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閑話 ある冒険者の話 1
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「何が……何で、どうしてこんな事になったんだ!」
俺はこのサウスエンドと呼ばれるタリスマン帝国の最南端に在る街で生まれ育った。
実家は小さな街の食堂。その五男坊だ。貧乏子沢山とはよく言ったものだ。最低限の教育を与えられて俺は家を出された。
15歳でスキルの確認をするまでは何が自分に向いているかを知る事はできない……建前上は。
金持ちやお貴族様達は、その決まりも金の力で何とか出来るらしいが、一般庶民は金のかからない国が行ってくれるただ一度、15歳の時に神殿で確認するだけだ。
と言って、15まで何もせずに家で養ってもらう事は特に俺たちの様な貧乏人には土台無理な話だ。城壁に囲まれた街の中以外は危険と隣り合わせの現状。1番無難な攻撃魔法のつかえる「火」の初級スクロールを手に入れて、近所の実家と大して変わらない食堂に丁稚として送り込まれた。この家にはまだ小さな女の子しか子供が居らず10歳になったばかりの俺でもそれなりに使いではあったのだ。
すぐ近くの実家から通う替わりに、住み込みならば掛かる費用を給料として貰う。だがそれは俺の手に入る事はなく、直接俺の両親に渡される。その給料の中には勿論俺に渡される若干の小遣いも含まれていたのだが、それを俺が貰う事は叶わなかった。俺の下に4人も兄弟がいたからだ。
いくらお袋が「女の子が欲しい」と望んだとはいえ、9人の男だけの兄弟は多すぎる。
この街から出て行った兄弟以外は、誰もが俺と同じ扱いだったので文句は言えないが……。
小さいながらも食堂の跡取りの長男以外、この街に残った兄弟は誰もが下働きで未来が見えない状態だった。
この街から出た兄弟は、次男と三男で、15になってスキルの確認をした後、それぞれの丁稚奉公先の食堂はやめて冒険者になって出て行ったのだ。
確認したスキルは本人知る事はない。親と言えども拒否されれば知る事はできないのだ。
うちの両親は良いも悪いも極々一般の無学な街の住人だ。長男とそれ以外の扱いが違うとしてもそれは致し方がないものだと今ならわかるが、2番目と3番目の兄ちゃん達は我慢が出来なかったのだろう。もしかしたら授かっていたスキルが冒険者向きのものだったのかもしれないが、とにかくこの街、いや親の手の届くところから逃げ出したかったのかもしれない。
一歳違いの二人は3番目のにいちゃんのスキル確認が済むと次の日には一緒にこの街から出て行った。
二人目の兄ちゃんはスキル確認が終わったその一年前には、親には内緒で食堂は辞めて冒険者として金を貯めていた様だ。今までと変わらない金額を親に渡していたから気付かなかったらしい。
この国でも一応10歳なれば冒険者登録ができる。近所のドブさらいとか失せ物探しとか、ちょっとした配達とか、小遣い稼ぎ程度の仕事だか請け負うことができるのだ。
兄ちゃん達は、食堂で働きながらも自由になる時間を使ってそれなりに冒険者活動を行なっていたそうだ。
俺が家に残っている長男以外の中で1番年長になった頃を見計らって、3番目の兄ちゃんから手紙が届いたのだ、実家にではなく働いている食堂宛に。
俺は兄ちゃん達の様に自由になる時間がなかった、俺しか下働きを雇うことをしない食堂だったからだ。実家から目と鼻の先に在ることもそれに拍車をかけていた。
そのことを知っていた兄達は、もう直ぐ目の前に迫っている15歳のスキル確認の後の俺の行く末を心配してくれたのだ。
まぁ兄弟の中で結構割りを食っている気はしている、全く手をかけてもらえない真ん中の子供で、兄達に言わせれば頭は1番良かった様だが、最低限の学校にしか通わせてもらえなかったし、丁稚に行ってから本を読む様な体力が残らないほどこき使われている。
「よりにもよってあの店に入れるなんてな。あの店の業突く親父優しくて賢いお前を前から狙ってたんだ。長男よりもお前の方がよほど頼りになると思うけどな」
兄ちゃんの手紙にはそう書かれたいた。
俺は兄ちゃんの手紙に従うことにした。睡眠時間を削る事になっても、初級の「火」のスキルを上げるべく冒険者活動を親達に気付かれずにする事を……。
俺はこのサウスエンドと呼ばれるタリスマン帝国の最南端に在る街で生まれ育った。
実家は小さな街の食堂。その五男坊だ。貧乏子沢山とはよく言ったものだ。最低限の教育を与えられて俺は家を出された。
15歳でスキルの確認をするまでは何が自分に向いているかを知る事はできない……建前上は。
金持ちやお貴族様達は、その決まりも金の力で何とか出来るらしいが、一般庶民は金のかからない国が行ってくれるただ一度、15歳の時に神殿で確認するだけだ。
と言って、15まで何もせずに家で養ってもらう事は特に俺たちの様な貧乏人には土台無理な話だ。城壁に囲まれた街の中以外は危険と隣り合わせの現状。1番無難な攻撃魔法のつかえる「火」の初級スクロールを手に入れて、近所の実家と大して変わらない食堂に丁稚として送り込まれた。この家にはまだ小さな女の子しか子供が居らず10歳になったばかりの俺でもそれなりに使いではあったのだ。
すぐ近くの実家から通う替わりに、住み込みならば掛かる費用を給料として貰う。だがそれは俺の手に入る事はなく、直接俺の両親に渡される。その給料の中には勿論俺に渡される若干の小遣いも含まれていたのだが、それを俺が貰う事は叶わなかった。俺の下に4人も兄弟がいたからだ。
いくらお袋が「女の子が欲しい」と望んだとはいえ、9人の男だけの兄弟は多すぎる。
この街から出て行った兄弟以外は、誰もが俺と同じ扱いだったので文句は言えないが……。
小さいながらも食堂の跡取りの長男以外、この街に残った兄弟は誰もが下働きで未来が見えない状態だった。
この街から出た兄弟は、次男と三男で、15になってスキルの確認をした後、それぞれの丁稚奉公先の食堂はやめて冒険者になって出て行ったのだ。
確認したスキルは本人知る事はない。親と言えども拒否されれば知る事はできないのだ。
うちの両親は良いも悪いも極々一般の無学な街の住人だ。長男とそれ以外の扱いが違うとしてもそれは致し方がないものだと今ならわかるが、2番目と3番目の兄ちゃん達は我慢が出来なかったのだろう。もしかしたら授かっていたスキルが冒険者向きのものだったのかもしれないが、とにかくこの街、いや親の手の届くところから逃げ出したかったのかもしれない。
一歳違いの二人は3番目のにいちゃんのスキル確認が済むと次の日には一緒にこの街から出て行った。
二人目の兄ちゃんはスキル確認が終わったその一年前には、親には内緒で食堂は辞めて冒険者として金を貯めていた様だ。今までと変わらない金額を親に渡していたから気付かなかったらしい。
この国でも一応10歳なれば冒険者登録ができる。近所のドブさらいとか失せ物探しとか、ちょっとした配達とか、小遣い稼ぎ程度の仕事だか請け負うことができるのだ。
兄ちゃん達は、食堂で働きながらも自由になる時間を使ってそれなりに冒険者活動を行なっていたそうだ。
俺が家に残っている長男以外の中で1番年長になった頃を見計らって、3番目の兄ちゃんから手紙が届いたのだ、実家にではなく働いている食堂宛に。
俺は兄ちゃん達の様に自由になる時間がなかった、俺しか下働きを雇うことをしない食堂だったからだ。実家から目と鼻の先に在ることもそれに拍車をかけていた。
そのことを知っていた兄達は、もう直ぐ目の前に迫っている15歳のスキル確認の後の俺の行く末を心配してくれたのだ。
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「よりにもよってあの店に入れるなんてな。あの店の業突く親父優しくて賢いお前を前から狙ってたんだ。長男よりもお前の方がよほど頼りになると思うけどな」
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俺は兄ちゃんの手紙に従うことにした。睡眠時間を削る事になっても、初級の「火」のスキルを上げるべく冒険者活動を親達に気付かれずにする事を……。
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