双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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55 新たなる地へ 2

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 魔の森に接している裏門は殆ど使われる事がない門である。

 だから、この門の近くはこの城郭に守られた街の中で、一番さびれているということで、この世界ある程度大きな町にはどの町にもあるスラムのような一角が存在する。

「先に行かせた馬車はまぁ囮のようなものだな」

 門を抜けた城郭の中は、遠くに明かりが見られるが、この辺りは真っ暗で、ギルドマスターの持ったランタンの明かりが小さくその周りを照らすだけ。

 ルフェルはその後ろをついて歩きながら、意識しないで気配察知を薄く巡らせて周りの様子を察知しようとしていた。

 母カーラとつないだ手が、いつにもまして冷たくそして細かく震えているように感じたから。

 いつも近くにいてくれるテリオは今この場にはいない。

 これから赴く先の状況が全く分かっていなかったので、いきなり人型を取ることは問題外として、動物の姿で一緒に行動することすら、これまでになかったことを行うことの是非が判断できなかったからだ。

 もちろん、どのような地であっても一緒にいてくれることは確認済みで、この街の近くに来るまでいつものように気配を消して実体は持たずについてきてくれていた。

 テリオの存在について気付いていたのは、はっきりと認識していたのがブレーズで、彼のパーティーの魔術師もそれなりに高密度の魔力の塊ともいえるその存在は感じていたことだろう。もちろんカーラも、知らないふりのままその存在については認識していた。

 しかし、こちらのことを何も知らない高階位の魔術師がこの先の街にいたとしたら、その魔術師が問答無用に攻撃してこないとは言い切れないかもしれない、ということを当のテリオが心配して、周りの状況がわかるまでは認識できないくらいにその存在を薄めるために、ルフェルから離れることを選択したのだ。

 何でも、テリオにとって何よりも優先される存在であるルフェルの近くにいると、どうしても気になって存在を極限まで薄めることができないのだというのだ。

 それは心理的な問題であるので、より安全を期すためにルフェル本人にかけているあらゆる防御の魔法を信じて、物理的に距離を置くことで存在を薄くすることにした。

 ルフェルにしても、意図的に離れたことがほとんどなかったテリオの存在の無さを実感すると落ち着かなくなるのだが、とにかく落ち着いて行動することで、早くテリオを迎え入れられると判断できる状態になりたいと切に願っていた。

 だから、いつもテリオがやってくれるように気配察知を行うことで、大切な母を守ることができると、無意識にその魔法を行使していたのだった。

 ギルドマスターが向かう先には殆どこちらに敵意を向けているようなものはいないようだ。

 向かう先とは方向違いの方で。随分と多くの気配が動いていることがわかる。

(あっちは確か僕たちが乗ってきた馬車が向かった方向?)

 門の前で待っていたのはギルドマスターだけではなく、ブレーズ達と変わらないような恰好をした屈強な面構えの大きな人が何人か立っていて、無言でこちらが下りた馬車とその後ろに控えていた数台の荷馬車に分乗して、ブレーズのパーティー以外のここまで一緒に来た冒険者達とあっという間に門の向こうに消えていったのだ。

 ルフェル達が暗闇の中を歩いたのはそう大した距離ではなく、スラムの一角にあるにしてはやけに堅牢に見える、少し朽ちているようにも見える石造りの建物の中にギルドマスターが躊躇なく入ったことで、足元を気にしながら歩くことはおしまいになった。

 ここはもちろん建物の正面の入り口ではなく裏口である。

 やけに厚い扉を抜けると、思いもかけない程広い待合のような広間になっていた。

 暗くて見えなかったがこの建物は随分と大きな建物であったらしい。

「ここは先ほどくぐった城郭の前に、一番外側であった元外の廓。表向きはただの壁の跡。一部のみ倉庫として使われていると思われている、冒険者ギルドの持ち物だ」

 ここに来るまで全く無言であったギルドマスターが、足を止めることなく広間の先の扉に向かいながら、誰にとはなしに説明をしてくれた。

 建物、もと城郭の一部であるらしい、石造で長細い部屋は、薄ぼんやりとライトの魔法で照らされて、その武骨な姿をただただついてきた一同に見せていた。

 
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