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チュート殿下 131 タリスマン帝国の旅 7
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手に取ったメモには非常にわかりやすい地図が書かれてあった。
俺はおやっさんに頭を下げて、カウンターの上にあったものを受け取って、俺の少し後ろに立って待っていた、キールに振り向いた。
キールもカウンターの中に立っている、仁王立ちに戻っていた、おやっさんに軽く頭を下げてギルドから退出するために俺にうなずいて出入り口に向かう。
俺も出入り口に向かうが、訓練の一環として今このギルドにいる人間の興味が向いている先を知るためのサーチを使う、軽くね。
まぁそんなもの使うまでもなく、顔色や目線で大概わかるけど。
依頼窓口のお姉さんは、推測通りキールを目線で追っていて、出る前に声をかけようかどうしようか迷っている感じがする。窓口業務としたら、ここから帰ろうとしている今声をかけるのはおかしなものだから、下心を悟られないように声をかけたくて葛藤しているようだ。
冒険者専用窓口のお姉さんも、ずっと気を引こうとしている冒険者にすでに辟易としていて、その状態から脱するためにもキールに声をかけて利用しようとしている感じがする。目の前の嫌な環境からの脱脚が第一義だとしても、こっちにもやはり、キールを狙っている下心が見え隠れしている。
が、どちらのお姉さんも買取窓口で仁王立ちしているおやっさんの、「面倒ごと起こすなよオーラ」を感じ取る力くらいは持っているようで、自分の行動を起こすことの抑制に働いているようだ。
このオーラはこのギルドの中全てに充満しているみたいで、一応冒険者と名乗っている者たちはこんなに近い危機を察知できなければ、生き残れないよね。
テンプレ的な絡まれはなくギルドから出ることができたし、夜這いや夜討ちを気にすることなく、寝ることができる宿も知ることができたようだ。
「丁寧なわかりやすい地図だ」
キールはこの町に入る前にすでに完全なる地図を頭の中に構築済みなのだが、それがなくても始めてこの町に来た者でも、子供でもわかる地図だった。
そう大きくない町ではあるが、メインストリートから横に入る道に進み四角を2つ、そこを右に曲がり……。
この街の住宅地なのか三階建ての建物が連なるように立っているその一角、小さな看板が出ている、この看板にはベッドの絵が描かれているだけ、いや、隅っこに小さくパンの絵も刻まれている。
宿の看板もわかりやすくなっているようで、ベッドの絵が基本だが、それにビールジョッキが描かれていれば飲むことができる居酒屋もある宿屋。パンが描いてあれば朝食はつくという合図。ベッドだけの場合は素泊まり専用を表しているそうだ。
紹介されたここは、小さなパンも描かれているから、朝食はつけることもできるのだろう。
看板が無ければ周りの住宅地に立っている建物と全く変わらないドアノブをひねる。
カランカランとドアに付けられたベルが鳴る。住宅地のせいかその音も控えめだ。
「…はーい!少しお待ちください」
建物の奥の方から、想像していたよりも随分と若い女性の声が聞こえてきた。
あの厳ついおやっさんの紹介だったから安心していたのだが、もしかして……
若干疑心暗鬼に囚われそうになった時に、その女性が現れた。
年齢は俺と今の姿のキールの間くらい、背は俺よりも低い、つまり随分と小柄。
「あの、実は冒険者ギルドで……」
言いながら、おやっさんにもらったメモを見せた。
女性はそのメモを一目見るなり
「あぁ、お父さんの紹介ですね。さぁどうぞ!」
と、とびきりの笑顔付きで招き入れてくれた。
『遺伝子の不思議……』
この世界でもDNAとか進化論とか関係あるかどうかわからない。いや無いんじゃないか、だ女神様だし……
なんて図らずもキールと同じ感想を持ちながら、あの厳ついおやっさんの娘さんという小柄な女性の後をついていく。
「ここはほぼ母と2人でやっている宿屋なので、多くて2組ほどしかお泊めすることができないんです。父はあのようにギルドに詰めっきりで、夜には帰ってくるので防犯には役立っているんですけど」
と言って、可愛い声でコロコロと笑った。
「父の紹介でギルドからお客さんが来ても、それは大抵女の方で、若い男の方を寄越すなんて本当初めてじゃないかしら」
そう長くのない廊下の突き当たり、普通のリビングのような部屋に通される。
明るく清潔に保たれたリビングルームは、とても女の人が好むような可愛い内装に整えられている。
「お通ししてから言うのもなんなんですが、おやすみいただくお部屋もこことそう内装が変わらないんですけど……よろしいでしょうか?」
この状況で拒否ができるような猛者がいるのでしょうか。
厚顔無恥に取られかねない普段のキールであっても、今ここで「いえ結構です」(拒否の方)を言える訳もなく。
非常に可愛らしいそのリビングで、この場にあのおやっさんは普段どんな顔をして座っているんだろう、と想像することも怖くなり、でもウエルカムドリンクであるそうな、優しい味の紅茶をいただきながら、なんとか吹き出すのを堪える、俺とキールだった。
しかし、そんな努力をしたのにもかかわらず、翌朝目の前にあった現実は、想像よりもよほどシュールで、せっかく美味そうに見える可愛らしい朝食も、喉とお腹に力を入れずに食べることができない状態で、ゆっくり味わって食べることができずに、この町での心残りナンバーワンとなった。
俺はおやっさんに頭を下げて、カウンターの上にあったものを受け取って、俺の少し後ろに立って待っていた、キールに振り向いた。
キールもカウンターの中に立っている、仁王立ちに戻っていた、おやっさんに軽く頭を下げてギルドから退出するために俺にうなずいて出入り口に向かう。
俺も出入り口に向かうが、訓練の一環として今このギルドにいる人間の興味が向いている先を知るためのサーチを使う、軽くね。
まぁそんなもの使うまでもなく、顔色や目線で大概わかるけど。
依頼窓口のお姉さんは、推測通りキールを目線で追っていて、出る前に声をかけようかどうしようか迷っている感じがする。窓口業務としたら、ここから帰ろうとしている今声をかけるのはおかしなものだから、下心を悟られないように声をかけたくて葛藤しているようだ。
冒険者専用窓口のお姉さんも、ずっと気を引こうとしている冒険者にすでに辟易としていて、その状態から脱するためにもキールに声をかけて利用しようとしている感じがする。目の前の嫌な環境からの脱脚が第一義だとしても、こっちにもやはり、キールを狙っている下心が見え隠れしている。
が、どちらのお姉さんも買取窓口で仁王立ちしているおやっさんの、「面倒ごと起こすなよオーラ」を感じ取る力くらいは持っているようで、自分の行動を起こすことの抑制に働いているようだ。
このオーラはこのギルドの中全てに充満しているみたいで、一応冒険者と名乗っている者たちはこんなに近い危機を察知できなければ、生き残れないよね。
テンプレ的な絡まれはなくギルドから出ることができたし、夜這いや夜討ちを気にすることなく、寝ることができる宿も知ることができたようだ。
「丁寧なわかりやすい地図だ」
キールはこの町に入る前にすでに完全なる地図を頭の中に構築済みなのだが、それがなくても始めてこの町に来た者でも、子供でもわかる地図だった。
そう大きくない町ではあるが、メインストリートから横に入る道に進み四角を2つ、そこを右に曲がり……。
この街の住宅地なのか三階建ての建物が連なるように立っているその一角、小さな看板が出ている、この看板にはベッドの絵が描かれているだけ、いや、隅っこに小さくパンの絵も刻まれている。
宿の看板もわかりやすくなっているようで、ベッドの絵が基本だが、それにビールジョッキが描かれていれば飲むことができる居酒屋もある宿屋。パンが描いてあれば朝食はつくという合図。ベッドだけの場合は素泊まり専用を表しているそうだ。
紹介されたここは、小さなパンも描かれているから、朝食はつけることもできるのだろう。
看板が無ければ周りの住宅地に立っている建物と全く変わらないドアノブをひねる。
カランカランとドアに付けられたベルが鳴る。住宅地のせいかその音も控えめだ。
「…はーい!少しお待ちください」
建物の奥の方から、想像していたよりも随分と若い女性の声が聞こえてきた。
あの厳ついおやっさんの紹介だったから安心していたのだが、もしかして……
若干疑心暗鬼に囚われそうになった時に、その女性が現れた。
年齢は俺と今の姿のキールの間くらい、背は俺よりも低い、つまり随分と小柄。
「あの、実は冒険者ギルドで……」
言いながら、おやっさんにもらったメモを見せた。
女性はそのメモを一目見るなり
「あぁ、お父さんの紹介ですね。さぁどうぞ!」
と、とびきりの笑顔付きで招き入れてくれた。
『遺伝子の不思議……』
この世界でもDNAとか進化論とか関係あるかどうかわからない。いや無いんじゃないか、だ女神様だし……
なんて図らずもキールと同じ感想を持ちながら、あの厳ついおやっさんの娘さんという小柄な女性の後をついていく。
「ここはほぼ母と2人でやっている宿屋なので、多くて2組ほどしかお泊めすることができないんです。父はあのようにギルドに詰めっきりで、夜には帰ってくるので防犯には役立っているんですけど」
と言って、可愛い声でコロコロと笑った。
「父の紹介でギルドからお客さんが来ても、それは大抵女の方で、若い男の方を寄越すなんて本当初めてじゃないかしら」
そう長くのない廊下の突き当たり、普通のリビングのような部屋に通される。
明るく清潔に保たれたリビングルームは、とても女の人が好むような可愛い内装に整えられている。
「お通ししてから言うのもなんなんですが、おやすみいただくお部屋もこことそう内装が変わらないんですけど……よろしいでしょうか?」
この状況で拒否ができるような猛者がいるのでしょうか。
厚顔無恥に取られかねない普段のキールであっても、今ここで「いえ結構です」(拒否の方)を言える訳もなく。
非常に可愛らしいそのリビングで、この場にあのおやっさんは普段どんな顔をして座っているんだろう、と想像することも怖くなり、でもウエルカムドリンクであるそうな、優しい味の紅茶をいただきながら、なんとか吹き出すのを堪える、俺とキールだった。
しかし、そんな努力をしたのにもかかわらず、翌朝目の前にあった現実は、想像よりもよほどシュールで、せっかく美味そうに見える可愛らしい朝食も、喉とお腹に力を入れずに食べることができない状態で、ゆっくり味わって食べることができずに、この町での心残りナンバーワンとなった。
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