転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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プリュム・シャルール 5

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 押し込められた講堂の中はすでに人がいっぱいで、座る場所の表示も何もない。

 記憶にあるヒロインの座っていた場所はSクラス。新入生の中では演壇に一番近くに席が用意されていた。

 三日前に入寮するために名前の確認後伝えられたクラスの名前は覚えていない、だって「目の前のイケメン誰だったけ?攻略対象に居たかしら?」って考えて聞き逃してしまったんですもの、でも、その後に伝えられた寮の場所と部屋番号は記憶と変わらなかったから大丈夫よね。

 この場所から一番離れている場所だからどのようにいけばいいのか考えていたら、この扉に張り付くように控えていたらしい係員が何やら手に持っていたものを私にかざすと、有無も言わせずにここに近いところの空いていた席に座る様に言いつけて、何かやり切ったような顔をして扉の向こうに出て行ってしまった。

 ここが私の席とは思えないけど、記憶と違うし……だけどここから前に移動できるような道もない。それに、遠くに見える演題の上には既に人の姿が見えるし、もうすぐにでも式が始まりそうだから、あきらめてここに座ることにする。

 座ってみて周りを落ち着いて見てみると、目につく人全てが私のことを見つめていることに気付いた。

 いくら私がかわいいからって、そんな不躾な視線を乙女に向けるのはいい気がしないわ。

 皆眉間にしわを寄せて、男子は少し赤い顔、女子は近くの人とこちらを見ながらひそひそと……。

 なに?何なの?気持ち悪いわ!

 しばらく様子を見ていると、みんな私のこのかわいい顔ではなくて、胸から下のあたりに視線をやっていることに気付いたの。

 彼らの視線に合わせるように、自分の胸元から下に視線を動かしてみる。

 大きなふくらみ、これも自慢の一つよ、の下に、座ったことでダサくて長いローブが前の合わせ目から左右に開いて、私のこれも自慢なきれいなで長い足が短いスカートの下に伸びている。

 これがどうかしたのかしら?

 この世界では結局見つけることができなかったから、制服を頼むときに一緒にオーダーした絶妙な長さの靴下もお気に入り、立って見せれば足がすっきり長く見える優れもの。

 さすがに洋服屋さんで厚底の靴までは注文を受けてもらえなかったから今はこの世界で普通に履かれているものだけど、そのうちあのスチルを忠実に模倣したヒロインの制服姿を再現して見せるんだから、と考えに浸っていると。

 式が始まる時間が近くなったことで、より講堂内の音が静かになったことで、周りの人たちのひそひそ話が耳に入ってきた。

「なぁに?あの破廉恥な……下着しか着ていないのかしら?」

「あいつ痴女なのか?あんなに足を……俺の婚約者だったらそく破棄だな破棄!」

「制服のスカートだけ間に合わないとかいうことあるのか?貴族だったら考えられないが……」

スカートだけではなくて上の方もおかしくないか、やけに胸元を強調するような……」


「なに!?何なの?」

 私は思わず立ち上がって聞こえるように悪口を言う周りを見渡した。

 みな悪口は止まったけど、汚いものを見るような目線は変わりなく私に注がれている。

 いわれなき悪意に腹が立って何か言い返そうと大きく息を吸い込んだその時に、今まで全く気付くことがなかった周りに座っている女子の姿に目が行った。

 みんな、目に入る女子みんな、座ったことで見えるようになったローブの中のスカート丈はローブと同じくらいの長さで、誰も膝が見えているようなスカート丈の者は居なかった。

「な……なんで……」

 ゲームの中ではみんな私のような、普通の高校生・・・・・・のような膝上のスカートのはずなのに……。

 勢い良く立ち上がった私は、ローブの真ん中が開いたままで、ローブの中の体の正面がすかっり見えていた。

「「「キャー……」」」

 私の姿を見た周りに座る女子たちがわざとらしい声を上げて顔を背けるのを見て、私は自分のこの制服姿が。この世界ではとても恥ずかしものであるということに気付いたのだ。

 ゲームの世界に飛び込むことができると浮かれていた私の心を、一瞬で冷やすようなそんな感覚。

 少なくともこの世界で今まで過ごしてきた私の中の常識という感覚が、この世界で今まで一度もこのくらいのスカート丈で外を歩いている人を見たことがなかったという現実を思い出させたのだ。

 小さな子供であっても膝上のスカートをはくようなものはいない。

 足を出すことは、下着姿で歩くことと同意。またはそれ以上短い丈は下着姿というよりもむしろ……。

 私は一瞬で頭に血が上ったようになり、ローブの前を掛け合わすように出ていた足を隠すと、勢いよく硬い椅子に座り込んで俯いた。

 ざわざわと私のことを話題にしているような言葉がとぎれとぎれに聞こえたが、そこはお上品な王立学園の生徒たちなのか、あからさまにそれ以上非難する声は聞こえてこなかった。ただ、痛いような視線は周り中から感じていたけれど……。

 どういうことなの?ここはあの「ドキ恋」の世界のはずでしょ?

「なんで……なんでなの……?」 
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