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「誘拐犯の世界レベルで、この上位にある地球から4人も攫って行くことは、正規の道であればとてもできないこと。魂を一つかすめていけるかどうか。禁呪を使って補完したとしか考えられない。それにあのレベルの世界、まだ管理している神の卵の力からして、地球クラスの人間を召喚するほどの異変が起こっているとも思えない」

 神様の背後のスクリーンには、その言葉に合わすようにおとぎ話のような世界の街が映し出されている。

 地球のような惑星ではなく、地球の物理学や科学の進んだ世界からは考えられない、きっちりとした箱型の世界。

 箱庭にしか見えない世界がそこにあった。

 随分と俯瞰から見ていればただの箱庭にしか見えない。

 しかしその世界に住んでいる者たちから見れば世界の果ては見ることができない。

 箱庭の果てが世界の果てなのだ。

 ライトが今までの派遣された世界の中でも一段と小さなものだと感じた世界は、やはり神とはまだ言えないような見習いも見習いが初めて管理を実践する世界であるという。

 俯瞰から写していた映像が地上の細かなことまで見て取れるまで降りてきて、人間や動物たちの営みを映し出してゆく。



 神々の領分については神様の方に調査してもらうとして、人間の営みは地球の中世に似た世界が映し出されている画像を見ながら、渡された資料を読み込んでいく。

 ライトがこの仕事をするようになって、様々なことをできるようになったが、その中の一つに記憶力の異常な向上がある。

 まぁまぁ厚みがありびっしりと書き込まれているこの資料も、初めのころにやられた神様からなんの前触れもなく、直接頭に情報を送り込まれるという拷問を嫌ったライトからの切なる要求から作られたもので、神にしてみれば無駄以外何物でもない物でもあった。

 
 今見ているこの世界には人間が作っている『国』と呼べるようなものは数少ない。

 大国といわれるようなものも日本人の感覚からすれば、そこらへんの『市』にも値しないくらい小さい。

 中世の世界に似たとは言え、国の大きさはギリシャ文明のポリスと変わりがないくらいのものかもしれないと、ライトは資料を読み込みながら感じた。


 
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