旧王家の兄妹

真木

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6 旧王家の屈辱

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 ロザリアがアシュレイに無断で外出する方法には、一応あてがあった。
 ギーズ王宮の臣下たちは旧王家のロザリアが王妃であることには何の不満もない。ロザリアは普段王妃宮にこもってはいるが、アシュレイに組み敷かれるだけの生活を嫌い、一定の政務を落ち着いてこなす。国内外に誇る美貌の妃で、王太后のように国費を浪費することもなく、先の時代に地に落ちたギーズ王室の名誉はロザリアのおかげで回復しつつある。
 ただロザリアは月の障りすらめったになく、現に結婚して七年もの間、懐妊の気配がない。臣下たちは焦り、折につけアシュレイに愛妾を持たせようとしていた。
「湯治に参りたいと思います」
 ロザリアがアシュレイにそう切り出したとき、彼はあからさまに喜色を見せた。
「ロザリア……ようやく私との子を望んでくれるのだな」
 ギーズ王室の直轄領にある温泉は、彼らが信仰していた半身獣の神が一夜で九人の子を孕ませたといわれる地だ。ギーズ王室の歴代の妃も、婚儀の前に訪れて多産を願っていた。
「旧王家の君には野蛮に思われるかもしれないが、命を授かる大事には伝承にあやかったって悪いことじゃない。すぐに準備を整えさせよう」
 半身獣の妖しき精が女性を酔わせ、孕ませるという伝承をロザリアが嫌っていたのはわかっている。アシュレイはあえて勧めなかったが、彼もたびたび口にするように、ロザリアとの間に子がもうけられるのならもちろんそれに越したことはなかった。
「選りすぐりの護衛をつけるよ。いいかい、君と交わるのは獣ではなく夫だけだからね」
 伝承の温泉は、王太后の軟禁されている地のすぐ近くにある。アシュレイも当然それに気づいているようで、笑いながら念を押した。
 慌ただしく出立の準備は整えられて、三日の後にはロザリアは六頭立ての豪奢な馬車の中にいた。
「惜しいな。こんなときに政務がなければ、二人だけで甘い時が過ごせたのに」
 ギーズ王国では、女性でも馬車を面倒に感じて単身騎乗する。馬車を必要とするのは王族でもロザリアくらいだ。ただここ数年では、ひとときでもロザリアと離れがたいアシュレイも共に乗ることが多かった。
「待ちきれない。すぐに私も向かうよ。子のため、二人で励まないとな」
 アシュレイは人目もはばからずロザリアの唇を奪った。角度を変えて何度もロザリアの唇を味わい、体をまさぐる。
 ロザリアの脳裏に、馬車の中で繰り返された淫靡な時間がよぎった。短く声を上げて反射的にアシュレイを押しやろうとする。
 けれど今抵抗したら、アシュレイは湯治を取りやめてロザリアを王宮に留めてしまうかもしれない。アシュレイの目が光る王宮では、一人叔母を助けに向かうことはできない。
 ロザリアは震える手を握りしめて、アシュレイに弄ばれるのに任せる。
 故郷にいたときは、人前で異性に触れるのさえ野蛮な行為だった。こんな風に臣下たちの前で口づけられたり、体をまさぐられるなど耐えがたかった。
 初めてアシュレイに抱かれた婚儀の夜も、ロザリアには信じがたい慣習で行われた。十人もの臣下たちが見ている中でその交わりは成されたのだ。
 ロザリアから流れた処女の血を見知らぬ男たちにのぞきこまれたときは、いっそ舌をかみ切りたいと思った。アシュレイは三日の間ロザリアを離すことなく、ロザリアはようやく一人になったときに狂うように泣き伏し、しばらくは食事も喉を通らず、アシュレイを焦らせた。
 それから始まり、以後何度も鳥肌が立つような屈辱に耐えてきたのは、ひとえに家族を守るためだった。ロザリアはアシュレイに、妃となる代わりにギーズ王室に捕まった旧王家の眷属に乱暴をしないと約束させた。屈辱に自ら命を絶った者たちもいるが、シャノンと兄王子がどこかで生きているのが、心の支えだった。
「今夜は君と離れ離れなのか。せめて……」
 馬車に入って、アシュレイはロザリアに馬乗りになる。
 息を詰めたロザリアの中に濡らした指を滑りこませ、ゆるゆると動かしてなじませる。
 目を閉じて耐えるロザリアに口づけを繰り返しながら、アシュレイは慎重に身を沈めた。
「ほら、もう入った。ロザリア、上手だよ。じきに自分で濡れて、気持ちよく締められるようになる」
 嬉しそうなアシュレイの言葉が、ロザリアの体を強張らせる。
 アシュレイの言う通り、少しずつロザリアの体は行為に慣れてきている。張り裂けそうな痛みは和らぎ、圧迫感も減った。
 いずれ……この行為に快楽を感じるようになる? それを想像したとき、ロザリアは目の前が暗くなっていく気がした。
「愛しているよ、ロザリア」
 アシュレイは掠れた声でロザリアの名を呼んで、欲望を解放するように荒々しく抽送を再開した。 
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