転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
上 下
167 / 186

閑話 ある冒険者の話 3

しおりを挟む
  元々俺の持ち物など何も持っていないので、本当に着の身着のまま家に帰る事はせずに冒険者ギルドに足を向けた。

  そう大きな街ではない、このままここで冒険者をするつもりであったが、さっきの様子ではすんなりいきそうもない。せっかく冒険者に向いたスキルを持つことができたのに、俺は……。

  冒険者ギルドは何時もと変わらず活気にあふれていた。

  2番目の兄ちゃんが口をきいてくれて、それから何くれとなく気をかけてくれた冒険者ギルドの兄さんは、このギルドの副ギルマスだった。

  今日の出来事をつっかえつっかえ話すと、腕を組み少し考えた様子を見せた後、大きく頷いてカウンターにいる受付嬢お姉さんの一人に声をかけた。

「彼、今日15歳になってスキルの確認済んだから、正式なランクの手続きして。それと……」

  気がつくと俺は一端の冒険者の装備を携えて、隣の街の街道に繋がっている門に立っていた。

「お前大物になるぜ。周りがお前の為に右往左往している中で、大いびき書いて寝ているんだからな」

  笑いながら俺の横に立ち上からバンバン叩いてくる大男は、この街からほぼ出たことない俺の為に、一緒に隣の街に行ってくれる大先輩の冒険者だ。

「この街生粋の冒険者としてこの街で育てたかったんだが、まぁその手間を隣のギルドに任せたって、この街で何年か後に立派な冒険者として活躍してくれていれば同じだよね」

  この様なお膳立てをしてくれた副ギルマスもわざわざ見送りに来てくれた。

  俺の親達が何か言ってくるか心配だったが、あの女将さんが言っていた様に、大人になった俺のことにその時点で口を出す資格はないそうだ。俺個人が借金をしているなどの場合、何かしら制約が生じる事はあるが、俺にはその様な事は全くないことはこの短時間でも証明できた。

「言ったら悪いけど、子供から搾取する親の典型だね」

  だから何を言われてもこっちは痛くもかゆくもないから、と言って笑ってる。

  俺はそのちょっと胡散臭くはあるけれど、優しい笑顔に口約束ではあってもこの約束は必ず守ると心に決めて、この辺境の街サウスエンドから旅立った。

  因みに、この俺の生まれ育った街の名前は、隣のギルドに行ってどこの出身か聞かれるまで意識する事なく、知りもしなかった。
   


  約束通りと言えるか、立派な冒険者にというか一応一人でも活動できる冒険者となって、この街に戻ってきた。

  このサウスエンドは魔の森に接している最前線の街であり、このタリスマン帝国からすれば最南端の街、ここから先は何もない所とされている。

  冒険者になって、いろいろと知るところによれば、この魔の森の向こうにも人の住む国があり、時々この国にやってくるらしい。その時は必ずこの街を通るのだとか……。

   この街の特殊な立地からも、この大昔に造られた砦を基にした城壁に囲まれた範囲より外に、人の住まう地域を増やす事は不可能だとされている。

  この街に戻ってきて時々魔の森の中、と言っても浅いところまで、に入る機会ができてなおのこと、この森の中に街を畑を人の営みを広げる事は無理だと感じた。

  タリスマン帝国ではそれぞれの街で自立していく事が国是とされているから、食糧の自給自足が非常に難しいこの街では、何かで金を稼いでそれで違う街から食糧を手に入れるしかない。

   曲がりなりにも食堂で育った俺は、この街で野菜やミルクの様な、魔獣の肉以外手に入れることが困難であることを知っている。肉といえば魔獣の肉ではなくて放牧されている牛や豚の肉をさすのが常識だと知ったのも、この街を出てからだった。

  その金を稼ぐ手段は、魔獣の肉を売りさばくことと、魔獣から薬になるツノやら爪やら、そして魔道具の燃料になる魔石を手に入れること。

   それとその魔獣討伐の様子をショウにして見せ、旅人観光客をこの街に招くことで、内需の拡大を図ることだと言う。
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...