転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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チュート殿下 68 自分から敵作ってどうすんのって話

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 生徒会役員補佐初日は、クリフ以外の人から話しかけられることなく、どちらかと言えば睨まれているような感じがしていい気分ではなかったが、わざわざこちらから話しかけることもないし、とても嫌な雰囲気のまま終わった。

「次は2日後に来てほしい……いいかな……」

 クリフはこの2時間経たない間に何歳か年を取ったように疲れた顔をしながら、ひきつった笑顔を浮かべて次の生徒会のことについて確認してきた。

 部屋の中の他の役員たちの表情がもっと厳しいものに変わる。自分達の長たる彼がただの補佐でしかない俺に阿っているように見えて不快なのだろう。

 面倒くさいことはまっぴらごめんであるが、この前のちょっとした決意のためにも俺はこのくらいの厄介は乗り越えなければならない。

 ここに居る2年生は生徒会長と同じく、去年伯爵王子の下で生徒会活動をした者たちで、親たちからも一応の次期国王親分は伯爵王子であると教えられている者たちだ。

 あの・・伯爵王子に一年間使えてみてどのような感想を持って今に至っているかわからないが、俺からしたらあんな態度の更に自分と表面的身分は下の者に使えていこうと考えている猛者たちだ。

 それが、噂ははかばかしくないものばかりのポットでの王族が、侯爵子息を鼻であしらっているようにしか見えない現在、負の感情しか浮かんでこないだろう。

 ここで何を言ってもしょうがないかもしれないが、何も言わずに出ていくことも悪手だ。

「生徒会長。私はあくまでも補佐ですし、正式な役員ではありません。ほかの先輩方の意見もあるでしょう。2日後には参ります。約束ですから」

 だからその時までには一応そちらの意見をまとめておいてくださいね、という気持ちを暗に込めて口を閉じた。

 生徒会長にはきちんと伝わったと思う。伝わってなかったら……まぁ、その時は……。

 俺は深々と頭を下げて(上げた時には中にいた連中皆、びっくりした顔してた)その場を辞した。

 後どうなったかは……知ってる。キールが言わなくても探ってきちゃうから。

 思っていたよりも遅い帰宅、帰城になったから待機させているリフルには悪いことしちゃったな。

 結局生徒会室でも魔法の演習の時と同じように何もさせてもらえなかったんだけど、キールの目を使って俺の見えないところもしっかりと覗いてきたから、彼らが何をしていたかはわかった。

 まだ、11歳の子供たちだから大したことはできないよね。

 書類をいじって仕事をしているように見えるけど、あの書類も先生たちが作ったものを書き写しているだけのようだし、何かの計算もアンケートの人数の集計ぐらいの簡単なもの。

 将来の役に立つことなのかぁ?

 ただの事務作業だよね。

 王城の官吏として働くのには役立つのかな?ここに居る全員それなりの貴族の子息子女だろ?自分の所の領地経営に役立つのかな?

 凄い真面目な顔で、俺たちはできるんだぞという雰囲気を醸し出しながら俺のことチラチラ見ていたけど、俺が君たちが何やっているか知ってることがわかっても、同じ顔ができるのかな。

 なんだか、疲れていると嫌な事ばかり考えちゃう。

 今日は早く寝よう。



 キールはあの場にいた全員の詳しい個人情報を勝手に調べだしてきていて、でも俺に教えるほどの人物はいないって、つまらなそうにしていたな。
 
 授業も10歳の授業だよ、面白い訳ないじゃない。興味が持てそうなものは魔法についてぐらいしかないのに、実技に関しては相変わらず危ないからという理屈で参加させてもらえない。

 俺が怪我をしたときに責任持ちたくないからって、先生の方が教えたくないみたいです。この学校には根性のある教師はいないのかね。

 しかたなく、俺は教科書と自分で準備した魔法理論の本を机の上に並べて自分の用意した方を読む。

 今教壇に立っているのは初めて見る幾何の教師らしいが、三桁の足し算と引き算なんてやってられないでしょ。この世界の幾何の本といわれるものを初めて読んだけど、掛け算がないんだぜびっくり!だから割り算もなし……。

 流石の乙女ゲーム!乙女がいくら数学が嫌いだからって、バカにしすぎじゃないか?

 魔法の世界に物理も化学も関係ないのだろうけど……みんな乙女が苦手な科目……。

 俺はそれなりに好きだったし苦手ではなかったが、姉鬼は大嫌いだったな。

 幾何の教師は、俺の態度に腹は立っているのだろうが注意をする度胸はないようだ。

 だがこのクラスできっと伯爵王子の派閥といわれる貴族の子供と思われる、ナンタラ伯爵の息子が、俺の様子に気付いたいで噛みついてきた。

「先生!真面目に授業を受けていない人には注意をしてもらえませんか?そうだ今黒板に書かれている問題を答えていただきましょうよ。きっとお出来になるから授業を真面目に受けていないのだろうから」
 
 いいこと考えました。という雰囲気でいやらしい笑いを俺に向けるナンタラ。名前覚える価値ないから、特段キールも教えに来ない。

 教師も腹に来ていたのはその様子からわかっていたから、君いいこと言いますね、の顔をしながら俺にその話に乗れと目線を送ってくる。

 黒板にはさっきのナンタラが答えた問題と共に、10数問だらだらと面白みのない3桁の足し算、繰上りが全くないものと繰上りがあるものが書かれていた。

 俺はここでごねてもなんだけど、こいつらの顔を立てることもないので、黒板の前に立つと何の躊躇もなくスラスラとすべて答えを書いていく。ついでにナンタラの間違いと、教師の例題の解き方のもっと簡単な方法を書いておくのも忘れない。
 
 もちろんその間1分もないよ。簡単すぎるし。

 ナンタラは口をパクパク。教師は顔を真っ赤にしていたけど……仕方ないよね。

 
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