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Happy secret sleep⚘姫を眠らせない。

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 粉雪の中をバイクが走り抜けていく。

 今の私/中2の私が重なる。

 なんで離れないといけないの?
 やだ、やだよ。

「必ず俺が迎えに行くからな!!」
 そらくんは最後に光をくれた。

 だけど今回は約束しなかった。

 “俺が未来を変える。変えてやる”
 って言ってくれたのに、

 自分の未来を自分自身で潰した。

 バカな私。

 それでも守られた姫じゃなくて、

 君を、
 そらくんを守れるくらい強い姫になりたかったんだ。

 この先、朝起きてもそらくんは隣にいない。

 私のことだから、ずっとそらくんのこと思い出して、
 暗闇のベットの上で一人、顔を隠して泣き続けるんだろうな。

 私は涙をこぼしながら幸せそうに笑う。

 そらくんは離れても、私を眠らせてはくれない。



 1時間10分後。つたが絡まる赤い屋根のレンガ倉庫に着いた。

 この場所は海外から貨物船が入ってくる港にあり、
 屋根には粉雪がまるでガトーショコラに振りかける粉砂糖のように積もっていて、
 1階の扉、2階の四角い窓、3階の丸い窓は全て粉雪みたいに白い。

 こ、怖かったぁ…。
 私、よくヘルメットなしでここまで来れたな…。
 死ぬ気で耐えればなんとかなるもんだね…。

 氷浦ひうらの特攻服を着たりゅうくんは腰にしがみついて震えている私の手に自分の手を重ねる。

「怖かっただろ?」
「お前、根性あるな。さすが俺の姫だぜ」

 りゅうくんの手の温もりと優しい言葉で安堵し、私はぽろぽろと泣いた。
 涙と手の震えが止まると、お互いバイクから降り、特攻服と黒のハーフコートについた粉雪を払う。

「ここは?」

「俺と兄の家で、氷浦ひうらのアジトでもある」
「両親の家にはしばらく帰ってねぇ」

「そっか…」

 バイクから降り、りゅうくんは鍵を開けて、黒いレバーを軽く上にあげ、手前に引き、扉を開ける。

 中に入るとりゅうくんも入り、扉を閉めた。

「飲みもん、ミルクティーでいいか?」

「あ、うん」

「じゃあ入れてくる」
「階段上がったら俺の部屋だから先に行ってろ」
「ボロハンガー使っていいぜ」

「分かった」

 私は階段を上がっていく。

 寒い…。
 四角い窓からはコンクリートと港、停まった船が見える。
 綺麗…。
 だけど、部屋の中はボロハンガーにエアコンとベットしかない…。
 寂しい感じ…。

 私は濡れたハーフコートを脱ぎ、ボロハンガーにかける。

 りゅうくんがおぼんを持って上がってきた。

 おぼんにはミルクティー入りのブルーとピンクのペアマグカップが並んでいる。

 りゅうくんはベットにおぼんを置くと、ピッとエアコンの暖房をつけて座り、
 ぽん、とベットを叩く。

「まぁ、座れよ」

「あ、うん」

 グレーのボアパーカー姿の私は恐る恐る隣に座った。
 するとマグカップを手渡される。

 あったかい…。
 雪柄に英語でメリークリスマス?
 シンプルで可愛いマグカップ…。

 私は一口飲んでみる。

 あ、ミルクティー、美味しい。

 お互いにぜんぶ飲み干すとおぼんの上に置く。
 するとりゅうくんが冷たい表情で見つめてきた。


「――――姫、黒沢くろさわとの同居は楽しかったか?」

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