転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
上 下
161 / 186

チュート殿下 119 この世界の理に 7

しおりを挟む
「ただ……一般的な人間としてこの国の物語に認識されている以上、一スキルとして認識されていた時よりも行使できる能力に制限がかかっている、という心配はあります。まだ試していないのではっきり断言はできませんが……」

 あの国ではその理に存在自体を認められていなかった代わりに、その理にとらわれないという特典?のようなものが働いていたらしく、俺自身『キールって全能⁈』と思ったことも少なくなかったことを思い出していた。

「存在を認めないという、あちら側からすれば弊害ですかね。何でもできたけれど、直接的にはあの国の人間に手出しをすることはできなかった。その点は如何ともし難くて私としては歯がゆいだけでしたけど……」

 実力行使ができたらどうなっていたかわからない発言に、背中の方が少し寒くなったが、確かにキールができたことは隠密的な情報収集とか、俺に関係しての結界防御が主であった。

「私が直接何かをしても、きっとそれは無かったことになるか、殿下が行ったことになったと思うのですが、殿下は殿下の役割があって、その役割をあの伯爵王子にさせたとしても、今度は伯爵王子の役を踊る人間がいるわけで……そのジレンマに右往左往している神?の姿を想像するのも面白いですけど……」

 そのキールの言葉を聞いて、まだ一日経っていないが俺の居なくなった離宮のことを思った。

 何と言っても俺の敵はあの国の理を操る神?だ。俺の所為で国に残っているマーシュたちに何か不都合な事が起りはしないか心配になった。

 俺の心の動きが筒抜けのキールは、俺の生乾きの髪の毛に手をかざすと、火と風の混合魔法で髪の毛をあっという間に乾かして、そのまま頭を撫ぜた。

「大丈夫ですよ。あの私が施した結界の中は、所謂治外法権。この世界のどの神様であっても干渉できない空間になっています。干渉できないというか認識できない空間です」

 胸を張っているように見えるのは目の錯覚ではないだろう。

「認識できないことが認識できない空間です」
 
 どや顔もイケメンかよ!

 何で俺のスキルであるはずのキールが本体よりもハイスペックなの、何もかも!

「まだこの世界の深淵にたどり着いていない時点で確かなことは言えませんが、これまでのことを総合的に判断するに、この世界の神様よりも、元の世界、つまり地球の理、地球の神様の方が格が上ということですよ。それも随分と」

 俺にはわからないが、とにかくこの世界も地球の世界もそれぞれの理というものが存在していて、ある程度の自由の中でそれぞれの世界が形作られているらしいのだが、それらすべてをひっくるめての一番基準となる理、その理をこの世界の神が破った末にある存在が俺であるらしい。

「前世の記憶を持っているということ?」

 促されるままベッドに横になり、いつものようにまるで従者のように世話をするキールの顔を下から仰ぎ見ながら問いかける。

「それは一つのカギに過ぎないのではないかと考えます。前世云々はアーク殿下だけではなく、あのお花畑もその様子がうかがわれますからね」

 キールも少し考えるように言葉を紡ぐ。

 確かに。あの自称ヒロインはよくある電波だ。あの世界が乙女ゲームがもとになっていることを知っていると考えなければ説明できないような行動ばかりとっている。

「その辺はよくわかりませんが、とにかく貴方は地球の神様のような存在に、この世界でいう加護のようなものを授けられていることは間違いないでしょう。何と言ってもその加護のようなものの具現化されたのが、私と言えるようなのですから」

 何か、さらっとすごく大切なことを聞かされたような気がするが、その時にはもう俺の意識は夢の中に半分以上足を突っ込んでいたようで、ヒロイン以降の話は耳の中を通り過ぎていっただけだったのだから……。

しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...