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マーシュ・スリート 16 力の差
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「国王陛下、妃殿下、初めて御挨拶させて頂きます。アースクエイク・デューク・テンペストと申します。以後お見知りおきの程よろしくお願い申し上げます」
国王様と王妃様が若干離れて立っていたので、その丁度真ん中辺り、二人から等距離離れて挨拶をした殿下は、目を合わせることなく、頭を若干下げたまま口上を述べられた。
これが終われば今日の殿下のお仕事はほぼ終了。
王様や王妃様の様子を確かめることなく、殿下は踵を返された。
それなりに緊張していたみたいで、部屋の入り口の扉の近くに立っていた私を見つけると、笑顔を浮かべて
近づいてこられた。
すると、殿下の笑顔を見た宰相と騎士団長がすっごく驚いた表情を浮かべていたのが、こちらから確認できた。
殿下が、私のところにたどり着いた丁度そのタイミングで、舞踏会場に繋がっている扉が開き、王族の入場を知らせるファンファーレがなった。
殿下と私以外の者が時を忘れたように固まっていた控室の空気が動く。
先触れけの侍従が扉の先に声をかけ確かめると、王の筆頭侍従に合図を出す。筆頭侍従はマニュアル通りの動きだろう、恭しく国王に頭を下げると先触れの侍従に頷き合図をし、国王が動き出すのに合わせて、先触れが舞踏会場に入場する。
ファンファーレが管弦楽の国王入場の音楽に変わり、それに合わせて王族が入場してくると、会場内の下々はすでに配られたグラスの、時間が経ちぬるくなった飲み物をこぼさぬように、体を正面に向け頭を深々と下げて待つ。
入場の音楽が鳴りやみ、王族たちが登壇したのを察知して皆頭を上げる。
私はこの間に、王直属の侍従たちがいまだに混乱しているのをよそに、素早く隠し通路を移動して、舞踏会場内に移動する。
子供達が多数参加している今回は、それでなくとも、いつもの舞踏会と雰囲気が違っている。
普段は王と王妃、宰相と筆頭護衛騎士の騎士団長、その他は使用人である侍従達、が正面に整列するのだが、今日はそこに小さな影が一つ加わっていていて……。
ここに居るほぼすべての貴族は、子供も含めて精霊契約ができたもの、それなりの魔法が使える者としてこの場にいる。まだ魔法の訓練を全く行っていない子供達も、魔力を持つ者の力の差は本能的に分かるようになるものとされている。
初めての舞踏会への参加で、わくわくとしながら顔を上げたその先に初めて目にする王様たちが居る。
視線を上げて見つめる先その中で、誰よりも輝き視線を外すことができない人物がいる。
前に並ぶ人々の中で一番小さくて、でも、本能で感じる力の強さに、視線は外したくないのに頭を下げたくなる威圧感のようなものに飲み込まれていく。
その感覚は、魔力コントロールのできる大人の方がより顕著で、畏怖を抱く対象が、信頼を置く国王ではなくてその横に佇んでいる小さな子供であることに混乱をしていた。
横に並んでいる王達も同様で、初めて目にした金髪の子供は、想像していた姿よりもより一層王族のそれであり、潜在能力に関してはここに居る誰よりも大きなことは、魔力量鑑定をすることなくとも確かな事であり、意識して威圧をかけられれば、この国一の魔法騎士団の団長であっても膝をつくだろうことは想像できた。
ただ、ひたすらに怖かったことだろう。
この子供に対して行ってきた自身の行動を振り返った時、この場にいる誰もが、魔力量や位の高い者程、この力の塊である金色の子供が怖かったことだろう。
入場の音楽もすでに消えて、子供が沢山いるにもかかわらず、静寂が包んでいるこの場所で、一人、一番初めに声を上げなければならない王その人の顔色が、青を通り越し白くなっているのが、離れた壁の陰で気配を完全に隠して見ている私にもわかったほどだ。
震えそうな声を抑えるように、いつもより低い声が静かな舞踏会場に響く。
「本日は、精霊契約を無事終えた子供達の祝いの舞踏会である。十分に楽しんで言ってほしい。また、私の息子である王子アースクエイクの披露目の場でもある。アースクエイク、こちらへ」
王は殿下と目を合わせることなく、自分の隣の王妃から一歩下がった所に立っていた殿下に自分の横に来ることを促した。
殿下は全くそれが予定してあったことのように、堂々とした様子で陛下の横半歩後ろに立つと、一度会場全体に視線を巡らせた。
「皆に初めて挨拶をする場を陛下にいただけたこと、感謝いたします」
そう言葉を発せられると、横にいる陛下に軽く頭を下げ謝辞を表された。
「陛下より紹介を受けた、アースクエイクだ。精霊の選別を受け王族としての責任を授けられたこと、重く受け止め、これからも陛下の御代のため、微力ながら力を発揮していきたいと思う。本日は、共に選別を受けた者も多数いる。私と共にこれからの王国発展のため力を尽くしてくれることを信じている。これで、本日の私の披露目とさせていただく。陛下、王妃様、王国の末永い繫栄を祈念して、乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯‼」」」」」」」」
殿下は、突然役が回ってきた乾杯と挨拶を立派に終えられると、その流れでそのままこの会場を後にされることを決められたのか、誰にも見つかっていない私を見つけて、視線で合図を送ってこられた。
会場内は殿下の乾杯の音頭につられて杯を掲げるたものの、例年と違う式次第に戸惑っていることは否めないだろう。
私は、その問いかけに、一つ頷き返して、この混乱に乗じて早速殿下の離脱経路を確保するために、隠し通路を使って控室に戻るのであった。
国王様と王妃様が若干離れて立っていたので、その丁度真ん中辺り、二人から等距離離れて挨拶をした殿下は、目を合わせることなく、頭を若干下げたまま口上を述べられた。
これが終われば今日の殿下のお仕事はほぼ終了。
王様や王妃様の様子を確かめることなく、殿下は踵を返された。
それなりに緊張していたみたいで、部屋の入り口の扉の近くに立っていた私を見つけると、笑顔を浮かべて
近づいてこられた。
すると、殿下の笑顔を見た宰相と騎士団長がすっごく驚いた表情を浮かべていたのが、こちらから確認できた。
殿下が、私のところにたどり着いた丁度そのタイミングで、舞踏会場に繋がっている扉が開き、王族の入場を知らせるファンファーレがなった。
殿下と私以外の者が時を忘れたように固まっていた控室の空気が動く。
先触れけの侍従が扉の先に声をかけ確かめると、王の筆頭侍従に合図を出す。筆頭侍従はマニュアル通りの動きだろう、恭しく国王に頭を下げると先触れの侍従に頷き合図をし、国王が動き出すのに合わせて、先触れが舞踏会場に入場する。
ファンファーレが管弦楽の国王入場の音楽に変わり、それに合わせて王族が入場してくると、会場内の下々はすでに配られたグラスの、時間が経ちぬるくなった飲み物をこぼさぬように、体を正面に向け頭を深々と下げて待つ。
入場の音楽が鳴りやみ、王族たちが登壇したのを察知して皆頭を上げる。
私はこの間に、王直属の侍従たちがいまだに混乱しているのをよそに、素早く隠し通路を移動して、舞踏会場内に移動する。
子供達が多数参加している今回は、それでなくとも、いつもの舞踏会と雰囲気が違っている。
普段は王と王妃、宰相と筆頭護衛騎士の騎士団長、その他は使用人である侍従達、が正面に整列するのだが、今日はそこに小さな影が一つ加わっていていて……。
ここに居るほぼすべての貴族は、子供も含めて精霊契約ができたもの、それなりの魔法が使える者としてこの場にいる。まだ魔法の訓練を全く行っていない子供達も、魔力を持つ者の力の差は本能的に分かるようになるものとされている。
初めての舞踏会への参加で、わくわくとしながら顔を上げたその先に初めて目にする王様たちが居る。
視線を上げて見つめる先その中で、誰よりも輝き視線を外すことができない人物がいる。
前に並ぶ人々の中で一番小さくて、でも、本能で感じる力の強さに、視線は外したくないのに頭を下げたくなる威圧感のようなものに飲み込まれていく。
その感覚は、魔力コントロールのできる大人の方がより顕著で、畏怖を抱く対象が、信頼を置く国王ではなくてその横に佇んでいる小さな子供であることに混乱をしていた。
横に並んでいる王達も同様で、初めて目にした金髪の子供は、想像していた姿よりもより一層王族のそれであり、潜在能力に関してはここに居る誰よりも大きなことは、魔力量鑑定をすることなくとも確かな事であり、意識して威圧をかけられれば、この国一の魔法騎士団の団長であっても膝をつくだろうことは想像できた。
ただ、ひたすらに怖かったことだろう。
この子供に対して行ってきた自身の行動を振り返った時、この場にいる誰もが、魔力量や位の高い者程、この力の塊である金色の子供が怖かったことだろう。
入場の音楽もすでに消えて、子供が沢山いるにもかかわらず、静寂が包んでいるこの場所で、一人、一番初めに声を上げなければならない王その人の顔色が、青を通り越し白くなっているのが、離れた壁の陰で気配を完全に隠して見ている私にもわかったほどだ。
震えそうな声を抑えるように、いつもより低い声が静かな舞踏会場に響く。
「本日は、精霊契約を無事終えた子供達の祝いの舞踏会である。十分に楽しんで言ってほしい。また、私の息子である王子アースクエイクの披露目の場でもある。アースクエイク、こちらへ」
王は殿下と目を合わせることなく、自分の隣の王妃から一歩下がった所に立っていた殿下に自分の横に来ることを促した。
殿下は全くそれが予定してあったことのように、堂々とした様子で陛下の横半歩後ろに立つと、一度会場全体に視線を巡らせた。
「皆に初めて挨拶をする場を陛下にいただけたこと、感謝いたします」
そう言葉を発せられると、横にいる陛下に軽く頭を下げ謝辞を表された。
「陛下より紹介を受けた、アースクエイクだ。精霊の選別を受け王族としての責任を授けられたこと、重く受け止め、これからも陛下の御代のため、微力ながら力を発揮していきたいと思う。本日は、共に選別を受けた者も多数いる。私と共にこれからの王国発展のため力を尽くしてくれることを信じている。これで、本日の私の披露目とさせていただく。陛下、王妃様、王国の末永い繫栄を祈念して、乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯‼」」」」」」」」
殿下は、突然役が回ってきた乾杯と挨拶を立派に終えられると、その流れでそのままこの会場を後にされることを決められたのか、誰にも見つかっていない私を見つけて、視線で合図を送ってこられた。
会場内は殿下の乾杯の音頭につられて杯を掲げるたものの、例年と違う式次第に戸惑っていることは否めないだろう。
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