転生したら当て馬王子でした～絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい～

チュート殿下 110 落ち着いたところでの考察１

　学園にはほぼ顔を出さなくなったが、巻き込まれ兼ねないストーリー強制力が気にならないわけがなかったので、学園で起こることについては知っておきたいと単純にそう思った。
　
　ゲームのイベントが起こるとすれば、とりあえずその中心に居るのはあのピンクであろう。ちっともうまくいっていないようであったが、とりあえずは女神が選んだだろう「ヒロイン」なのだろうから……。

　といって四六時中あのピンクを見張っていることもできないし、そもそも根本的なところでは彼女に興味はない。

　ゲーム「ドキ恋」の導入部分というか、ほぼチュートリアル扱いの一週目で必要不可欠なキャストであるアースクエイク俺が、すっかりその存在を消してしまっては物語は進まない。

　今までの様子を鑑みるに、アースクエイクの立場に納まっているように見えるのは異母兄のヴォーテックス伯爵子息だ。

　ゲームのすべてを覚えているわけではないから、これからのことすべてを予知できるとうぬぼれることはないが、あのピンクの動向や、ピンクの上を行っているかもしれない女神？の頭の出来から考えても、そうゲームの物語から違った物を創り出せるとも思えない。

　とりあえずチュート殿下の立場をあの異母兄に任せることで、このままゲームのストーリーをなぞっていくものだと考えられる。

　俺の頭の中のことをすべて把握しているキールに任せて、学園での出来事と、その相違については報告をもらえる形にして、俺はこれからの自分の身の振り方について改めて考えることにした。

　今考えられる一番最悪のシナリオは、何もしていないのに俺自身がゲームのアースクエイクと同じ末路を迎えるということ。

　どのような選択をしても結局当て馬としてしか存在できないアースクエイク。

　なぜか、ただ一人の正当な王位継承者であるはずが、自身のスペックの低さから異母兄に取って代わられ、辺境に追放になるという物語……。

　そしてゲームでは俺だけではなく、ゲームで俺の婚約者であるフォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵令嬢も、悪役令嬢ポジとして、俺が消える前に舞台から退場させられ、良くて修道院、最悪は俺と同じように国外追放の上消息不明だ。

　もちろん生きるか死ぬかの結論も、歓迎できることではないが、その前にある家族との確執も胸に来る出来事だ。

　今現在の俺も既に胸に来るような状況ともいえるかもしれないが、全く全然気にしていないから問題ない。

　しかし、今この世界の婚約者ではないフォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵令嬢が、家族との確執を抱えているということは全く報告を受けていない。

　ゲーム中ではそれ程仲が良くないというよりも、その兄が攻略対象者として、ヒロインに攻略されるルートになれば尚更、俺だけの悪役ではなく兄についても悪役となって、より悲惨な最期が待っていることになるのだが……。

　俺がゲームの中のアースクエイクと全く違っているように、現在俺の婚約者ではないゲイル侯爵家令嬢は、だからといって異母兄の婚約者でもなく、学園では同じクラスの生徒であるという以外の接点は無かった。

　兄の方クリフ・マークィス・ゲイル侯爵子息とは初級学校での接触以外目立った接触はなく、あちらの方から近づいてくることは全くない。

　マーシュに確かめたところ、確かに初級学校のころ、俺に誰か婚約者をあてがわなくてはならないという話の中で、一番有力であったのがフォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵令嬢だったらしいが、結局婚約者云々の話も全くなくなり、そのまま今に至っているようだ。

　俺アースクエイクとヴォーテックス異母兄の立場が完全に入れ替わっているならば、フォスキーア・マルケーゼ・ゲイル侯爵令嬢彼女が、異母兄奴の婚約者になっていてもおかしくはないのだが、流石に伯爵子息とされている奴に、侯爵令嬢を無理やり婚約者にすることは難しいのだろう。

　正当な第一王子とされている、アースクエイク俺に、立場的にも年齢的にも彼女以外あうような令嬢が居ないことからも、俺を差し置いて婚約者に据えることは誰から見てもおかしいことのようだ。

　このことが実行されたのならば、それこそ神の強制力が発動したものであると判断できる材料になることだろう。