双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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17 カーラは、最強!かもしれない……

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 にこにことヴォラスの様子を見ていたカーラは、顔色を赤くしたり青くしたり誰が見てもおかしいんじゃないか?ということを指摘することなく、手に持っているカップからちゃぷちゃぷとお茶が膝の上にこぼれていることが気になったらしい。

「あら……拭くものを何か持ってこないとねぇ」
 
 と、言いながら庭に干してあるタオルを取りにそのまま窓の外に。

 家の中には初顔合わせの2人が、2人だけで残されてしまった。

 心の色を見て、なんとなくヴォラスの人となりを把握したルフェルとは違い、ルフェルの存在についてあることないこと、悪い創造ばかり巡らせているヴォラスは、開け放たれた玄関の前にいるルフェルの姿が逆光のためよく見ることができずにいた。

 ルフェルもカーラが席を外している間に、いつもは使うことのない魔法を使って、ヴォラスの核心を見てみようと、今だにルフェルの椅子に座って動いていないヴォラスに近づきながら、一般的に鑑定といわれている魔法を使った。

 ヴォラスは魔法適性がないから、自分に魔法が使われたのはわからない。ただルフェルの姿をはっきりと捉えたいと見つめていたそのルフェルの瞳が、魔法を使った瞬間に一瞬深紅に光ったのを見逃さなかった。

 ヴォラスは知らなかったがその瞳の色は、カーラが逃避行の中でも決して手放さなかった宝石、『これはね、お母さんのお父さんが持たせてくれた宝石。ルビーっていうのよ。その中でもビジョンブラッドといわれる色のルビーでね、この色ルフェルの色と同じなのよ。だからこれだけは決して……』と、同じ色。

 ゆっくり近づいてきたルフェルの顔がきちんと見られるところまで来ると、先ほど見た一瞬の色とは違って、彼の瞳は一見すると黒にしか見えないような、濃いそれは濃い赤だった。

 ヴォラスはその一瞬の色を見た時すべてを悟った。目の前の子供が例え8歳ほどにしか見えなかったとしても、カーラが自分を見つめてくれたその瞳が、10年前と変わらない色を湛えていることが見えた時に。カーラがなぜ何も言わず、実家を頼らず、こんな辺境の村でひっそりと暮らしているのかを。

 10年間カーラを探すために探しに探した情報すべてを把握しているヴォラスは、ここで最後のピースがカチリと嵌まったように、すべてがわかった気がしてきたのだ。

 それと、魔法適性の全くないヴォラスはといえども、さっきルフェルが自分に魔法の……そう鑑定魔法あたりを使ったことは、その様子から感じ取れたのだ。


 カーラが勤めていた公爵家で生まれた嫡男。

 その夜に公爵家から走り出て消えたみすぼらしい馬車。

 専属を申し込まれながらもその国から逃げ出した産婆。

 双子を嫌う貴族。

 紅の瞳をした、魔法が使える、10歳?の少年。

 
「カーラ……」

「なあに」

 そこには、10年前と変わらない彼女が、乾いたタオルを持って笑顔で立っている。

 ヴォラスは、自身が死ぬような思いをして到達できたこの辺境の村に、いつどのようにしてやってこられたのかをまだ聞いていない。しかし、並大抵ではなかった事は、身をもって知った。

 いくら、治癒魔法を使いことができるとしても、身一つでなく子供連れで、あの山を越えてきたのかと思えば、奇跡というしかなく、改めて、祈ったことのない神に感謝した。

 膝だけでなく、顔までぐちゃぐちゃに濡らしているヴォラスにあきれながらも、まずその顔を拭いてあげるカーラ。

 そんな大人の男の様子に、毒気を抜かれて立ち尽くすルフェル。

 カオスな空間はそれからしばらくの間続いた。

 
 その日の夕食を三人で食べて、それなりにうちとけた様子の男たちに嬉しそうな顔のカーラ。
 
 そんな二人とも、カーラの手前突っ込んだことを聞けずにいただけで、聞きたいことは山ほどあったが、その切っ掛けを掴めずにいた。

 ヴォラスは、ルフェルの出生について、自分なりに確信が得られているためか、比較的落ち着いた心持でいられたが、ルフェルにしてみれば古い友達って何?ってところで、内心は複雑なままである。

 今まで全く、父というものの存在を考えたことがなかったが、母が居るなら父も居るものなのだろう。

 その考えに至った時の、自分のアホさ加減に自分で驚いたものだ。

 この村には子供といえる存在が自分しかいなかったため、親子の存在が自分と母の組み合わせしかなかったのだ。

 だって森の中の生き物も、基本母と子供だけなのだ。父親、オスの生き物が子供と一緒にいるものを見たことがなかったのだから。言い訳だが……。

 
 目の前の、このありあわせの箱に座った人物、「それ僕の椅子……」といったとたん慌てて立ち上がり、二度と座ろうとしなかった、そんな人。

 母の手料理を「初めて食べる。ウマイ」と涙を流しながら食べる、ルフェルから見たら少しイタイ人。

「この人が僕のお父さんなの?」

 この一言が聞けぬまま、二人の微妙な関係はしばらくの間続くことになったのだ。

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