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チュート殿下 86 遂にやって来たXデイ⁉ 3
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俺の座ったところとは、式場の前方新入生の座っている席の端の方。後方には在校生が座っているのか、人数的に全学年ではなさそうだ。
前方の俺の座っているところとは反対側に教師たちの席が、演壇とは垂直に椅子が並べられてつくられている。
その中に見える学生はこの学園の生徒会に当たる者達だろう。
乙女ゲームの王道。攻略対象者の集まるところ。イベントの舞台。
すでに固まって座っている人の中に、異母兄もいるのだろう。
わざわざこちらから探してみようとは思わないが、あちらに座っている人々の中には、やたらこちらの新入生席の中を見ている者が居るが……。
『アークを探しているようだぞ』
ふわふわとまるで幽霊のようにこの空間に浮かんでいるキールは、誰にも見られないことをいいことにあちらこちらに行って、何やら状況説明を俺にささやいてまた離れていくを繰り返している。
見つからないよ。初日から面倒くさいのは御免被る。
冒険者の時と違って、纏う色について隠蔽をすることはしない方針で行くことにしたので、どのようにしたって目立ってしまうことは致し方がないとあきらめることにしているが、認識阻害で目立たないようにできる場面では使っていくつもり。
関わりたくない奴らに構われたくないからね。
時間が来たのかざわついていた講堂内が静かになって、演壇に進行係か一人ローブを着た男性が立った。
それからの入園式に、特に何も思うことは無い。どこの世界でも少し偉くなった人々は自分の自慢を織り交ぜたような長話が好きなのか。
魔法も扱う世界の学園長という響きに少し期待したところもあったのだけれど、何のことは無い俗物だった。
それから話す国のお偉いさんも、名前を知っている人はほぼ無く、つまり雑魚ね。なんでこんな無駄な時間を過ごさないといけないのかと思ったよ。
途中それなりに偉い奴なのだろうが、俺のことをそれとなく褒めてるのか貶しているのか話題にあげて話している奴が居た。
キールにしっかり目をつけられていたから、きっと来年のこの式場にはいないだろう。
大人たちの話が終わり、司会も生徒の手に移った。
「これから生徒会役員の紹介を致します」
途中から舞台袖に移動していたらしい、生徒会役員がぞろぞろと舞台中央に出てきた。
生徒会長は最終学年の三年生、つまり……。
「生徒会長、ヴォーテックス・カウント・ウインド。副会長、クリフ・マークィス・ゲイル。会計……」
名前を呼ばれると、一歩前に出て軽く頭を下げる。
この国にはそもそも選挙というものがないので、この学園でも選挙ではなく、先代の生徒会長からの指名という形で次の生徒会長が決まる。
一年の時に、生徒会に呼ばれ雑用なことを経験し、二年になってそれぞれの副の立場で経験を積み、三年で長になるという形らしい。
一年も中級学校からの持ちあがりのようなものだから、きっともう役員候補の目星はついている事だろう。
ただ厄介なのが、この学園も掲げる理念上は身分の上下は関係ないとされているが、この学園に入園するための前提である魔力を持つと言うことになると、生徒のほとんどは貴族であることから、結果として学園の中だけ身分が関係ないということは建前で、この学園の中もきっちりと身分による上下関係が出来上がっている世界であるということだ。
つまり、俺の意志や成績に関わらず、入園した一年の中で一番身分が高い俺は、三年の時には生徒会長になっている、という既定路線が引かれていても仕方がない立場にあるということ。
近いうちにまた、初級学校の時と同じようなことが繰り返されるのかもしれない。
話に来るのは、やはり顔を知ってるクリフ・マークィス・ゲイル副会長あたりが来るのかもしれないが……。
少し高い舞台の上から、一年の全員にゆっくりと視線を巡らせている役員たち。
自意識過剰ではないな、俺のこと探しているって思うのは。
このあたりにやけに視線を巡らせている感じなんだけど、きっとわからないよね、俺よりレベル高い奴居ないし。
『この会場の中にも居ないかもしれないぞ』
って、俺の頭上でキールが言ってる。
それじゃあ、やっぱりこの学園で学べることなんてないんじゃないの?
『権謀術策?様々な悪巧み?とにかく、貴族社会で生きていくすべを実践で学べるのじゃないか?』
それを言っているキールの笑顔が十分黒い。
いろいろこの学園について説明していたようだが、俺はキールとの会話で殆どで聞いてなし。
でも大丈夫、キールが一言一句全て記憶しているから。
司会が初めに声を出していた学園の方の担当者に代わって、この入園式は終わったようだ。
順番にこの講堂から退出していく。
初めは父兄達。中には上位貴族もいるからね。
新入生は一番最後のようだ。ほとんどが知り合いのようだし、この席もクラス別に分かれて座っているようだ。
俺の隠蔽と認識阻害は、隣にいたとしてもこちらから声をかけない限り気が付かないくらいのものだから、取り敢えずしばらくはこのまま、これから同じクラスになる皆様を観察させてもらうことにする。
クラス名簿が、何の忖度なのか、クラスが決定する前にこちらの意志を確認する為に送られて来たそうだ。
もともと何も言うつもりはなかったが、マーシュが側近を務めていたころの王様にもその様な確認があったと聞いていたから、これも悪い慣習の一つなのかな。
折角の御厚意だから利用してあらかじめ知っていた名前と本人を結び付けて記憶する。簡単な鑑定も添えて……。
前方の俺の座っているところとは反対側に教師たちの席が、演壇とは垂直に椅子が並べられてつくられている。
その中に見える学生はこの学園の生徒会に当たる者達だろう。
乙女ゲームの王道。攻略対象者の集まるところ。イベントの舞台。
すでに固まって座っている人の中に、異母兄もいるのだろう。
わざわざこちらから探してみようとは思わないが、あちらに座っている人々の中には、やたらこちらの新入生席の中を見ている者が居るが……。
『アークを探しているようだぞ』
ふわふわとまるで幽霊のようにこの空間に浮かんでいるキールは、誰にも見られないことをいいことにあちらこちらに行って、何やら状況説明を俺にささやいてまた離れていくを繰り返している。
見つからないよ。初日から面倒くさいのは御免被る。
冒険者の時と違って、纏う色について隠蔽をすることはしない方針で行くことにしたので、どのようにしたって目立ってしまうことは致し方がないとあきらめることにしているが、認識阻害で目立たないようにできる場面では使っていくつもり。
関わりたくない奴らに構われたくないからね。
時間が来たのかざわついていた講堂内が静かになって、演壇に進行係か一人ローブを着た男性が立った。
それからの入園式に、特に何も思うことは無い。どこの世界でも少し偉くなった人々は自分の自慢を織り交ぜたような長話が好きなのか。
魔法も扱う世界の学園長という響きに少し期待したところもあったのだけれど、何のことは無い俗物だった。
それから話す国のお偉いさんも、名前を知っている人はほぼ無く、つまり雑魚ね。なんでこんな無駄な時間を過ごさないといけないのかと思ったよ。
途中それなりに偉い奴なのだろうが、俺のことをそれとなく褒めてるのか貶しているのか話題にあげて話している奴が居た。
キールにしっかり目をつけられていたから、きっと来年のこの式場にはいないだろう。
大人たちの話が終わり、司会も生徒の手に移った。
「これから生徒会役員の紹介を致します」
途中から舞台袖に移動していたらしい、生徒会役員がぞろぞろと舞台中央に出てきた。
生徒会長は最終学年の三年生、つまり……。
「生徒会長、ヴォーテックス・カウント・ウインド。副会長、クリフ・マークィス・ゲイル。会計……」
名前を呼ばれると、一歩前に出て軽く頭を下げる。
この国にはそもそも選挙というものがないので、この学園でも選挙ではなく、先代の生徒会長からの指名という形で次の生徒会長が決まる。
一年の時に、生徒会に呼ばれ雑用なことを経験し、二年になってそれぞれの副の立場で経験を積み、三年で長になるという形らしい。
一年も中級学校からの持ちあがりのようなものだから、きっともう役員候補の目星はついている事だろう。
ただ厄介なのが、この学園も掲げる理念上は身分の上下は関係ないとされているが、この学園に入園するための前提である魔力を持つと言うことになると、生徒のほとんどは貴族であることから、結果として学園の中だけ身分が関係ないということは建前で、この学園の中もきっちりと身分による上下関係が出来上がっている世界であるということだ。
つまり、俺の意志や成績に関わらず、入園した一年の中で一番身分が高い俺は、三年の時には生徒会長になっている、という既定路線が引かれていても仕方がない立場にあるということ。
近いうちにまた、初級学校の時と同じようなことが繰り返されるのかもしれない。
話に来るのは、やはり顔を知ってるクリフ・マークィス・ゲイル副会長あたりが来るのかもしれないが……。
少し高い舞台の上から、一年の全員にゆっくりと視線を巡らせている役員たち。
自意識過剰ではないな、俺のこと探しているって思うのは。
このあたりにやけに視線を巡らせている感じなんだけど、きっとわからないよね、俺よりレベル高い奴居ないし。
『この会場の中にも居ないかもしれないぞ』
って、俺の頭上でキールが言ってる。
それじゃあ、やっぱりこの学園で学べることなんてないんじゃないの?
『権謀術策?様々な悪巧み?とにかく、貴族社会で生きていくすべを実践で学べるのじゃないか?』
それを言っているキールの笑顔が十分黒い。
いろいろこの学園について説明していたようだが、俺はキールとの会話で殆どで聞いてなし。
でも大丈夫、キールが一言一句全て記憶しているから。
司会が初めに声を出していた学園の方の担当者に代わって、この入園式は終わったようだ。
順番にこの講堂から退出していく。
初めは父兄達。中には上位貴族もいるからね。
新入生は一番最後のようだ。ほとんどが知り合いのようだし、この席もクラス別に分かれて座っているようだ。
俺の隠蔽と認識阻害は、隣にいたとしてもこちらから声をかけない限り気が付かないくらいのものだから、取り敢えずしばらくはこのまま、これから同じクラスになる皆様を観察させてもらうことにする。
クラス名簿が、何の忖度なのか、クラスが決定する前にこちらの意志を確認する為に送られて来たそうだ。
もともと何も言うつもりはなかったが、マーシュが側近を務めていたころの王様にもその様な確認があったと聞いていたから、これも悪い慣習の一つなのかな。
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