転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

文字の大きさ
上 下
101 / 186

マーシュ・スリート  18 前国王陛下と今上陛下

しおりを挟む
 前国王陛下がご存命であり、今上陛下がまだ王太子殿下であったころ、王立学園で色々やらかして、その尻拭いに寝る暇もなかったその時に、この国のある意味根幹を担っているかもしれない王族のために仕えるのではない、王国のために仕える集団の存在を聞かされた。

 そして私もその集団の一員になる様に求められた時に、私自身がこの王国の為になる人物となり、自分が心から仕えたいと思える人物の為にこの命を捧げようと決めた。

 そしてその人物は、大恩があり、心から使えたいと思っていた王太子殿下ではないことは、国王陛下が次代の国王たる王太子ではなく、力量も未知数の自分にその集団の統轄をしろと求める時点でわかってしまったことだった。

 国王陛下はある時点でもう王太子殿下を見限っていたのだ、しかし後を継がせることができる存在が王太子殿下しかいないことと、もしも彼以外を求めた時の予想されるこの王国の混乱具合を考えて、今まで国王ならば完全に任されるこの国の半分、この国の裏側を任せることを良しとしないことにされたのだと。

「次代は仕方がない、王太子あれしかいないのだから、しかしその次は。このままでは王太子あれ以下の、神から託されたこのアミュレット王国の正当なる王権を継ぐ資格のない者が立つようなことになりかねない。我が目の黒い間は良いが、寿命ばかりはいかな偉大なる王でもどうにもできぬこと。我が不甲斐ない故に年若く、本能に流されるあれしか跡取りがおらぬのだから」

 私は詳しく知ることがなかった、王太子殿下の父王子のことだろうと推測はできた。誰の言の葉にも上がらないそんな王子の父である国王陛下は、そのことについてはどの様な存念がおありになるのか……。

 結局、直接的にも間接的にも聞く機会のないまま、王太子殿下が戴冠され、今上陛下となられた。

 前国王陛下が愁いられた様に、表立っては出すことのできない次代候補の存在と、正当なる跡取りをないがしろにするという暴挙のうちに現在があるのだ。

 私は今上陛下のほぼ全てを見つめながら、アーク殿下と初めて御目文字がかなった時に、私の命をかけてお仕えする存在は、この方であるのだと言う天啓を受けた。

 アーク殿下は確かに傍から見れば、国王を継ぐことがおできになるようには全く見えない。

 しかし、前国王陛下に在って今上陛下に足りないと思える何か。

 その何かが確かにこの何もできないと思われている幼子に在る、と感じることができたのだ。

 帯剣の儀までの5年間は全くの伏在の時間であった。

 そして、精霊契約の儀までの5年間はまた雌伏の時間であった。

 この10年間を経て、王国内の見えなかった腐った部分が、腐敗臭を放つまで育ったことで、排除しやすくなったこともまた事実。

 腐った根元からすべてを排除するまでにはまだまだ時間がかかるかもしれないが、その排除するための力を持ちつつある殿下にこの数年でもっと動きやすくできるようにすることが私の務めである。

 殿下の力を理解することができない愚か者たちを、この数ヶ月で特定することはそう難しいことではなかった。

 殿下が力のほんの一部を見せつけるだけで、自らその馬脚を表す愚か者たち。

 これがこの国の初級教育の頂点といわれる学び舎の実情だ。

 殿下が入学される前年までの因習をそのまま持続できる、いや持続しようとした者たちの学習能力のなさに頭が痛くなる。

 このようなことが次の学び舎でも繰り返されるのか。

 直にその目で見なければ理解できない頭の固い、自分のことしか考えていない連中は、きっと繰り返すことになるのだろう。

 今よりもっと、錦の御旗を自分たちが持っていると思われる次の学び舎の方が、きっと面倒くさいことになることは確かなのだろうが……。


 
 今回の試験で行われた、行われようとした不正は、衆目の知る所となった。

 学校というある種の閉ざされた聖域といわれる中だけで過ごしてきた腐った者たちは、自分たちの放っている腐臭に気付くことなく、指摘されることもなくのうのうと過ごしてきて、一般的な常識に欠けていたのだ。

 その一般的な常識も貴族たちの一般常識で、この国に住む大半の者たちの常識とも違うものであるのだが……。

 殿下が入学するにあたり、あまりにも目に余る前校長たちの掃除が済んだ、その余韻も消えぬうちに、何を血迷ったのかそれよりも一層小物であったから目こぼしされていた輩が、殿下に直接嫌がらせをし、衆目のまえで恥までかかそうとしたことには、膿をある程度纏めて出すためとはいえ、忸怩たる思いがある。

 表立って何もできなかったことは、殿下に負担をかけたことに他ならず、これから尚更学び舎というある種の聖域といわれる中では、より一層殿下ご自身のお力でこの国の腐った部分と闘っていただかなければならないことは確かなことで、これからどのような形で支えることができるのか、今まで以上に気を張らなければならないことを実感した出来事であった。
 
しおりを挟む
感想 137

あなたにおすすめの小説

幼少期に溜め込んだ魔力で、一生のんびり暮らしたいと思います。~こう見えて、迷宮育ちの村人です~

月並 瑠花
ファンタジー
※ファンタジー大賞に微力ながら参加させていただいております。応援のほど、よろしくお願いします。 「出て行けっ! この家にお前の居場所はない!」――父にそう告げられ、家を追い出された澪は、一人途方に暮れていた。 そんな時、幻聴が頭の中に聞こえてくる。 『秋篠澪。お前は人生をリセットしたいか?』。澪は迷いを一切見せることなく、答えてしまった――「やり直したい」と。 その瞬間、トラックに引かれた澪は異世界へと飛ばされることになった。 スキル『倉庫(アイテムボックス)』を与えられた澪は、一人でのんびり二度目の人生を過ごすことにした。だが転生直後、レイは騎士によって迷宮へ落とされる。 ※2018.10.31 hotランキング一位をいただきました。(11/1と11/2、続けて一位でした。ありがとうございます。) ※2018.11.12 ブクマ3800達成。ありがとうございます。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ
ファンタジー
 私はゲームの世界に転生したようです。主人公なのですが、前世の記憶が戻ったら、なんという不遇な状況。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか。  ある日、我が家に勝手に住み着いた平民の少女が私に罵声を浴びせて来ました。乙女ゲーム? ヒロイン? 訳が解りません。ここはファーミングゲームの世界ですよ?  自称妹の事は無視していたら、今度は食事に毒を盛られる始末。これもゲームで語られなかった裏設定でしょうか?  私はどんな辛いことも頑張って乗り越えて、ゲーム開始を楽しみにいたしますわ! ※紹介文と本編は微妙に違います。 完結いたしました。 感想うけつけています。 4月4日、誤字修正しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...