51 / 57
50 動き出した時間
しおりを挟む
テリオが何かしたのか、ルフェルは自身の腹の音で、夕食がいつもより幾分遅くなったかなぁ、と思えるぐらいの時間には目が覚めた。
傍から見てもどこかに異常がある様にも見られないくらい、すっきりとした目覚め。
何で自分のベットにこの時間にガッツリ寝ていたのか、思い出せないくらい、少し長い昼寝かなと思えるくらいの目覚めだった。
違うことと言えばいつもよりも随分と強く空腹を感じることぐらいで、普通にリビングに顔を出してカーラを驚かせた。
夕食後に改めて何があったのかカーラに尋ねられた時にも、ルフェル自身としては、ただ、体中から力が抜けて意識を失ったとしかわからなかった。
結局上手に説明をすることができず、「何もなかったなら良し!」という、カーラのポジティブ発言でその場が収まり、いつもの就寝時間には、いつものように眠くなりそのまま眠ってしまってその日は終わった。
次の日の朝もいつもと変わらない日常を送っていたカーラとルフェル親子。
それに対して、自分の考えに暴走気味になっているブレーズは、周りのことを巻き込みながら、当事者ど真ん中のカーラとルフェル親子を全く蚊帳の外に置いたまま、物理的なこの村の特殊な天候事情のために、ブレーズの望む『即行動』とはいかなかったのは良かったが、それなりに計画を進めていくのであった。
結局、結果、厳しい冬を乗り越えた様々な事が動き始める春に、ブレーズの独りよがりではなく、関わりのある者の同意と協力を得ながら、ルフェルの世界が大きく動き出す。
冬の厳しい季節の中でも、下界のことは関係がないと言わんばかりの、計り知れない魔の森の中は、常春であったり常夏であったり、魔獣を狩って稼ぐことには全く影響がなかったことで、ブレーズのパーティーの一番大きな問題は解決できた。
物理的にこの村と山脈向こうとの人的な行き来ができなくはなったが、魔力を凄く使うことと大量の情報が送れないことで、緊急時以外使われることがほぼ無い、ギルド間の通信魔法を使って何度か交わされた各方面への連絡を有効的に用いたことで、人々の心配事を解消できたことも大きかった。
ブレーズは、久しぶりに取った実家との連絡で、頼みごとをする前に十二分に絞られたようであったが、結果エクサルファ帝国一とも数えられる大公爵家に、何者かもわからない辺境の地の子供の後ろ盾になることを認めさせたことは何にも増して大きな出来事で、このことによってカーラがブレーズの計画に首を縦に振ることになったとも言えるのだ。
「春から、山向こうのエクサルファ帝国に行って、しかる後かの国の魔導学院に入学して、しっかりと魔力操作を学ぶのだ。君はきっと自分が考えるよりもずっと偉大な魔法使いになる」
腕を組んで独り乙に言っているブレーズの横で、魔術師が少し疲れた表情を浮かべながらも笑顔を浮かべてすっかり身支度を終えたルフェルに視線を合わせて話しかけた。
「うちのリーダー褒められたところはほとんどないが、人を見る目だけはあるから、うまくいって良かったよ」
「初めに話を聞いたときには何を言ってるかわからなかったけど、結果良ければすべていいってね」
こちらも大きな盾を持った大男が、顔に似合わない笑顔を浮かべて随分と目の下にあるかわいい頭のつむじを見ながら、体に合った野太い声で会話に加わってくる。
ブレーズのとんでも宣言を聞いた後、その原因ともいえるルフェルとカーラにそれぞれが関わるうちに、ブレーズの考えを抜きにしても味方になろうと決めたギルドの上級ランクメンバーは、ブレーズ以上に色々と根回しに力を注いでくれた。
「天使……」
とか、訳の分からないことを呟いて、ルフェルに会うたびに心がどこかに行ってしまうブレーズとは違って、それぞれの道で優秀で大人な人々とは、いろいろな面で教えられることが多く、この村の中という狭い世界の中で生きてきたルフェルにとっては大きな刺激であった。
仰ぎ見る山並みが深い雪に覆われる中、ブレーズとパーティメンバーは雪のまるでない不思議な場所が所々存在する魔の森の中に稼ぎに入り、懐を潤してパーティーのそして個人のギルドでの地位を挙げるためのポイントも稼いで山脈の周りの雪が溶ける春まで働きまくった。
ブレーズたちの説得を受けて、このままこの村で隠れ住むことの限界を感じていたカーラも、密かにヴォラスと連絡を取りながら、これからのルフェルの未来を見据えて、ロセロ公爵家の力を借りると決め、決めたうえには積極的に動き始めた。
テリオも、心の底では自分の力だけでルフェルを守っていける自負が大きく根を張りながらも、ルフェルの意志を尊重するためにこの場所でできることをして、ルフェルと共に行動することを決めた。
この場にいることが一番力を発揮することのできる場所であることは、間違えようのない事実であるが、どれだけテリトリーから離れようとも、そもそもこの世界にテリオと同じくらいに力を持つ存在はそう居ないのであるから、物理的な敵に関しては何も心配はしていなかったが、如何せん人の世の暮らしについては最近はほとんど興味も持っていなかった事から、その点については安心できない思いも持っていた。
『……そこはルフェル自身が何とかするであろう。まぁ、そのためにこの村から旅立つことでもあるのだから』
静かな泉のほとり、久しぶりにルフェルと訪れたテリトリーの中心で、今手にしているのが魔獣であることに気付かずに楽しく遊ぶルフェルを見守りながら、テリオはこの地のエネルギーを体に十二分に取り入れる。
時々は、かの地に行ってもこの場に飛翔こなければいけないかなぁ、などと考えながら……。
傍から見てもどこかに異常がある様にも見られないくらい、すっきりとした目覚め。
何で自分のベットにこの時間にガッツリ寝ていたのか、思い出せないくらい、少し長い昼寝かなと思えるくらいの目覚めだった。
違うことと言えばいつもよりも随分と強く空腹を感じることぐらいで、普通にリビングに顔を出してカーラを驚かせた。
夕食後に改めて何があったのかカーラに尋ねられた時にも、ルフェル自身としては、ただ、体中から力が抜けて意識を失ったとしかわからなかった。
結局上手に説明をすることができず、「何もなかったなら良し!」という、カーラのポジティブ発言でその場が収まり、いつもの就寝時間には、いつものように眠くなりそのまま眠ってしまってその日は終わった。
次の日の朝もいつもと変わらない日常を送っていたカーラとルフェル親子。
それに対して、自分の考えに暴走気味になっているブレーズは、周りのことを巻き込みながら、当事者ど真ん中のカーラとルフェル親子を全く蚊帳の外に置いたまま、物理的なこの村の特殊な天候事情のために、ブレーズの望む『即行動』とはいかなかったのは良かったが、それなりに計画を進めていくのであった。
結局、結果、厳しい冬を乗り越えた様々な事が動き始める春に、ブレーズの独りよがりではなく、関わりのある者の同意と協力を得ながら、ルフェルの世界が大きく動き出す。
冬の厳しい季節の中でも、下界のことは関係がないと言わんばかりの、計り知れない魔の森の中は、常春であったり常夏であったり、魔獣を狩って稼ぐことには全く影響がなかったことで、ブレーズのパーティーの一番大きな問題は解決できた。
物理的にこの村と山脈向こうとの人的な行き来ができなくはなったが、魔力を凄く使うことと大量の情報が送れないことで、緊急時以外使われることがほぼ無い、ギルド間の通信魔法を使って何度か交わされた各方面への連絡を有効的に用いたことで、人々の心配事を解消できたことも大きかった。
ブレーズは、久しぶりに取った実家との連絡で、頼みごとをする前に十二分に絞られたようであったが、結果エクサルファ帝国一とも数えられる大公爵家に、何者かもわからない辺境の地の子供の後ろ盾になることを認めさせたことは何にも増して大きな出来事で、このことによってカーラがブレーズの計画に首を縦に振ることになったとも言えるのだ。
「春から、山向こうのエクサルファ帝国に行って、しかる後かの国の魔導学院に入学して、しっかりと魔力操作を学ぶのだ。君はきっと自分が考えるよりもずっと偉大な魔法使いになる」
腕を組んで独り乙に言っているブレーズの横で、魔術師が少し疲れた表情を浮かべながらも笑顔を浮かべてすっかり身支度を終えたルフェルに視線を合わせて話しかけた。
「うちのリーダー褒められたところはほとんどないが、人を見る目だけはあるから、うまくいって良かったよ」
「初めに話を聞いたときには何を言ってるかわからなかったけど、結果良ければすべていいってね」
こちらも大きな盾を持った大男が、顔に似合わない笑顔を浮かべて随分と目の下にあるかわいい頭のつむじを見ながら、体に合った野太い声で会話に加わってくる。
ブレーズのとんでも宣言を聞いた後、その原因ともいえるルフェルとカーラにそれぞれが関わるうちに、ブレーズの考えを抜きにしても味方になろうと決めたギルドの上級ランクメンバーは、ブレーズ以上に色々と根回しに力を注いでくれた。
「天使……」
とか、訳の分からないことを呟いて、ルフェルに会うたびに心がどこかに行ってしまうブレーズとは違って、それぞれの道で優秀で大人な人々とは、いろいろな面で教えられることが多く、この村の中という狭い世界の中で生きてきたルフェルにとっては大きな刺激であった。
仰ぎ見る山並みが深い雪に覆われる中、ブレーズとパーティメンバーは雪のまるでない不思議な場所が所々存在する魔の森の中に稼ぎに入り、懐を潤してパーティーのそして個人のギルドでの地位を挙げるためのポイントも稼いで山脈の周りの雪が溶ける春まで働きまくった。
ブレーズたちの説得を受けて、このままこの村で隠れ住むことの限界を感じていたカーラも、密かにヴォラスと連絡を取りながら、これからのルフェルの未来を見据えて、ロセロ公爵家の力を借りると決め、決めたうえには積極的に動き始めた。
テリオも、心の底では自分の力だけでルフェルを守っていける自負が大きく根を張りながらも、ルフェルの意志を尊重するためにこの場所でできることをして、ルフェルと共に行動することを決めた。
この場にいることが一番力を発揮することのできる場所であることは、間違えようのない事実であるが、どれだけテリトリーから離れようとも、そもそもこの世界にテリオと同じくらいに力を持つ存在はそう居ないのであるから、物理的な敵に関しては何も心配はしていなかったが、如何せん人の世の暮らしについては最近はほとんど興味も持っていなかった事から、その点については安心できない思いも持っていた。
『……そこはルフェル自身が何とかするであろう。まぁ、そのためにこの村から旅立つことでもあるのだから』
静かな泉のほとり、久しぶりにルフェルと訪れたテリトリーの中心で、今手にしているのが魔獣であることに気付かずに楽しく遊ぶルフェルを見守りながら、テリオはこの地のエネルギーを体に十二分に取り入れる。
時々は、かの地に行ってもこの場に飛翔こなければいけないかなぁ、などと考えながら……。
20
お気に入りに追加
1,414
あなたにおすすめの小説
最終目標はのんびり暮らすことです。
海里
BL
学校帰りに暴走する車から義理の妹を庇った。
たぶん、オレは死んだのだろう。――死んだ、と思ったんだけど……ここどこ?
見慣れない場所で目覚めたオレは、ここがいわゆる『異世界』であることに気付いた。
だって、猫耳と尻尾がある女性がオレのことを覗き込んでいたから。
そしてここが義妹が遊んでいた乙女ゲームの世界だと理解するのに時間はかからなかった。
『どうか、シェリルを救って欲しい』
なんて言われたけれど、救うってどうすれば良いんだ?
悪役令嬢になる予定の姉を救い、いろいろな人たちと関わり愛し合されていく話……のつもり。
CPは従者×主人公です。
※『悪役令嬢の弟は辺境地でのんびり暮らしたい』を再構成しました。
自己評価下の下のオレは、血筋がチートだった!?
トール
BL
一般家庭に生まれ、ごく普通の人生を歩んで16年。凡庸な容姿に特出した才もない平凡な少年ディークは、その容姿に負けない平凡な毎日を送っている。と思っていたのに、周りから見れば全然平凡じゃなかった!?
実はこの世界の創造主(神王)を母に持ち、騎士団の師団長(鬼神)を父に持つ尊い血筋!? 両親の素性を知らされていない世間知らずな少年が巻き起こすドタバタBLコメディー。
※「異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ」の主人公の息子の話になります。
こちらを読んでいなくても楽しめるように作っておりますが、親の話に興味がある方はぜひズボラライフも読んでいただければ、より楽しめる作品です。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
チャラ男会計目指しました
岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように…………
――――――それを目指して1年3ヶ月
英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた
意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。
※この小説はBL小説です。
苦手な方は見ないようにお願いします。
※コメントでの誹謗中傷はお控えください。
初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。
他サイトにも掲載しています。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
異世界に召喚されて失明したけど幸せです。
るて
BL
僕はシノ。
なんでか異世界に召喚されたみたいです!
でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう
あ、失明したらしいっす
うん。まー、別にいーや。
なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい!
あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘)
目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる