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27 この世で知っているのはただ一人。あの男⁉
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昨日、いや今朝早くまで仕事をしていたフロマは、朝から機嫌が悪かった。
夜中にたたき起こされているうえに、わけわからない男の相手をさせられたうえ、これからいつ来るかわからない冒険者たちを責任を持って迎え入れなければならない。
正規にこの村に入ってくる冒険者ではないから、きちんと迎え入れる義理はないのだが、彼らも冒険者。組織に所属する者の責任は取らないわけにもいかない。
そしてカーラにも、ルフェルのことを伝えなければならない。
人を助けるといういいことをしたわけであるが、あの男の言い分を信じるならば、随分と森の奥深くまで入り込んで遊んでいたことになる。
あれ程森の奥に入ってはいけないと約束したのに……。
あの男の大声でも聞いて、森の奥まで助けに入ったというところなのだろうか?
あの男は、倒れていて助けられて気が付いた、みたいなことを言っていたが……。
それとあの男、夢見るような眼をして語るあの男は、危ない。
何が危ないか具体的には言えないが、ルフェルに会わせることは、フロマの本能的な危機察知能力が決してしてはいけないと訴える。
こんな時、専従のギルド職員がフロマ一人しかいないことがネックになる。仕事を頼みたくても、すぐに誰かにその事を頼むことができない。今回もめんどくさいことが重なって、仕事を頼むことすら難しい。
カーラの家にカーラの出勤前に出向きたいのだが、昨晩のことの報告がまだすべて終わっていないもあり、この場から離れることができないのだ。
「カーラ以外の友達……作りたいんだけどなぁ」
仕事も頼める友達が欲しいのだが、この村には成人女性がほぼ自分たちだけ、それ以外は元冒険者つまりお年を召した脳筋か、現役の脳筋しかいないのだ。
このことはモンスのギルドに問題点として上げておくことに決めた。まぁ、こっちで決めたと言ってもどうにもならないかもしれないが……。
一方ルフェルも昨日会った男のことを少し気にしていた。
男を森の中に残してきてしまった事に関しては、テリオが男にはわからないようにこの村まで案内したから心配はいらない、と聞いてはいたが、本当に無事にこの村までたどり着いたのか確かめたいと思っていた。
この村の中に入ってきた人が行き着く先はこの村の中の社交場といわれるところだとわかっている。
そこは母の働いている場所でもあるから、母と一緒に職場に行き情報を得ることも考えたが、そこであの男の人と顔を会わせるのも問題があるかもと思った。
それはまだ、母に森の中でのことを言っていなかったから……。
人助けはしたものの、森中のあの場所は確かに森の浅瀬ではなく中腹寄り。行ってはいけない領域に確かに入ってしまっているから、知られたら森に入ること自体を中止されてしまうかもしれない。
悩んでいる間に朝食の時間も終わり、母カーラが出勤する時間がきてしまった。
いつもはもちろん母について社交場に行くことは無い。
ルフェルも13歳になりこのあたりの国の成人とされる年齢の15歳までは2年を切った。
この周りの国では15歳で自分が何になるか決断する年齢だ。貴族は別として……。
平民であれば、この年齢までその町に学校があれば学ぶ者もいるが、ほとんどの子供は家の商売や親の職業を継ぐ。
ルフェルであれば、母カーラの薬師兼治癒師を継ぐということになるのだろうが、カーラの仕事は適性がなければ継ぐなどということができない職業だ。
カーラがあの公爵家に奉公に出ることになった原因も、カーラに魔力の適性があったからで、それも貴重な治癒の魔法だったことは、カーラが平民でありながらも血のどこかには高貴な血が入り込んでいただろうことが想像できるのだが、その魔力のあったことがカーラにとって良かったことかどうかは本人しかわからないことだ。
ルフェルにはもちろん魔法適性はあるのだが、そのことを鑑定する施設である神殿や教会のようなものがこの村にはない。冒険者ギルドにもその鑑定の魔導具を持っているところもあるらしいが、そう安価なものでもないらしい。
価格もそうだが、この魔導具は神殿などの神秘性をあげることにも一役買っているようで、金を出せば買えるものでもないらしいのだ。
この村の中には元々が高ランクの冒険者だった人も多いので、もちろん魔法適性の高い人も少なからずいる。まぁ魔導士寄りよりも脳筋剣士の方が圧倒的に多いのだけど……。その人たちからすれば、ルフェルの魔力量の高さは言うまでもなく、敢えて魔力の訓練を始めていないことも、その母親の意見として尊重しているのだ。
ルフェル本人は優しい何かであったテリオに出会った時から、魔力操作や魔法についてのこまごましたことを実践で学んでいるのだけれど、ルフェルがしっかりと魔法を使えることを知っている者は今まで誰もいなかったのだ。
ルフェルに助けられた、ルフェルのことを精霊だと思い込んでいる男一人を除いて……。
夜中にたたき起こされているうえに、わけわからない男の相手をさせられたうえ、これからいつ来るかわからない冒険者たちを責任を持って迎え入れなければならない。
正規にこの村に入ってくる冒険者ではないから、きちんと迎え入れる義理はないのだが、彼らも冒険者。組織に所属する者の責任は取らないわけにもいかない。
そしてカーラにも、ルフェルのことを伝えなければならない。
人を助けるといういいことをしたわけであるが、あの男の言い分を信じるならば、随分と森の奥深くまで入り込んで遊んでいたことになる。
あれ程森の奥に入ってはいけないと約束したのに……。
あの男の大声でも聞いて、森の奥まで助けに入ったというところなのだろうか?
あの男は、倒れていて助けられて気が付いた、みたいなことを言っていたが……。
それとあの男、夢見るような眼をして語るあの男は、危ない。
何が危ないか具体的には言えないが、ルフェルに会わせることは、フロマの本能的な危機察知能力が決してしてはいけないと訴える。
こんな時、専従のギルド職員がフロマ一人しかいないことがネックになる。仕事を頼みたくても、すぐに誰かにその事を頼むことができない。今回もめんどくさいことが重なって、仕事を頼むことすら難しい。
カーラの家にカーラの出勤前に出向きたいのだが、昨晩のことの報告がまだすべて終わっていないもあり、この場から離れることができないのだ。
「カーラ以外の友達……作りたいんだけどなぁ」
仕事も頼める友達が欲しいのだが、この村には成人女性がほぼ自分たちだけ、それ以外は元冒険者つまりお年を召した脳筋か、現役の脳筋しかいないのだ。
このことはモンスのギルドに問題点として上げておくことに決めた。まぁ、こっちで決めたと言ってもどうにもならないかもしれないが……。
一方ルフェルも昨日会った男のことを少し気にしていた。
男を森の中に残してきてしまった事に関しては、テリオが男にはわからないようにこの村まで案内したから心配はいらない、と聞いてはいたが、本当に無事にこの村までたどり着いたのか確かめたいと思っていた。
この村の中に入ってきた人が行き着く先はこの村の中の社交場といわれるところだとわかっている。
そこは母の働いている場所でもあるから、母と一緒に職場に行き情報を得ることも考えたが、そこであの男の人と顔を会わせるのも問題があるかもと思った。
それはまだ、母に森の中でのことを言っていなかったから……。
人助けはしたものの、森中のあの場所は確かに森の浅瀬ではなく中腹寄り。行ってはいけない領域に確かに入ってしまっているから、知られたら森に入ること自体を中止されてしまうかもしれない。
悩んでいる間に朝食の時間も終わり、母カーラが出勤する時間がきてしまった。
いつもはもちろん母について社交場に行くことは無い。
ルフェルも13歳になりこのあたりの国の成人とされる年齢の15歳までは2年を切った。
この周りの国では15歳で自分が何になるか決断する年齢だ。貴族は別として……。
平民であれば、この年齢までその町に学校があれば学ぶ者もいるが、ほとんどの子供は家の商売や親の職業を継ぐ。
ルフェルであれば、母カーラの薬師兼治癒師を継ぐということになるのだろうが、カーラの仕事は適性がなければ継ぐなどということができない職業だ。
カーラがあの公爵家に奉公に出ることになった原因も、カーラに魔力の適性があったからで、それも貴重な治癒の魔法だったことは、カーラが平民でありながらも血のどこかには高貴な血が入り込んでいただろうことが想像できるのだが、その魔力のあったことがカーラにとって良かったことかどうかは本人しかわからないことだ。
ルフェルにはもちろん魔法適性はあるのだが、そのことを鑑定する施設である神殿や教会のようなものがこの村にはない。冒険者ギルドにもその鑑定の魔導具を持っているところもあるらしいが、そう安価なものでもないらしい。
価格もそうだが、この魔導具は神殿などの神秘性をあげることにも一役買っているようで、金を出せば買えるものでもないらしいのだ。
この村の中には元々が高ランクの冒険者だった人も多いので、もちろん魔法適性の高い人も少なからずいる。まぁ魔導士寄りよりも脳筋剣士の方が圧倒的に多いのだけど……。その人たちからすれば、ルフェルの魔力量の高さは言うまでもなく、敢えて魔力の訓練を始めていないことも、その母親の意見として尊重しているのだ。
ルフェル本人は優しい何かであったテリオに出会った時から、魔力操作や魔法についてのこまごましたことを実践で学んでいるのだけれど、ルフェルがしっかりと魔法を使えることを知っている者は今まで誰もいなかったのだ。
ルフェルに助けられた、ルフェルのことを精霊だと思い込んでいる男一人を除いて……。
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