180 / 186
チュート殿下 129 タリスマン帝国の旅 5
しおりを挟む
しかし、ただランクを上にあげれば良いというものでも無い。
冒険者のランクが、社会的信用度も表すものとして受け止められるようになって、それは貴族の階級にも似て、どの国おいてもそれは共通認識として扱われるものとなった。
それに付随して受けられる恩恵は大きくなり、特に商店や宿に於いては、Sランクの贔屓ともなれば、どこどこ王国御用達と同じような意味も持つようになって、受ける方も与える方にも美味しいものとなっていった。
ただここで上位ランクの冒険者に負わされた義務というものも存在していることを忘れてはいけない。
まず、Cランク以上の冒険者は、非常呼集を拒否することはできない。どのような理由があろうとも必ず非常呼集を発した国、町、村。とにかくその地に居た冒険者は、近くの冒険者ギルドに出頭する義務があるのだ。
その非常呼集がたとえ自分の出身国との戦であっても拒否できない。冒険者の所在に関しては、その仕事柄ギルドに赴かず行うことは難しい性質を持っていることから、比較的簡単に把握できるのだ。
基本的には冒険者ギルドはどこの国にも所属しない事が大前提であるが、そのギルドが所在する国からの要請を断ることは難しく、過去に何度か対国同士の戦に参加させられた経緯もある。
その他にもBランク以上の冒険者は指名依頼を断ってはいけないという規則もある。もちろん全ての指名依頼を断ってはいけないということではなく、ギルドが承認した指名依頼については、余程のできない理由が無い限り拒否することができない。
この規則の面倒臭い所は、Bランクの指名依頼となると結構高額な依頼料になることから、このような依頼をするのは国(王家あたり)か上位貴族、豪商、などなかなか片手間にできるようなものでなく、面倒臭いことは最初から想像できる所だ。
だからキールは程よいところのランクまで上げて、そこでそれ以上は上げないことにした。
「Cランクが程よいランクですよ」
Cランクまでは依頼などのポイントで勝手に上がっていくものだが、Bランクに上がるためにはギルドが行う試験に合格する必要があり、本人の希望意思が無ければBランクには上がる事はないという事だ。
「確かにね、キールがその気になったらSランクどころかSSSランクだってなんとかなっちゃうかもしれないもんな。でも面倒くささで言えばCランクでも面倒くさくないの?」
「確かに、非常呼集は面倒ですけど、スタンビートとかそういうしょっちゅうあるものでもないですし、もしそのような事が起こったとしても、たくさんいる中の一人でしかないので、大丈夫でしょ」
他の国に行ったりするのであればランクがCくらいは無いと面倒臭いことが増えそうだ。という。
Cランクといえばギリ上位冒険者扱いもあるかな、くらいだが。それがキールくらい若い冒険者であればまた話は違ってきて、ギルド側からも目ざとい商人や貴族にしても、これから化けるかもしれないという超新星になりうる期待から、悪い扱いは受けない可能性が高いのだ。
一箇所に留まるつもりがない俺たちにしてみれば、何かと腹を探られる前にその場から去るつもりであるから、それほど面倒なことにはならないという、キールの推測だ。
俺は最低他国に出国することに障害がないランクになれればよかったので、キールほど自由に動けなかったし、ギルドの登録した年齢いもギルドに登録できるギリギリの年齢だったのでまだEランクだ。
そもそもキールは登録した年齢も俺の保護者的立場になる必要もあり、成人年齢であったし、アミュレット王国ではなく、時々1人で遠征した時に、この国やもっと遠い国でちょこちょこ依頼をこなしていたそうだ。
アミュレット王国を離れて、俺としては堂々と冒険者活動をしようという意気込みもある。
キールもそれは同じで、あくまでも真理の探究が第一目的ではあるが、今ここでは冒険者であるから、それを楽しまなくでどうする、という気持ちもある。
今回は、このムウリカの町で常時討伐が出ている魔獣や害獣を討伐したとして、俺のギルドランクを上げる。
俺たちは二人でギルドパーティを組んでいる。パーティでの討伐依頼ランクは基本パーティ構成員の平均ランクということになっている。
だだし、少人数のパーティは1番下のランクに合わせてしか依頼を受けることができないため、今のままでは俺に合わせてEランクの依頼までしか受けることができない。
Eランクではほぼ討伐依頼のようなものを受けることはできないから、旅費を稼ぎながら旅をすることは実質難しい。
俺たちは別に旅費を稼ぐ必要はない訳だが、旅費も稼がない奴らが移動をしていることは奇異な事として記憶されるのも困った事なので、おかしくしないようにしなければいけない。
つまり俺のランクをできるだけ速やかにDランクへ上げる事だ。目立たずに……。
今の状態であれば、Cランクのキールが一人で依頼をこなす方が儲け的にも理に叶っているのだが、そうなるとパーティから外れたEランクの俺は城壁の外に出ることすら難しいことになりかねないらしいのだ。
キール的には記憶をいじるなどの力技でなんとかできなくもないが、行った町の人全員をとなると、それはそれで面倒なので、できるだけ正攻法で行くことにした。
力技には歪みが生まれやすいから。
冒険者のランクが、社会的信用度も表すものとして受け止められるようになって、それは貴族の階級にも似て、どの国おいてもそれは共通認識として扱われるものとなった。
それに付随して受けられる恩恵は大きくなり、特に商店や宿に於いては、Sランクの贔屓ともなれば、どこどこ王国御用達と同じような意味も持つようになって、受ける方も与える方にも美味しいものとなっていった。
ただここで上位ランクの冒険者に負わされた義務というものも存在していることを忘れてはいけない。
まず、Cランク以上の冒険者は、非常呼集を拒否することはできない。どのような理由があろうとも必ず非常呼集を発した国、町、村。とにかくその地に居た冒険者は、近くの冒険者ギルドに出頭する義務があるのだ。
その非常呼集がたとえ自分の出身国との戦であっても拒否できない。冒険者の所在に関しては、その仕事柄ギルドに赴かず行うことは難しい性質を持っていることから、比較的簡単に把握できるのだ。
基本的には冒険者ギルドはどこの国にも所属しない事が大前提であるが、そのギルドが所在する国からの要請を断ることは難しく、過去に何度か対国同士の戦に参加させられた経緯もある。
その他にもBランク以上の冒険者は指名依頼を断ってはいけないという規則もある。もちろん全ての指名依頼を断ってはいけないということではなく、ギルドが承認した指名依頼については、余程のできない理由が無い限り拒否することができない。
この規則の面倒臭い所は、Bランクの指名依頼となると結構高額な依頼料になることから、このような依頼をするのは国(王家あたり)か上位貴族、豪商、などなかなか片手間にできるようなものでなく、面倒臭いことは最初から想像できる所だ。
だからキールは程よいところのランクまで上げて、そこでそれ以上は上げないことにした。
「Cランクが程よいランクですよ」
Cランクまでは依頼などのポイントで勝手に上がっていくものだが、Bランクに上がるためにはギルドが行う試験に合格する必要があり、本人の希望意思が無ければBランクには上がる事はないという事だ。
「確かにね、キールがその気になったらSランクどころかSSSランクだってなんとかなっちゃうかもしれないもんな。でも面倒くささで言えばCランクでも面倒くさくないの?」
「確かに、非常呼集は面倒ですけど、スタンビートとかそういうしょっちゅうあるものでもないですし、もしそのような事が起こったとしても、たくさんいる中の一人でしかないので、大丈夫でしょ」
他の国に行ったりするのであればランクがCくらいは無いと面倒臭いことが増えそうだ。という。
Cランクといえばギリ上位冒険者扱いもあるかな、くらいだが。それがキールくらい若い冒険者であればまた話は違ってきて、ギルド側からも目ざとい商人や貴族にしても、これから化けるかもしれないという超新星になりうる期待から、悪い扱いは受けない可能性が高いのだ。
一箇所に留まるつもりがない俺たちにしてみれば、何かと腹を探られる前にその場から去るつもりであるから、それほど面倒なことにはならないという、キールの推測だ。
俺は最低他国に出国することに障害がないランクになれればよかったので、キールほど自由に動けなかったし、ギルドの登録した年齢いもギルドに登録できるギリギリの年齢だったのでまだEランクだ。
そもそもキールは登録した年齢も俺の保護者的立場になる必要もあり、成人年齢であったし、アミュレット王国ではなく、時々1人で遠征した時に、この国やもっと遠い国でちょこちょこ依頼をこなしていたそうだ。
アミュレット王国を離れて、俺としては堂々と冒険者活動をしようという意気込みもある。
キールもそれは同じで、あくまでも真理の探究が第一目的ではあるが、今ここでは冒険者であるから、それを楽しまなくでどうする、という気持ちもある。
今回は、このムウリカの町で常時討伐が出ている魔獣や害獣を討伐したとして、俺のギルドランクを上げる。
俺たちは二人でギルドパーティを組んでいる。パーティでの討伐依頼ランクは基本パーティ構成員の平均ランクということになっている。
だだし、少人数のパーティは1番下のランクに合わせてしか依頼を受けることができないため、今のままでは俺に合わせてEランクの依頼までしか受けることができない。
Eランクではほぼ討伐依頼のようなものを受けることはできないから、旅費を稼ぎながら旅をすることは実質難しい。
俺たちは別に旅費を稼ぐ必要はない訳だが、旅費も稼がない奴らが移動をしていることは奇異な事として記憶されるのも困った事なので、おかしくしないようにしなければいけない。
つまり俺のランクをできるだけ速やかにDランクへ上げる事だ。目立たずに……。
今の状態であれば、Cランクのキールが一人で依頼をこなす方が儲け的にも理に叶っているのだが、そうなるとパーティから外れたEランクの俺は城壁の外に出ることすら難しいことになりかねないらしいのだ。
キール的には記憶をいじるなどの力技でなんとかできなくもないが、行った町の人全員をとなると、それはそれで面倒なので、できるだけ正攻法で行くことにした。
力技には歪みが生まれやすいから。
11
お気に入りに追加
1,706
あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~
月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。
「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。
そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。
『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。
その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。
スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。
※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。)
※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?
キーノ
ファンタジー
私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。
ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?
自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?
私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ!
※紹介文と本編は微妙に違います。
完結いたしました。
感想うけつけています。
4月4日、誤字修正しました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる