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47 脅威から守る為に 2
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生き物は誰しも、自分の物差しというものを用いて、様々な物事の良し悪しを判断する。
一番扱い辛いのは、自分の中の正義を悪気もなく押し付けてくる者だ。
今、この辺境の村のカーラの家の中で、見当違いのことで慌てているこの男も、典型的な悪気がない正義を情熱を持って押し付けてきがちな、暑苦しい男であった。
その上この男のいただけない所は、元々上級も上級の公爵家の嫡男というところ。
普通の人間であれば通すことができないような出来事も、金で在れ立場で在れ、押し通せば何でも通ってしまうというところだ。
それを正義の押し売りとも言う。
決して悪いことをするわけではなく、彼の正義において行われてきたことは、端から見れば要らぬお節介にみられることがほとんどのような感じで……善意によって行われている事だけに拒絶拒否することも難しい。
ブレーズ自身はみじんも思っていないのだが、どのような結果であったとしても、彼のバックにある大公爵家の影がちらついて、誰も文句を言うことなくこれまで過ぎ去ってきたことも、彼の良心のまま突き進むことに拍車をかけてきたともいえる。
兎に角正義の塊である彼は、権謀術策の世界である貴族社会においては、どれだけ勉強ができようが剣術が得意だろうが魔術師として偉大であろうが、全くのポンコツであるから、大貴族の公爵家の嫡男であるにも関わらず、超一流と言えるほどでもない冒険者として生活している現実があるのだ。
下手に力を持った貴族社会の常識にとらわれないというか、常識知らずのお坊ちゃまなのだ。
今回も、この美しきご婦人が困っているような状態(あくまでもブレーズ視点)を、解消するのは騎士道精神にのっとって当たり前であり(彼は騎士ではないが……)、その手段自分が持っていることに気付いたのだ(気づいてしまったのだ)。
『ご婦人の困っていることの原因は、きっとご子息のあの魔法のことであろう。あれほどの魔力量を持ちながらも、きっとこの様な辺鄙な村にあるのであれば、魔法のことについて師事する相手も居ないことは、誰が見ても明らかな事。幸い私にはこの大陸でも指折りの魔導学校に大きな伝手がある。あの学校も基本的には貴族のための学校と言えなくもないが、これほどの魔力量を持ちながら持て余しているかわいそうな子供に対して、その門戸を閉じるようなことは無いだろう。何かしらの条件が必要であったとしたら、それこそ我が家が後見として付けばよいのだから……』
自分がご婦人と二人きりであることに狼狽しながらも、そのことを考えないためにも彼なりに役に立つだろうことを考えついて、その目標を完遂するために無駄にある行動力を発揮するために動き出す。
『兎に角、この状態(女性と二人きり)はよろしくない。隣の恩人の少年も、あの力の塊、悪いものでは無いな、が来たことですぐに何かが起こることもないだろう。宿の戻って、彼が魔導学校に入学できるようにするために直ぐに父上に手紙を書かなければな』
既に空になっているカップをソーサーに戻すと、ブレーズは立ち上がり深く目の前に座るカーラに深く頭を下げた。
カーラにしてみても、真っ赤な顔をしながら考えこんでしまったブレーズの行動を、口を出すことなく見守っていたのだが、隣の部屋ルフェルのもとに、ルフェルの守護者、カーラが感じてそう思っている存在が戻ってきたことで、先ほどまで抱いていた直接ないかされるのではないか、というような警戒心を目の前の男に抱いてはいない。
ただ、上級貴族であると聞いていた男が、平民のただの村人である自分に頭を下げたことに単純に驚いていた。
だから、彼が次に話したことの半分も要件を把握することができずに、結果として彼の行動を容認するようなことになってしまうのだった。
一番扱い辛いのは、自分の中の正義を悪気もなく押し付けてくる者だ。
今、この辺境の村のカーラの家の中で、見当違いのことで慌てているこの男も、典型的な悪気がない正義を情熱を持って押し付けてきがちな、暑苦しい男であった。
その上この男のいただけない所は、元々上級も上級の公爵家の嫡男というところ。
普通の人間であれば通すことができないような出来事も、金で在れ立場で在れ、押し通せば何でも通ってしまうというところだ。
それを正義の押し売りとも言う。
決して悪いことをするわけではなく、彼の正義において行われてきたことは、端から見れば要らぬお節介にみられることがほとんどのような感じで……善意によって行われている事だけに拒絶拒否することも難しい。
ブレーズ自身はみじんも思っていないのだが、どのような結果であったとしても、彼のバックにある大公爵家の影がちらついて、誰も文句を言うことなくこれまで過ぎ去ってきたことも、彼の良心のまま突き進むことに拍車をかけてきたともいえる。
兎に角正義の塊である彼は、権謀術策の世界である貴族社会においては、どれだけ勉強ができようが剣術が得意だろうが魔術師として偉大であろうが、全くのポンコツであるから、大貴族の公爵家の嫡男であるにも関わらず、超一流と言えるほどでもない冒険者として生活している現実があるのだ。
下手に力を持った貴族社会の常識にとらわれないというか、常識知らずのお坊ちゃまなのだ。
今回も、この美しきご婦人が困っているような状態(あくまでもブレーズ視点)を、解消するのは騎士道精神にのっとって当たり前であり(彼は騎士ではないが……)、その手段自分が持っていることに気付いたのだ(気づいてしまったのだ)。
『ご婦人の困っていることの原因は、きっとご子息のあの魔法のことであろう。あれほどの魔力量を持ちながらも、きっとこの様な辺鄙な村にあるのであれば、魔法のことについて師事する相手も居ないことは、誰が見ても明らかな事。幸い私にはこの大陸でも指折りの魔導学校に大きな伝手がある。あの学校も基本的には貴族のための学校と言えなくもないが、これほどの魔力量を持ちながら持て余しているかわいそうな子供に対して、その門戸を閉じるようなことは無いだろう。何かしらの条件が必要であったとしたら、それこそ我が家が後見として付けばよいのだから……』
自分がご婦人と二人きりであることに狼狽しながらも、そのことを考えないためにも彼なりに役に立つだろうことを考えついて、その目標を完遂するために無駄にある行動力を発揮するために動き出す。
『兎に角、この状態(女性と二人きり)はよろしくない。隣の恩人の少年も、あの力の塊、悪いものでは無いな、が来たことですぐに何かが起こることもないだろう。宿の戻って、彼が魔導学校に入学できるようにするために直ぐに父上に手紙を書かなければな』
既に空になっているカップをソーサーに戻すと、ブレーズは立ち上がり深く目の前に座るカーラに深く頭を下げた。
カーラにしてみても、真っ赤な顔をしながら考えこんでしまったブレーズの行動を、口を出すことなく見守っていたのだが、隣の部屋ルフェルのもとに、ルフェルの守護者、カーラが感じてそう思っている存在が戻ってきたことで、先ほどまで抱いていた直接ないかされるのではないか、というような警戒心を目の前の男に抱いてはいない。
ただ、上級貴族であると聞いていた男が、平民のただの村人である自分に頭を下げたことに単純に驚いていた。
だから、彼が次に話したことの半分も要件を把握することができずに、結果として彼の行動を容認するようなことになってしまうのだった。
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