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チュート殿下 115 この世界の理に 3
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「その姿でよろしいのですか」
俺が大きくうなずくと。
「それでは」と一言発したキールは、俺に向けて何かを放った。
「えぇぇ……⁉」
まさかキールが……身内から裏切られたのか、そう思った瞬間、あの帯剣の儀の時にも味わったような頭の中をかき回されるような不快感と共に、知りもしない映像が頭の中に流れ込んできた。
もしかしたら一瞬気を失っていたのかもしれない、その場に立っていたままであったのは一応この世界で大人と認められる15歳になった意地。気がついてキールの膝枕だとかだったら恥ずか死ねるかもしれない。
その場に立っていたことに安堵して、目の前でニヤ付いていたキールを睨んだ。
「今の何?」
つっけんどんに問いかけてもここは許されると思う。
「この世界における、冒険者としての私たちの物語かな」
胡散臭い笑みを浮かべてキールが答える。
「いわゆるモブキャラ。今のところこのあたりの国々では冒険者が主役の物語は採用されていないようだから、冒険者であればほぼモブ。まぁ、何があるかわからないから、慎重に探りながら行くけどね」
キールはアミュレット王国を包み込んでいる結界のような何かを睨みつけるように一度視線をやると、これから向かうだろう魔の森の奥の方に顔を向けた。
一瞬で入って来た映像による記録によれば、俺はアースという名の冒険者で、それなりの家出身であるが精霊と契約ができなかったことで魔法が使えないことが決定し、虐げられた5年間を経て唯一の味方であった遠い親戚のキールと共に15歳になったことをきっかけとして、冒険者として身を立てるために祖国を後にする。
というところが今らしい。
『キールは俺の親戚のお兄さんてこと?』
ゆっくりとこの場を後にしながら、肩を並べてこれから進む道の方に視線を向けた。道なんてどこにもないけど……。
「親戚といっても平民扱いになっているという設定みたいですよ。ただ私は精霊契約に成功したみたいで、それなりのいい扱いを受けていた、ってことみたいですけど」
自分の設定が面白かったからか、肩を揺らしながら一応この辺りに探査をかけているようだ。
そういえばキールは俺の成長した後の姿なのかも、と思いながらもやたらイケメンだった。
今の姿とは違う標準装備?のキールは、ほとんど実態を持つことがなかったからほぼ俺だけが目にすることになるキールであったわけだが、どちらかといえば色見は前世寄り、見慣れている黒目に黒い髪だったが、考えてみれば最近姿を見ることになった離宮の者たちからすれば、マーシュの親戚に見えたかもしれない、色的に……。
今の冒険者ギルドに登録したときから成長した姿を取っているキールは、あの時少しは魔法が使えることが自然である方が良いだろうという考えの元、攻撃には「火」ということで、少し赤みが買った茶色の髪色にしたのだった。真っ赤すぎるとこれも面倒を起こさないとも限らないということで……。
俺はとにかく目立たないということをモットーに、この国で一番多い色見の茶色にしたのだ。目立って俺に魔法を使わせる気も全くなかったようだから一層使えないということにした方がいいだろうという考えだったみたい。
「魔法も使えて形もいいと、子供ほど狙われる可能性が高いですからね。もちろん誰にも触らせもしない自信は十分にありますが、わざわざ面倒を呼び込むこともありますまい」
とは、キールの談であったが、この前まで殆ど認識阻害を外すことは無かったのだから、考えてみれば全くこのような姿を取ることは関係がなかったのかもしれない。と今ごろ思ったりしている。
「話は追々。暗くなる前に隣の国の街に入ってしまいましょう。いきなり野宿は私も嫌ですよ」
折角誰にでも認識されるしっかりとした実態を持ったのですから、という心の声がはっきりと聞こえてきた。
ここからわざわざ魔の森の中のけもの道を通ることもない。短距離か又は長距離のジャンプでもいいが、ジャンプした先の状況を探るのも手がかかるから、とりあえず空を飛んでいくことにした。
空間魔法に関しては、精霊魔法ではその存在事態怪しいということらしいが、この国タリスマン帝国における魔法、スクロールを用いて手に入れることができるスキルを持って行う魔法では、全くその存在がないとも言えないものらしい。
「ダンジョンで手に入れることができるレアスキルの中に空間魔法もあるようです。今のところはマジックバックに使われている以上のものは秘匿されているためなのか、その存在を確認されてはいないようですが」
もう既にこちらの国のどこかの情報にアクセスしたのか、俺よりもこの世界の理に近いところまで行くことができる一種のバグであるキールは、簡単にそんなことを言ってくる。
「そもそもこの世界のバグは、アースの方ですよ。アースが居なければ私の存在なんてないのですからね」
森の木の上を飛行しながら、時々高く飛んでこのあたりのマッピングも行う。
冒険者の行き来が全くないこともないという程度の忌み嫌われている土地だ。もちろんきっちりとした地図などない。需要もない。
この世界にはない移動速度でタリスマン帝国の魔の森の端に向かう。
一番はじめにタリスマン帝国に向かったのは、そこがすぐ隣の国ということはもちろんだが、あのお花畑ヒロインが関係している国であることは疑いのないところであるから、とりあえず探ってみることにした、という理由もあったりする。
俺が大きくうなずくと。
「それでは」と一言発したキールは、俺に向けて何かを放った。
「えぇぇ……⁉」
まさかキールが……身内から裏切られたのか、そう思った瞬間、あの帯剣の儀の時にも味わったような頭の中をかき回されるような不快感と共に、知りもしない映像が頭の中に流れ込んできた。
もしかしたら一瞬気を失っていたのかもしれない、その場に立っていたままであったのは一応この世界で大人と認められる15歳になった意地。気がついてキールの膝枕だとかだったら恥ずか死ねるかもしれない。
その場に立っていたことに安堵して、目の前でニヤ付いていたキールを睨んだ。
「今の何?」
つっけんどんに問いかけてもここは許されると思う。
「この世界における、冒険者としての私たちの物語かな」
胡散臭い笑みを浮かべてキールが答える。
「いわゆるモブキャラ。今のところこのあたりの国々では冒険者が主役の物語は採用されていないようだから、冒険者であればほぼモブ。まぁ、何があるかわからないから、慎重に探りながら行くけどね」
キールはアミュレット王国を包み込んでいる結界のような何かを睨みつけるように一度視線をやると、これから向かうだろう魔の森の奥の方に顔を向けた。
一瞬で入って来た映像による記録によれば、俺はアースという名の冒険者で、それなりの家出身であるが精霊と契約ができなかったことで魔法が使えないことが決定し、虐げられた5年間を経て唯一の味方であった遠い親戚のキールと共に15歳になったことをきっかけとして、冒険者として身を立てるために祖国を後にする。
というところが今らしい。
『キールは俺の親戚のお兄さんてこと?』
ゆっくりとこの場を後にしながら、肩を並べてこれから進む道の方に視線を向けた。道なんてどこにもないけど……。
「親戚といっても平民扱いになっているという設定みたいですよ。ただ私は精霊契約に成功したみたいで、それなりのいい扱いを受けていた、ってことみたいですけど」
自分の設定が面白かったからか、肩を揺らしながら一応この辺りに探査をかけているようだ。
そういえばキールは俺の成長した後の姿なのかも、と思いながらもやたらイケメンだった。
今の姿とは違う標準装備?のキールは、ほとんど実態を持つことがなかったからほぼ俺だけが目にすることになるキールであったわけだが、どちらかといえば色見は前世寄り、見慣れている黒目に黒い髪だったが、考えてみれば最近姿を見ることになった離宮の者たちからすれば、マーシュの親戚に見えたかもしれない、色的に……。
今の冒険者ギルドに登録したときから成長した姿を取っているキールは、あの時少しは魔法が使えることが自然である方が良いだろうという考えの元、攻撃には「火」ということで、少し赤みが買った茶色の髪色にしたのだった。真っ赤すぎるとこれも面倒を起こさないとも限らないということで……。
俺はとにかく目立たないということをモットーに、この国で一番多い色見の茶色にしたのだ。目立って俺に魔法を使わせる気も全くなかったようだから一層使えないということにした方がいいだろうという考えだったみたい。
「魔法も使えて形もいいと、子供ほど狙われる可能性が高いですからね。もちろん誰にも触らせもしない自信は十分にありますが、わざわざ面倒を呼び込むこともありますまい」
とは、キールの談であったが、この前まで殆ど認識阻害を外すことは無かったのだから、考えてみれば全くこのような姿を取ることは関係がなかったのかもしれない。と今ごろ思ったりしている。
「話は追々。暗くなる前に隣の国の街に入ってしまいましょう。いきなり野宿は私も嫌ですよ」
折角誰にでも認識されるしっかりとした実態を持ったのですから、という心の声がはっきりと聞こえてきた。
ここからわざわざ魔の森の中のけもの道を通ることもない。短距離か又は長距離のジャンプでもいいが、ジャンプした先の状況を探るのも手がかかるから、とりあえず空を飛んでいくことにした。
空間魔法に関しては、精霊魔法ではその存在事態怪しいということらしいが、この国タリスマン帝国における魔法、スクロールを用いて手に入れることができるスキルを持って行う魔法では、全くその存在がないとも言えないものらしい。
「ダンジョンで手に入れることができるレアスキルの中に空間魔法もあるようです。今のところはマジックバックに使われている以上のものは秘匿されているためなのか、その存在を確認されてはいないようですが」
もう既にこちらの国のどこかの情報にアクセスしたのか、俺よりもこの世界の理に近いところまで行くことができる一種のバグであるキールは、簡単にそんなことを言ってくる。
「そもそもこの世界のバグは、アースの方ですよ。アースが居なければ私の存在なんてないのですからね」
森の木の上を飛行しながら、時々高く飛んでこのあたりのマッピングも行う。
冒険者の行き来が全くないこともないという程度の忌み嫌われている土地だ。もちろんきっちりとした地図などない。需要もない。
この世界にはない移動速度でタリスマン帝国の魔の森の端に向かう。
一番はじめにタリスマン帝国に向かったのは、そこがすぐ隣の国ということはもちろんだが、あのお花畑ヒロインが関係している国であることは疑いのないところであるから、とりあえず探ってみることにした、という理由もあったりする。
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