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チュート殿下 107 平穏で退屈な毎日
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学園での授業は退屈そのもの。
科学ではない魔法が発達したこの世界の、理系科目についてはそりゃあ壊滅的で、高等教育であるはずの学園の算数は……そう算数……数学ではない算数である時点でその内容も想像がつく。
この世界の魔術を行使するにあたっての理論というものには数学的要素はないらしい。
俺も感覚的にやっているところがあるからとやかく言えないが、普通魔法を使うためには詠唱が必要な事からも、どちらかと言えば文系な世界なのかもしれない。
詠唱に必要な言葉が、話し言葉とは違うこともあって、そちらの方の授業は結構な時間を取って行われるのだが、俺には詠唱が必要ない。キールの力があってこそだと思うが、思ったことを魔法で具現化できるから、想像力さえあればどのようなこともできちゃう……チートだな!
だから、この学園のカリキュラムで、学ぶ必要があることや興味がある事柄がほとんど存在しないのだ。
一応能力別クラスになっていて、初学年ではあるが一番上のクラスに居るはずなのに、何もかもおこちゃまなクラスで話を聞いていることも苦痛になりつつある昨今だ。
俺の存在については、さすがになれてきたのか、担任もクラスメイトもさして意識することは無くなっている……と思う。
担任がこちらにやけに視線を向けてくることもなくなったし、居るのに居ないように感じる認識阻害状態の俺の存在が、なれなくて気持ち悪かったのかもしれないクラスメイト達も、きちんといることがわかるくらいの厚みに魔法を固定したところ、俺の存在感が消えたり現れたりする気持ち悪い状態がなくなったことで、この状況に慣れたようだ。
まだ直接話しかけてくるような猛者はいないけれど、悪意を持ってこちらを見てくるような者も居なくなった。
しかし、今だにほぼ毎日何かしらの形で、生徒会の者達は俺に接触を取ろうと試みていることは、このクラスにいるものすべてが体感していることだ。
俺は無視をしていればいいし、そのことであいつらに何かしら言われることは無い。いわれても全く気にしないが……。
それは俺だけができることで、このクラスメイトの中で同じようにできる者はいない。
俺がまだ認識阻害を激烈に厚くしていて、よっぽどの力ある魔術師でなければ俺のことを認識できないくらいにしていた頃、この学校の権力である生徒会の誰かから命令または脅されて、俺と接触を持とうとした者が居た。
それは、この教室にこのクラスの者とその時間の担当教師しか入れないように結界を張っていたからで、休み時間といえどもこの教室に入ることができないようにしていたことも一つの原因かもしれない。
授業中の俺の居場所は机の位置が決まっていたから分かるが、授業時間が終わった瞬間に俺の位置の把握はできなくなるのだから、同じクラスの者とはいえ俺と接触を持つことは不可能な状態にしていた。
そこまではクラスの外にいる者達は知らないから、俺と接触を持つように脅されていたクラスメイトは、結果を出せないことで尚更つらい立場に置かれていたのだろう、日がたつごとに憔悴していくことが見て取れた。
初めはこの学園内もすべてのことに関わりを持つことを拒否していたから見て見ぬふりをしていたが、どう見てもそのクラスメイトが自家の利益や自分の意志で俺と接触を持とうとしているようには見えなかったので、少しだけ信念を曲げて、そのクラスメイトのことについて調べてみたりした……キールが。
俺が何か言うまでもなく、この小さな学園内の世界のことなど把握しているキールは、現在起きている事象の源についても知っていたが、俺が言葉にして行動を起こすように言わない限り自ら動くことはしない。
聞いたときには間髪を入れず答えが返ってくるので、キールが俺の何歩も先を進んでいることをそのようなことが起こるたびに感じる。
今回も生徒会の補佐役が、気を利かせて?自分の親戚筋の寄り子の家のこのクラスの者を使って、俺と接触を持とうとしたようだ。もちろん自分の家よりも立場の低い家の子供を使って、あたかも自分の手柄でもある様にほかの生徒会の補佐役に嘯きながら、自身の手を汚さずに利益だけを得ようと毎日のようにクラスメイトにせっついていた、っというのが真相だ。
クラスメイトがほんの少しでも自分の欲を持って俺に接触をしようとしていたならば、排除することも吝かではなかったが、そのような影が全くなかった事から、彼も含めてこのクラスの者に自身が望まない邪な欲望がこもった悪意、とくに俺に関するようなものは弾くような、若干呪にも似た守護の結界をこの教室を中心に掛けることにした。
一人一人個人的にそれをかけることが面倒といったところが一番の理由であるが、この教室に入ることでそれまでに頼まれた?脅された?俺に対しての何かしらの接触を求める事柄すべてが無効になるというもの。
心の中に作用するものであるから、呪のようなものに近いのかもしれない。頼んだもの、頼まれたものどちらか一方がこの教室の中に入れば、両方ともに作用するという優れもの。
「心の中に作用する、その力の強さは邪悪なものを持って頼んだその内容に準じて、及ぼされる威力というか恐怖は変わるんだよねぇ」
「恐怖って……」
悪意と欲を持って、自分の身分を使って脅したものには特に強くその心の中に作用して、二度と同じようなことをしようと思わせないような、そんな魔法。……やっぱり呪。
俺はかかりたくないなぁ、としみじみ思った。
科学ではない魔法が発達したこの世界の、理系科目についてはそりゃあ壊滅的で、高等教育であるはずの学園の算数は……そう算数……数学ではない算数である時点でその内容も想像がつく。
この世界の魔術を行使するにあたっての理論というものには数学的要素はないらしい。
俺も感覚的にやっているところがあるからとやかく言えないが、普通魔法を使うためには詠唱が必要な事からも、どちらかと言えば文系な世界なのかもしれない。
詠唱に必要な言葉が、話し言葉とは違うこともあって、そちらの方の授業は結構な時間を取って行われるのだが、俺には詠唱が必要ない。キールの力があってこそだと思うが、思ったことを魔法で具現化できるから、想像力さえあればどのようなこともできちゃう……チートだな!
だから、この学園のカリキュラムで、学ぶ必要があることや興味がある事柄がほとんど存在しないのだ。
一応能力別クラスになっていて、初学年ではあるが一番上のクラスに居るはずなのに、何もかもおこちゃまなクラスで話を聞いていることも苦痛になりつつある昨今だ。
俺の存在については、さすがになれてきたのか、担任もクラスメイトもさして意識することは無くなっている……と思う。
担任がこちらにやけに視線を向けてくることもなくなったし、居るのに居ないように感じる認識阻害状態の俺の存在が、なれなくて気持ち悪かったのかもしれないクラスメイト達も、きちんといることがわかるくらいの厚みに魔法を固定したところ、俺の存在感が消えたり現れたりする気持ち悪い状態がなくなったことで、この状況に慣れたようだ。
まだ直接話しかけてくるような猛者はいないけれど、悪意を持ってこちらを見てくるような者も居なくなった。
しかし、今だにほぼ毎日何かしらの形で、生徒会の者達は俺に接触を取ろうと試みていることは、このクラスにいるものすべてが体感していることだ。
俺は無視をしていればいいし、そのことであいつらに何かしら言われることは無い。いわれても全く気にしないが……。
それは俺だけができることで、このクラスメイトの中で同じようにできる者はいない。
俺がまだ認識阻害を激烈に厚くしていて、よっぽどの力ある魔術師でなければ俺のことを認識できないくらいにしていた頃、この学校の権力である生徒会の誰かから命令または脅されて、俺と接触を持とうとした者が居た。
それは、この教室にこのクラスの者とその時間の担当教師しか入れないように結界を張っていたからで、休み時間といえどもこの教室に入ることができないようにしていたことも一つの原因かもしれない。
授業中の俺の居場所は机の位置が決まっていたから分かるが、授業時間が終わった瞬間に俺の位置の把握はできなくなるのだから、同じクラスの者とはいえ俺と接触を持つことは不可能な状態にしていた。
そこまではクラスの外にいる者達は知らないから、俺と接触を持つように脅されていたクラスメイトは、結果を出せないことで尚更つらい立場に置かれていたのだろう、日がたつごとに憔悴していくことが見て取れた。
初めはこの学園内もすべてのことに関わりを持つことを拒否していたから見て見ぬふりをしていたが、どう見てもそのクラスメイトが自家の利益や自分の意志で俺と接触を持とうとしているようには見えなかったので、少しだけ信念を曲げて、そのクラスメイトのことについて調べてみたりした……キールが。
俺が何か言うまでもなく、この小さな学園内の世界のことなど把握しているキールは、現在起きている事象の源についても知っていたが、俺が言葉にして行動を起こすように言わない限り自ら動くことはしない。
聞いたときには間髪を入れず答えが返ってくるので、キールが俺の何歩も先を進んでいることをそのようなことが起こるたびに感じる。
今回も生徒会の補佐役が、気を利かせて?自分の親戚筋の寄り子の家のこのクラスの者を使って、俺と接触を持とうとしたようだ。もちろん自分の家よりも立場の低い家の子供を使って、あたかも自分の手柄でもある様にほかの生徒会の補佐役に嘯きながら、自身の手を汚さずに利益だけを得ようと毎日のようにクラスメイトにせっついていた、っというのが真相だ。
クラスメイトがほんの少しでも自分の欲を持って俺に接触をしようとしていたならば、排除することも吝かではなかったが、そのような影が全くなかった事から、彼も含めてこのクラスの者に自身が望まない邪な欲望がこもった悪意、とくに俺に関するようなものは弾くような、若干呪にも似た守護の結界をこの教室を中心に掛けることにした。
一人一人個人的にそれをかけることが面倒といったところが一番の理由であるが、この教室に入ることでそれまでに頼まれた?脅された?俺に対しての何かしらの接触を求める事柄すべてが無効になるというもの。
心の中に作用するものであるから、呪のようなものに近いのかもしれない。頼んだもの、頼まれたものどちらか一方がこの教室の中に入れば、両方ともに作用するという優れもの。
「心の中に作用する、その力の強さは邪悪なものを持って頼んだその内容に準じて、及ぼされる威力というか恐怖は変わるんだよねぇ」
「恐怖って……」
悪意と欲を持って、自分の身分を使って脅したものには特に強くその心の中に作用して、二度と同じようなことをしようと思わせないような、そんな魔法。……やっぱり呪。
俺はかかりたくないなぁ、としみじみ思った。
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