転生したら当て馬王子でした～絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい～

チュート殿下 127 タリスマン帝国の旅 3

   アミュレット王国あの土地から離れると、その地の呪縛からも解放される様な気がする。

「気がするだけで、あそこから逃げるだけでは問題の解決にはならないんだよね、きっと……」

   俺の直近の一応の血族の行動を見ると、血の力で俺がおかしくなってしまう可能性がなきにしもあらずだ。

   だから、キールも早めに精神汚染を予防する術と、汚染を解除する術の開発を始めていて、それは今離宮に張られている結界に応用され使われている。

   悪意を持ったものが弾かれるのがそれで、はじめに悪意を持っていなくても、悪意を持った時点で精神が汚染されていると判定し、その時から以前離宮に入ることができた人でも、以後入ることができず弾かれる事になる。

「こちら側として必要であると判断した者に対しては汚染を解除するが、その場合なぜその様な状態になったのか調べなければ意味がないので、よっぽど必要な人でなければすることはないですが」

   とは、キールの弁だ。

  この体に神の与えたもうたプログラミングがあって、こちらの意思にお構いなく、時限爆弾の様に作動したら……。

   乙ゲーの始まる時がその時限であったらと、その時が来るまでの恐怖と、その時が回避された今は、いつその時限が来るのかという恐怖。

   強制力の強さは今まで抗っていた強さに比例して強く、チートキールが発現していなければ俺はこの先の自身の運命に抗う気力もなく、ただ流されて当て馬くんとして与えられた役を全うするか、とっくのとうにこの身を滅ぼされて故人になっていただろう。

『時間があると嫌な事を考えてしまうな、こんなに自然溢れていい空気の中なのに』

   時々魔獣が襲ってくるけど……。

   キールはアミュレット王国の事だけではなく、このタリスマン帝国の内情も探っている様だ。

   サウスエンドにピンクの電波2号が現れた事を鑑みるに、時同じくして隣の国でも何らかのストーリーが始まったか進んでいるかしているのかも知れない。

「もうそろそろ以前体が固まってしまったアミュレット王国から離れて7日経つけど……大丈夫かな。こんな森の中であんな風にはなりたくないもんなぁ」

   普通の移動手段を取っていないこともあって、用心してギルドのある街には顔を出していない。

「何であんな超ハイテクなギルドカードが存在してるんだろう。方や交通手段は馬車。このアンバランスな感じが、この世界がゲームの世界なんじゃないか感を補完して、本当は俺ただのプログラミングされた電子パルスの集合体なんじゃないかって」

   この世界で生きている事を信じたいし、自分の行動は全て自身で決めて進んでいると信じたい。

   あの時の、キールも実体化を解かれて、体の自由を奪われた時の記憶は、まだ生々しく残っているのだ。

   と言って、今日一度あっちに帰ったら、これからも7日間以上アミュレット王国から離れることができない状態になってしまいそうで、ちょっとここはもう暫く我慢してみようという事になった。

   ただ、森の中であんな風になってしまっても怖いので、ここは少し人の住んでいるところに行ってみないと、という事と、面倒に巻き込まれたくなくてギルドのないところを態と選んできたけど、もうそろそろどこかに顔を出さないと逆に不自然に成る。

   俺達は、少し南に戻る事になるけれど、サウスエンドから徒歩で進んでそうおかしいと思われない所まで移動する事にした。森の中では木のてっぺんからてっぺんへ、目視することのできる一番遠い所まで瞬間移動ジャンプして進む。

   この国に入った時には空を飛んできたが、あの時きちんと気配の遮断ができていなかったことで、サウスエンドに迷惑をかけたから、きっちり気配の遮断ができるもでは封印となった。

   瞬間移動ジャンプは一度行ってことがあるところには、座標を設けて飛ぶことができるから、次からは来たければこの森の中にもピンポイントでジャンプできるんだけどね。

   サウスエンドから小さな村を３つほど挟んだギルドのある町に行く事にした。

   

   町に入る時にはギルドカードの提示で滞りなく入ることができる。この辺りもまだ魔の森からそう離れていないからか、それなりの町にそれなりの石造りの壁で囲われている。

「サウスエンドはこの国の吹き溜まりって感じだったな」

   町の中の建物の形や色などの街並みは左程サウスエンドと変わらない、ただ人口密度の違いからか、町の活気が
著しくサウスエンドとは異なって感じられる。

   町の中央広場にも屋台が出ていない。この街で食べ歩きはできそうもない。

   まずはじめにギルドに顔を出して、この辺りの依頼がどの様なものか確かめてから、宿の紹介を受けるつもりだ。
   
「ギルドの看板はこの世界で統一されているみたいですよ」

  確かにアミュレット王国の王都にあったギルドも、サウスエンドのギルドもそしてここも、大きさは違っても掲げられている看板の図柄は一緒だ。

「どっかで見たことあるやつ……」

  なんかのゲームとか、そんな系小説の挿絵とか漫画なんかで見たこと有るような無いような……。

「この世界の識字率はそんなに高く無いようですし、言語や文字が違ってもわかるように看板があるのでしょう」

   キールはこの世界の言葉も文字も全部できるらしい。違いも把握して理解できる。

   俺も同じように文字も読めるしきっと話もできるだろう。ただし俺の場合は全て同じ文字、同じ言葉に変換されるので、どこの国のどこの言葉かはわからない。

   これも良くある転生特典というものかも知れない。