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5 謎のキャラバン
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「お母さんのためにこの薬草を渡したいんだけど……いい?」
初めはいい答えをくれなかった優しい何かも、ルフェルの心の中が誰よりもわかる存在であったし、何よりも彼が大切で、彼の幸せが何よりも重要な事だったから、お願いが10回を超えたころ、母にだけルフェルの力の恩恵を与えることを許した。
ルフェルが、不思議な倉庫と呼んでいるそこから取り出した新鮮な薬草を母に渡した時には、その薬草の価値を誰よりも知っている母親がその入手方法に疑問を抱き、社交場にいる元冒険者に相談をしたことから、村を上げての大騒動になった。
結果は……魔の森の浅いところでの採取には目をつぶるというもので、治まったが……。
優しい何かとの約束を破ってしまう形になってしまったことは残念だが、不思議な倉庫のことは母にも内緒にしなければいけないとルフェルは心に誓った。
ルフェルは母のために積極的に薬草の採取に努め、母の薬師としてのスキルも上がり、極々たまにやって来る、魔の森を目指した上級冒険者の中で、母の作るポーションの質の良さが評判になり、その界隈での噂は、山を越えた先の都のギルドでも流れるほどになっていた。
ルフェルが10歳になって少し過ぎたころ、めずらしく冒険者にではない行商人が山を越えてやってきた。
この村にも極まれに、冒険者崩れの行商人が手に入りにくい魔の森の産物を求めてやってくることがある。
非常に険しい山を越えてきても、手に入れれば宝の山になるような素材も、この村で利用できるモノでなければ、ただ同然で手に入る。それに命を懸ける輩も存在する。
しかし今回やってきたのは、小さいながらもキャラバンを組んだ商人だった。
山越えも最短距離の険しい道ではキャラバンで来ることはできない。随分と遠回りになるが山のすそ野をぐるりと回ってくるコースは、地形的な面よりも政情の悪い国を渡ってこないといけないことがネックとされているコースで、野盗の類が非常に多く居るとされていて危険なのだ。
つまり命がけでやってきた道をまた戻るとなると、せっかく手に入れたモノ諸共野盗に命と共に奪われることが十分に考えられるコースなのだ。
そのような道をやってきたキャラバンは、主人と思われる商人以外は全員屈強な冒険者と思われる商隊だった。
「私たちは、エクサルファ帝国で新興の薬種問屋を営んでおりますファブレ商会のキャラバンでございます。こちらに非常に効能の高い薬師様がいらっしゃるとお聞きしまして、やってまいりました」
このような辺境の地に、徳など全く無さそうな無理をしてやって来た、商人の裏側を疑ったこの村のまとめ役は、彼らが目的としてやって来たという人物、ルフェルの母カーラに会わせる気は全くなかった。
キャラバンがやってきた日はたまたまカーラの仕事はお休みで、この社交場に彼女は来ていなかった。
社交場に居てこの様子を見ていた一人が、まとめ役の意を受けてカーラに、商人の本意がわかるまでのしばらくの間、社交場に顔を出さないようにとと伝えにいった。
「今日は休みで本当に良かったぜ。商人がキャラバンで来たんだ。それはいいんだが、その商人カーラさん目当てで来たらしい。まだどんな奴か判断できないから、判断できるまで社交場にこないほうがいい」
つけられないように慎重にやってきた現役の冒険者でもある彼は、そう忠告すると、また情報を持ってくると言って、魔の森近くの家から、村の中心部に戻っていった。
庵のような小さな家であるが、ルフェルとカーラ親子にとってとても大切なその家で、久しぶりの母の休日をゆっくりと過ごしていた二人は、いきなりの冒険者の訪問と彼からもたらされた情報に、困惑するだけだった。
特に母カーラの動揺は大きく、今まで失敗したことがないパイを焦がしてしまった程で、ルフェルは後で社交場に行き確かめてこなければいけないと、心落ち着くハーブティーを母のために入れながら思うのだった。
初めはいい答えをくれなかった優しい何かも、ルフェルの心の中が誰よりもわかる存在であったし、何よりも彼が大切で、彼の幸せが何よりも重要な事だったから、お願いが10回を超えたころ、母にだけルフェルの力の恩恵を与えることを許した。
ルフェルが、不思議な倉庫と呼んでいるそこから取り出した新鮮な薬草を母に渡した時には、その薬草の価値を誰よりも知っている母親がその入手方法に疑問を抱き、社交場にいる元冒険者に相談をしたことから、村を上げての大騒動になった。
結果は……魔の森の浅いところでの採取には目をつぶるというもので、治まったが……。
優しい何かとの約束を破ってしまう形になってしまったことは残念だが、不思議な倉庫のことは母にも内緒にしなければいけないとルフェルは心に誓った。
ルフェルは母のために積極的に薬草の採取に努め、母の薬師としてのスキルも上がり、極々たまにやって来る、魔の森を目指した上級冒険者の中で、母の作るポーションの質の良さが評判になり、その界隈での噂は、山を越えた先の都のギルドでも流れるほどになっていた。
ルフェルが10歳になって少し過ぎたころ、めずらしく冒険者にではない行商人が山を越えてやってきた。
この村にも極まれに、冒険者崩れの行商人が手に入りにくい魔の森の産物を求めてやってくることがある。
非常に険しい山を越えてきても、手に入れれば宝の山になるような素材も、この村で利用できるモノでなければ、ただ同然で手に入る。それに命を懸ける輩も存在する。
しかし今回やってきたのは、小さいながらもキャラバンを組んだ商人だった。
山越えも最短距離の険しい道ではキャラバンで来ることはできない。随分と遠回りになるが山のすそ野をぐるりと回ってくるコースは、地形的な面よりも政情の悪い国を渡ってこないといけないことがネックとされているコースで、野盗の類が非常に多く居るとされていて危険なのだ。
つまり命がけでやってきた道をまた戻るとなると、せっかく手に入れたモノ諸共野盗に命と共に奪われることが十分に考えられるコースなのだ。
そのような道をやってきたキャラバンは、主人と思われる商人以外は全員屈強な冒険者と思われる商隊だった。
「私たちは、エクサルファ帝国で新興の薬種問屋を営んでおりますファブレ商会のキャラバンでございます。こちらに非常に効能の高い薬師様がいらっしゃるとお聞きしまして、やってまいりました」
このような辺境の地に、徳など全く無さそうな無理をしてやって来た、商人の裏側を疑ったこの村のまとめ役は、彼らが目的としてやって来たという人物、ルフェルの母カーラに会わせる気は全くなかった。
キャラバンがやってきた日はたまたまカーラの仕事はお休みで、この社交場に彼女は来ていなかった。
社交場に居てこの様子を見ていた一人が、まとめ役の意を受けてカーラに、商人の本意がわかるまでのしばらくの間、社交場に顔を出さないようにとと伝えにいった。
「今日は休みで本当に良かったぜ。商人がキャラバンで来たんだ。それはいいんだが、その商人カーラさん目当てで来たらしい。まだどんな奴か判断できないから、判断できるまで社交場にこないほうがいい」
つけられないように慎重にやってきた現役の冒険者でもある彼は、そう忠告すると、また情報を持ってくると言って、魔の森近くの家から、村の中心部に戻っていった。
庵のような小さな家であるが、ルフェルとカーラ親子にとってとても大切なその家で、久しぶりの母の休日をゆっくりと過ごしていた二人は、いきなりの冒険者の訪問と彼からもたらされた情報に、困惑するだけだった。
特に母カーラの動揺は大きく、今まで失敗したことがないパイを焦がしてしまった程で、ルフェルは後で社交場に行き確かめてこなければいけないと、心落ち着くハーブティーを母のために入れながら思うのだった。
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