転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 83 遂にやって来るXデイ⁉ 2

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 チュート殿下の両親つまり国王たちについて、ゲームの中の情報はほとんどない。

 子供に関して無関心というところは今と同じかもしれないが、ゲームの中では王様はとても忙しいので、気にはしているが構う時間がない、そのような扱いだった。とりあえず、愛情はあるよみたいな感じで。

 そんなところに、異母兄。異母兄の母親は今とは違って、きちんと伯爵家のご令嬢とされていた。

 今は、まだはっきりと誰からも説明されていないのであやふやなところがあるが、親世代でも所謂乙女ゲームのようなことが実際起こっていたようだ。

 異母兄の母親は、それこそよくある下級貴族とその家の侍女の間にできた不義の子で、家から追い出され不遇の時代を過ごすが、父親の奥さんが亡くなったことで家に引き取られ、貴族学校に入学。元平民であることからか、普通の貴族令嬢と違う天真爛漫さに上位貴族の子息たちが心惹かれ……。

 を、地で行って、国王陛下の婚約者であった公爵令嬢をハメて追いやり、結果王子を生んで王妃に成れそうだった所……今違うのを見ると、もう一波乱あったみたい。

 俺自身そのことにあまり興味がないので、探っていない。

 マーシュはその時代を生きた人で、ある意味巻き込まれていた立場だったと思うから、実際のところを良く知っていると思うし、もしかしたらキールはもうすべて知っているかもしれないけど、これからの俺の人生に関わりが無いのであれば、それを聞くことは無いと思う。

 ゲームでの王妃様もどこぞの公爵令嬢だったから、もしかしたら今世の母と同じ人物かもしれないが、今の母、王妃様は元の王様の婚約者の妹に当たる人らしい。国外追放された婚約者の実の妹と、結局政略結婚している王様ってなに?

 親子二代で乙女ゲームしたら、国つぶれるよね,本当!

 国王陛下は、結局伯爵家に養子にやらなくてはならなくなった息子を溺愛しているみたいなんだよね。

 伯爵家に養子にやらなくちゃならなかった原因も、俺は良く知らない。ただ、不本意な事だけはわかる。

 本当はきちんと王族としたかったのだろう。

 きっと『坊主憎けりゃ袈裟まで憎い』状態で生まれた今の俺は、両親ともに愛されてはいない。

 ただ、今の俺は前世の記憶があって、尚且つ絶対的に信頼がおけるキールの爆誕と、マーシュやリフルたちがいてくれたおかげで、両親に愛されていないことについて全く、髪の毛ほども気にならない。

 しかし、普通のただの子供としてあったなら、もしかしたらゲームのアースクエイクと大差ない様になっていたかもしれない。

 ぐれるよね普通。

 そのぐれ方で、一番考えられるのがアースクエイクみたいになり、暴君と化すこと。

 
 いろいろな形をシミュレートしながら、俺としてはヒロインと関わらない形で行きたいんだよね。切実。

 そこの希望ははっきり伝えつつ、キールの現状分析能力に支えられながら、一番無難な形で行くことになるのかな。

 どれ程ゲームのストーリーと同じになるのかはわからない。

 これまでは、いってみればゲームとは関わりのない、時々登場するキャラが語る過去話と、ゲームの中のスチルで描かれているイラストのみが現す世界。

 つまり、余白と言える部分がこれからのゲームの中の話とは比べ物にならないほどあったから、比較的自由裁量が多く、今の俺の存在も認めざる負えなかったのではないか。

 逆に言えば、これからの行動に関しては、もしかしたら自分の体を自分では自由に動かせない、などということも起こり得るのではないか?

 と、王立学園に入学式が近づいてくほど、夜の眠りも浅くなってきた。

 ただ入学に当たって、今とゲームとで、もう一つ、客観的事実として大きく違うことがある。

 それは、俺が学園の寮に入ることなく、学園に通学できることだ。

 この学園の寮に入るというのも、乙女ゲームの王道であるが、この国の王立学園は、とても辺鄙なところに独立して存在している、ということもなく、ご存知の通り俺の住まう離宮と同じ王城内にある。

 初級学校や中級学校とお隣同士の立地だ。

 なのに、なぜか原則寮から通うという形になっている。

 このことについても何も合理的な説明がなされているわけではなく、以前からそうだから、伝統だから、で誰も疑問に思うことなくまかり通っているのだ。

 まぁ寮生活でもしてなければ他のクラスとか学年が違う何人もの男と付き合うとか無理だよね。女は一人なんだから。

 「ドキ恋」に関しては、俺を攻略する場合、基本一対一なわけだけど、結局のところ次作の攻略対象者たちともうまく付き合わないと、ほんとの攻略ができない仕様になっているのだから、きっと近くで生活していない限り難しいことがたくさん、という理由なのだろう。

 もしかしたら、ヒロインも俺と同じように瞬間移動が使えるのかもしれないな。

 乙女ゲームにはご都合主義が多いから、一々こだわっていては話が進まないということかな。

 俺についても当初は、誰も何も疑問を持つことなく寮の部屋が準備されていたようだ。

 部屋番号を聞いて、乙女ゲームそのままだった時には、やはり強制力には抗えないのかと少し絶望しかけたが、俺のその時の状態を見て気を利かせたマーシュが、寮に住むことは俺の命にかかわる、俺の命が奪われかねないと、学校の長である学園長ではなく、国の行政の長である宰相に訴えたことで、俺は一番安全な住居と誰もが認めている離宮から、学園に通うことになったのだ。

 もちろん、異論をはさむ者は多かった、学園長も

「今まで王族であろうとも寮生活を送りながら通園することがこの学園の決まりなのです」

 と言って、譲らなかったらしいが。

「では殿下のお命を確実にそちらで守っていただけるのでしょうね?もし何かあれば、とてもあなたの首だけで贖うことはできませんが……それでもよろしいか?」

 と、宰相が詰め寄ったということだ。

 学園長は最初

「この学園では身分の差関係なく学ぶところなのです。生徒に関しても誰もが平等に扱われるべきもので……」

 とか何とか、講釈していたようだが、建前はどうでも、現実問題として一介の平民の学生が学園内で亡くなってしまうのと、一国の王子殿下が学園内で亡くなってしまうのでは、その責任において背負わされる重みは違ってきても致し方ないものなのだ。

 その所を突っ込まれた学園長も、自分の首と命は惜しかったとみえて、最終的には特例として認めたらしい。

 過去にも、持病持ちの者が、寮生活は困難であると判断されて、寮以外から通園したという記録もあったことと、学園の決まり所謂校則をいくら調べても、寮から通わなければならないという決まりが載っていなかったことも、俺が寮に入らないことを後押しした。

 すぐ目の前とは言えないが、同じ敷地内に住んでいるのに通うことが許されないというのも変なものだったので、俺としては寝首を書かれる心配のない離宮から通えることは大きな僥倖であったし、ゲームの頸木から少しでも囚われずに済むことがあるのは、これからの生活においても明るい兆しであると捉えることができた。
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