双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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25 ブレーズと愉快でない仲間たち

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 ブレーズの飛ばされた所は、森の浅いところではなかったが、深いところでもなかった。

 折れた足が治ったおかげで、何とか自分の今いる位置を確かめるためにそのあたりで一番高い木によじ登ることができた。

 山の見える位置と太陽がある位置などを確かめると、目指していた村からそう遠くないところに飛ばされているかもしれないことがわかった。

「精霊が助けてくれたことといい、俺は運がいい」

 目指す方向が決まれば進むだけ、木から飛び降りるともう一度太陽の位置から行き先を確かめてブレーズは猛然とその方向に駆けだした。


 一方ブレーズを大型のイノシシもどきに吹っ飛ばされ、見失った残りのパーティーは、辺境の村に向かって急いでいた。

 あの時垣間見た山の頂の近さが、一行を奮い立たせる唯一の希望だった。

 とにかく早くあの村へ、パーティーの魔術師の魔力を攻撃ではなく体力の回復とスピードアップの支援に注ぎ込み、時々現れる大型化している獣たちも無視する勢いで走った。

 これまでの旅程の進行速度と比べ物にならないくらい早い速度で、目的の村に向かって進んだパーティーメンバー。

 一昼夜をかけて、何とか目指す辺境の村の、目立っていた二階建ての建物に這う這うの体でたどり着いたとき、社交場といわれるその村唯一の酒場のど真ん中で、

「よう!みんな無事だったか?」

 随分とスッキリとした顔をしたブレーズがうまそうに酒を飲んでいる姿を持た時、安堵した気持ちよりも殺意が沸いたことは、致し方ないことだと思う。


 パーティーメンバーも身だしなみを整えて、食事をとり一息ついて、怪我が治ってきれいだったはずの顔に、アオタンを作ったブレーズに、イノシシに吹っ飛ばされた後の話を詳しく聞くことにした。

 といっても、ブレーズから聞くことができたのは、「妖精か精霊?に助けられた」とか「可愛かった」とか、訳が分からない事だけ。

 しかし、目の前には大怪我をしたはずのブレーズがピンピンとして、自分たちよりも一日も早くこの村に到着したという事実があり、ポーションも、少しイヤ、随分と粗忽者であるブレーズには渡さないようにしていた事もあり、一概に彼の話が噓、空想であると言い切れない。

「あの森は、『魔』ではないなぁ、『聖なる』森だよなぁ」

 目の周りに青いあざを丸くつけた状態で、呆けた顔をしていてもなお男前なのがなぜか今は尚更許せなく感じるパーティーメンバーたちだった。

 とにかくその日は、前日からブレーズも泊っているという、この村唯一の旅籠も兼ねている社交場と呼ばれるここに泊まることとなった。
 
 一番の目的は、とにかくこの辺境の村に来るという、冒険者としての一種のロマンのようなものを達成するためで、それはできたのだから、ここからは現実的な目標達成のため、翌日から精力的に行動をしようとするパーティーメンバーを横目に、リーダーであるブレーズは一つしゃっきりとしない。

 この村特産のハイポーションももちろん気になるが、彼の心を占めている一番は、助けてくれた精霊?のことであった。

 何かに助けてもらえたのは事実だろうが、それが精霊とか人外のたぐいであると信じている者は誰もいない。

 この村のことを何一つ知らない彼らにとって、うかつに禁忌に当たるかもしれない事を聞いたとしたら……と思うと、質問することもはばかられて、とにかくしばらくは情報収集に努めることでパーティーメンバーの意志はまとまっていた。

 
 とにかくまずはこの村に来た一番の目的、エリクサーばりのポーションを手に入れること。

 とは言いつつも、そもそもエリクサーといえるものが手に入るとは思ってもいない。そんなものが買えるほどの金も持っていない、ただ冒険者の中ではこの村のポーションとわかるだけで、とても高価で取引されるし、何と言ってもその効果の高さから、命には代えられないと考えている高度な依頼を受ける上級の冒険者ほど、この村のポーションを手に入れたがるものなのだ。
 
 ブレーズのパーティーも上級といわれるB級に上がったばかりのパーティーで、個人的な能力でこの村に正式にギルドから挑戦することを許されるA級にはまだ手が届かなかった。あくまでもパーティーとしての能力がB級で在り、個人的にはC級の者もこのパーティーには含まれていた。

 ブレーズたちが他の能力が足りなくてこの村に来ることを正式に許されていないパーティーと違ったのは、山周りの道を通って来たこと。その道をこれた根拠は、ブレーズが実家の公爵家からの情報で、ゴタゴタしていた道中に当たる小国が、政治的に収まってきたことを知れたことが大きい。

 その情報があったからこの道を来たのであって、それがなければブレーズが突っ走り、山登り山越えをして敢行し、他の能力の満たないパーティーと同じように冷たい屍を山肌に晒していたかもしれない。

 そうまでして手に入れたかったポーションが、今目の前にある……かもしれない。

 はやる心を抑えて、情報を得るためにギルドを訪れようとするも、もう既に危険人物としてリストアップされていることなど、つゆ知らぬパーティーメンバーなのであった。
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