転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
上 下
171 / 186

クリフ・マークィス・ゲイル 6

しおりを挟む
    とても尊敬している宰相である父であるが、何故か王家絡みのことに関しては、発言が時々違っていたりするので信用していない。

    と言うのか、私も含めて王家のことに関しては辻褄が合わなくても不思議に思わないことが多々発生する事に、毎日の日記から気付いてしまったのだ。

    それは王都に長く居ればいるほど顕著になることも……。

    尊敬して畏怖していた侯爵であり宰相である父の、信じられない発言と行動から、私は自分自身を信じることができずに起こした行動であったが、それは自分の方が正しくて、父達、王都に住む人々の方が間違っていると言う結果だった。

    はっきりとは確かめていないが、王都に留まる事を殊の外嫌がる妹には、きっと私も知らない何かがあるのだろうと、この頃強く思う。

    そして、妹の精霊契約が終わり、初級学校に進む準備などで、それなりに広い屋敷の中でもバタバタソワソワとした雰囲気が漂うなか、久し振りに屋敷の中で顔を合わせた父に、初級学校においてアースクエイク殿下と接触し懐柔する事を命ぜられたのだ。

    今まで、この国には殿下は一人きりだと言い切っていた宰相が、その事に何の疑問も無いような顔で命じてきた。

「この度入園される殿下に接触し、生徒会に勧誘し、その人となりを把握せよ」

   この国では貴族として生きていく上で、王立学園を卒業することが最低限必要であると考えられている。

   王立学園には魔法を使えることが必須であるが、貴族であっても早々上位の精霊と契約できるものは稀で、下位の精霊であっても契約できれば一応貴族としての面子は保てるといったところ。

   精霊魔法が使えなくても、現在使われている魔道具は魔石を燃料とし使いこなせるので、普段の生活の上では魔法が使えないことで不自由することはない。

   魔石はこの世界に存在している動物の中で、何故か魔力を持っている魔獣の心臓の中に存在するものとして知られる。

   人間にも同じことが言えるらしく、魔力を持つ者の心臓の中には魔石が存在しているそうだ。

   私もそれなりに魔力があり、強い精霊と契約を結ぶことができたから、この心臓に魔石が存在するのかもしれない。

   ただし、ただ魔力が多いだけではなく、魔法を使いこなせるような、所謂大魔法師と呼ばれる方ではなければ、目視できるような魔石は存在しないらしい。

   この国ではない、英雄が建国したと言われる国には、その英雄王の残された魔石が至宝として祭壇に祀られていると聞く。

「……」

    考えたくなくて意識が少し逸れたが、折しも今日の昼、初等学園で、次期生徒会役員を指名するための会議を、学園長も参加されて行ってきたばかりだったのだ。

   いきなり現れた王子殿下に混乱するはずが、誰もが混乱することなく会議が進んだ事に、実はその時顔に出さないようにするのが精一杯だったくらい驚いていた。

   新1年生は仕方がないと思う、きっと家の中で関わりがなければ早々王族の話が出ることも無い。しかし、私と同じ2年生はこの前まで伯爵殿下と関わりを持ち、彼が唯一の王位継承権を持つ者として対応していたのだ。

   背中を何かを這うような、気持ちが悪い思いが会議中ずっとしていた。

   王都に出て来てからの違和感と戦った日々。

   そうだ、今まで気づかなかったが、妹が精霊契約を成し得たその時から、アースクエイク殿下の存在が頭の中から消えて無くなることが無くなった……?

   私が気持ちが悪い思いを耐えている間も会議は続き、当然のようにアースクエイク殿下の名前は次期役員候補の名簿の一番上に載せられていたのだった。


   初級学園は貴族が通う義務はないが、通うものが当たり前と捉えられている、ちなみに平民は通えない。

   ごく稀に、平民で精霊契約を結べる者がいるが、それらの者は神殿の中にある学び舎と呼ばれるところで一般的なマナーとともに魔法についても学ぶと言われている。

   その中のほんの一握りの高度魔法を扱える資格が生まれた者が、王立学園に特待生として通ったり、貴族の養子となって通ったりするらしいのだ。

   だから、ほとんどの 魔法が使える平民は神殿でそのまま、適した役職に就くものが大概であると聞く。

    神殿が究極に求めているのは、治癒、治療の高度な魔法で、それは水の精霊魔法の究極で有り、より強いものはそれに特化していると考えられる光の精霊魔法となるのだが、それは王家血筋を引く者にしか発現しないと考えられている。



「……」

   その王家の特徴の金を、現陛下よりもより鮮やかに纏っている殿下が私の目の前に一人で座っていた。

   殿下との接触は、生徒会長としてだけではなく、父からの密命をも受けていたが、その殿下との接触は殿下が学校生活に慣れてからと言う事もあり、のびのびになっていたのだ。

   殿下との接触、それは学園長からの授業中の呼び出しから唐突に突然始まったのだった。 

  
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

処理中です...