転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 78 あれから~

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 あの、初級学校での初めての長期休暇に入ってすぐに開かれた王妃様主催の夜会で、マーシュが何かしようとしていたことや、その後何をしたかも知っている。

 まだ10歳だった俺はもちろん年齢的にも夜会には参加できないし、王妃の本丸に乗り込むようなことはしない。

 時々、キールと偵察散歩する俺とすれば、王妃あの人の様子を見ても、全く自分の母親と感じることが無い。
 
 それは国王おうさまに対しても同じ。

 マーシュが色々と手をまわし、俺が学校で過ごしやすい様に計らってくれたことは感謝しかない。

 しかし、俺のことをないがしろにした校長や教師たちが学校からいなくなったことで、俺が受けた初めての学力試験と実技試験の結果が見直された結果、俺は初級学校に通う必要がないと判断された。

 ついでに、中級学校にも通っても通わなくても良いという判断まで下った。

 本当の実力まで加味すれば、高等学園にも通う必要がないくらいの実力がすでに10歳の俺にはあると判断されたのだ……。

 逆に、どんだけレベル低いんだこの王国の教育は!乙女ゲーム恐るべし……。

 だから、俺は初級学校はもちろんのこと、中級学校にも通うことをやめた。

 大人になってから必要な人脈作りのためにも学校に通うことは必要だと考えていたマーシュも、何も関係を持つ人間を腐った貴族社会の縮図であるこの国の教育現場で見つけなくても良いと、考え直したようだ。

 しかし、本当の所は中級学校でまた、初級学校でのようなことを繰り返すのが面倒になったからかもしれない、と俺は思っている。

 それと、俺にはキールの存在がある事を、マーシュに隠さなくても良いようになったので、この離宮に籠っているように見えて籠っていないことも、学校に通わなくても良いことに針が振れた一因だろう。

 ただし、『高等学園にはこの国で魔力を持つ者は必ず通わなければならない』という決まりがあるために、そこをブッチすることはできない。ご都合主義の強制力出動か?と考えなくもなかった。

 少なくとも10歳から学園に入学しなければならない15歳まで、会いたくないやつに会わなくてもいい免罪符をもらえたことは大きい。

 だけど……逆にこの5年間が過ぎればあの乙女ゲームの通りに進み、結局俺はいらない者として辺境で命を絶たれるのか……。
 
 それももちろん怖いことだが、それよりも何よりも、俺はあのクソビッチに……。

 命を奪われる外の破壊はもちろん怖いが、それ以上に心を奪われる中の破壊の方がより一層恐ろしいのだ。

 俺が俺でなくなってしまうかもしれないのだから……。

 キールは俺の心の中なんて全てお見通しで、まぁそう言う存在なのだから当たり前だけど、俺の不安を一番わかっている。

 不安の根幹、この世界のことをいつも、どこでも鑑定魔法を張り巡らせて暴こうとしている。

 何とか、俺が高等学園に入学するまでに、この世界の神の真実にたどり着きたいと願っていた。

 
 初級学校には初めての長期休暇に入ったあの時から一度も通うことなく、ある程度真実を知っている、生徒会長のクリフ・マークィス・ゲイル侯爵子息は、俺に会いたいと宰相を通してマーシュに何度も打診をしたようであるが、

「あのような危険な場所にもう殿下を通わすことはできません」

 で、けんもほろろに追いやっていたらしい。

 この離宮に籠っていることが一番安全なことは、攻撃をしてくる者の方がより一層わかっていることだ。

 直接攻撃魔法の大きいのをこの離宮にぶっ放しても、全く少しも、屁にもならないのだから……。

 外がだめなら中からという考えは常道で、これはもう俺が生まれた時から毎日行われていると言っても大げさではないほどだが、俺が覚醒するまではマーシュが全力を使って排除し、昨日までこの離宮に入れた人が今日は入れないとか、この世界の中でここよりも審査が厳しいところは無いというくらい……。

 何といっても、俺が覚醒した後は鑑定魔法の究極、スキルの権化であるキールの力から逃れることができるものはこの世界には居ないから、俺に対して悪心を持っている者はもちろんのこと、本人が知らず知らずに操られていたとしても、キールにはお見通し。

 蟻一匹この離宮の敷地内に入って来ることができない。

 ということになっているので、俺はずっとこの離宮に籠っていることになっている。

 俺がこの離宮から出なければならない要件があるとすれば、貴族であるならば入学しなければならない高等学園の入学式までは、両親の葬式くらいしか無いだろう。

 それを、十分利用して俺は、この国の中にとどまらず、やっぱりあったそれ以外の国にもちょくちょくと訪れて見聞を広めることに勤めたのだ。

 もちろんそれにはキールの力が大きく関わっていて、乙女ゲームのくせにRPG要素もありのなのか?の魔獣を倒す所謂レベリングで、出来ることがどんどん増えたのは、男の子としては楽しくて仕方がないことだった。

 もしかしたらこの世界は、それぞれの国で何かしらのゲーム要素に支配された、ヘンテコパラレルワールドなのかもしれない。

 この国から出ていったら、行った国の何かしらのゲームに飲み込まれる、というのは勘弁なので、今この世界の力には影響されないみたいなキールの能力を強化して、どこの国のゲームの強制力神の力にも影響されないくらい強化する事が目標だ。

 
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