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チュート殿下 123 タリスマン帝国の冒険者 1
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ここはタリスマン帝国のど辺境。街と街との間隔も広く、魔の森のすぐ近くということで魔獣エンカウント率も高いらしい。
アミュレットも、魔の森と対している事は同じだが……。
『乙女ゲームとRPGでは土台が違うだろ』
という事らしい。
乙女ゲームで魔獣と戦う事はあまり求められない。
イケメンが颯爽と剣や魔法を使うシーンは求められても、ガタイのいい冒険者が汗水垂らし魔獣を倒す事は全く求められていない。
アースクエイクが魔獣にピチュんされた(かもしれない)時に出て来たぐらいしか、絵面的に魔獣は乙女ゲームにはお呼びでない存在だった。
しかし、タリスマン帝国はどうやら転生なのか転移なのかの勇者の物語が基本にある、所謂英雄譚がベースになっている世界のようなので、まぁゲーム的に言うなればRPGと考えて間違いないだろう。
だから街から街へ移動するフィールド上では、敵キャラとエンカウントするものらしいのだ。
『一般的な冒険者は、徒歩か馬車移動。商人の護衛でキャラバン移動もありかな』
金のないあまりランクの上ではない冒険者は、乗合馬車に護衛に着く代わりに無賃で乗せてもらう、というのもあるらしい。
俺達はこのタリスマン帝国においてはただの冒険者。それも流れの冒険者なのだ。
キールの、あの国を抜けた時に感じた自己肯定感は、先程ただの冒険者として登録した時により強くなったらしい。鈍いのか俺にはわからなかった……。
『この国のただの冒険者になる事で、あの国の影響力がほぼ抜けたのでしょうね』
以前もこの国には冒険者の姿でやって来た事はあった。
冒険者登録をアミュレット王国でして、立場的にも確かに冒険者だったが、この国でギルドには出向くような事はなかった。ギルドで依頼を受けるような事はしなかったからだ。
つまり、以前は形だけの冒険者もどきで、あくまでもアースクエイク王子の仮の姿とそのスキルのキールであったという事だ。
だから、以前は7日間で体も動かなくなり、キールの実体化も解ける始末。
今回もそのような心配が無いわけでもないのだが、キールによれば気にすることがないらしい。
『離宮にはちゃんとアースクエイク殿下が居るように見せてますし。そもそもあの場所はどのような者も中を覗く事は出来ませんから、勿論だ女神でもね』
ただ、あまり長い間顔を出さないと離宮の中の人達が心配するから、連絡は勿論の事、そう間を空けずに瞬間移動で離宮に直接帰ることも出来るから……キール君本当にチート……。
キールと会話?念話を交わしながらギルドのある広場からほど近いここ、この街の中で一番ランクの高いと言われる宿屋の前に差し掛かると、横を行くキールが「フッ……」と鼻で笑った気配がした。
何事かと横を見て確かめると、キールは顎で街一番の宿屋を指してサーチを使ってみろと言う。
覗き見みたいな気もしないではないが、今までの経験上下世話な意味でサーチを使うようキールは言わない。
さすがこの街一番(お高い)宿屋、とても繁盛しているようで結構なことだ。
サーチを行うにあたり、今までのアミュレット王国での人の見え方と魔力の根本が違うためか少し調整が必要だ。
アミュレット王国では魔法といえば精霊魔法で、契約をした精霊の力で魔法を行使する。俺はそもそもその範疇ではなかったから今一つ精霊魔法を理解しているともいえないが、魔法を使える人、主に貴族たちと、使えない人達ではサーチ魔法での見え方は違った。
タリスマン帝国では、スクロールを購入すれば誰でも魔法を使うことができると言うことだ。
存在の濃淡はスクロール魔法の強弱の違いなのか、元の魔力料の違いなのか、ここは高級宿だけあって色が濃く見える人が多い。
「う~ん……」
纏う色のようなものは濃いのに輝いてない人や、色はそう濃くないのに輝きが違う人もいる。
こっちは魔法の練度の違いなのか、光り輝いて見える人と、鈍く濁って見える人がいる。
「 内面の汚さとかじゃないよね」
宿屋の上階に色は濃いのにものすごく濁って見える人影を確認した。
キールが頷くので、サーチの質を変えて、その人物に集中する。
「若い女性?何あの色、何でもかんでも混ぜ込んですごく汚い、それに……何か叫んでいる?」
意識を集中して、収音魔法も使ってみる。
耳元に音が集まり、その音が意味を持ち始める。
『……どう……このま……あって……出てこないの!わたくしを助けるのが勇者なの!わたくしは聖女……』
「あー……なんかこの先聞きたくない感じ……。もしかしてこの前感じた面倒くさい感じのアレ?」
耳元の収音を切り頭を振った。聞くのも不愉快な声。
アミュレットも、魔の森と対している事は同じだが……。
『乙女ゲームとRPGでは土台が違うだろ』
という事らしい。
乙女ゲームで魔獣と戦う事はあまり求められない。
イケメンが颯爽と剣や魔法を使うシーンは求められても、ガタイのいい冒険者が汗水垂らし魔獣を倒す事は全く求められていない。
アースクエイクが魔獣にピチュんされた(かもしれない)時に出て来たぐらいしか、絵面的に魔獣は乙女ゲームにはお呼びでない存在だった。
しかし、タリスマン帝国はどうやら転生なのか転移なのかの勇者の物語が基本にある、所謂英雄譚がベースになっている世界のようなので、まぁゲーム的に言うなればRPGと考えて間違いないだろう。
だから街から街へ移動するフィールド上では、敵キャラとエンカウントするものらしいのだ。
『一般的な冒険者は、徒歩か馬車移動。商人の護衛でキャラバン移動もありかな』
金のないあまりランクの上ではない冒険者は、乗合馬車に護衛に着く代わりに無賃で乗せてもらう、というのもあるらしい。
俺達はこのタリスマン帝国においてはただの冒険者。それも流れの冒険者なのだ。
キールの、あの国を抜けた時に感じた自己肯定感は、先程ただの冒険者として登録した時により強くなったらしい。鈍いのか俺にはわからなかった……。
『この国のただの冒険者になる事で、あの国の影響力がほぼ抜けたのでしょうね』
以前もこの国には冒険者の姿でやって来た事はあった。
冒険者登録をアミュレット王国でして、立場的にも確かに冒険者だったが、この国でギルドには出向くような事はなかった。ギルドで依頼を受けるような事はしなかったからだ。
つまり、以前は形だけの冒険者もどきで、あくまでもアースクエイク王子の仮の姿とそのスキルのキールであったという事だ。
だから、以前は7日間で体も動かなくなり、キールの実体化も解ける始末。
今回もそのような心配が無いわけでもないのだが、キールによれば気にすることがないらしい。
『離宮にはちゃんとアースクエイク殿下が居るように見せてますし。そもそもあの場所はどのような者も中を覗く事は出来ませんから、勿論だ女神でもね』
ただ、あまり長い間顔を出さないと離宮の中の人達が心配するから、連絡は勿論の事、そう間を空けずに瞬間移動で離宮に直接帰ることも出来るから……キール君本当にチート……。
キールと会話?念話を交わしながらギルドのある広場からほど近いここ、この街の中で一番ランクの高いと言われる宿屋の前に差し掛かると、横を行くキールが「フッ……」と鼻で笑った気配がした。
何事かと横を見て確かめると、キールは顎で街一番の宿屋を指してサーチを使ってみろと言う。
覗き見みたいな気もしないではないが、今までの経験上下世話な意味でサーチを使うようキールは言わない。
さすがこの街一番(お高い)宿屋、とても繁盛しているようで結構なことだ。
サーチを行うにあたり、今までのアミュレット王国での人の見え方と魔力の根本が違うためか少し調整が必要だ。
アミュレット王国では魔法といえば精霊魔法で、契約をした精霊の力で魔法を行使する。俺はそもそもその範疇ではなかったから今一つ精霊魔法を理解しているともいえないが、魔法を使える人、主に貴族たちと、使えない人達ではサーチ魔法での見え方は違った。
タリスマン帝国では、スクロールを購入すれば誰でも魔法を使うことができると言うことだ。
存在の濃淡はスクロール魔法の強弱の違いなのか、元の魔力料の違いなのか、ここは高級宿だけあって色が濃く見える人が多い。
「う~ん……」
纏う色のようなものは濃いのに輝いてない人や、色はそう濃くないのに輝きが違う人もいる。
こっちは魔法の練度の違いなのか、光り輝いて見える人と、鈍く濁って見える人がいる。
「 内面の汚さとかじゃないよね」
宿屋の上階に色は濃いのにものすごく濁って見える人影を確認した。
キールが頷くので、サーチの質を変えて、その人物に集中する。
「若い女性?何あの色、何でもかんでも混ぜ込んですごく汚い、それに……何か叫んでいる?」
意識を集中して、収音魔法も使ってみる。
耳元に音が集まり、その音が意味を持ち始める。
『……どう……このま……あって……出てこないの!わたくしを助けるのが勇者なの!わたくしは聖女……』
「あー……なんかこの先聞きたくない感じ……。もしかしてこの前感じた面倒くさい感じのアレ?」
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