双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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32 テリオ・ブレーズ・それぞれ己の心の中を知る⁉

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 そういえば……。今のこの姿、人間の形はあの時の彼の姿に似ているのかもしれない。

 ルフェルに出会って、その前に実体化したときに、声を出して話すには獣の姿ではなく、人間の姿の方がよかろうと取った形が……。

 気付かなかっただけで、あの時から彼のことを『愛しい』と思っていたのだろうか?

 考えても詮無き事。

 今は、今この時を大切にすればよいのだ。彼もそう言っていたではなかったか……。

 目の前には声を出しながら、魔法を小さく繰り出そうとしているルフェルの姿。

 近づくと手を止めて満面の笑みを浮かべて「テリオ」と名を呼ぶ。この姿の自分の腰より少しだけ上にある頭。人間の子供としてもこの年齢では随分と小さい、抱きしめたらつぶれてしまうかもしれないちっぽけな命だ。

 『愛しい』と思った。

 この小さい命のためには、何でもしてやりたいと思った。

 今この『幸せ』と感じるこの時をこの場所を奪うものには……。


 あまり長い時間外を出歩いているのも母を心配させるので、魔法の練習はちょっと疲れを感じたところで止めて、帰り道薬草を摘みながら家路についた。

 もしかしたら、例の助けた男のことについてフロマ辺りが母に告げ口にでも来ているかと、ルフェルは恐る恐るうちの中を覗いてみたが、母以外の姿はなく、一安心。

「ただいまぁ!」

 元気に声を上げて玄関をくぐった。テリオはすぐ横にいるけれどいつまでたっても母にすら姿を見せる気はないようだ。

 テリオはかっこいいし、テリオみたいな見た目が人間の男性が一緒に住んでいるとわかったら、ヴォラスが慌ててやってきちゃうかもしれないし。

 そして、母とテリオが仲良くしている姿を想像したら、なんだか嫌な気持ちになった。
 
「…………」

 これ以上自分の心の中を深堀するのは、いいことがないような気がして考えるのをやめたルフェルは、今日取ってきた薬草を早速母に見せてから、母の手伝いをするために手を洗いに向かった。


 その日の夜、例の男の残りのパーティーメンバーも命からがら社交場にたどり着き、またあの男を中心に騒動が起こっていたのだが、家で母と二人手料理に舌鼓を打ちながら食べているルフェルは全く関係のない話だった。

 テリオはこの場にいても、社交場の愉快な騒動のことは察知していて、何となく疫病神かもしれないし男について、より警戒しなくてはと考えていた。

 カーラも今朝フロマから聞いた冒険者について、どのようにして接触を避けようかと考えていた。

 この村は安全に活動できる範囲がそんなに広くはない。ヴォラスの時も3日もあればこの村の隅々まで歩き回ることができた、この魔の森に一番近い小さな庵のような家も見つけることは簡単にできることだろう。

 カーラ自身は貴族と出会ったところで痛くもかゆくもないが、ルフェルに関して言えば、もしもあの貴族崩れの男がディナト公爵の近くに居た者で、双子のもう一人の顔を知っていたとしたら、この村のようなところに住んでいるだけでも十分怪しいのに、何か感づかないとも限らない。

 ルフェルがすでにあの男と出会っていることを知らないカーラは、お門違いのことで悩むのだった。

 
 この村の一角であの男扱いされていることも知らず、ロセロ公爵家現当主の長男であるブレーズは、他のパーティーメンバーと合流することもできたこともあり、あの時自分の身に起きたことを冷静に考える余裕ができていた。

 冷静になって考えれば、あの時森の中で助けてくれた子供が精霊や妖精でないことは分かっていた。

 ただ本当にあの時は大分出血していたから、幻覚を見たとしても驚かないし、出血を止め体力を回復しその上身体中の小さな傷まですべて直してくれた何か、いや誰かがいたのは確かな事なのだ。

 助けてもらった場所は魔の森の浅いところではなかった。

 あのような場所にいる人間は、普通に考えれば自分と同じ冒険者であるはずだが、もしも冒険者のだれかが助けてくれたのであれば、自分から進んで名乗り出るだろう、俺に使ったポーションの代金もバカにならないだろうし。

 それを名乗り出ないで代金の徴収をしないということは……どうゆうことなんだ?

 それに、もし冒険者ではない誰か、何か、だとして、助けてくれたのが「少年」であると認識している自分。

 あの姿が俺の想像したものとして、死ぬ前の本当に俺の求めている者の姿であるとしたら……。

「俺は……⁉」

 俺は、本当は少年趣味の変態ということなのか?女好きであると自負していたが、本当は……。

「グワァァ!」

 パーティーメンバーが到着したことで無一文ということではなくなり、社交場の中では一番上等な部屋をあてがわれたブレーズであったのだが、その部屋から突然どこの魔獣か?と思うような声が響いてきた。

 パーティーメンバーは慣れているのか、各自の部屋又は食堂にいたものも動揺するような人間はだれ一人としていなかったが、その様な異音に全く慣れていない食堂でくつろいでいた冒険者の中には、口からエールを吹き出すものもいたとか居なかったとか。

 
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