転生したら当て馬王子でした～絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい～

チュート殿下 ５９ 自己紹介？いたしません！

　10歳で精霊と契約できることで魔法も使えるようになるわけだけど、契約ができて自分の使える魔法の属性がわかって、学校に通うようになるまで2ヶ月しかないわけで、今ここに居る子供たちで魔法をまともに使えるものは俺以外は居ないだろうとマーシュは言っている。

　自分の身の回りのことも良くできない上級貴族の子供を、半年で使えるようにするとは、初級学校って結構すごいのな。

　教室の中で、侍従たちに世話されている同級生を見て、本当にそんなことができるのか、信じられないくらい今この場の子供たちは何もできないように見える。

　マーシュはいてくれているけど、俺基本自分のことは自分でできる。前世を思い出したら、体まで丸ごと洗われるなんて、まっぴらごめんだ。

　予め座る席も決められていて、そこに座って待っているけど、入学式で二時間近く座って静かにしていた子供たちには、これ以上我慢することがつらい様で、皆侍従にわがままを言って困らせているようだ。

　俺としては、これから同じクラスで半年は過ごすわけだから、自己紹介なりしなければいけないことはわかるけど、俺自身には自己紹介してもらわなくても鑑定できるから、話すよりもっと、本人の知らないことまでわかるから……しないけど。俺の命にかかわることがない限り、しないけど……。

　30分は待って、やっとこのクラスの担任がやって来た。

　半年間だし、直接俺に何か教えることは無いだろうから我慢するけど、マーシュの調べた内容だけでも何で一応王族の俺の担任をこいつにするかねぇ、ってくらい腐った人物だよ。

　続いて入ってきた副担任は、この初級学校の良心かもしれないほど、汚いことが何もない実力の持ち主。ただし元々は平民。

　マーシュもこの学校に入ることは必要であると言っていたけど、俺にこの学校で学ぶことは何もないかもしれない、ただし同級生や上級生、来年は下級生の中で、心を開ける誰かを見つけることがこの学校に来る一番の目的ですと。

　流石に先生たちが入ってきたことで騒がしかった教室内も静かになった。きちんとしつけられている上級貴族の侍従たちは何も言葉を発することなく、静かに控室に下がっていった。

　担任は、意識のどこかで俺のことだけをとらえながら、当たり前の学校生活のことをたらたらと話していく。

「学校の説明はこれくらいで、これから一人一人自己紹介をしていただく。まずは……そちらの席から順番に……」

　担任が俺の顔を見て、こちらから始めたかったようであるが、俺は視線に弱い威圧をかけて奴の目を見ってやった。

　10歳の子供の威圧に屈するって……この担任どこぞの公爵家の次男、長男に跡取りができたからお払い箱。子供だったら何とかなるかと初級学校に実家の力のごり押しで入り、これまでも自分の力でなく上手い汁を吸っているという輩。

　突然指名された女の子がかわいそうだが、俺、名前しかいう気ないから、一番初めにそれをするのはどうかなぁ、それをすると後のみんなが名前言うだけで自己紹介終わっちゃうからね。

　結局最後に俺に自己紹介が回ってきたけれど、名前を言うだけで終わりにした。

　今日のところはこれで学校のカリキュラムは終了。この場で解散になった。

　このクラスというか、この学校に知り合いは全くいないので、俺のところに来る子はいないと思うけど、侍従にせっつかれるように俺のことを盗み見て、何とかきっかけを作りたいと考えているのが何人か居る。

　大変だね、親の意というか家の意？応えてあげたい気もあるけど、近づく人は俺の方から決める。

　マーシュが教室に入ってきたので、俺は言葉を発することなく席を立ちそのままマーシュに付いて教室から出た。

　貴族のマナーとして一番初めに教え込まれるのは、名前を覚えることは基本として、階級が下の者から上の方に声をかけないということらしい。

　俺は国王陛下と王妃殿下のみ気を付ければいいだけだからね、気が楽だけど。

　一応学校に通うにあたり、貴族としてのマナーは身に着けてきたらしく、誰も俺に話しかけることは無かった。