転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
上 下
126 / 186

プリュム・シャルール 1

しおりを挟む
「……なんで?なんでなの?……」

 
 私がここが乙女ゲーム「ドキドキ☆王立学園♡貴公子達と愛のエチュード」の世界なのだと気が付いたのは、父がこのアミュレット王国に私たち家族と共に移住してきて、この国での商売に成功し、貴族と言われる人々と交流を持つようになってからだ。

 
 父は金では買えない名誉、つまり貴族としての階級を手に入れるために、手っ取り早く娘である私をどうにかして貴族に嫁がせようと画策していた。

 自分でいうのもなんだけど、私は可愛い。

 元の国タリスマン帝国ではそう珍しくなかった髪や目の色も、この国では全く見ることがない色のようで、特に髪色に関しては、「この国の王族のご落胤ではないのか?」と聞いてくる貴族が居るくらいで、そのことに関してあいまいな答えを返す父が、私には信じられないような心持がしていたのだけれど、今にして思えば願ったりな事なのかもしれない。

 何でもピンク掛かった髪色は、この国では火属性だけでなく光属性の精霊とも契約したように感じられるのだって。

 確かに私は魔法を使うことができる。

 だけどそれは、タリスマン帝国では当たり前のことで、使える魔法は魔力量から大したことはできない初期魔法の、治癒魔法だけ。

 これはタリスマン帝国においては、魔力量が少ない女の子が選択する一般的なもの。男の子であれば攻撃系の魔法を選択する人もいるけれど、女の子であって少し金銭的な余裕があれば、初級の治癒魔法のスクロールを買うことができるためだ。

 タリスマン帝国では魔法は買うことのできるモノとして存在している。

 確かにそれぞれに得手不得手はあるようだけど、そのことが判明する15歳のスキル確認をする前には、一つ二つの初級魔法を購入しているものがほとんどであるのがタリスマン帝国なのだ。

 私も、親が用意してくれた治癒の初級魔法のスクロールを10歳のころには読込んでいたと思う。

 スクロールを読込んでからは、自身の小さなケガや軽い風邪はそのことを意識するだけで治るまでの時間がかからなくなったことを実感している。

 この治癒の初級のスクロールは、他人に対してまで治癒の魔法を使うことができないものなので、それほど高い金額で取引されていないものなのだった。

 私は、11歳になった時点でアミュレット王国に移住してきたので、タリスマン帝国で行うスキルの確認も、またこのアミュレット王国で行う精霊契約の儀式も、どちらも受けることなく14歳になった。

 そして私は、父が成金になったお陰で、最近よく我が家にやって来る貴族の方々と顔を合わせる機会が増え、この国の国王や上級貴族と言われる方々の名前を聞く機会が増えたことで、その中に知った名前が時々出てくることに気付いたのだ。

「なんてこと!」

 国の名前を知った時に何故気づかなかったのか。アミュレット王国とタリスマン帝国といえば……。

「ドキ恋」じゃないの‼

 なぜか主人公ともいえる王太子殿下『アースクエイク・デューク・テンペスト』の名前は全く上がって来ることは無かったが、私の年齢が15歳になることや、魔法も使えることを見て取った男爵家や子爵家辺りで、それほど裕福ではない家の当主たち、つまり父から融資という名の借金をしている方々が、伯爵子息の名前や侯爵子息の名前、ヴォーテックスやクリフの名を挙げながら、やたらと王立学園に入ることを薦めだしたのだ。

「我が家の養女にならないか」の枕詞と共に。

 この国の貴族の世界にそう詳しくはない父は、下級貴族の当主たちの話を聞きながら商人らしく計算をして、今すぐにどこか下級貴族の後妻のようなものとして嫁がせるよりも、はっきりと自分の娘であることをにおわせながら、平民の魔力持ちとして、貴族がほとんどである王立学園に入れる方が将来絶対高く売れると踏んだようだ。

 私も、父の腹の中全ては計り知れないが、髪色のことを貴族たちに気を持たせるためにか、この国の中級学校に通わせることなく、駒としての教育を施されてきたことも知っていた。

 どのような思惑があったとしてもこの世界が「ドキ恋」と知った今、学園に入園しない手はないし、そもそも入園しないなんてことは無いだろう。

 そうよ何と言っても、これだけカワイイ私はこの世界の『ヒロイン』なのだから‼

 
 
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...