双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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1 天然の流刑地と呼ばれる場所に

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 四方の内三方を急峻な山々に囲まれ、残る一方は魔の森と呼ばれる深い森。

 万年雪を湛える山々からの湧水がいたるところからあふれ出ていて、広くはないが豊かなこの土地は、斜面にブドウ畑、平地には小麦が、秋には豊かな実りをもたらせてくれるだろう。

 また、平地のほとんどを占めている、魔の森といわれる人の手の入っていない森は、豊かな恵みを人々にもたらせる。

 薬草や果物、滋養のあるきのこや小動物。

 森深くにいる魔獣と呼ばれる生き物の脅威は常に感じつつも、森の浅瀬を利用させてもらうことで、小さな集落に住む人々は、のどかに豊かな自然の恵みを受けながら生活をしていた。

 この閉ざされた小さな集落に暮らしている人々は、誰しもがそれなりの理由を持って、この様な辺鄙な村に暮らしている。

 あの高い山からこちら側は、どこの国にも属さず、誰のものでもない、そんな土地。

 外の世界との交流はとても限定的で、魔の森の方向からこの場所に近づくことは不可能で、残りの山側からも夏でも残雪が残る山越えが必要で、物好きともいえる行商人が年に3度やって来る事が、外部との接触が図られる数少ない機会である。

 不定期に訪れる外部の人間としては、冒険者がある。
 
 陸の孤島ともいえること場所は、他の場所にはない動物、他には生えていない植物など、珍しいものに目のない貴族や好事家にとっては、宝箱のような場所であり、冒険者たちにしても危険な思いをしても訪れたい場所なのである。

 また、腕自慢の冒険者には、この地にたどり着ければそのすぐ隣にある魔の森は、レベリングを行いながら、お宝も手に入る、そのような場所でもある。

 この世界にあるここ以外の魔の森とやばれる魔獣や有用な薬草などがうじゃうじゃいる場所は、砂漠の中や、氷原の中、絶海の孤島すべてなど、とても厳しい環境の中全く気の抜けないそのような場所。

 しかし、この名のない村の辺の魔の森は、人の住める環境の隣に魔の森があり、森の浅い場所でも十分稼げるうえに、森の外に出れば十分な食事も寝床も保証されているそのような場所。

 冒険者の集まり、冒険者ギルドでは、上位冒険者しかその場所を知らせず、基本秘匿される場所として扱われているほどであった。

 

 そんな、名もない村にあまりにも不釣り合いな、母子二人きりの家族がいた。

 天然の流刑地とでもとられかねない環境の中で、若く美しい母親と、女の子と見まがう程可愛らしい10歳ほどに見える男の子が、村の中でも外れの魔の森の近くの小さな庵のような家で、仲睦まじく暮らしていた。

 この村では女性の数が極端に少ない。子供の数も少ない。

 平和に暮らしている人間にとって、あの険峻な山を越えてくる程のことはそうそうなく、自主的にこの場までくる者には、想像のできないようなことがあり、この天然の流刑地に暮らしているのだ。

 この親子がこの村にやってきたのは10数年前。

 ん?子供の年齢が合わない?

 確かに、この親子、と思われるものがやってきたのは10年以上前。

 秋も深まり、これからは天然の雪の壁でこの村すべてが閉ざされるだろうと思われる、ぎりぎりの日。

 着の身着のままの様相で、山から降りてきた女の子と腕に抱かれた小さな包み。

 きっと山の上からそこを目指して歩いてきたのだろう、この村では唯一の二階建ての建物。

 冒険者ギルドの主張所であり、宿泊施設であり、ちょっとした売店であり、村人たちの社交場でもあるその建物。
この里で目立つ人工的な物はこの二階建ての建物ぐらいしか見当たらない。

 時雨れた雪交じりの雨が降りしきる宵の口、もう外はすっかり暗くなった里の社交場、男たちが自分たちで作ったエールを片手に今日一日の出来事を口角泡立てて話し込んでいる中、入り口の扉が叩かれた。

 あまりにも弱い音であったので、たまたま扉の前を通りかかった男が気がつかなければ、いつまでもたたき続けていただろう、そんな小さなノックの音だった。

「こんな時間に誰だ?」

 ギシギシとなる扉を開けると、その扉によりかかるように立っていただろう、若い娘が室内に転がり込んできた。

 腕にはとても大切なものなのだろう、壊さないように抱きかかえたにもつはそれぐらいしか持っていない、やけに軽装なのがが目立つ。

 この格好であの山を越えてきたのか?

 誰もが疑問に思う、薄汚れたマントの下にはこれもまた汚れてはいるが、如何にも都会で持て囃される流行のドレスが覘いている、そんなうら若い女性が、なんでこのような場所にいるのだろうかと。


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