!」
顔を見たら分かる。
姫乃ちゃんが本気で言ってること。
そして、勝負なんかしなくても分かってしまう。
わたしは相可くんには選んでもらえない。
だってわたし“黒ずきん”だから。
“シンデレラ”には絶対に敵わない。
それでも姫乃ちゃんは、
――ハチミツトーストおいしいっ。
そうと決まればよし、早速、イメチェンだ。
――雪羽、一緒に写メ撮ろ。
わたしに楽しい時間をくれた。
――行かないよ。一緒に走る。
――友達だからだよ。
――じゃあ今日からライバルってことで。雪羽のこと全力で応援するね。
――雪羽、頑張って!
いっぱい幸せな気持ちをくれたから――。
「…分かった」
わたしの両目に薄っすらと涙が浮かび上がる。
絶対に諦めない。
「わたしも相可くんのシンデレラになりたいから」
姫乃ちゃんは指で自分の涙を拭う。
「雪羽、勝負、受けてくれてありがとう」
「銀、誘いに行こ」
「うん」
*
10分後、空き教室の前に姫乃ちゃんと着いた。
「銀、昼はいつもここで寝てるんだよね」
そうなんだ…知らなかった…。
「ゆり、ここで寝てること知らないから助かる」
「ゆりちゃんも?」
「うん」
姫乃ちゃんの眉が下がる。
「ゆりにもし聞かれて勝負のこと知られたら阻止されそうだしね」
確かに…。
「雪羽、私から誘ってもいい?」
「うん」
「じゃあ少しだけここで待ってて」
ガラッ。
姫乃ちゃんは扉を開けて空き教室の中に入って行く。
あ、相可くんの声が聞こえて…。
『何? 姫乃』
『高校が終わったら0時ちょうどに私の家に来て欲しい』
『は? なんで?』
相可くんは驚いた声を出す。
『お願い』
『…分かった』
扉が開いた。
姫乃ちゃんが中から出てくる。
「雪羽、頑張って」
「うん」
わたしは勇気を振り絞り、空き教室の中に入った。
相可くんは、わたしを見て驚く。
「は? 今度は黒図?」
「ごめんなさい」
「姫乃ちゃんがここに入って行くのが見えて…」
…嘘だけど。
「それで何?」
ドキン、ドキン、と高鳴る胸に右手を当てる。
勇気出せ、わたし!
「高校が終わったら…0時ちょうどにわたしの家に来て欲しいです」
はぁ…言えた。
まだ胸がドキドキしてる…。
相可くんは何かを察した表情を浮かべる。
「…分かった」
約束してしまった。
これで負けたら、席替え前に今度こそほんとうにわたしの恋は終わってしまうのに。
*
昼休みが終わる少し前。銀は1年A組の教室に戻ると、扉の前で凛が腕を組んで待っていた。
「…銀、よく寝れた?」
凛が小声で尋ねると、
「あぁ」
銀は短く答える。
「何? 深刻そうな顔して」
「何かあった?」
「…姫乃と黒図に家に0時ちょうどに来るように誘われた」
「なるほどね」
「ついにどちらかを失う時が来ちゃったんだね」
凛の表情が悪魔のような表情に変わる。
「それで銀、どっちを選ぶの?」
「もちろん、姫乃だよね?」
銀は静かに口を開き、答えた。
「もう決めてる」
*
23時50分。わたしは自分の部屋にいた。
ベットに座りながらスマホで時間を確認する。
0時まであと10分。
相可くんはまだ来てない。
わたしは不安に陥る。
どうしよう。
もう姫乃ちゃんのところに相可くんいるかもしれない。
そう思ったらベランダのカーテン、怖くて開けられない。
スマホをベットに置いて降りると、カーテンで隠れたベランダの扉の前まで歩いて行く。
「…お願い」
わたしは祈るように両指を絡めた。
相可くん、会いに来て。
そして昼休み。姫乃ちゃんに呼び出されたわたしは屋上階段にいた。
「雪羽」
「復帰したばっかりなのに、こんな寒いところに呼び出してごめんね」
姫乃ちゃんが手をぱんっと合わせて謝る。
「ううん。姫乃ちゃん話って?」
姫乃ちゃんの顔が真剣な表情に変わった。
「本気で雪羽と銀のこと決着つけたいなと思って」
わたしは動揺する。
「え……?」
姫乃ちゃんは右手で自分の左手の袖をぎゅっと掴む。
「春花と競いながらあんなに必死にマラソン走る雪羽を見て、このままじゃだめだと思った」
「だから勝負受けて欲しい」
「勝負って何を…」
「お互い銀に0時ちょうどに家に来るように伝えて」
「それぞれの家で銀が来るのをただ待つの」
「それで銀が来たら勝負は勝ち」
「負けたら銀のことは綺麗さっぱり諦める」
相可くんのこと綺麗さっぱり諦める――?
姫乃ちゃんは罪悪感に満ちた顔を浮かべる。
「せっかく雪羽、銀の隣の席守れたのに」
「ほんと意地悪だよね、ごめん」
「だけど、中2の時、銀とキス出来なかったから…」
姫乃ちゃんは涙ぐみながら感情を爆発させた。
「今度は銀とちゃんとキスしたい!」
「銀のシンデレラになりたい!!」
顔を見たら分かる。
姫乃ちゃんが本気で言ってること。
そして、勝負なんかしなくても分かってしまう。
わたしは相可くんには選んでもらえない。
だってわたし“黒ずきん”だから。
“シンデレラ”には絶対に敵わない。
それでも姫乃ちゃんは、
――ハチミツトーストおいしいっ。
そうと決まればよし、早速、イメチェンだ。
――雪羽、一緒に写メ撮ろ。
わたしに楽しい時間をくれた。
――行かないよ。一緒に走る。
――友達だからだよ。
――じゃあ今日からライバルってことで。雪羽のこと全力で応援するね。
――雪羽、頑張って!
いっぱい幸せな気持ちをくれたから――。
「…分かった」
わたしの両目に薄っすらと涙が浮かび上がる。
絶対に諦めない。
「わたしも相可くんのシンデレラになりたいから」
姫乃ちゃんは指で自分の涙を拭う。
「雪羽、勝負、受けてくれてありがとう」
「銀、誘いに行こ」
「うん」
*
10分後、空き教室の前に姫乃ちゃんと着いた。
「銀、昼はいつもここで寝てるんだよね」
そうなんだ…知らなかった…。
「ゆり、ここで寝てること知らないから助かる」
「ゆりちゃんも?」
「うん」
姫乃ちゃんの眉が下がる。
「ゆりにもし聞かれて勝負のこと知られたら阻止されそうだしね」
確かに…。
「雪羽、私から誘ってもいい?」
「うん」
「じゃあ少しだけここで待ってて」
ガラッ。
姫乃ちゃんは扉を開けて空き教室の中に入って行く。
あ、相可くんの声が聞こえて…。
『何? 姫乃』
『高校が終わったら0時ちょうどに私の家に来て欲しい』
『は? なんで?』
相可くんは驚いた声を出す。
『お願い』
『…分かった』
扉が開いた。
姫乃ちゃんが中から出てくる。
「雪羽、頑張って」
「うん」
わたしは勇気を振り絞り、空き教室の中に入った。
相可くんは、わたしを見て驚く。
「は? 今度は黒図?」
「ごめんなさい」
「姫乃ちゃんがここに入って行くのが見えて…」
…嘘だけど。
「それで何?」
ドキン、ドキン、と高鳴る胸に右手を当てる。
勇気出せ、わたし!
「高校が終わったら…0時ちょうどにわたしの家に来て欲しいです」
はぁ…言えた。
まだ胸がドキドキしてる…。
相可くんは何かを察した表情を浮かべる。
「…分かった」
約束してしまった。
これで負けたら、席替え前に今度こそほんとうにわたしの恋は終わってしまうのに。
*
昼休みが終わる少し前。銀は1年A組の教室に戻ると、扉の前で凛が腕を組んで待っていた。
「…銀、よく寝れた?」
凛が小声で尋ねると、
「あぁ」
銀は短く答える。
「何? 深刻そうな顔して」
「何かあった?」
「…姫乃と黒図に家に0時ちょうどに来るように誘われた」
「なるほどね」
「ついにどちらかを失う時が来ちゃったんだね」
凛の表情が悪魔のような表情に変わる。
「それで銀、どっちを選ぶの?」
「もちろん、姫乃だよね?」
銀は静かに口を開き、答えた。
「もう決めてる」
*
23時50分。わたしは自分の部屋にいた。
ベットに座りながらスマホで時間を確認する。
0時まであと10分。
相可くんはまだ来てない。
わたしは不安に陥る。
どうしよう。
もう姫乃ちゃんのところに相可くんいるかもしれない。
そう思ったらベランダのカーテン、怖くて開けられない。
スマホをベットに置いて降りると、カーテンで隠れたベランダの扉の前まで歩いて行く。
「…お願い」
わたしは祈るように両指を絡めた。
相可くん、会いに来て。
10
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
僕は君のボディガード
ちみぞう
恋愛
関東一円を仕切る九条会の息子である九条雄一と、そのボディガードとして育てられた井上稔は、互いが互いを唯一の親友と思い、助け合ってきた。雄一の常人にはないオーラを感じ取り、ヤンキーが毎日腕試しにやってくる。稔はそんな雄一を守る為に日々奮闘している。二人の生い立ちを知るものは学校にはおらず、稔は雄一の舎弟もしくは金魚のフンだと思われている。主従関係の雄一と稔だが、二人っきりになった時だけは関係性が変わり、雄一は稔に甘える。次第に、雄一と稔の間には、友情以上の感情が膨らんでいく。
※youtubeのシナリオを想定して書いております。
総長、私のリボンほどいて。⋈
空野瑠理子
恋愛
髪が金髪っぽい私。
暑い夏の真夜中、ベランダに出たら……
「…髪の色、綺麗だな」
隣のベランダに白髪の男の子、月沢(つきさわ)くんが立っていました。
だめだって分かってるのに……
白いサワー味のアイスキャンディーは刺激的で、
一度食べたらやめられない。
秘密な白髪の総長×秘密な金髪のアリス
お願い。
心に絡まったリボンほどいて。
⋈・。⋈ -匚切なく弾ける甘い夏……リボきゅん物語⋈・。⋈
イラスト*子兎。(許可済み)
ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました
蓮恭
恋愛
恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。
そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。
しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎
杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?
【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる